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2019年06月01日
「前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間」を稼ぐ方法
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
「前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間」を稼ぐ方法
怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さない
では、実際に前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間、
どのようなことをして“時間稼ぎ”をしたらいいのだろうか。
前回紹介したように実際に数字をカウントして待つ手もあるだろう。
柿木さんに、怒りに火がつきそうになった場合、
無理なく簡単にできて効果がある方法をいくつか紹介してもらった。
いずれもすぐ試せる簡単なものばかりだ。
怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さないことがポイント。
相手がいる場合、
「納得できません」
「それは違うと思います」
といった反論をしないことはもちろん、
「ムカつく」
「腹が立つな」
といった独り言や舌打ちなども控える。
小さな怒りがきっかけで大きなトラブルに発展する事態になりかねない。
前頭葉が活発に動き出すまでの6秒間は、
相手の機嫌を損ねない、これらのアクションにとどめておこう。
柿木さんは
「最近の脳科学研究では、
怒りなどのネガティブな感情は、他のことに意識を向けると軽くなることが明らかになっています。
つまり、大切なのは怒りから意識を遠ざける努力をすることです。
例えば、相手にわからないように、自分の手や足をつねって、痛覚を刺激するといったことをするだけでも効果があります」とアドバイスする。
◇ ◇ ◇
8月2日公開の後編では、
人間の脳で分泌される神経伝達物質や脳内ホルモンなどの「脳内物質」の観点から、
「怒り」の対処法を探っていく。
柿木隆介(かきぎ・りゅうすけ)さん
自然科学研究機構 生理学研究所教授
1978年、九州大学医学部卒業後、
同大学医学部付属病院(内科、神経内科)、
佐賀医科大学内科に勤務。
1983〜85年、ロンドン大学医学部留学、1
993年より岡崎国立共同研究機構生理学研究所(現、自然科学研究機構)教授。
日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。
専門は神経科学。
著書に『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、
『記憶力の脳科学』(大和書房)など。
「前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間」を稼ぐ方法
怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さない
では、実際に前頭葉が活性しはじめるまでの6秒間、
どのようなことをして“時間稼ぎ”をしたらいいのだろうか。
前回紹介したように実際に数字をカウントして待つ手もあるだろう。
柿木さんに、怒りに火がつきそうになった場合、
無理なく簡単にできて効果がある方法をいくつか紹介してもらった。
いずれもすぐ試せる簡単なものばかりだ。
怒りを感じてもすぐに言葉や態度に出さないことがポイント。
相手がいる場合、
「納得できません」
「それは違うと思います」
といった反論をしないことはもちろん、
「ムカつく」
「腹が立つな」
といった独り言や舌打ちなども控える。
小さな怒りがきっかけで大きなトラブルに発展する事態になりかねない。
前頭葉が活発に動き出すまでの6秒間は、
相手の機嫌を損ねない、これらのアクションにとどめておこう。
柿木さんは
「最近の脳科学研究では、
怒りなどのネガティブな感情は、他のことに意識を向けると軽くなることが明らかになっています。
つまり、大切なのは怒りから意識を遠ざける努力をすることです。
例えば、相手にわからないように、自分の手や足をつねって、痛覚を刺激するといったことをするだけでも効果があります」とアドバイスする。
◇ ◇ ◇
8月2日公開の後編では、
人間の脳で分泌される神経伝達物質や脳内ホルモンなどの「脳内物質」の観点から、
「怒り」の対処法を探っていく。
柿木隆介(かきぎ・りゅうすけ)さん
自然科学研究機構 生理学研究所教授
1978年、九州大学医学部卒業後、
同大学医学部付属病院(内科、神経内科)、
佐賀医科大学内科に勤務。
1983〜85年、ロンドン大学医学部留学、1
993年より岡崎国立共同研究機構生理学研究所(現、自然科学研究機構)教授。
日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。
専門は神経科学。
著書に『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、
『記憶力の脳科学』(大和書房)など。
2019年05月31日
「怒り」は、人類が生き残るための本能だった
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
「怒り」は、人類が生き残るための本能だった
柿木さんは、「人間が怒りの感情を持つのは当然のことなのです」と話す。
「怒りという感情は、
目の前の敵に対して、襲いかかるか逃げるかをカラダに実行させるために発生するものです。
つまり、生存するためには欠かせないものなのです。
怒りの発生自体を防ぐことはできません」(柿木さん)。
地球の長い歴史のなかで、人間が敵から身を守り、淘汰されずに生き延びるためには、
大脳辺縁系に生じる怒りの感情は不可欠なものだったのだ。
ところが文明が発達するにつれ、そうした本能に近い感情を抑えることが必要になりはじめた。
現代の私たちの生活においても、
「怒りたいことがあっても、仕事で成果を出すためには我慢しよう」
「顔を合わせたくない相手だけれど、人間関係でトラブルを起こさないためにも会うしかない」
というように、感情をコントロールしなくてはならない状況が増えている。
つまり、私たちの脳は、もともと備わっている「怒り」を、「理性」や「知性」で抑える働きをしている。
生きていくために必要な感情を、人間らしく生きるためにコントロールしているという状態なのだ。
前頭葉は怒りにすぐに対応できない!
