2019年04月28日
記憶の関連付け
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
連想を生むーニューロン集団C
異なる記憶の関連付けは
私たちが周囲の世界を理解したり体系化したりする上で重要だ
技術革命によって記憶を関連付けるプロセスが明らかになってきた
A.J.シルバ(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)
2つの箱に入れる間隔が5時間程度ならば2つの記憶はほぼ同じニューロン集団に割り当てられた
間隔が7日間になるとニューロンのオーバーラップは見られなかった
記憶の関連付け
2009年、私は記憶の研究に関する原稿の執筆を依頼され、その機を捉えて時間的に離れた記憶がどのように関連付けられるかについての考えを紹介した。
CREBによって特定の記憶がどの細胞に記録されるかが決まる。
つまり「記憶の割り当て」が調整されることから、私はこの過程が個別の記憶を結びつける能力の要であるとする仮説を立てた。
私たちが「割り当てー関連付け仮説」と呼んでいるものだ。
記憶はCREB 濃度が高く活性化されやすいニューロンに割り当てられるので、これらのニューロンは続いて別の記憶も保存しやすい。
2つの記憶の両方を保持するニューロンが多いと、それらの記憶は正式に結びつく。
その結果、どちらか一方の記憶を想起すると、それらのニューロンが活性化され、もう一方の記憶も想起される。
この考えに至った鍵は、2つの記憶が1日以内などの短い間隔で形成された場合、間隔が長い場合よりも関連付けられやすいだろうとの予測だ。
間隔が1日よりもはるかに長いと、2番目の記憶は1番目の記憶が引き起こした細胞の興奮性増大の影響を受けず、別のニューロン集団に保存される。
記憶の関連付けに時間制限があるのは理にかなっている。
1日以内に起こった2つの出来事は、例えば1週間隔で起こった2つの出来事よりも関連している可能性がはるかに高いからだ。
原稿を執筆してアイデアを求めるうちに、私はそれらをどうすれば検証できるかという研究に挑みたくなった。
「割り当てー関連付け仮説」はわかりやすいが、証明する方法は全く湧かなかった。
検証には時を待たねばならなかった。
当時私の研究室にいたカイ(Denise J. Cai)とショーブ(Justin Shobe)がこのプロジェクトに加わると、状況は好転した。
カイはうまい方法を思いついた。
カイはショーブとともに、マウスを同じ日に5時間以内の間隔で2つの箱に入れた。
2つの箱の記憶が関連付けられることを期待したのだ。
そして、2番目の箱でマウスの足に軽度のショックを与えた。
それ以降、マウスは2番目の箱に入れられると、案の定、体をすくませた。
その箱でショックを受けたことを記憶していたからだろう。
ほとんでの捕食者はじっとしている獲物よりも動いている獲物によく気がつくので、身をすくませるのはマウスの恐怖に対する自然な反応だ。
カイトショーブがマウスを最初の箱(ショックを受けていない箱)に入れたとき、重要な結果が観察された。
2つの箱の記憶が関連付けられていれば、マウスは2番目の箱でショックを受けたことを思い出し、ショックが来ることを予想して体をすくませるだろう。
そして、まさしくその通りだった。
一方で、2つの記憶が7日間を隔てて形成された場合、それらが関連付けられる可能性は低いだろうと推測した。
そして実際、2つの箱の記憶がより長い間隔で作られた場合、マウスを最初の箱に再び入れても2番目の箱でショックを受けたことを思い出さず、すくむことはなかった。
一般に、2つの記憶の形成間隔が1日よりもかなり長いと、記憶の関連付けは起こらない。
これらの実験結果にはワクワクしたが、「別々の記憶が時間をおかずに形成された場合、同じ脳領域の重複するニューロン集団に保存される」という、私たちの仮説の基本的な予測を検証するものではなかった。
ニューロンの重複が2つの記憶を関連付け、一方を思い出せばもう一方も思い出すという予測だ。
参考文献:別冊日経サイエンス『最新科学が解き明かす脳と心』
2017年12月16日刊
発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞出版社
