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2020年04月15日

長谷川博己主演NHK大河ドラマ「麒麟がくる」第十二回放送「十兵衛の嫁」














 令和二年四月五日、午後八時より、NHK総合(地上波)にて、長谷川博己主演大河ドラマ「麒麟がくる」の第十二回が放送されました。
 近江の朽木谷で将軍足利義輝(向井理さん演じる)と対面し、織田・今川の和睦の仲立ちをする約束をとりつけた明智十兵衛(長谷川博己さん演じる)は、明智の庄の館に戻って以来、身内とも他人ともろくに口を利かず、黙々と薪割りなどしていた。
 心の中を占めているのは将軍の言葉。
 「わしは、まだその麒麟を連れてくることは出来ぬ。無念じゃ」
 乱世を憂い、自分は武士としてどうあるべきか悩んでいる様子。
 そんな十兵衛を心配そうに見守るのは母の牧(石川さゆりさん演じる)と叔父の光安(西村まさ彦さん演じる)だった。
 「やはり、こういう時、十兵衛に嫁がおらぬというのは、なにかと不都合でございますなあ」
 「は?」
 「母親には申せぬことも、嫁には漏らすということもございます」
 と、このようなやり取りをしているところへ、光安の嫡男・左馬助(間宮祥太郎さん演じる)がやってくる。光安が呼びつけたようだ。
 「そなた、明日、伝吾たちを連れ、鷹狩りに行くと申していたの」
 「はい」
 「十兵衛も誘ってみたらどうじゃ」
 そうして左馬助が「承知しました」というと、
 「妻木の方にでも足を運んでみたらどうじゃ」と言う。
 光安は、妻木の煕子(木村文乃さん演じる)を十兵衛の嫁に、と考えているのだ。それで、また二人を会わせて、縁談を進めることができれば、と考えている。
 「妻木で鷹狩りは、良いかもしれぬぞ」
 左馬助には、妻木で、と言われても何のことか分からないが、とにかく十兵衛と一緒に鷹狩りに出かけ妻木方面に行くことを承知する。
 そうして場面が変わる。十兵衛は鷹狩りに出たが、また、皆とはぐれ、のどかな場所で一人、馬に井戸の水を飲ませて、自分も水を飲んでいる。
 そこへたまたまなのか、煕子が来て十兵衛に声をかける。
 「ここで何をしておいでです?」
 十兵衛は事情を話す。話しているうちに、この場の空と空気のように澄んだ心、ふんわりとした雰囲気に魅かれる。
 煕子は、これで寒さをしのげます、と、囲炉裏で温めたという温石を渡す。
 そして、館へ来ませんかという誘いを断り別れを言いつつ、「お見送りいたします」という煕子と少し共に歩き出すと、
 「煕子どの、この十兵衛の嫁になりませんか?」
 煕子と向き合い、求婚したのである。
 
 さて、本能寺の変前後の重要人物の一人である明智左馬助がこの回から登場しました。いうまでもなく、光安の嫡男だから十兵衛光秀の従兄弟であります(従兄弟ではない説もある)。
 そして、ついに十兵衛が求婚。現代風におうとプロポーズ。幼いころに「嫁に」といい、相手が覚えていて自分もよく覚えていて、今日ここで出会ったから運命を感じ、求婚したのだという。
 幼いころ「お嫁にもらう」といっておいて、相手が覚えているのに自分が覚えていなかったら、漫画「ドラゴンボール」の孫悟空みたいに相手を激怒させるところだったかもしれません(?)。

