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2023年02月26日
読書「殺人記念日My lovely wife」サマンサ・ダウニング著2021年ハヤカワ文庫刊
私の可愛い妻が裏切者で、犯した罪をすべて私に押し付けようとする怖い女だった。それにしてもすさまじい嫉妬と行動力だ。私が語る一部始終で、一人称の小説。
妻ミリセントと築いた住まいは、ヒドゥン・オークスという周囲を壁に囲まれ出入り口が3カ所、2カ所には警備員がいる中級・高級住宅地で、四つの寝室にすべてバス・ルームがついている。この段落を読んだとき、掃除が大変だろうなあと思った。私が浴室の掃除当番だから。ほんと面倒くさい。
そこに私カントリー・クラブのテニス・コーチで、外見もよくスーツの着こなしも一目置かれるほどの男と不動産会社のセールスを担当する有能な妻ミリセント、ミリセントは赤い髪と緑の目にすらりとした体形。息子ローリー、娘ジェンナ、いずれもティーンエイジャーの四人暮らし。はたから見れば見事な中産階級のファミリーなのだ。日常はどこにでもある微笑ましい幸せな家族なのだ。しかし、どこの家庭でも人に知られたくないこともある。
それは人を殺すことなのだ。ターゲットを発掘するのは私。その時は、聴覚障碍者になりすまし見栄えのいい外見とともに好感が持てる男としてトビアスと名乗る。女は体のどこかに欠陥がある人には、母性本能が働くのか気遣いが細かい。私は、健常者の驕りで上から目線にしか映らないと思っている。
女は単なる獲物なのだ。なぜ人を殺すのか。それはときめきを感じるからだ。殺人行為には自律神経の交感神経が興奮することによってアドレナリンの分泌が高まる。その結果、主な作用として、心拍数や血圧上昇が上昇し、体のパフォーマンスの向上、覚醒作用があり、集中力や注意力の高まり、目の前の恐怖や不安に対して、体と脳が戦闘モードに切り替わる結果、素敵なセックス・ライフが得られる。殺される方にしてみれば、はなはだ迷惑ではある。
初めは連続殺人鬼の犯行に見せかけようとしたが、その殺人鬼がとっくの昔に死んでいることが判明する。100年以上前から建つ朽ちかけた教会の地下室から、三人の女の遺体が発見される。連日テレビがこれを追う。危機感を覚えた私。
そんなある日、テレビは血で書いた落書き「トビアス 聴覚障碍者」が犯人を指していると放送される。「トビアス 聴覚障碍者」これを知っているのはミリセント以外ない。妻ミリセントは、私に全部の罪をかぶせようとしている。全身が凍り付いた。
「美人には気をつけろ」の教訓を生かせなかった。 が、やすやすとくたばってたまるか! 息子・娘が味方になってくれるかどうかが生死の分かれ道。あとはネタバレのため、この辺で終わり。
一つだけ話題を提供。それはジャンケン。この本でも子供たちがジャンケンをする。アメリカのジャンケンは、ロック(岩、日本ではグー)、ペーパー(紙、パー)、シザース(ハサミ、チョキ)。それが最近では変わってきているという。「monkey-pirate-robot-ninja-zombie(猿、海賊、ロボット、忍者、ゾンビ)」。「robot」は破壊を表すにぎり拳、「pirate」は海賊の銃、「ninja」は手刀、「monkey」は耳、「zombie」は犠牲者の脳みそに触れる手の形を表しているそう。
著者のサマンサ・ダウニングは、ニューオーリンズ在住。製造会社勤務のかたわら小説を執筆するアマチュア作家で、二十年間で十二作の小説を書いたが、発表したのは本作がはじめて。本作は2019年に上梓され注目を浴びる。2020年アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)、英国推理作家協会賞、国際スリラー作家協会賞、マカヴィティ賞の最優秀新人賞にノミネートされた。
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2023年02月24日
海外テレビドラマ「主任警部モースInspector Morse」ITV(独立テレビジョン)傘下のゼニス・プロダクション制作
アマゾン・プライムではシーズン4までしか観られないが、YahooのGYAOのサイトでは、シーズン8まで無料で観られる。このシリーズは、シーズン8まであるから全部観ることができる。ただし、GYAOは、今年の3月31日で配信中止の予告がある。
ドラマは1987年から2000年までのシリーズだからかなり古い。1話の時間が1時間44分ほどで通常より長い。