怒りという感情が発生するのは自然なことで、それ自体を防ぐことは難しいということはわかった。
その一方で、感情をコントロールする部位である前頭葉が怒りの感情をコントロールしている。
では、実際に私たちが怒りの感情を持ったとき、
脳科学の観点から見ると、どのようなアプローチができるのだろうか。
「前頭葉は常に感情をコントロールする役割を果たしているのですが、
実は、突発的に発生する怒りの感情には、すぐに対応できないのです。
急には対応することはできないものの、実は『少し我慢している』と活動を始める、
つまり、怒りの発生と理性の発動には時間的なズレがあるのです。
ですから『ちょっと待つ』ことが、怒りを抑える最大のポイントになるのです」(柿木さん)
では、前頭葉が動き出して、怒りを抑えるのにどのくらいの時間がかかるのだろうか。
柿木さんによると、
「科学的に明確に定義することはできないのですが、
前頭葉が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3〜5秒程度と考えられます」という。
前回の記事で、とっさの怒りを鎮める対処方法に「6秒待つ」という方法を紹介したが、
これには「脳のメカニズム」が関係していたわけだ。
衝動に任せて怒ると取り返しのつかなくなる言動を誘発してしまうことは多いもの。
それを防ぐためにも、カチンとくる出来事があっても「6秒間は待つ」姿勢が大切なわけだ。
「『イラッ』『ムカッ』としたときは、まずは6秒待ちましょう。
前頭葉が自然に活性化するまでの間、うまく時間稼ぎをしよう、というアプローチです」(柿木さん)
「怒り」は、人類が生き残るための本能だった
柿木さんは、「人間が怒りの感情を持つのは当然のことなのです」と話す。
「怒りという感情は、
目の前の敵に対して、襲いかかるか逃げるかをカラダに実行させるために発生するものです。
つまり、生存するためには欠かせないものなのです。
怒りの発生自体を防ぐことはできません」(柿木さん)。
地球の長い歴史のなかで、人間が敵から身を守り、淘汰されずに生き延びるためには、
大脳辺縁系に生じる怒りの感情は不可欠なものだったのだ。
ところが文明が発達するにつれ、そうした本能に近い感情を抑えることが必要になりはじめた。
現代の私たちの生活においても、
「怒りたいことがあっても、仕事で成果を出すためには我慢しよう」
「顔を合わせたくない相手だけれど、人間関係でトラブルを起こさないためにも会うしかない」
というように、感情をコントロールしなくてはならない状況が増えている。
つまり、私たちの脳は、もともと備わっている「怒り」を、「理性」や「知性」で抑える働きをしている。
生きていくために必要な感情を、人間らしく生きるためにコントロールしているという状態なのだ。
前頭葉は怒りにすぐに対応できない!
怒りという感情が発生するのは自然なことで、それ自体を防ぐことは難しいということはわかった。
その一方で、感情をコントロールする部位である前頭葉が怒りの感情をコントロールしている。
では、実際に私たちが怒りの感情を持ったとき、
脳科学の観点から見ると、どのようなアプローチができるのだろうか。
「前頭葉は常に感情をコントロールする役割を果たしているのですが、
実は、突発的に発生する怒りの感情には、すぐに対応できないのです。
急には対応することはできないものの、実は『少し我慢している』と活動を始める、
つまり、怒りの発生と理性の発動には時間的なズレがあるのです。
ですから『ちょっと待つ』ことが、怒りを抑える最大のポイントになるのです」(柿木さん)
では、前頭葉が動き出して、怒りを抑えるのにどのくらいの時間がかかるのだろうか。
柿木さんによると、
「科学的に明確に定義することはできないのですが、
前頭葉が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3〜5秒程度と考えられます」という。
前回の記事で、とっさの怒りを鎮める対処方法に「6秒待つ」という方法を紹介したが、
これには「脳のメカニズム」が関係していたわけだ。
衝動に任せて怒ると取り返しのつかなくなる言動を誘発してしまうことは多いもの。
それを防ぐためにも、カチンとくる出来事があっても「6秒間は待つ」姿勢が大切なわけだ。
「『イラッ』『ムカッ』としたときは、まずは6秒待ちましょう。
前頭葉が自然に活性化するまでの間、うまく時間稼ぎをしよう、というアプローチです」(柿木さん)
2019年05月30日
脳で怒りが発生するメカニズムとは?
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
脳で怒りが発生するメカニズムとは?
柿木さんによると、
「私たちが怒っているときは、脳に変化が起きています。
怒りの感情が生まれるとき、脳の大部分を占める大脳の中でも
『大脳辺縁系』と呼ばれる部分が活発に動きます」という。
「怒り」は脳内の「大脳辺縁系」という感情や本能を司る部分で発生する。
その感情を抑えるのが、理性を司る「前頭葉」だ。
この前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位
まずは、大脳の構造を簡単におさらいしよう。
大脳は、大きく分けると
「大脳新皮質」
「大脳辺縁系」
「脳幹」
という3つの構造で構成されていて、それぞれに役割がある。
表面部分にある大脳新皮質では、
思考や判断といった、私たちがよりよく生きるための「知性」に関することを司る。
大脳の内側にある大脳辺縁系では、
意欲や情緒といった、私たちの本能に近い「感情」に関することを司る。
脳と脊髄を結ぶ脳幹では、
「生命維持」に関することを司る。
怒りの感情が生じるときに関わるのは、大脳新皮質と大脳辺縁系という2つの場所だ。
さらに詳しく見てみよう。
柿木さんは、「怒りをはじめ、不安や恐怖といった、
いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、
大脳辺縁系が活発に動くことがわかっています」と話す。
大脳辺縁系は、サルや犬、うさぎやトカゲのような動物も共通して持っている原始的な部位で、
人間を含めたそれぞれの動物の本能的な行動や感情に関わっている。
たとえば、「怖そうな敵が現れた。
不安だから逃げよう」
「自分の縄張りを侵す者がいる。戦いを挑もう」
といったときには、大脳辺縁系が活性化していることになる。
一方、怒りなどのさまざまな感情をコントロールする機能や
理性的な判断、論理的な思考やコミュニケーションといったことを行うのが、
大脳新皮質のなかにある「前頭葉」と呼ばれる場所。
前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位だ。
たとえば、
「ホラー映画を観て恐怖を感じても、パニック状態にならずに済む」
「膨大な仕事量を前にして不安になっても、『目の前のことからコツコツやっていけばいつかは終わる』と思い直せる」などと、
感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるのは、前頭葉がよく働くせいだと考えられている。
つまり、怒りの感情は、「大脳辺縁系で生じ、それを前頭葉で抑える」という構図となっている。
この2つの部位の働きによって、怒りの感情は引き起こされたり抑制されたりしているのだ。
脳で怒りが発生するメカニズムとは?
