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2019年05月07日

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」で執筆脳を考える2

2 時代の背景

 世界大戦後のドイツ文学の特徴は、戦争体験の告白と廃墟からの原点を探究することであった。ハインリッヒ・ベル(1917−1985)の作品は、前者に属し、ドイツ庶民の戦争体験や戦後の苦悩及び困難を一枚の絵のように提示している。ベルは、1917年12月、ケルンに生まれた。
 ベルの父は、国民軍の兵士として橋の見張りをした。戦争を呪っていた。父方の祖先は、カトリック教徒で英国から亡命し、しばらく船大工をしてから田舎で家具職人になった。母方の祖先は農夫で、浪費が激しく貧しかった。 ハインリッヒ・ベルの回想は、ヒンデンブルクの並木道、ライン川の橋での隊列、父の工場のにわかのにおい、通りにあったゲルマンの名前トイトブルク、エブローネン、釜土を愛した母の頭振りなどで、ライン川を離れて暮らすことはなかった。父の仕事は当たった。1兆マルクにもなり、ベルは、棒のキャンディーを食べることができた。
 数年後、同窓の仲間が休み時間に食料を求めてきた。彼らの父親は、失業したからだ。自転車で学校へ行くとき、不安、ストライキ、赤旗で満たされたケルンの街を目にした。数年後、失業者は、就職し、警官、軍人、死刑執行人、軍需産業の仕事をした。強制収容所に残った者もいる。有罪判決を受けた人たちにとって苦痛は総じて大き過ぎた。災いを解読しようと試みたが、公式は見つからない。ことばが後から見つかるからである。

花村嘉英(2005)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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