「オックスフォードシャー、キドリントンのテムズ・バレイ警察本部CID(警察刑事捜査課)所属の主任警部モースは、プッチーニのオペラ「トスカ」を大音量で聴きながらジャガーマーク2のハンドルを握り、幾多のクラシック音楽とウィスキーとビールをこよなく愛し、エドモンド・スペンサーやジョン・ウィルモットの詩集に親しみ、ミルトンの「失楽園」の一節を朗唱する教養人ではあるが、暇を見つけては女性に色目を使う初老の独身男なのだ」このような書き出しで2022年11月に、gooのブログにアップしたのものだ。
ウィキペディアにはこう書いてある「イギリスの推理作家コリン・デクスターの代表作『モース警部』シリーズを原作とする刑事ドラマのシリーズ。主役のモース警部役をジョン・ソウが、部下のルイス巡査役をケヴィン・ウェイトリーが演じた」
シーズン5までくると、モースとルイスの口論や皮肉も日常となる。今どきのスマホで情報をやり取りをする刑事ドラマやSWATのような警察活動から見ると黴臭さは否めない。 が、刑事が拳銃を携帯しないというおおらかな時代でもあった。それらから見ると、いまの時代、ネットを利用した詐欺や犯罪の多さには息苦しさを覚える。
このドラマでゆったりと気分に浸るのもいいかもしれない。
2023年02月21日
読書「ブルックリンの死When no one is watching」アリッサ・コール著2022年ハヤカワ・ミステリ文庫刊
2020年9月にアメリカで刊行され、映画「裏窓」と「ゲットアウト」の遭遇だと絶賛されていて、2021年アメリカ探偵作家クラブ賞のオリジナルペイパーバック賞とストランド・マガジン批評家賞最優秀新人賞に輝いた。
ヒッチコックの「裏窓」は、足を怪我したカメラマン(ジェームス・スチュワート)が暇を持て余して向かいのアパートを望遠カメラで覗き見する。そして犯罪を見る。恋人(グレース・ケリー)が調査に当たる。それがもとでカメラマンに危機が訪れる。 というお話だった。
未見の「ゲット・アウト」は、白人のガールフレンドの実家を訪れたアフリカ系アメリカ人の青年が体験する恐怖を描く。 とウィキペディアにある。この本は地域における居住者の階層の上位化とともに、建物の改修やクリアランス(都市再開発)の結果としての居住空間の質の向上が進行する現象のジェントリフィケーションをもとにしていて、端的に言えば貧乏人が追い出され金持ちが支配するということ。
「ニューヨーク・ブルックリンのベッドフォード=スタイベサント地区は、アメリカでも最大級のアフリカ系アメリカ人居住地区だが、ジェントリフィケーションとともに裕福な他の人種が増え、地区のアイデンティティが揺らいでいる」とウィキペディアにある。まさにこれがこの本のテーマなのだ。
揺らいでいるアイデンティティを守ろうとする黒人女性シドニーとシドニーの向かいに引っ越してきた白人のセオのカップルが終盤、壮絶なバイオレンスを演じる。ブルックリンには、歴史的なブラウンストーン(褐色砂岩)の家屋が連なっている。ラブロマンスの映画にもよく使われている。交通の便もいいとろで誰もが住んでみたい地区ではあるが、黒人たちが増えてきたため、白人は郊外に逃げ出した。そして再び帰ってきた。 と聞いたことがある。
さてシドニーはバツイチ女で30歳子供なし。このブラウンストーンの建物の歴史ツアーに参加して、白人中心の説明にイラついて自ら歴史ツアーを立ち上げようとする。それに協力するというのが白人のセオなのだ。このセオ、親父がマフィアで悪いこともしてきた男なのだ。キムという裕福な出自をもつ女性が恋人。実家は週末にはニューヨークから脱出する車で大渋滞する高級住宅地ハンプトンズにある。
裕福な出だからといって性格がいいとは限らない。キムは、セオに最後通牒を突き付ける。実家に帰るためにスーツケースを転がしながら「私が帰ってきたとき、もうあなたはいないんだから」1週間の猶予をもらったセオ。最後の強烈なパンチが飛んできた。「冷蔵庫に残っているワインは飲んでもいいけど、私のものを壊したりしないでね。もしそうなったら思い知らせてあげる」
シドニーたちが住んでいる近くに、2005年に閉鎖されたギフォード・メディカルセンターもとはヴリセンダール療養所。ここをヴァレンテック製薬が買い取ろとしている。地元の人たちは反対している。そうこうしているうちに、住民がつぎつぎといなくなる。そのあとに白人が入居してくる。シドニーは不思議に思う。