柿木さんによると、
「私たちが怒っているときは、脳に変化が起きています。
怒りの感情が生まれるとき、脳の大部分を占める大脳の中でも
『大脳辺縁系』と呼ばれる部分が活発に動きます」という。
「怒り」は脳内の「大脳辺縁系」という感情や本能を司る部分で発生する。
その感情を抑えるのが、理性を司る「前頭葉」だ。
この前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位
まずは、大脳の構造を簡単におさらいしよう。
大脳は、大きく分けると
「大脳新皮質」
「大脳辺縁系」
「脳幹」
という3つの構造で構成されていて、それぞれに役割がある。
表面部分にある大脳新皮質では、
思考や判断といった、私たちがよりよく生きるための「知性」に関することを司る。
大脳の内側にある大脳辺縁系では、
意欲や情緒といった、私たちの本能に近い「感情」に関することを司る。
脳と脊髄を結ぶ脳幹では、
「生命維持」に関することを司る。
怒りの感情が生じるときに関わるのは、大脳新皮質と大脳辺縁系という2つの場所だ。
さらに詳しく見てみよう。
柿木さんは、「怒りをはじめ、不安や恐怖といった、
いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、
大脳辺縁系が活発に動くことがわかっています」と話す。
大脳辺縁系は、サルや犬、うさぎやトカゲのような動物も共通して持っている原始的な部位で、
人間を含めたそれぞれの動物の本能的な行動や感情に関わっている。
たとえば、「怖そうな敵が現れた。
不安だから逃げよう」
「自分の縄張りを侵す者がいる。戦いを挑もう」
といったときには、大脳辺縁系が活性化していることになる。
一方、怒りなどのさまざまな感情をコントロールする機能や
理性的な判断、論理的な思考やコミュニケーションといったことを行うのが、
大脳新皮質のなかにある「前頭葉」と呼ばれる場所。
前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位だ。
たとえば、
「ホラー映画を観て恐怖を感じても、パニック状態にならずに済む」
「膨大な仕事量を前にして不安になっても、『目の前のことからコツコツやっていけばいつかは終わる』と思い直せる」などと、
感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるのは、前頭葉がよく働くせいだと考えられている。
つまり、怒りの感情は、「大脳辺縁系で生じ、それを前頭葉で抑える」という構図となっている。
この2つの部位の働きによって、怒りの感情は引き起こされたり抑制されたりしているのだ。
2019年05月29日
前頭葉は突如発生する「怒りの感情」にすぐに対応できない
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
日経グッデイ 「怒り」との上手な付き合い方
脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ
前頭葉は突如発生する「怒りの感情」にすぐに対応できない
2016/7/29 山口佐知子=ライター
現代社会はストレスがいっぱいだ。
物事が思い通りにいかないとつい怒ってしまい、後で怒った自分に落ち込む。
「こんな悪いサイクルから脱したい」――そう思っている人は多いだろう。
そこで特集では、「怒り」を上手にマネジメントする方法を紹介する。
今回は、ヒトの体と脳の働きを研究している自然科学研究機構生理学研究所の教授で、
医学博士の柿木隆介さんに、怒りと脳の関係について話を聞いていく。
「怒り」は脳でつくられる
「怒り」を感じたとき、脳の中では何が起こっているのだろうか。
そのメカニズムを知り、脳科学の観点から怒りの感情を抑える方法を見ていこう。
私たちが何かにイライラしたり、誰かにカチンときたりしたとき、
「怒り」の感情が生まれるのは「脳」の中だ。
怒りの感情とは、脳の中のどこでどのように発生するのだろうか。
そしてその仕組みを知ることで、脳科学の観点から怒りをコントロールする方法は考えられないだろうか。
特集の後半では、「怒りを感じたとき脳内では何が起こっているのか」のメカニズムを明らかにして、
脳科学の観点から対処法を考えていく。
「脳の仕組みと怒り発生のメカニズムを知ることで、怒りやイライラをを抑えやすくなります。
脳科学の観点から、怒りを抑えたりコントロールするのに適した方法も見えてきます」
そう話してくれたのは、ヒトの体と脳の働きを研究している自然科学研究機構生理学研究所の教授で、
医学博士の柿木隆介さん。
脳研究のトップランナーの1人で、『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)など脳科学の視点から日々の生活に役立つ手法を紹介した本も数多く手掛けている。
「怒りやイライラ、ちょっとしたことで悩むといった感情に対して、『気の持ちようが大切!』といった精神論で語られがちですが、脳やカラダの仕組みから考え、その上でどう行動に移して、考え方を変えて行くべきかが大切です」
柿木隆介さん。
自然科学研究機構 生理学研究所教授。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。専門は神経科学。著書に『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)など。
「人間の脳はとてもよくできていて、理由や理屈がわかると『納得できる』『安心できる」という冷静で知的な機能を持っています。
そして、日々の習慣によって“クセ”が変わっていき、感情を揺さぶられるような出来事に対しても耐性がついていきます。
つまり、トレーニングを積むことで、感情をある程度コントロールできるようになるのです」(柿木さん)
日経グッデイ 「怒り」との上手な付き合い方
脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ
前頭葉は突如発生する「怒りの感情」にすぐに対応できない
2016/7/29 山口佐知子=ライター
現代社会はストレスがいっぱいだ。
物事が思い通りにいかないとつい怒ってしまい、後で怒った自分に落ち込む。
「こんな悪いサイクルから脱したい」――そう思っている人は多いだろう。
そこで特集では、「怒り」を上手にマネジメントする方法を紹介する。
今回は、ヒトの体と脳の働きを研究している自然科学研究機構生理学研究所の教授で、
医学博士の柿木隆介さんに、怒りと脳の関係について話を聞いていく。
「怒り」は脳でつくられる
「怒り」を感じたとき、脳の中では何が起こっているのだろうか。
そのメカニズムを知り、脳科学の観点から怒りの感情を抑える方法を見ていこう。
私たちが何かにイライラしたり、誰かにカチンときたりしたとき、
「怒り」の感情が生まれるのは「脳」の中だ。
怒りの感情とは、脳の中のどこでどのように発生するのだろうか。
そしてその仕組みを知ることで、脳科学の観点から怒りをコントロールする方法は考えられないだろうか。
特集の後半では、「怒りを感じたとき脳内では何が起こっているのか」のメカニズムを明らかにして、
脳科学の観点から対処法を考えていく。
「脳の仕組みと怒り発生のメカニズムを知ることで、怒りやイライラをを抑えやすくなります。
脳科学の観点から、怒りを抑えたりコントロールするのに適した方法も見えてきます」
そう話してくれたのは、ヒトの体と脳の働きを研究している自然科学研究機構生理学研究所の教授で、
医学博士の柿木隆介さん。
脳研究のトップランナーの1人で、『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)など脳科学の視点から日々の生活に役立つ手法を紹介した本も数多く手掛けている。
「怒りやイライラ、ちょっとしたことで悩むといった感情に対して、『気の持ちようが大切!』といった精神論で語られがちですが、脳やカラダの仕組みから考え、その上でどう行動に移して、考え方を変えて行くべきかが大切です」
柿木隆介さん。
自然科学研究機構 生理学研究所教授。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医。専門は神経科学。著書に『どうでもいいことで悩まない技術』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)など。
「人間の脳はとてもよくできていて、理由や理屈がわかると『納得できる』『安心できる」という冷静で知的な機能を持っています。
そして、日々の習慣によって“クセ”が変わっていき、感情を揺さぶられるような出来事に対しても耐性がついていきます。
つまり、トレーニングを積むことで、感情をある程度コントロールできるようになるのです」(柿木さん)
2019年05月28日
脈絡叢Choroid plexusと前脈絡叢動脈AChA,後脈絡叢動脈PChAの発生学
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
脳の進化の過程を考える上で、椎骨動脈と内頸動脈からの血流を受ける場所、脳脊髄液を産生する脈絡叢
に栄養を送る脈絡叢動脈に着目します。
脈絡叢Choroid plexusと前脈絡叢動脈AChA,後脈絡叢動脈PChAの発生学
Copyright(C)2006-2019澤村豊
脈絡叢は神経管の軸に沿って発達する.最初に発生するのは第4脳室内(橋と小脳の間)の脈絡叢であり,引き続いて側脳室内の脈絡叢の形成が続き,最後に間脳の脈絡叢が出現する(6,7).間脳の脈絡叢は最終的に間脳から側脳室内にも伸びていく。
前脈絡叢動脈Anterior choroidal artery (AChA)が栄養するのが側脳室内の脈絡叢であり,後脈絡叢動脈posterior choroidal artery (PChA)が栄養するのが間脳および側脳室脈絡叢である.