 場面かわりまして、織田と今川の和睦の話。
 尾張方面へと出陣した今川義元(片岡愛之助さん演じる)は和睦が成ると軍を返して駿河へと戻った。尾張攻略への重要な拠点を手に入れたので、不満はなかった。
 一方、尾張の末盛城では、織田信秀(高橋克典さん演じる)の病がすすみ、いよいよ重篤な状態となっていた。
 信秀の病床に集まる信長・信勝(木村了さん演じる)兄弟、土田御前(壇れいさん演じる)、重臣たち。
 「わしに万が一のことがあったとき、この末盛城は、信勝に与える」
 信秀の言葉に、信長は不満を鳴らす。
 対今川の為に造られ、信秀が現在住んでいる末盛城こそが織田家にとって最も重要な城だと考え、那古野城はさほど重要ではないと考えたからだ。
 それほど那古野城が重要だと思うなら、なにゆえ父上は那古野城を出てこの城に住まわれたのか、と激しく感情をぶつける信長に、
 「そなたに家督を譲ろうと思うたからじゃ」
 と信秀は言うが、信長は納得しない。
 「納得できません」
 「ならば、出て行け!」
 信長は父の病床から去った。
 少し離れた所では、帰蝶(川口春奈さん演じる)が待っていた。
 「殿、父上様のお話、いかがでございました?」
 信長は部屋に入るなり、「父上はこの城を信勝に与えるそうじゃ。家老の佐久間盛重も、お気に入りの柴田勝家もみな、信勝につけるという。大事なものは全て信勝のものじゃ」
 「それは奇妙でございますね」
 と言う帰蝶に、信長は言う。何故そうなるか、それは母上が信勝ばかりを可愛がり、信勝に家督を継がせようとしている、父上が母上のいいなりだから、云々と。
 そして子供のように泣きじゃくる。
 帰蝶はその場を去り、信秀の病床へ行く。
 そこにはもう誰もいなかった。
 帰蝶は信秀に訊く。この織田家を継ぐのはどちらの子がふさわしいとお考えなのか、と。信長のことをどう思っているのか、真意が知りたい、と。
 信秀は帰蝶の懇願に、耳を寄せないと聞き取れないほどの小さな声で何か言った。
 視聴者にも聞こえぬほどの声だった。
 聞き取ると、帰蝶は信長のもとへ戻った。
 「父上は、何か仰せであったか?」
 「お聴きになりたいですか」
 「やめておこう」
 板敷に寝転がっていた信長は起き上がり、出て行こうとするが、帰蝶は、
 「父上様はこう仰せられました」
 と語り始めた。
 「信長は、わしの若いころに瓜二つじゃ。まるで、己を見ているようじゃ、と。良いところも、悪いところも。それゆえ可愛いと。そう伝えよ、と。最後にこう仰せられました。尾張を任せる。強くなれ、と」 
 聞いた信長は振り返る。帰蝶がほほ笑んだ。駄々っ子のように拗ねていた信長の目に光が戻った。そして満足そうに、自信を取り戻したかのように笑みを浮かべると、その場から去った。
 信長を見送った帰蝶の表情が改まり、腰元に命じた。「東庵先生を呼ばねばならぬ。急ぎ京に使いを出すのじゃ」と。
 実は、病床の信秀が東庵医師(堺正章さん演じる)に会いたがっているということを帰蝶は土田御前から聴き、誰よりも早く呼び寄せることを条件に信秀の真意を聴き出したのだ。
  
 場面かわって京の東庵の家。
 駒(門脇麦さん演じる)たちは大忙しだった。
 丹波國から三好と敵対する勢力が攻め寄せ、戦となり、けが人が多数出たのだ。町衆が巻き添えになり、年寄りや子供たちも怪我を負ったという。
 そこへ以呂波太夫(尾野真千子さん演じる)が訪れた。
 東庵は留守だった。薬代を稼いでくる、と言って公家の九条家へ行ったのだという。
 稼ぐ、というのはこの場合、かけ事をするということ。
 そして東庵は、かけ事に大負けして帰って来た。
 負けたということは、借金を背負ったということ。
 「いくら負けたのですか?」
 「四十貫も!」
 驚く駒。
 駒は早馬で届いたという帰蝶からの手紙を見せる。
 謝礼は望みのまま、と書いてある。
 行く気になる東庵に、以呂波太夫は東庵の借金の肩代わりをしましょうと申し出る。その代わりに、駿河にも足を延ばして行って欲しい、という。懇意にしている駿河の豪商の息子が病弱で、京の名医に来てもらいたいと頼まれている、と。
 駒は、尾張へ行くなら美濃へも寄りたい、と、美濃行きを条件に東庵と同行する。幼いころ自分を助けた美濃の侍が明智家のどなたか、知りたいからというのだ。