親しい友ドレアの死体を発見してから、セオと歩道に埋め込まれた金属扉を引き開け降りていく。 とメディカル・センターの地下には近所の人たちがゾンビのようになっていた。そこではアヘン製剤依存症の治療法を研究しているらしい。これを裏で画策しているのが、セオの恋人だったキムの父親なのだ。拳銃が火を噴き、死体がゴロゴロ。当然キムも銃弾に倒れる。いったいこの死体をどうするんだ。 と思っていたら、町内会の高齢者たちの行き届いた監視によって、ガソリンをバラマキ火をつけて建物もろとも崩壊する。証拠も何もない。最後は漫画のような結末なのだ。
それにしてもこの本に描かれるニューヨーク、グルックリン。住みたいと思わない状況なのだ。公園という公園には十代の若者がたむろして近寄りがたい。シドニーもタクシーに乗っても、自動的にドアにカギがかかるのを「なぜロックしたの?」タクシーの運転手が言う「チャイルドロックだよ。一定時間たつと自動的に作動する」シドニーはかなり神経質になっている。セオも言う「黒人の大男が妙な動きで向かってきたらどう考えるべきか。ドラッグ、犯罪、危険、じゃないかな」
白人警官が黒人の犯人逮捕時に死なせたことがきっかけで、BLM(Black Lives Matter)運動が高揚し、商店略奪まで発生した。私が思うに、なぜ黒人も経営する商店を襲うのか。不思議でならない。ニューヨークは代々民主党の市長が務めている。今は共和党支持の元市長ルドルフ・ジュリアーニは、ここブルックリンの生まれである。
著者のアリッサ・コールは、歴史もの、現代もの、SFものなど幅広いジャンルのロマンス小説で受賞歴もあるアフリカ系アメリカ人の女性作家である。
2016年11月11日
裏切り者の警察官たち「トリプル9裏切りのコード」2015年制作 劇場公開2016年6月
警察官が銀行強盗や押し込み強盗をうまくやれば完全犯罪も夢ではない。この警察官グループは、ロシアン・マフィアに操られている。
マイケル(キウェテル・イジョフォー)は、マフィアのドンの妻イリーナ(ケイト・ウィンスレット)の妹エレナ(ガル・ガドット)との間に息子がいる。イリーナは相手が黒人のマイケルが気に入らない。マイケルはエレナとは離婚していて「息子に会いたければ言うことを聞け」とイリーナ。そういうわけで悪徳警官グループが誕生した。
そんなグループの中に転入してきたクリス・アレン(ケイシー・アフレック)。何かにつけて新入り扱いされる。クリスもそうそう言いなりにはならない。毅然と反論してアピールする。悪徳警官からすればクリスは目障りな存在。
イリーナからまたまた難題を吹きかけられる。国土安全保障省(DHS)の金庫にあるセキュリティー・キーとゲートのコードを盗んで来いという。ビルの奥深くにある金庫から盗み出す時間が問題だ。5分以内はムリ。そこで10分以上稼げる秘策、トリプル9を使うことに決めた。
警察用語で999(トリプル9)は、警察官が撃たれたり瀕死の重傷などのとき最優先で処理されることを意味する。従って全パトカーや警察車両は、いっせいに警官殺傷事件現場に集中する。ということはDHS襲撃事件の対応が遅れることになる。
だが、傷を負うか死んだ警察官が必要になる。そこで狙われたのがクリス。この映画、犯罪映画としては上の部だろう。結局イリーナや悪徳警官が死んでクリスは生き残る。正義が行われた。といいたいが殆どは裏切りの産物。ケイト・ウィンスレットの悪女も悪くない。お暇なときにどうぞ。
監督
ジョン・ヒルコート1961年オーストラリア、クイーンズランド生まれ。
キャスト
ケイシー・アフレック1975年8月マサチューセッツ州生まれ。
キウェテル・イジョフォー1974年7月イギリス、ロンドン生まれ。
アンソニー・マッキー1979年8月アイダホ州生まれ。
アーロン・ポール1979年8月アイダホ州生まれ。
クリフトン・コリンズjr1970年6月カリファルニア州ロサンゼルス生まれ。
ウディ・ハレルソン1961年7月テキサス州ミッドランド生まれ。
ケイト・ウィンスレット1975年10月イングランド、バークシャーレディング生まれ。2008年「愛を読むひと」でアカデミー賞主演女優賞受賞。ガル・ガドット1985年4月イスラエル生まれ。
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2016年11月08日
高級ホテルにこもらず外へ出よう「グランドフィナーレ」2015年制作 劇場公開2016年4月
スイスの高級ホテルに滞在する元指揮者のフレッド・バリンジャー(マイケル・ケイン)は、英王室の儀典局職員からの依頼をかたくなに拒否する。
その依頼とは、女王からフィリップ殿下の誕生日にフレッドが作曲した「シンプル・ソング」の指揮をして欲しいというものだった。断る理由を聞いても私事だからとにべもない。
スイス・アルプスの麓にあるこのホテルは、春の陽射しが降り注ぐ素晴らしい景観とプールで泳ぐもよし、水浴だけでもよし、ヨガにマッサージと健康診断が充実している。