第4脳室脈絡叢は前下小脳動脈AICAや後下小脳動脈PICAの脈絡叢枝から栄養される(7).
椎骨動脈VAから成る脳底動脈BAの枝である後脈絡叢動脈PChAと内頸動脈前脈絡叢動脈AChAの分水嶺が間脳、側脳室になる。
前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:以下AchoA)は内頸動脈の最終分枝として後交通動脈分岐よりも末梢側から起始する.
背側に走行し視索の下面で交差した後に,
側頭葉鈎部内側面から迂回槽を通り,
視床枕後方で側脳室下角に入り脈絡叢に達する.
その支配領域は,大脳脚中1/3,扁桃体,鈎,海馬前部,視床下部から視床外側の一部,外側膝状体,内包後脚,淡蒼球内節(大脳辺縁系、大脳基底核及び大脳皮質運動野から伸びる神経線維の通り道)である.
これらのうち,内包後脚はAchoA固有の灌流域であるが,
その他の部分は後交通動脈,後大脳動脈,内頸動脈や中大脳動脈からの分枝との間に吻合が存在する.
【参考文献】
Niche Neuro-Angiology Conference 2017
Choroidal artery
久留米大学医学部 放射線医学講座 田上秀一
文 献
6. Lehtinen MK, Walsh CA. Neurogenesis at the brain-cerebrospinal fluid interface. Annu Rev Cell Dev Biol. 2011; 27:653–679.
7. Damkier HH, Brown PD, Praetorius J. Cerebrospinal fluid secretion by the choroid plexus. Physiol Rev. 2013; 93:1847–1892.
脳の進化の過程を考える上で、椎骨動脈と内頸動脈からの血流を受ける場所、脳脊髄液を産生する脈絡叢
に栄養を送る脈絡叢動脈に着目します。
脈絡叢Choroid plexusと前脈絡叢動脈AChA,後脈絡叢動脈PChAの発生学
Copyright(C)2006-2019澤村豊
脈絡叢は神経管の軸に沿って発達する.最初に発生するのは第4脳室内(橋と小脳の間)の脈絡叢であり,引き続いて側脳室内の脈絡叢の形成が続き,最後に間脳の脈絡叢が出現する(6,7).間脳の脈絡叢は最終的に間脳から側脳室内にも伸びていく。
前脈絡叢動脈Anterior choroidal artery (AChA)が栄養するのが側脳室内の脈絡叢であり,後脈絡叢動脈posterior choroidal artery (PChA)が栄養するのが間脳および側脳室脈絡叢である.
第4脳室脈絡叢は前下小脳動脈AICAや後下小脳動脈PICAの脈絡叢枝から栄養される(7).
椎骨動脈VAから成る脳底動脈BAの枝である後脈絡叢動脈PChAと内頸動脈前脈絡叢動脈AChAの分水嶺が間脳、側脳室になる。
前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:以下AchoA)は内頸動脈の最終分枝として後交通動脈分岐よりも末梢側から起始する.
背側に走行し視索の下面で交差した後に,
側頭葉鈎部内側面から迂回槽を通り,
視床枕後方で側脳室下角に入り脈絡叢に達する.
その支配領域は,大脳脚中1/3,扁桃体,鈎,海馬前部,視床下部から視床外側の一部,外側膝状体,内包後脚,淡蒼球内節(大脳辺縁系、大脳基底核及び大脳皮質運動野から伸びる神経線維の通り道)である.
これらのうち,内包後脚はAchoA固有の灌流域であるが,
その他の部分は後交通動脈,後大脳動脈,内頸動脈や中大脳動脈からの分枝との間に吻合が存在する.
【参考文献】
Niche Neuro-Angiology Conference 2017
Choroidal artery
久留米大学医学部 放射線医学講座 田上秀一
文 献
6. Lehtinen MK, Walsh CA. Neurogenesis at the brain-cerebrospinal fluid interface. Annu Rev Cell Dev Biol. 2011; 27:653–679.
7. Damkier HH, Brown PD, Praetorius J. Cerebrospinal fluid secretion by the choroid plexus. Physiol Rev. 2013; 93:1847–1892.
2019年05月27日
脳脊髄液ってご存知ですか?
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
脳脊髄液ってご存知ですか?
次回の説明のため、お付き合いください。
成人脳では,脳脊髄液
140 ml に対して脳間質液は 280 ml も存在する.
脳間質液の組織動態は,近年,少しずつ解明され,病的状態における意義も考察されるようになった 1)2).
脳には,リンパ組織はないが,細胞間質液は活発に産生され,
脳病変の多くに炎症や免疫反応が関与している.
このような事実から,間質液すなわちリンパ液の排液機構が,
他臓器とことなるシステムで存在すると考えられる.
そして,以下に記述する脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space)が
機能的にリンパ管に相当すると考えられている 1).
