b.このへん走ってて感じるんやけど、京都とちがって竹林がほとんどない、そのかわり松林がけっこう多いな、
a.植林の杉もほとんど見かけんなあ、秋に色づき冬に葉を落とす木々ばかり、
b.そんな松林や落葉樹に囲まれたこのあたりは吉備路サイクリングコースの顔、
a.国分寺、五重の塔を中心にゆるやかな丘陵地に松林が広がるすばらしいエリア、
b.バスやクルマで、ここだけって人も多いっすね、
a.吉備路といえば、まずここと吉備津神社、
b.「男はつらいよ」の冒頭シーンもここでしたね、何作目やったっけ、
a.第32作「口笛を吹く寅次郎」、YouTubeにあるかなあ、
b.あったけど、こりゃなんや、YouTubeから直接買えるんか、
a.ホンマか!?
b.しかもHDリマスター版が三日レンタルなら300円、
a.びっくりしたなあ、おまけにこの画質の素晴らしさ、改めてフィルムカメラの威力を思い知らされるような、
b.そういえば、プロアマ問わず、心あるカメラマンは、昔撮りためたお気に入りのフィルムをデジタル技術で蘇らせてはほくそ笑んでるとか、
a.オレもやりたいけどカネがなあ、安くて簡単なフィルムスキャナーならあるけど、せっかくならきちんと蘇ってほしいしなあ、
b.しかし、何だかんだで、こんな時代へ突入しちゃってるんすねえ、知らんかった・・・
a.ところで、吉備路の顔だけあって、このあたりはどこもかしこも絵になんなあ、明日香村とまた違った古き良き日本の風景、
b.明日香村とどう違(チャ)うんすか、
a.吉備路はほぼフラット(=平坦)やけど、明日香村はもっと山がちで、そこらじゅうに高低差がある、
b.高低差の有る無しで、どう変わるんすか、
a.高低差のあるほうが坂道も多くなって見晴らしもドラマチック、萩原朔太郎先生もこうおっしゃっておられる、
「坂のある風景は、ふしぎにロマン的で、ノスタルジア(=ふるさとみたいななつかしさ)の感じをあたえるものだ。坂を見ていると、その風景の向うに、別のはるかな地平があるやうに思われる。」
萩原朔太郎「坂」(散文詩集より)http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/395.html#ANK3
b.しかし、ここ吉備路でも鬼の城だけは別格に高い位置にあります、やっぱりここから引き返しませんか、せっかくがんばって登っても、たちまちふもとに降りて来るんやし、
a.ほんまやなあ、ここならきつい坂もないしラクラク・・・せやけど(=だけど)、平坦コースもだんだん飽きて来た、坂道とかないと、どうしても風景が単調に流れるしなあ、楽すぎて走った感もないし、
b.じゃあ、やっぱりこっから目指しますか、鬼が住むと言われる山城を、
a.うむ、五重塔裏手の丘を抜け、道なりに北上すると、正面に松林のような砂川の堤防が見えてくる、鬼の城はこの川の源流あたりにあるはずや、
b.しかし、この砂川公園デカいな、それにセンスええなあ、
a.どのへんが、
b.ふつう河川工事はそっけないコンクリやけど、ぜんぶ自然石つかってるし、川底をなぞる曲線も美しい、それに樹木も自然に生えてるようでさりげない、なにより広々してて自由度が高い、
a.ああ、そう言えば思い出したけど、鬼の城(オニノシロ)の正式名は、「鬼ノ城(キノジョウ)」、「温羅(ウラ)遺跡」ともいうらしい、
b.ここからだいぶ登るんすか、その城まで、
a.クルマで行けるからずっとアスファルトなんやけど、ここ砂川公園が標高40mで鬼ノ城(キノジョウ)が340mやし、300m登ることになる、
b.300mか、なんか気持ちが乗らないっす、この砂川公園だけでもじゅぶんやないすか、
a.ここも確かにええけど、そんじゃあわざわざ庭瀬まで輪行した甲斐もねえし、
b.まあそりゃそうやけど・・・
a.しかし、広い公園やなあ、ここ岡山県総社市は橋本総理の地元やし、そのせいかなあ・・・かなりカネつぎ込んでるで、
b.片田舎の公園とは思えないほどの広さと細(コマ)やかさ、しかし、何だかんだでとうとう公園の端っこまで来ちゃいました、登るのか登らないのか、決断をおねげえしますだ、お代官様、
a.なんかそれらしい山道が見え隠れしてんなあ、でも路面えらくなめらかやし、クルマもそれほど走ってねえ・・行くしかないやろ、ここまで来たら、
b.ほんじゃあ、気合い入れてじわじわ登っちゃいましょう、鬼の城へ向けて、
a.うむ、やっと腹もすわってきた、いざ敵の本拠地に乗り込むぜよ・・・