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2023年12月23日

株式編 第17章 株式の心理学と行動ファイナンス:株式の心理的な影響、バイアス、ヒューリスティック、感情コントロール、行動ファイナンスの理論、実践

 株式投資は、単に数字やデータに基づいて行うものではありません。株式投資には、人間の心理や感情が大きく関わっています。株式市場は、多くの投資家の意思決定の集合体であり、その意思決定には、理性だけでなく、非理性な要素も含まれています。このような非理性な要素は、株式市場の動きに影響を与えることがあります。

 この章では、株式投資における心理的な要因やバイアス、ヒューリスティック、感情コントロールなどについて説明します。また、行動ファイナンスの理論や実践についても触れます。

株式の心理的な影響

 株式投資には、様々な心理的な影響があります。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・ハーディング効果
 株式市場の動きに影響を与える大きなニュースや出来事があると、投資家はその影響を過大評価してしまう傾向があります。例えば、戦争やテロ、自然災害などが起こると、株式市場は大きく下落することがありますが、その後、株式市場は回復することが多いです。しかし、投資家はその回復を見越せずに、パニック売りをしてしまうことがあります。

・確証バイアス
 投資家は、自分の持っている株式や投資戦略に対して、自分に都合の良い情報や意見を探してしまう傾向があります。例えば、自分が買った株式が下落したとき、その株式の将来性や業績について、肯定的なニュースや分析を信じてしまうことがあります。逆に、自分が売った株式が上昇したとき、その株式の問題点やリスクについて、否定的なニュースや分析を探してしまうことがあります。

・損切り回避
 投資家は、自分が買った株式が下落したとき、その株式を売って損失を確定させることを嫌がる傾向があります。例えば、自分が1000円で買った株式が800円になったとき、その株式を売って200円の損失を受け入れることができないことがあります。その代わりに、その株式が再び1000円になることを期待して、持ち続けることがあります。しかし、その株式がさらに下落してしまう可能性もあります。

・錯覚相関
 投資家は、株式市場の動きと自分の投資判断との間に、実際には存在しない相関関係を見出そうとする傾向があります。例えば、自分が買った株式が上昇したとき、その株式の業績やニュースと関係なく、自分の直感や運が良かったと思ってしまうことがあります。逆に、自分が売った株式が下落したとき、その株式の業績やニュースと関係なく、自分の分析や知識が正しかったと思ってしまうことがあります。

 これらの心理的な影響は、投資家の判断力やパフォーマンスを低下させることがあります。投資家は、自分の心理や感情に惑わされずに、客観的な事実やデータに基づいて、冷静に投資判断をすることが重要です。

バイアスとヒューリスティック

 投資家は、株式市場の動きや株式の価値について、正確に予測することができないため、様々なバイアスやヒューリスティックに頼ってしまうことがあります。バイアスとは、投資家が持つ偏った思考や判断の傾向のことで、ヒューリスティックとは、投資家が使う簡単な判断のルールや経験則のことです。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・アンカリング
 投資家は、株式の価値について、最初に提示された数字や情報に引きずられてしまう傾向があります。例えば、自分が買った株式の購入価格や、株式の過去の最高値や最低値などが、アンカーとなってしまうことがあります。そのため、株式の現在の価値や将来の価値について、適切に判断できないことがあります。

・帰属バイアス
 投資家は、株式市場の動きや株式の価格変動について、内的な要因や外的な要因に偏った帰属をしてしまう傾向があります。例えば、自分が買った株式が上昇したとき、その原因を自分の能力や努力に帰属させることがあります。逆に、自分が買った株式が下落したとき、その原因を市場の状況や他の投資家の行動に帰属させることがあります。このように、投資家は、自分に都合の良い方向に帰属をすることで、自分の自信や満足感を保とうとすることがあります。