脳毛細血管内皮細胞の基底膜と星状膠細胞の間には,血管周皮細胞が散在し,
細動脈レベルになると中膜平滑筋細胞に置換される.
星状膠細胞との間には柔膜(leptomeninges)が介在して
血管内皮細胞基底膜との間に血管周囲腔を形成する 3).
血管周囲腔には,厚さ約 150 nm の基底膜が豊富にあり,
灰白質細胞間隙が約 20 nm,白質線維間隙が約 80 nm であることを考慮すると,
脳代謝産物をふくんだ間質液の流通路としては,充分に機能すると考えられる.
脳表では,軟膜が柔膜に融合し,くも膜下腔では,動脈の外膜を柔膜が被っている 3).
血管周囲腔には,骨髄由来マクロファージに属する血管周囲細胞(perivascular cell)が常在し,
恒常性の維持や免疫担当細胞の役割をする可能性が示唆されている 4).
脳灰白質にアルブミンを微量低速注入すると,
毛細血管基底膜から動脈の血管周囲腔に選択的に分布し,
最終的には頸部リンパ節に到達する 2).
したがって,脳間質液がリンパ節に排出されるという点で,
他臓器のリンパ排液と機能的に相同であり,
脳リンパ排液(brain lymphatic drainage)という概念が成立する 1).
脳リンパ排液の方向と駆動力について考察する際,以下の事実がある.
@脳実質内にトレーサーを注入すると脳脊髄液中よりも,脳底部の動脈周囲により多く集積する.
Aトレーサー分子量の大きさに関係なく,同じ速度で頸部リンパ節に到達する 2).
Bリンパ流は,心拍動がないと発生せず,かつ,血圧と心拍数の増加に依存して早くなる.
Cヒトの βアミロイドタンパク(Aβ)は,毛細血管から脳表の動脈周囲腔に選択的に蓄積し,静脈周囲には存在しない 1).
D脳動脈の拍動流および血管壁の拍動性収縮は,細動脈にいたると減衰し,毛細血管から静脈側の血流は定速流である.
以上の事より,リンパ流の方向は,血流方向とは逆であると推定されている 1).
脳脊髄液は,脈絡叢や脳表の毛細血管から産生される.
吸収路は,脳表の毛細血管,頭蓋内くも膜顆粒,脳神経や脊髄神経周囲静脈洞のくも膜顆粒,嗅神経に沿って頸部リンパ節にいたるリンパ経路などがある.
(参考文献)
髄液と間質液の吸収機序:近年の知見に基づいた新しい仮説(臨床神経 2014;54:1187-1189)
木多 眞也 福井県立病院脳神経外科
文 献
1)Weller RO, Djuanda E, Yow HY, et al. Lymphatic drainage of the brain and the pathophysiology of neurological disease. Acta Neuropathol 2009;117:1-14.
2)Cserr HF, Knopf PM. Cervical lymphatics, the blood-brain barrier and the immunoreactivity of the brain: A new view. Immunol Today 1992;13:507-512.
3)Zhang ET, Inman CB, Weller RO. Interrelationships of the pia mater and the perivascular (Virchow-Robin) spaces in the human cerebrum. J Anat 1990;170:111-123.
4)Kida S, Steart PV, Zhang ET, et al. Perivascular cells act as scavengers in the cerebral perivascular spaces and remain distinct from pericytes, microglia and macrophages. Acta Neuropathol 1993;85:646-652.
脳脊髄液ってご存知ですか?
次回の説明のため、お付き合いください。
成人脳では,脳脊髄液
140 ml に対して脳間質液は 280 ml も存在する.
脳間質液の組織動態は,近年,少しずつ解明され,病的状態における意義も考察されるようになった 1)2).
脳には,リンパ組織はないが,細胞間質液は活発に産生され,
脳病変の多くに炎症や免疫反応が関与している.
このような事実から,間質液すなわちリンパ液の排液機構が,
他臓器とことなるシステムで存在すると考えられる.
そして,以下に記述する脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space)が
機能的にリンパ管に相当すると考えられている 1).
脳毛細血管内皮細胞の基底膜と星状膠細胞の間には,血管周皮細胞が散在し,
細動脈レベルになると中膜平滑筋細胞に置換される.
星状膠細胞との間には柔膜(leptomeninges)が介在して
血管内皮細胞基底膜との間に血管周囲腔を形成する 3).
血管周囲腔には,厚さ約 150 nm の基底膜が豊富にあり,
灰白質細胞間隙が約 20 nm,白質線維間隙が約 80 nm であることを考慮すると,
脳代謝産物をふくんだ間質液の流通路としては,充分に機能すると考えられる.
脳表では,軟膜が柔膜に融合し,くも膜下腔では,動脈の外膜を柔膜が被っている 3).
血管周囲腔には,骨髄由来マクロファージに属する血管周囲細胞(perivascular cell)が常在し,
恒常性の維持や免疫担当細胞の役割をする可能性が示唆されている 4).
脳灰白質にアルブミンを微量低速注入すると,
毛細血管基底膜から動脈の血管周囲腔に選択的に分布し,
最終的には頸部リンパ節に到達する 2).
したがって,脳間質液がリンパ節に排出されるという点で,
他臓器のリンパ排液と機能的に相同であり,
脳リンパ排液(brain lymphatic drainage)という概念が成立する 1).
脳リンパ排液の方向と駆動力について考察する際,以下の事実がある.
@脳実質内にトレーサーを注入すると脳脊髄液中よりも,脳底部の動脈周囲により多く集積する.
Aトレーサー分子量の大きさに関係なく,同じ速度で頸部リンパ節に到達する 2).
Bリンパ流は,心拍動がないと発生せず,かつ,血圧と心拍数の増加に依存して早くなる.
Cヒトの βアミロイドタンパク(Aβ)は,毛細血管から脳表の動脈周囲腔に選択的に蓄積し,静脈周囲には存在しない 1).
D脳動脈の拍動流および血管壁の拍動性収縮は,細動脈にいたると減衰し,毛細血管から静脈側の血流は定速流である.
以上の事より,リンパ流の方向は,血流方向とは逆であると推定されている 1).
脳脊髄液は,脈絡叢や脳表の毛細血管から産生される.
吸収路は,脳表の毛細血管,頭蓋内くも膜顆粒,脳神経や脊髄神経周囲静脈洞のくも膜顆粒,嗅神経に沿って頸部リンパ節にいたるリンパ経路などがある.