フレッドは英国紳士らしくスーツにネクタイが日常の衣服。そのフレッドの友人で映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)は、アメリカ人らしくラフな服装。これなんか英米を端的に表している。
原題が「YOUTH青春時代」となっていてフレッドとミックの会話にも昔の女性が話題になる。「ギルダ・ブラックは知ってるだろう? 彼女と寝られるのなら20年待つよ」とフレッド。男は幾つになってもこんな話しかしない。
フレッドにはレナ(レイチェル・ワイズ)という娘がいる。失恋して父親の部屋で起居するハメになる。
俳優のジミー・ツリー(ポール・ダノ)は、撮影前の英気を養っている。
時折景色が映し出されるが、素晴らしい。行ってみたくなる。こういうところはガツガツと観光するのでなく、景色を見ながらの散策が最高だろうと思わせる。
ミックの撮る映画の主役ブレンダ(ジェーン・フォンダ)がわざわざロサンゼルスからやってきて主役を降りると宣言する。しかも「あんたの最後の3本はクソだ」と言い「早く目覚めなさい。人生はこれからも続くから」
しかし、ミックは人生を続ける気はなかった。フレッドと会話のあとベランダから飛び降りて死んでしまう。牛が草を食む傾斜のある草原でフレッドが友を思い涙に暮れていると、空からハングライダーが降りてきた。その男が言う「ここに降りるとは思わなかった」。フレッドが微笑む。そうなんだ。人生は思い通りに行かない。
ホテルの主治医に「ミックはギルダのことをなにか言っていたか?」とフレッドは尋ねる。医師は「そればかりでした。恋人は言い過ぎです。二人が子供の頃、手をつないで数メートル歩いたんです。どこかの公園を。自転車に乗れた瞬間だと言ってました」フレッドは安堵の溜息。
そう、人生の終焉には幼い頃の思い出がふっと湧き出る。そうだなあ。私にもあるんだなあ。小さな想い出が。色白の可愛い女の子。その子の手を握ったとき周囲の悪童にやんやと冷やかされた記憶が蘇る。そういう想い出はちょっと切なく感じるよね。
娘レナも山男の伴侶を見つけたらしいし、俺ももう一度隠遁生活から抜け出して新しい人生を始めよう。妻メラニーのためにしか指揮しないと誓っていたが、それも開放しよう。 とフレッドは思ったのかもしれない。
女王とフィリップ殿下誕生祝に「シンプル・ソング」を指揮するフレッド。歌うはソプラノ歌手スミ・ジョー(本人)。スミ・ジョーは韓国出身で声に潤いを感じる美声の持ち主。
デビッド・ラングのこの曲は、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。なかなかいい曲だよ。その歌詞を字幕から拾い上げてみよう。
私は満たされている
すべての支配から解き放たれて
すべての支配から解き放たれて
私は応える
寒さを感じている
私は砕ける
私は知っている無数の孤独な夜
私は知っている無数の孤独な夜
私はすべてを知っている
すべての支配から解き放たれて
寒さを感じている
私は知っている無数の孤独な夜
私は死ぬ
すべてのものを聴く
聴かれるための音を
あなたはどうか決して立ち止まらないで
私は感じている
私はそちらに行くでしょう
決してあなたを忘れない
私は束縛を捨て去るでしょう
私は満たされている
私は感じている
あなたの体が雨のようならばいい
私はそこに行こう
すべての支配から解き放たれて
そしてその曲を聴きましょう。
監督
パオロ・ソレンティーノ1970年5月イタリア、ナポリ生まれ。
キャスト
マイケル・ケイン1933年3月イギリス、ロンドン生まれ。
ハーヴェイ・カイテル1939年5月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。
レイチェル・ワイズ1971年3月イギリス、ロンドン生まれ。
ポール・ダノ1984年6月ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。
ジェーン・フォンダ1937年12月ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。1978年「帰郷」でアカデミー賞主演女優賞受賞。
スミ・ジョー1962年11月韓国生まれ。
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2016年11月06日
家族が年に一度集まるのはクリスマス…「クーパー家の晩餐会」2015年制作 劇場公開2016年2月