・代表性ヒューリスティック
 投資家は、株式の価値や将来性について、過去のパターンや類似性に基づいて、簡単に判断してしまう傾向があります。例えば、自分が買った株式が、過去に高い成長率を示した株式に似ていると思うと、その株式も高い成長率を維持すると期待してしまうことがあります。逆に、自分が売った株式が、過去に低い成長率を示した株式に似ていると思うと、その株式も低い成長率を維持すると予測してしまうことがあります。しかし、過去のパターンや類似性は、必ずしも未来のパフォーマンスを反映するとは限りません。

 これらのバイアスやヒューリスティックは、投資家の判断力やパフォーマンスを低下させることがあります。投資家は、自分の直感や経験に頼るのではなく、株式の価値や将来性について、論理的に分析することが重要です。

感情コントロール

 株式投資には、様々な感情が伴います。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・欲
 投資家は、株式市場で利益を得ることに対して、強い欲望を持つことがあります。例えば、自分が買った株式が上昇したとき、さらに上昇することを期待して、売らずに持ち続けることがあります。しかし、その株式が急に下落してしまう可能性もあります。

・恐怖
 投資家は、株式市場で損失を被ることに対して、強い恐怖を感じることがあります。例えば、自分が買った株式が下落したとき、さらに下落することを恐れて、慌てて売ってしまうことがあります。しかし、その株式が回復する可能性もあります。

・自信過剰
 投資家は、自分の投資判断や能力に対して、過度に自信を持つことがあります。例えば、自分が買った株式が上昇したとき、自分の判断が正しかったと思い込んで、同じような株式を買い増すことがあります。しかし、その株式が下落する可能性もあります。

 これらの感情は、投資家の判断力やパフォーマンスを低下させることがあります。投資家は、自分の感情に振り回されずに、冷静に投資判断をすることが重要です。

行動ファイナンスの理論と実践

 行動ファイナンスとは、心理学や社会学などの知見を用いて、投資家の行動や株式市場の動きを分析する学問分野です。行動ファイナンスは、株式市場が完全に効率的であるという伝統的なファイナンスの仮定に疑問を投げかけ、株式市場には非効率性やバブル、クラッシュなどの現象が存在すると主張します。行動ファイナンスは、投資家の心理的な要因やバイアス、ヒューリスティック、感情コントロールなどを考慮に入れて、株式市場の動きや株式の価値を説明しようとします。

 行動ファイナンスの理論は、投資家にとって有用な知識やツールを提供します。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・株式市場のアノマリー
 株式市場には、伝統的なファイナンスの理論では説明できない現象やパターンが存在します。例えば、株式の価格は、月曜日に下落しやすく、金曜日に上昇しやすいという週末効果や、株式の価格は、1月に上昇しやすいという1月効果などがあります。これらのアノマリーは、投資家の心理や行動に関係していると考えられます。投資家は、これらのアノマリーを利用して、自分の投資戦略を改善することができます。

・行動ポートフォリオ理論
 行動ポートフォリオ理論とは、投資家が自分の資産を複数の層に分けて、それぞれの層に対して異なる目標やリスク許容度を持つという考え方です。例えば、投資家は、自分の資産の一部を安全な層として、低リスクで低リターンの資産に投資し、自分の生活費や将来のニーズを満たすことを目指します。また、投資家は、自分の資産の一部を冒険的な層として、高リスクで高リターンの資産に投資し、自分の欲望や夢を実現することを目指します。行動ポートフォリオ理論は、投資家が自分の心理や感情に合わせて、バランスの取れたポートフォリオを構築することを助けます。

まとめ

 この章では、株式投資における心理的な要因やバイアス、ヒューリスティック、感情コントロールなどについて説明しました。また、行動ファイナンスの理論や実践についても触れました。株式投資は、理性だけでなく、非理性な要素も含まれています。投資家は、自分の心理や感情に惑わされずに、客観的な事実やデータに基づいて、冷静に投資判断をすることが重要です。また、投資家は、行動ファイナンスの知識やツールを利用して、自分の投資戦略やポートフォリオを改善することができます。





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タグ:株式
posted by もぴ at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 株式
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