連想を生むーニューロン集団C
異なる記憶の関連付けは
私たちが周囲の世界を理解したり体系化したりする上で重要だ
技術革命によって記憶を関連付けるプロセスが明らかになってきた
A.J.シルバ(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)
2つの箱に入れる間隔が5時間程度ならば2つの記憶はほぼ同じニューロン集団に割り当てられた
間隔が7日間になるとニューロンのオーバーラップは見られなかった
記憶の関連付け
2009年、私は記憶の研究に関する原稿の執筆を依頼され、その機を捉えて時間的に離れた記憶がどのように関連付けられるかについての考えを紹介した。
CREBによって特定の記憶がどの細胞に記録されるかが決まる。
つまり「記憶の割り当て」が調整されることから、私はこの過程が個別の記憶を結びつける能力の要であるとする仮説を立てた。
私たちが「割り当てー関連付け仮説」と呼んでいるものだ。
記憶はCREB 濃度が高く活性化されやすいニューロンに割り当てられるので、これらのニューロンは続いて別の記憶も保存しやすい。
2つの記憶の両方を保持するニューロンが多いと、それらの記憶は正式に結びつく。
その結果、どちらか一方の記憶を想起すると、それらのニューロンが活性化され、もう一方の記憶も想起される。
この考えに至った鍵は、2つの記憶が1日以内などの短い間隔で形成された場合、間隔が長い場合よりも関連付けられやすいだろうとの予測だ。
間隔が1日よりもはるかに長いと、2番目の記憶は1番目の記憶が引き起こした細胞の興奮性増大の影響を受けず、別のニューロン集団に保存される。
記憶の関連付けに時間制限があるのは理にかなっている。
1日以内に起こった2つの出来事は、例えば1週間隔で起こった2つの出来事よりも関連している可能性がはるかに高いからだ。
原稿を執筆してアイデアを求めるうちに、私はそれらをどうすれば検証できるかという研究に挑みたくなった。
「割り当てー関連付け仮説」はわかりやすいが、証明する方法は全く湧かなかった。
検証には時を待たねばならなかった。
当時私の研究室にいたカイ(Denise J. Cai)とショーブ(Justin Shobe)がこのプロジェクトに加わると、状況は好転した。
カイはうまい方法を思いついた。
カイはショーブとともに、マウスを同じ日に5時間以内の間隔で2つの箱に入れた。
2つの箱の記憶が関連付けられることを期待したのだ。
そして、2番目の箱でマウスの足に軽度のショックを与えた。
それ以降、マウスは2番目の箱に入れられると、案の定、体をすくませた。
その箱でショックを受けたことを記憶していたからだろう。
ほとんでの捕食者はじっとしている獲物よりも動いている獲物によく気がつくので、身をすくませるのはマウスの恐怖に対する自然な反応だ。
カイトショーブがマウスを最初の箱(ショックを受けていない箱)に入れたとき、重要な結果が観察された。
2つの箱の記憶が関連付けられていれば、マウスは2番目の箱でショックを受けたことを思い出し、ショックが来ることを予想して体をすくませるだろう。
そして、まさしくその通りだった。
一方で、2つの記憶が7日間を隔てて形成された場合、それらが関連付けられる可能性は低いだろうと推測した。
そして実際、2つの箱の記憶がより長い間隔で作られた場合、マウスを最初の箱に再び入れても2番目の箱でショックを受けたことを思い出さず、すくむことはなかった。
一般に、2つの記憶の形成間隔が1日よりもかなり長いと、記憶の関連付けは起こらない。
これらの実験結果にはワクワクしたが、「別々の記憶が時間をおかずに形成された場合、同じ脳領域の重複するニューロン集団に保存される」という、私たちの仮説の基本的な予測を検証するものではなかった。
ニューロンの重複が2つの記憶を関連付け、一方を思い出せばもう一方も思い出すという予測だ。
参考文献:別冊日経サイエンス『最新科学が解き明かす脳と心』
2017年12月16日刊
発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞出版社
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