(参考文献)
髄液と間質液の吸収機序:近年の知見に基づいた新しい仮説(臨床神経 2014;54:1187-1189)
木多 眞也 福井県立病院脳神経外科
文 献
1)Weller RO, Djuanda E, Yow HY, et al. Lymphatic drainage of the brain and the pathophysiology of neurological disease. Acta Neuropathol 2009;117:1-14.
2)Cserr HF, Knopf PM. Cervical lymphatics, the blood-brain barrier and the immunoreactivity of the brain: A new view. Immunol Today 1992;13:507-512.
3)Zhang ET, Inman CB, Weller RO. Interrelationships of the pia mater and the perivascular (Virchow-Robin) spaces in the human cerebrum. J Anat 1990;170:111-123.
4)Kida S, Steart PV, Zhang ET, et al. Perivascular cells act as scavengers in the cerebral perivascular spaces and remain distinct from pericytes, microglia and macrophages. Acta Neuropathol 1993;85:646-652.
2019年05月26日
今日も、血管のお話です
今日も、血管のお話です
脳実質を栄養する脳血管には
左右一対の内頸動脈internal carotid artery:ICAと
椎骨動脈vertebral artery:VAがある。
このうち大脳には内頸動脈ICAから
一対の前大脳動脈 anterior cerebral artery:ACA 、
中大脳動脈 middle cerebral artery:MCA 、
さらに左右の椎骨動脈が合流して形成される脳底動脈 basilar artery:BA から分岐する一対の後大脳動脈 posterior cerebral artery:PCA が灌流する。
これらの各主幹動脈は脳底部で
両側前大脳動脈間の前交通動脈 anterior communicating artery:AcomA 、
内頸動脈末端部より分岐する後交通動脈 posterior communicating artery:PcomA
の存在により吻合しており、
Willis輪 (circle of Willis )と呼ばれる。
Willis輪の各成分の発達には個体差があり、
特に前・後交通動脈、後大脳動脈近位部や、
前大脳動脈水平部 A1 portion は低形成の場合もある。
これらの各主幹動脈近位部から、
大脳深部灰白質領域に分布する脳底穿通動脈と半球表面に向かう皮質動脈とに分けられる。
これらの主幹動脈や皮質枝は脳血管造影上よく観察される。
前大脳動脈ACAの各分枝は、
一側大脳半球のうち前頭葉、頭頂葉の内側域を灌流し、
中大脳動脈MCAは Sylvius裂を中心に大脳半球外側域を広汎に灌流する。
一方、後大脳動脈PCAは脳幹を回りこんで後方に向かいながら、側頭葉内下面および後頭葉内側域を灌流する。
側頭葉内側域では海馬の大部分も後大脳動脈PCAから栄養される。
進化の過程で古皮質(爬虫類脳)の栄養動脈である、椎骨動脈VAから伸びた脳底動脈BAの最終枝後大脳動脈PCAと
大脳半球の後頭葉を除く、栄養動脈である内頸動脈ICAとの交通枝が後交通動脈PcomA、この動脈に注目したい。
脳実質を栄養する脳血管には
左右一対の内頸動脈internal carotid artery:ICAと
椎骨動脈vertebral artery:VAがある。
このうち大脳には内頸動脈ICAから
一対の前大脳動脈 anterior cerebral artery:ACA 、
中大脳動脈 middle cerebral artery:MCA 、
さらに左右の椎骨動脈が合流して形成される脳底動脈 basilar artery:BA から分岐する一対の後大脳動脈 posterior cerebral artery:PCA が灌流する。
これらの各主幹動脈は脳底部で
両側前大脳動脈間の前交通動脈 anterior communicating artery:AcomA 、
内頸動脈末端部より分岐する後交通動脈 posterior communicating artery:PcomA
の存在により吻合しており、
Willis輪 (circle of Willis )と呼ばれる。
Willis輪の各成分の発達には個体差があり、
特に前・後交通動脈、後大脳動脈近位部や、
前大脳動脈水平部 A1 portion は低形成の場合もある。
これらの各主幹動脈近位部から、
大脳深部灰白質領域に分布する脳底穿通動脈と半球表面に向かう皮質動脈とに分けられる。
これらの主幹動脈や皮質枝は脳血管造影上よく観察される。
前大脳動脈ACAの各分枝は、
一側大脳半球のうち前頭葉、頭頂葉の内側域を灌流し、
中大脳動脈MCAは Sylvius裂を中心に大脳半球外側域を広汎に灌流する。
一方、後大脳動脈PCAは脳幹を回りこんで後方に向かいながら、側頭葉内下面および後頭葉内側域を灌流する。
側頭葉内側域では海馬の大部分も後大脳動脈PCAから栄養される。
進化の過程で古皮質(爬虫類脳)の栄養動脈である、椎骨動脈VAから伸びた脳底動脈BAの最終枝後大脳動脈PCAと
大脳半球の後頭葉を除く、栄養動脈である内頸動脈ICAとの交通枝が後交通動脈PcomA、この動脈に注目したい。
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2019年05月24日
大脳辺縁系
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
大脳辺縁系
大脳は、大きく分けると
「大脳新皮質」
「大脳辺縁系」
「大脳基底核ー脳幹」
という3つの構造で構成されていて、それぞれに役割がある。
「大脳基底核ー脳幹」は『爬虫類脳』:本能的欲求、基本的生命機能
「大脳辺縁系」は『旧哺乳類脳』:情動、感情
「大脳新皮質」は『新哺乳類脳』:創造、理性
表面部分にある大脳新皮質では、思考や判断といった、
私たちがよりよく生きるための「知性」に関することを司る。
大脳の内側にある大脳辺縁系では、意欲や情緒といった、
私たちの本能に近い「感情」に関することを司る。
脳と脊髄を結ぶ脳幹では、「生命維持」に関することを司る。
怒りをはじめ、不安や恐怖といった、
いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、
大脳辺縁系が活発に動く。
大脳辺縁系は、
サルや犬、うさぎやトカゲのような動物も共通して持っている原始的な部位で、
人間を含めたそれぞれの動物の本能的な行動や感情に関わっている。
たとえば、「怖そうな敵が現れた。不安だから逃げよう」
「自分の縄張りを侵す者がいる。戦いを挑もう」といったときには、
大脳辺縁系が活性化している。
一方、怒りなどのさまざまな感情をコントロールする機能や理性的な判断、
論理的な思考やコミュニケーションといったことを行うのが、
大脳新皮質のなかにある「前頭葉」と呼ばれる場所。
前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位だ。