日本でもお正月には子供たちが実家に集まるのと同じように、クリスマスには成長した息子や娘の姿を見たいのは親心。
クーパー家の主、シャーロット(ダイアン・キートン)とサム(ジョン・グッドマン)夫妻は離婚の危機に瀕していた。シャーロットは最後の集まりになると覚悟を決めよりよい集いにしたいと願っていた。
雪が芝生や歩道を白く染め漆黒の空から舞い落ちる白いかけら。家々では暖かい光と飾られたクリスマス・ツリーが楽しい団欒が幸せを呼ぶようだ。
ところがクーパー家の息子ハンク(エド・ヘルムズ)は失業中、娘のエレノア(オリヴィア・ワイルド)はまだ独身で妻帯の男と不倫中。ハンクは失業中とはみんなに言えないし、エレノアも相変わらず一人で実家に行くのも母シャーロットの人を見下して軽蔑した表情は見たくないしと悩みが多い。
雪のため足止めを食ったエレノアが意気投合したジョー(ジェイク・レイシー)を仮の恋人に仕立てて実家に乗り込む。妻を亡くした叔父バッキー(アラン・アーキン)が気に入っているウェイトレス、ルビー(アマンダ・セイフライド)、それにシャーロットの妹エマ(マリサ・トメイ)が万引きで逮捕されそうになったりしてようやくパーティが始まる。
これなんかどこにでもある家庭の風景ではあるが、地球上でノーミソが一番多い人間の宿命、悩みや恨みを抱え込んだ風景をコミックに描いてみせる。二番煎じと言えば二番煎じで新味はない。
極端に言えば一番幸せなのは飼い犬君ではないだろうか。人の隙を狙って食べ放題だしね。いずれにしてもキス、キス、キスの幸せなエンディングになる。それにしてもダイアン・キートン、細くなった気がする。70歳は、極端に老化が進む年代だよね。
監督
ジェシー・ネルソン出自不詳。女性の監督だよ。
キャスト
ダイアン・キートン1946年1月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。1977年「アニー・ホール」でアカデミー賞主演女優賞受賞。
ジョン・グッドマン1952年6月ミズーリー州セントルイス生まれ。
アラン・アーキン1934年3月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2006年「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
エド・ヘルムズ1974年1月ジョージア州アトランタ生まれ。
ジェイク・レイシー出自不詳。
アンソニ・マッキー1979年9月ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。
アマンダ・セイフライド1985年12月ペンシルヴェニア州アレンタウン生まれ。
マリサ・トメイ1964年12月ニューヨーク、ブルックリン生まれ。1992年「いとこのビニー」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
オリヴィア・ワイルド1984年3月ニューヨーク生まれ。
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2016年11月02日
久しぶりに劇場で映画鑑賞「ジェイソン・ボーン」2016年制作 劇場公開2016年10月
日比谷にあるTOHOシネマズスカラ座に座席を予約購入。M列の座席が失敗だった。スクリーンに向かってAからRまであって、Aはスクリーンに一番近くRは最上段で一番遠い。
Mはそれほどスクリーンに近くはないが、なにせ映画が目まぐるしく変化するから頭がくらくらする。ハンディ・カメラなのか動きすぎるキライがある。後で考えると体調不良も起因していたのかもしれない。胃にムカつきを感じたから。
客席はまばらで途中から最後列のRに座ってエンド・マークまで観終わった。筋書きはあるが、あえて書かない。とにかくジェイソン・ボーン(マット・デイモン)がCIAから狙われ動きの激しい身の捌きで追っ手のCIA局員を次々に倒して黒幕CIA局長ロバート・デューイ(トミー・リー・ジョーンズ)に迫る。
勿論、新入りのへザー・リー(アリシア・ヴィカンダー)が長官に疑問を持ってボーンを助ける手を差し伸べるということもあるが。とにかく爆発、銃撃、バイクや車の疾走、炎上、破壊の連続には大音響と共に揺れ動く画面にへとへとになった。映画を観るのに体力勝負とは思ってもみなかった。
へザー・リー役のアリシア・ヴィカンダーを見ていて目のキレイな人だと思った。あとで調べてみると「リリーのすべて」にも出ていたんだ。私は忘れていて気がつかなかった。
