2019年03月25日
損得勘定の脳科学A
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
損得勘定
損得勘定の脳科学A
人は「損」を「得」より重く判断している
Q1-1とQ1-2では、はじめに獲得する金額が異なる。
この金額がそれぞれの質問における判断基準(参照点)となる。
Q1-1の選択肢AとBは100万円が基準となって「得」と受け取られるのに対して、
Q1-2の選択肢AとBは200万円が基準となって「損」と受け取られるという(参照点依存性)。
身近な例で言えば、値引きされた値札に書かれた、値引き前の値段が「参照点」だ。
値引き前の値段を見せ、値引き後の値段との差を印象付けることで得だと判断させ、購買を促されるというわけだ。
そして、同じ50万円と言う金額であっても、損を得より重く感じるという(損失回避性)。
そのために、多数の人が50万円の獲得(Q1-1のA)を選んだ一方で、50万円の没収(Q1-2のA)を避けたと説明できるのだ。
カーネマン博士らは、損を得よりどれだけ重く感じるかを示す値には人によってバラツキが見られ、その中央値は2.25(損を得より2.25倍重く感じる)だったと報告している。
この値はQ2の回答とも大きなズレはない。
友野教授によれば、限定品やタイムセールに飛びついてしまうのは、機会に対して「損得回避性」が発揮された結果だという。
カーネマン博士の自伝の中で、「損失回避の概念は、おそらく意思決定研究の分野において我々が成し遂げた一番役に立つ貢献だったと思います」と述べている(『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』111ページより)。
また、Q2をアレンジすれば、特性の三つ目としてあげられた「絶対値が大きくなるほど、利得の変化あたりの満足度が下がる性質」も実感できる。
例えば、所持金が数万円の状態から、賞金額の方が没収額より多いコイントスゲームを繰り返し行う場合を考えてみよう。
所持金の少ないうちは、1回分の賞金や没収を大きく感じるだろう。
しかし、所持金がだんだん増えていき、数十万円や数百万円となった暁には、
1回分の賞金や没収を小さく感じるだろう。
身近な例で言えば、多くの新社会人は1万円の昇級に大きな価値を感じるだろうが、
高給取りの重役は1万円の昇級を取るに足らない価値だと感じるだろう。
なぜ、宝くじが当たるかもしれないと思うのか
確率的には滅多に起きないはずの事故や病気が自分の身に起きそうな気がすることはないだろうか。
プロスペクト理論によれば、確率の捉え方にも“癖”があり、私たちの判断を支配しているという。
その“癖”とは、低い確率の物事を起きやすい過大評価する一方で、高い確率の物事を起きにくいと過小評価するというものだ(確率加重関数)。
カーネマン博士らの実験によると、過大評価と過小評価の切り替わる境界は約35%であり、約35%の確率は数字通りに受け止めたという。
この事件結果に基づくと、Q1-1の選択肢Bの「追加の賞金はもらえないか、さらに100万円を獲得するか」というかけで得をする確率は、「50%」でなく実質的に『44%』と過小評価されて感じされていることになる。
そのために、Bの選択肢が避けられやすかったとも説明できるだろう。
また、例えば、1等が当たる実際の確率が1000万分の1程度に過ぎないジャンボ宝くじを多くの人が買い求める理由の一つは、主観によって過大評価された当選確率に引きずられるためだという(続く)。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
損得勘定
損得勘定の脳科学A
人は「損」を「得」より重く判断している
Q1-1とQ1-2では、はじめに獲得する金額が異なる。
この金額がそれぞれの質問における判断基準(参照点)となる。
Q1-1の選択肢AとBは100万円が基準となって「得」と受け取られるのに対して、
Q1-2の選択肢AとBは200万円が基準となって「損」と受け取られるという(参照点依存性)。
身近な例で言えば、値引きされた値札に書かれた、値引き前の値段が「参照点」だ。
値引き前の値段を見せ、値引き後の値段との差を印象付けることで得だと判断させ、購買を促されるというわけだ。
そして、同じ50万円と言う金額であっても、損を得より重く感じるという(損失回避性)。
そのために、多数の人が50万円の獲得(Q1-1のA)を選んだ一方で、50万円の没収(Q1-2のA)を避けたと説明できるのだ。
カーネマン博士らは、損を得よりどれだけ重く感じるかを示す値には人によってバラツキが見られ、その中央値は2.25(損を得より2.25倍重く感じる)だったと報告している。
この値はQ2の回答とも大きなズレはない。
友野教授によれば、限定品やタイムセールに飛びついてしまうのは、機会に対して「損得回避性」が発揮された結果だという。
カーネマン博士の自伝の中で、「損失回避の概念は、おそらく意思決定研究の分野において我々が成し遂げた一番役に立つ貢献だったと思います」と述べている(『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』111ページより)。
また、Q2をアレンジすれば、特性の三つ目としてあげられた「絶対値が大きくなるほど、利得の変化あたりの満足度が下がる性質」も実感できる。
例えば、所持金が数万円の状態から、賞金額の方が没収額より多いコイントスゲームを繰り返し行う場合を考えてみよう。
所持金の少ないうちは、1回分の賞金や没収を大きく感じるだろう。
しかし、所持金がだんだん増えていき、数十万円や数百万円となった暁には、
1回分の賞金や没収を小さく感じるだろう。
身近な例で言えば、多くの新社会人は1万円の昇級に大きな価値を感じるだろうが、
高給取りの重役は1万円の昇級を取るに足らない価値だと感じるだろう。
なぜ、宝くじが当たるかもしれないと思うのか
確率的には滅多に起きないはずの事故や病気が自分の身に起きそうな気がすることはないだろうか。
プロスペクト理論によれば、確率の捉え方にも“癖”があり、私たちの判断を支配しているという。
その“癖”とは、低い確率の物事を起きやすい過大評価する一方で、高い確率の物事を起きにくいと過小評価するというものだ(確率加重関数)。
カーネマン博士らの実験によると、過大評価と過小評価の切り替わる境界は約35%であり、約35%の確率は数字通りに受け止めたという。
この事件結果に基づくと、Q1-1の選択肢Bの「追加の賞金はもらえないか、さらに100万円を獲得するか」というかけで得をする確率は、「50%」でなく実質的に『44%』と過小評価されて感じされていることになる。
そのために、Bの選択肢が避けられやすかったとも説明できるだろう。
また、例えば、1等が当たる実際の確率が1000万分の1程度に過ぎないジャンボ宝くじを多くの人が買い求める理由の一つは、主観によって過大評価された当選確率に引きずられるためだという(続く)。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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