たとえば、
「ホラー映画を観て恐怖を感じても、パニック状態にならずに済む」
「膨大な仕事量を前にして不安になっても、
『目の前のことからコツコツやっていけばいつかは終わる』と思い直せる」などと、
感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるのは、
前頭葉がよく働くせいだと考えられている。
大脳辺縁系
大脳は、大きく分けると
「大脳新皮質」
「大脳辺縁系」
「大脳基底核ー脳幹」
という3つの構造で構成されていて、それぞれに役割がある。
「大脳基底核ー脳幹」は『爬虫類脳』:本能的欲求、基本的生命機能
「大脳辺縁系」は『旧哺乳類脳』:情動、感情
「大脳新皮質」は『新哺乳類脳』:創造、理性
表面部分にある大脳新皮質では、思考や判断といった、
私たちがよりよく生きるための「知性」に関することを司る。
大脳の内側にある大脳辺縁系では、意欲や情緒といった、
私たちの本能に近い「感情」に関することを司る。
脳と脊髄を結ぶ脳幹では、「生命維持」に関することを司る。
怒りをはじめ、不安や恐怖といった、
いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、
大脳辺縁系が活発に動く。
大脳辺縁系は、
サルや犬、うさぎやトカゲのような動物も共通して持っている原始的な部位で、
人間を含めたそれぞれの動物の本能的な行動や感情に関わっている。
たとえば、「怖そうな敵が現れた。不安だから逃げよう」
「自分の縄張りを侵す者がいる。戦いを挑もう」といったときには、
大脳辺縁系が活性化している。
一方、怒りなどのさまざまな感情をコントロールする機能や理性的な判断、
論理的な思考やコミュニケーションといったことを行うのが、
大脳新皮質のなかにある「前頭葉」と呼ばれる場所。
前頭葉は、人間やサルのような高度な動物で発達した部位だ。
たとえば、
「ホラー映画を観て恐怖を感じても、パニック状態にならずに済む」
「膨大な仕事量を前にして不安になっても、
『目の前のことからコツコツやっていけばいつかは終わる』と思い直せる」などと、
感情的な状態から冷静さを取り戻すことができるのは、
前頭葉がよく働くせいだと考えられている。
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2019年05月23日
少し復習
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
少し復習
脳の3層構造
深層(古皮質)は生きている「生存」のための脳幹・脊髄、
中間層(旧皮質)は逞しく生きる「感情」を支える大脳辺縁系、
そして表層(新皮質)は旨く生きていくための思考や創造などの「理性」を支える大脳皮質である。
古皮質は「爬虫類脳」:本能的欲求、基本的生命機能
旧皮質は「旧哺乳類脳」:情動、感情
新皮質は「新哺乳類脳」:創造、理性
進化とともに発達した。
爬虫類の古線条皮質(大脳基底核の原型)と視葉(中脳、上丘に相当する)は眼球運動に関与する(脳神経V、W;動眼、滑車神経)、
これらは視野に入る像がどこにあるのかを認知するシステムであり、
動くもの=餌という認知機能は爬虫類において既に存在しており、
古線条皮質の出力は脳幹を経由して眼球運動や捕食行動を発現させる。
ヒトやサルなど高等な霊長類では大脳皮質が高度に発達し、
その過程で大脳基底核は辺縁系や大脳皮質とも密な線維連絡を持つようになった。
精神機能や高次脳機能の制御にはこれらの線維連絡が重要な役割を持つ。
すなわち脳の進化に伴い、
大脳基底核は脳幹に加えて辺縁系や大脳皮質の活動をも調節するようになり、
情動や繊細な運動機能、そして高次脳機能を制御するようになった。
このことは大脳基底核疾患において運動障害のみならず、
精神障害や高次脳機能障害が誘発されることに反映される。
大脳皮質から送られた情報は基底核を通り、ここで選ばれた情報だけが大脳皮質へ戻る。
大脳基底核は大脳皮質に比べ、進化的に古い脳で、爬虫類脳=古皮質に含まれる。
私たちは無意識に、危険や利益を計算しながら次の取るべき行動を決めている。
この働きを担うのが尾状核で、本能的で素早い反応を司る。
私たちは普段、日々の出来事(エピソード記憶)や、一般的な知識(意味記憶)といった情報を長期で保存するときには大脳皮質に保存する。
一方で、運動の仕方や習慣といった、無意識に行うこと(手続き記憶)については、基底核に保存する。
楽器演奏、運動の仕方といった、”身体で覚える”技術と言われるものは、エピソード記憶や意味記憶とは異なり、無意識のうちに記憶して思い出される「手続き記憶」になる。
無意識の習慣もこの記憶に入る。
楽器演奏、運動の記憶は、大脳皮質の運動野から送られてきて、基底核の『被殻』に保存される。
習慣の記憶は大脳皮質の前頭前野から送られてきて、基底核の『尾状核』に保存される。
少し復習
脳の3層構造
深層(古皮質)は生きている「生存」のための脳幹・脊髄、
中間層(旧皮質)は逞しく生きる「感情」を支える大脳辺縁系、
そして表層(新皮質)は旨く生きていくための思考や創造などの「理性」を支える大脳皮質である。
古皮質は「爬虫類脳」:本能的欲求、基本的生命機能
旧皮質は「旧哺乳類脳」:情動、感情
新皮質は「新哺乳類脳」:創造、理性
進化とともに発達した。
爬虫類の古線条皮質(大脳基底核の原型)と視葉(中脳、上丘に相当する)は眼球運動に関与する(脳神経V、W;動眼、滑車神経)、
これらは視野に入る像がどこにあるのかを認知するシステムであり、
動くもの=餌という認知機能は爬虫類において既に存在しており、
古線条皮質の出力は脳幹を経由して眼球運動や捕食行動を発現させる。
ヒトやサルなど高等な霊長類では大脳皮質が高度に発達し、
その過程で大脳基底核は辺縁系や大脳皮質とも密な線維連絡を持つようになった。
精神機能や高次脳機能の制御にはこれらの線維連絡が重要な役割を持つ。
すなわち脳の進化に伴い、
大脳基底核は脳幹に加えて辺縁系や大脳皮質の活動をも調節するようになり、
情動や繊細な運動機能、そして高次脳機能を制御するようになった。
このことは大脳基底核疾患において運動障害のみならず、
精神障害や高次脳機能障害が誘発されることに反映される。
大脳皮質から送られた情報は基底核を通り、ここで選ばれた情報だけが大脳皮質へ戻る。
大脳基底核は大脳皮質に比べ、進化的に古い脳で、爬虫類脳=古皮質に含まれる。
私たちは無意識に、危険や利益を計算しながら次の取るべき行動を決めている。
この働きを担うのが尾状核で、本能的で素早い反応を司る。
私たちは普段、日々の出来事(エピソード記憶)や、一般的な知識(意味記憶)といった情報を長期で保存するときには大脳皮質に保存する。
一方で、運動の仕方や習慣といった、無意識に行うこと(手続き記憶)については、基底核に保存する。
楽器演奏、運動の仕方といった、”身体で覚える”技術と言われるものは、エピソード記憶や意味記憶とは異なり、無意識のうちに記憶して思い出される「手続き記憶」になる。
無意識の習慣もこの記憶に入る。
楽器演奏、運動の記憶は、大脳皮質の運動野から送られてきて、基底核の『被殻』に保存される。
習慣の記憶は大脳皮質の前頭前野から送られてきて、基底核の『尾状核』に保存される。
2019年05月22日
5;基底核の機能;まとめ
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
5;基底核の機能;まとめ
我々の行動は,認知情報の評価・情動や感情の表出・意欲〜意思の発動・行動計画〜運動プログラム・運動準備・運動遂行という一連のプロセスで発現する.