オープニングには上半身裸で殴りあう場面があるが、マット・デイモンの筋肉質の肉体は、マッチョマンを披瀝しているのだろうか。男の筋肉質について、同行した女友達に聞いてみようと思っていたが忘れた。次回に聞いてみよう。
映画はジェイソン・ボーンのCIA復帰を匂わせながら終わる。次回作があるのは確実。なお、記憶を失った男ジェイソン・ボーンの生みの親はアメリカの作家ロバート・ラドラム(1929.5.25~2001.3.12)であるが、この人は3作のみでその後1946年ニューヨーク、グリニッチ・ヴィレッジ生まれのエリック・ヴァン・ラストベーダーによって9作があるという。本作は脚本が監督をしているポール・グリーングラスということで、先の作家との関連は分からない。
監督
ポール・グリーングラス1955年8月イギリス、イングランド生まれ。
キャスト
マット・デイモン1970年10月マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。
ジュリア・スタイルズ1981年3月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
アリシア・ヴィカンダー1988年10月スウェーデン生まれ。2015年「リリのすべて」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
ヴァンサン・カッセル1966年11月フランス、パリ生まれ。
トミー・リー・ジョーンズ1946年9月テキサス州生まれ。1993年「逃亡者」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
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2016年10月30日
自分による自分のための映画かな?「ヘイル、シーザー!」2016年制作 劇場公開2016年5月
この映画は、コーエン兄弟の自分のための記念碑的作品と言えるかもしれない。
1950年代キャピトル・ピクチャーズは、スペクタクル大作「ヘイル、シーザー!」を大スター、ベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)主演で撮っていた。
さらにディアナ(スカーレット・ヨハンソン)主演の水着の女王張りの映画やバート・ガーニー(チャニング・テイタム)のミュージカルの撮影が進められていた。ところがベアード・ウィットロックが姿を消した。
妻と約束した禁煙を破ったと神父に告解するモディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)が、スタジオを切り盛りする。ベアードのスペクタクルは、1956年チャールトン・ヘストン、ユル・ブリンナーの「十戒」を、ディアナのはアメリカの競泳選手からスターになったエスター・ウィリアムズ1952年の「100万ドルの人魚」を、バートのは1949年ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ジュールス・マンシンの「踊る大ニューヨーク」をそれぞれ連想する。1950年代を象徴する映画の列。
行方不明のベアードは誘拐されて共産主義者のグループから洗脳されると言う具合でモディがかっかと湯気を立てる。これなんか1948年から50年代前半にかけて吹き荒れたマッカーシズム、いわゆる赤狩りのパロディーに思える。
モディ・マニックスがロッキード社から引き抜きの話を持ち込まれ「映画の時代は終わったよ。これからはテレビの時代だから、転進するのは早すぎることはない」と口説かれるというシーンもある。まさに2016年の今、テレビからネットへと時代が移り変わっていく。
確かに映画は大ヒット作以外は観客動員に苦労している。先日観た「ジェイソン・ボーン」もマット・デイモン主演と言っても客席はまばらだった。
コーエン兄弟が自分による自分のための作品と思っても不思議じゃない。そういう風に私は思ったんだが。「万歳、シーザー!」「万歳、皇帝!」このタイトルからして「わーい、わーい」という感じ。
監督
ジョエル・コーエン1954年11月ミネソタ州ミネアポリス生まれ。
イーサン・コーエン(弟)1957年9月ミネソタ州ミネアポリス生まれ。
2007年「ノーカントリー」でアカデミー賞監督賞と脚本賞を受賞。
キャスト
ジョシュ・ブローリン1968年2月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。2008年「ミルク」でアカデミー賞助演男優賞ノミネート。
ジョージ・クルーニー1961年5月ケンタッキー州レキシントン生まれ。
