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2022年01月29日

モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正16

4 イディオムの構成性

4.1 GPSGのイディオム表記

 これまでのイディオムに関する分析の多くがイディオム内に統語構造は認めるが、その全体の意味が部分の意味からは合成されないとの立場に立っている。* 一方、GPSGは、イディオムの一部に修飾(19)なり量化(20)がかかることを理由として上げ、その部分的な意味にも目を向けた記述法を採用している。*

(19)auf den leibhaftigen Hund kommen.
(20)zweiten Nachwuchs ins leben rufen.
(21)die erste Geige spielen.

(21)のdie erste Geige とspielenは、複合的な語彙翻訳のメカニズムによって、それぞれ2種の内包表現が割り当てられる。* インフォーマルに記すと、前者は、die-erste-Geige‘(第一バイオリンの内包)とdie erste Geige‘‘(音頭の内包)、後者は、spielen‘(弾くの内包)とspielen‘‘(取るの内包)である。これらの内包表現は、他動詞の翻訳をNPタイプの内包からVPタイプの指示対象への部分関数として扱うことにより結びつけられる。

(22)fi(spielen‘(die-erste-Geige‘))=spielen‘‘(die-erste-Geige‘‘)

 ここで、fiは意味上の結合しであり、spielen‘とspielen‘‘の定義域は異なる。しかし、このような部分関数を適用するには、モデル理論に関する若干の修正が必要である。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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