その際,辺縁系における認知情報の評価付けが重要であり,
その規範として「快・不快」の情報が大きな意味を持つ.
辺縁系で決定される「行動の基準」に基づいて,
前頭連合野では社会的範囲内での行動計画が練られ,
運動関連領域における運動プログラムの作成や運動準備を経て
一次運動野から随意運動の指令が脳幹・脊髄へと送られる.
基底核は,各々の大脳皮質─基底核ループを介して,この一連のプロセスに関与している.
また,基底核─脳幹系は随意運動に随伴する姿勢や筋緊張などの自動的な調節に関与する.
基底核内の神経回路の活動動態は,
これらの大脳皮質や脳幹の機能を適切に発現させるための時間的・空間的な枠組みを与えている.
そして,重要なことは,上記のいずれの過程にも中脳ドーパミン作動系が関与していることである.
複雑な順序運動はこれを反復することにより無意識な手続き運動へと変換され,
この過程には基底核が重要な役割を担う[32].
反対に我々は,通常意識に上らない自動的運動(歩行や筋緊張の調節)を意識的に調節することもできる.
基底核はあたかも,運動の随意性と自動性とを自在に操っているかの様である.
我々は歩きながら様々な思考を巡らせ,新たなプランを練ることができる.
基底核はもはや意識的な制御を必要としなくなった一連の運動制御過程を
皮質下の神経機構に任せてしまうことで,
我々の意識や注意,そして能力を新たな方向へ導く役割(創造への寄与)を担っているのかも知れない.
さらに適切な行動や思考の文脈性の獲得と形成にはドーパミンが深く関与している.
大脳基底核の研究で高名なMarsdenは,基底核の機能を,「学習された運動計画の自動的な実行に関与する」と推定した[41].
基底核疾患の運動障害の背後には,この様な高次脳機能の異常が存在すると考えられる.
【引用文献】
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
旭川医科大学 生理学第二講座 高草木 薫
参考文献
32.Hikosaka O, Nakahara H, Rand MK, Sakai K, Lu X, Nakamura K, Miyachi S & Doya K : Parallel neural
networks for learning sequential procedures. Trends Neurosci 22 : 464― 471, 1999.
41.Marsden CD : The mysterious motor function of the basal ganglia : The Robert Wartenberg Lecture. Neurology 32 : 514― 539, 1982.
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
5;基底核の機能;まとめ
我々の行動は,認知情報の評価・情動や感情の表出・意欲〜意思の発動・行動計画〜運動プログラム・運動準備・運動遂行という一連のプロセスで発現する.
その際,辺縁系における認知情報の評価付けが重要であり,
その規範として「快・不快」の情報が大きな意味を持つ.
辺縁系で決定される「行動の基準」に基づいて,
前頭連合野では社会的範囲内での行動計画が練られ,
運動関連領域における運動プログラムの作成や運動準備を経て
一次運動野から随意運動の指令が脳幹・脊髄へと送られる.
基底核は,各々の大脳皮質─基底核ループを介して,この一連のプロセスに関与している.
また,基底核─脳幹系は随意運動に随伴する姿勢や筋緊張などの自動的な調節に関与する.
基底核内の神経回路の活動動態は,
これらの大脳皮質や脳幹の機能を適切に発現させるための時間的・空間的な枠組みを与えている.
そして,重要なことは,上記のいずれの過程にも中脳ドーパミン作動系が関与していることである.
複雑な順序運動はこれを反復することにより無意識な手続き運動へと変換され,
この過程には基底核が重要な役割を担う[32].
反対に我々は,通常意識に上らない自動的運動(歩行や筋緊張の調節)を意識的に調節することもできる.
基底核はあたかも,運動の随意性と自動性とを自在に操っているかの様である.
我々は歩きながら様々な思考を巡らせ,新たなプランを練ることができる.
基底核はもはや意識的な制御を必要としなくなった一連の運動制御過程を
皮質下の神経機構に任せてしまうことで,
我々の意識や注意,そして能力を新たな方向へ導く役割(創造への寄与)を担っているのかも知れない.
さらに適切な行動や思考の文脈性の獲得と形成にはドーパミンが深く関与している.
大脳基底核の研究で高名なMarsdenは,基底核の機能を,「学習された運動計画の自動的な実行に関与する」と推定した[41].
基底核疾患の運動障害の背後には,この様な高次脳機能の異常が存在すると考えられる.
【引用文献】
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
旭川医科大学 生理学第二講座 高草木 薫
参考文献
32.Hikosaka O, Nakahara H, Rand MK, Sakai K, Lu X, Nakamura K, Miyachi S & Doya K : Parallel neural
networks for learning sequential procedures. Trends Neurosci 22 : 464― 471, 1999.
41.Marsden CD : The mysterious motor function of the basal ganglia : The Robert Wartenberg Lecture. Neurology 32 : 514― 539, 1982.