オールデン・エアエンライフ1962年12月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。
レイフ・ファインズ1962年12月イギリス、サフォーク生まれ。1996年「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞主演男優賞ノミネート。
ジョナ・ヒル1983年12月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。2013年「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でアカデミー賞助演男優賞ノミネート。
スカーレット・ヨハンソン1984年11月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
フランシス・マクドーマンド1957年6月イリノイ州シカゴ生まれ。
ティルダ・スウィントン1960年11月イギリス、ロンドン生まれ。
チャニング・テイタム1980年4月アラバマ州生まれ。
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2016年10月27日
西部劇スタイルの犯罪ドラマ「JUSTIFIED俺の正義シーズン1」2010年制作TVドラマ
どこが西部劇スタイルかというと、場所がケンタッキー州ハーラン郡の田舎町だし、連邦保安官レイラン・ギヴンズ(ティモシー・オリファント)の格好がテンガロン・ハットにカウボーイ・ブーツというだけ。ああ、それから流れる音楽がカントリー・ミュージック。
ついでにオープニングに流れる音楽は、ラップ・ミュージックの要素が入ったカントリーだ。なかなかいい感じだった。マイアミでマフィアの男を射殺したレイランは、故郷ケンタッキー州ハーラン郡保安官事務所に左遷される。
早撃ちレイランもここでは新入り扱い。黒人の女性保安官と組まされて腐ってるのもほんの少しだけ。地元ということで幼馴染のボイド(ウォルトン・ゴギンズ)やエイヴァ(ジョエル・カーター)それに元妻ウィノナ(ナタリー・ジー)や父アーロ(レイモンド・バリー)たちと顔を合わせることになる。レイランも含めていずれもクセのある人物たち。
ボイドは、犯罪者集団の親の元に生まれ悪の染まっていた。エイヴァは、最近夫(ボイドの弟)を射殺したという。元妻のウィノナは、レイランと別れた理由を「今の夫は夢がある」という。その夢はショッピング・モールを造ることだという。レイランにすれば「あっ、そう」という感じ。困ったことにレイランの父アーロは、犯罪者で認知症に悩んでいることだ。犯罪者の息子が保安官という設定もアメリカらしいというか、原作者のエルモア・レナード風味といったところか。
レイランが夫殺害の容疑者であるエイヴァといい仲になって、上司のアート・ミューレン(ニック・サーシー)保安官事務所所長から叱責を受けたり、元妻のウィノナの夫がホテルに篭ったきり帰ってこないと言って、結婚指輪を外して元夫のレイランに迫る。そんな合間をぬって犯罪者と対峙するレイラン。しかも、マイアミのマフィアからも狙われる。身が幾つあっても足りない。
テレビドラマによくある一話完結型でなくシーズン完結型。主役のティモシー・オリファントがなかなか格好いい。ジーンズにジャケット、ワイシャツのときもあればワークシャツのときもネクタイをゆるく締めている。ノーネクタイが多い映画のファッションだが、これがいまどきのファッションなのか。いずれにしてもネクタイがないよりはましか。
犯罪は待ってくれない。早速、橋の上で白人至上主義者の死体が発見される。というわけで、お話は結構面白くシーズン2も期待している。このドラマ、アメリカでは視聴率が良かったらしいし、2011年〜12年エミー賞受賞。
原作エルモア・レナードの短編を元にしたシリーズ。
キャスト
ティモシー・オリファント1968年5月ハワイ州ホノルル生まれ。2004年「デッドウッド〜銃とSEXとワイルドダウン」で主役を演じて注目される。主にテレビ界での仕事。
ニック・サーシー1959年3月ノースカロライナ州生まれ。
ジョエル・カーター1972年10月ジョージャ州生まれ。
ナタリー・ジー1975年3月テキサス州生まれ。
ウォルトン・ゴギンズ1971年11月アラバマ州生まれ。
レイモンド・バリー1939年3月ニューヨーク州ロングアイランド生まれ。
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2016年10月25日
