2024年05月19日
アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える2
2 「田園交響楽」の病跡学
白痴の子供(une idiote)である。口もきかず人の話もわからず、ほとんど動かない。15歳(une quinzaine d’annees)ぐらい 。めくらの娘は、顔立ちは美しく整っているも意思のない塊で完全に無表情である。牧師が握っていた手を離すと異様な呻き声を出す。(Je fus moi-meme tout decontenance par les bizarres gemissements que commenca de pousser la pauvre infirme sitot que ma main abandonna la sienne.11)人間らしからぬ鳴き声は、子犬のようである。
牧師夫妻には、4人の子供がいる。妻アメリーは、連れてきためくらの娘をどうするのか問いただす。神の思し召しゆえに無一文のめくらの娘をほっとくわけにはいかない。
ジェルトリュードの顔は、完全に無表情である(son inexpressivite absolue de son visage.19)。誰かの声が聞こえたり、近づいたりすると、顔つきが硬くなる。無表情でなくなるのは、敵意を示すとき(pour marquer l’hostilite.19)だけで獣のように呻いたり唸ったりした。(Elle commencait a geindre, a grogneromme un animal.19)給仕した皿にも動物のようにガツガツ飛びついた。
ある日から彼女の表情が世紀を帯びてきた。(Tout à coup ses traits s’animèrent.26)天使のような表情(l’expression angélique)である。彼女の額の上に神に捧げるような接吻をした。盲人にも教育はある。点字のアルファベットを覚える。ジェルトリュードは、色彩の問題で色と明るさを混同した。また、音楽会に行く機会があった。(Je pu lui faire entendre un concert.33)音と色彩に関係があるとわかるや否やある種の恍惚から疑惑の色が消えた。
散歩に出かけるといつもそうだが、この時も、彼女は、私たちが立ち止まっている場所の景色を説明してくれるように頼んだ。(Elle me demannda, comme à chaque promenade, de lui décrire l’endroit où nous nous arrêtions. 62)
マルタン医師がジェルトリュードの目を検眼鏡で調べた。手術をすれば見えるようになるという。(Le docteur Martins a longuement examiné les yeus de Fertrude à l’ophtalmoscope. C’est que Gertrude serait opérable.74)ジェルトリュードは、ローザンヌの病院に入院した。20日たたねば退院できない。極度の不安を抱えながら、彼女の帰りを待っている。(Gertrude est entrée hier à la clinique de Lausanne, d’où elle ne doit sortir que dans vingt jours. 91)
花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より
白痴の子供(une idiote)である。口もきかず人の話もわからず、ほとんど動かない。15歳(une quinzaine d’annees)ぐらい 。めくらの娘は、顔立ちは美しく整っているも意思のない塊で完全に無表情である。牧師が握っていた手を離すと異様な呻き声を出す。(Je fus moi-meme tout decontenance par les bizarres gemissements que commenca de pousser la pauvre infirme sitot que ma main abandonna la sienne.11)人間らしからぬ鳴き声は、子犬のようである。
牧師夫妻には、4人の子供がいる。妻アメリーは、連れてきためくらの娘をどうするのか問いただす。神の思し召しゆえに無一文のめくらの娘をほっとくわけにはいかない。
ジェルトリュードの顔は、完全に無表情である(son inexpressivite absolue de son visage.19)。誰かの声が聞こえたり、近づいたりすると、顔つきが硬くなる。無表情でなくなるのは、敵意を示すとき(pour marquer l’hostilite.19)だけで獣のように呻いたり唸ったりした。(Elle commencait a geindre, a grogneromme un animal.19)給仕した皿にも動物のようにガツガツ飛びついた。
ある日から彼女の表情が世紀を帯びてきた。(Tout à coup ses traits s’animèrent.26)天使のような表情(l’expression angélique)である。彼女の額の上に神に捧げるような接吻をした。盲人にも教育はある。点字のアルファベットを覚える。ジェルトリュードは、色彩の問題で色と明るさを混同した。また、音楽会に行く機会があった。(Je pu lui faire entendre un concert.33)音と色彩に関係があるとわかるや否やある種の恍惚から疑惑の色が消えた。
散歩に出かけるといつもそうだが、この時も、彼女は、私たちが立ち止まっている場所の景色を説明してくれるように頼んだ。(Elle me demannda, comme à chaque promenade, de lui décrire l’endroit où nous nous arrêtions. 62)
マルタン医師がジェルトリュードの目を検眼鏡で調べた。手術をすれば見えるようになるという。(Le docteur Martins a longuement examiné les yeus de Fertrude à l’ophtalmoscope. C’est que Gertrude serait opérable.74)ジェルトリュードは、ローザンヌの病院に入院した。20日たたねば退院できない。極度の不安を抱えながら、彼女の帰りを待っている。(Gertrude est entrée hier à la clinique de Lausanne, d’où elle ne doit sortir que dans vingt jours. 91)
花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より
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