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2019年10月12日

エリアス・カネッティの「マラケシュの声」で執筆脳を考える4

 作家を一種のエキスパートと見なし、共生の読みについても購読同様に何かの分析、直感や知的な直感といえる思弁を経て専門家として脳の活動を想定する。例えば、トーマス・マンのファジィ、ニューラル、エキスパート、魯迅のカオス、ニューラル、エキスパートがその例に当たり、この小論では、カネッティに関し、五感分析、思弁、エキスパートという共生の読みを推奨する。
 ハインリッヒ・ベルの考察(花村2019)の中でも触れたように、本能や情動を司る大脳辺縁系は、記憶の海馬、好き嫌いの扁桃体、やる気の側座核などからなり、臭覚はここで処理されている。その他の五感、視覚、聴覚、味覚、触覚は、大脳の表面にある神経細胞が集まった大脳皮質が管理している。大脳皮質は、思考、判断、創造の前頭葉、刺激を筋肉に送り運動を制御する頭頂葉、記憶の側頭葉、視覚の後頭葉という4つの脳葉がある。
 さらに、機能面の領野として、五感の情報を受け取る感覚野、運動を制御する運動野、大脳各部からの情報を受け取り統合して言語や思考を判断する連合野がある。連合野とは、記憶を蓄積する側頭連合野、感覚や空間認識の情報を処理する頭頂連合野、創造性、やる気、反省、自己顕示欲といった精神活動の前頭連合野である。
 カネッティの作品では文化現象の認識が重要な情報となるため、シナジーのメタファーは、「エリアス・カネッティと直感に基づく思考」にする。
 但し、観察者は、場面で際立つ要因に着目する傾向にある。そのため、記憶だけに頼ると、現象の重要な一側面を忘れることもある。こうしたミスを防ぐために防御策を考える上で以下のような実験を試みる。

花村嘉英(2019)「エリアス・カネッティの『マラケシュの声』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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