3次元のラブ・ストーリー「ロブスター」2015年制作、劇場公開2016年3月
甘くロマンティックな雰囲気のないラブ・ストーリーは珍しい。すべてにおいて異次元。
通常は出演俳優の役名、たとえばこの映画ではコリン・ファレルがデヴィッド役という具合。そしてこの映画では、コリン・ファレルのデヴィッド以外はまったく役名がない。あるのはその人物の特徴を表す言葉だけ。レイチェル・ワイズが「近視の女」、ジョン・C・ライリーが発音や発声の悪い「滑舌の悪い男」、レア・セドウ「独身者たちのリーダー」、ベン・ウィショー「足の悪い男」など。
三次元の空間では、一人身を罪悪とみなす次元、一人身しか存在できない次元があった。一人身を罪悪とみなす次元では、45日以内にパートナーを見つけなければ、最初に登録した動物になる。オオカミ、ペンギン、カバ、ラクダ以外の動物を求められる。
妻と別れたデヴィッドは、犬になった兄を連れて、あるホテルにやってきた。ここは45日以内にパートナーを見つける矯正施設。施設の周辺は森になっていて、その中には動物にされたウサギや孔雀ほかいろいろな生き物がうろついている。45日以内にパートナーを見つけられず動物になった人たち。
一人身だけの次元では、恋愛やセックスはご法度。踊るのも一人。音楽は電子音。オープニングは衝撃的だった。年配の女性が車を乗りつけ、草を食む馬を射殺する。映画を観終わってこの場面を考えると、馬になった夫への恨みが晴れず射殺したという私の推測だが、ここでも女の怖さが表れているような気がする。
それにしても、なんだこりゃという訳で、一体どんな話になるのか予測がつかないし、理解したと思えないままラストを迎える。私にとっては消化不良、もともとSF物は嫌いで借りなきゃあよかった。
しかし、分かる人は分かるらしく『批評家の総意として、本作品を「野心的でぞっとするほど奇妙であり、間違いなく見るたびに好きになっていく作品だ」としたうえで、「ヨルゴス・ランティモスの風変わりな感性が観客に理解されるためには、この作品が健全で映画として楽しめるものであることを示す必要がある」と評している』とウィキペディアにある。
これは、今のところ観客に理解されているとはいえないが、もう少し分かりやすい娯楽性を求めているのだろうか。風変わりといえば、ホテルの受付で裸にされるというのも理解に苦しむし、一日だけ左手を手錠に縛られるのも分からない。「一つよりも二つのほうがどれだけ楽かを体感する」ためと言うが。
が、現実世界の常識を捨てて観たほうがいいのかもしれない。あれやこれやと色々あって観終わって疲れだけが残った気がする。
しかし、時間を置いて考えてみると、一人身を否定する次元も一人身だけを認める次元も、人間の多様性を否定している点が共通している。したがって相手を認めないということは、この次元と同じだぞと言っているようだ。人種差別や男女による差別を否定する逆説的描写と言えなくもない。
こういう見方からすると、「裸にされる」のも「左手を縛られる」のも意味があると思うから不思議。裸にされるのは、衣服は虚飾と言うのかも。裸はその人そのもの、年齢や健康状態、食生活、日常が推測できる。でぶでぶと太っていると、食生活への配慮が欠けているし、運動不足も表している。
左手を縛るのは、不自由を体験して初めて両手の便利さが分かるし、体の不自由な人への気配りが出来るようになる。
ちなみに題名の「ロブスター」は、デヴィッドが希望した生き物。その理由「100年以上生きられるし、貴族みたいに由緒があって死ぬまで生殖能力がある」
この映画の公式サイトでは、生年月日を入れると「自分のなりたい動物」が示される。私の場合は、「マニアックな犬と出て、一人が好きで自分の流儀を持っている。身内びいきで初対面はとっつきにくい」とある。当たっているところもあれば、当たらないところもある。
なお、本作は第68回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している。
監督
ヨルゴス・ランティモス1973年ギリシャ、アテネ生まれ。
キャスト
コリン・ファレル1976年5月アイルランド、ダブリン生まれ。
レイチェル・ワイズ1971年3月イギリス、ロンドン生まれ。2005年「ナイロビの蜂」でアカデミー賞助演女優賞受賞。
ジョン・C・ライリー1965年5月イリノイ州シカゴ生まれ。
レア・セドウ1985年7月フランス生まれ。
ベン・ウィショー1980年10月イギリス、イングランド生まれ。
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