 場面かわって稲葉山城。
 斎藤山城守利政(本木雅弘さん演じる)へ、守護・土岐頼芸(尾美としのりさん演じる)からの贈り物があった。
 頼芸が飼っている鷹だった。
 喜ぶ利政だったが、鷹匠が近づき腕を上げると鷹が飛び掛かってきた。
 「!」
 近習の若い侍がかばう。すると、その近習がたちまち苦しみだし、のたうちまわると、間もなく絶命した。鷹の爪に毒が塗られていたのだ。
 
 また場面かわり、明智の庄。
 煕子が嫁入ったことを喜ぶ光安と牧。二人の前には十兵衛と煕子が並んで座っている。
 そこへ左馬助が慌ただしく駆けつける。一大事だ、と。稲葉山から狼煙が上がっているというのだ。
 駆けつけると、利政は十兵衛や高政(伊藤英明さん演じる)、稲葉良通(村田雄浩さん演じる)ら国衆の前で、頼芸から贈られた鷹の爪に毒が塗られ、若者が命を落とした。わしが神のごとく慕っている頼芸さまが、と言い、自分が美濃の為にどれだけ尽くしてきたか力説する。そのような自分を殺そうと謀るならば、もはや守護t仰がぬ、ただの鷹好きのうつけじゃ、と怒りに身を震わせ、討つと宣言する。
 
 一方、尾張では駒が帰蝶との再会を喜ぶ。
 駒は十兵衛が嫁を貰ったとの話を聞く。
 東庵は信秀に会うが、すでにこときれていた。






 
 
 
 

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2020年04月07日

長谷川博己主演NHK大河ドラマ「麒麟がくる」第十一回「将軍の涙」







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 令和二年三月二十九日、午後八時より、NHK総合(地上波)にて、長谷川博己主演NHK大河ドラマ「麒麟が来る」第十一回「将軍の涙」が放送されました。
 尾張の織田信秀(高橋克典さん演じる)の側室の子・信広(佐野泰臣さん演じる)と、松平竹千代(岩田琉聖さん演じる)との人質交換が成立し、信広は織田方に戻り、竹千代は今川氏の本拠・駿河府中の館へ送られることとなりました。
 織田信秀は家老の平手政秀(上杉祥三さん演じる)に「信広は無傷であったそうじゃな」と、息子の様子について確認する。
 「城を失うた主ならば、せめて満身創痍で帰ってくるべきものを!」
 と嘆く。戦乱の世の城主という者はそういうもので、勝って無傷ならば良いが、城を獲られて自らも捕らわれの身となったというのに無傷ということは、命がけで戦っていないということ。まともに戦えず、抵抗らしき抵抗もできず捕らわれたことの証明になってしまうs。それでは家臣たちに示しがつかぬ。
 「ふがいない!」
 弓の稽古中だった信秀は力いっぱい弓を引こうとするが、病気のため、満足にひけない。
 「信広はあのザマで、信長も何を考えておるのかさっぱり分からぬ。信勝はまだ若い。子たちが頼りにならず、わしがこのようなありさまでは、今川にいま戦を仕掛けられては勝ち目がない」
 信秀は口惜しさと不安・焦燥を口にする。

 場面かわって駿河の府中、今川氏の居館。
 竹千代は今川義元(片岡愛之助さん演じる)と対面している。
 義元は竹千代に声をかける。
 「竹千代どの、ようまいられた。途中、そなたが生まれ育った岡崎へ寄ったそうじゃな。さぞ、なつかしかったであろう」
 「なにもかもなつかしく、夢をみている心地がいたしました」
 利発そうな竹千代の返答に、義元は笑みを浮かべ、
 「ははは。よしよし。この駿府でも、よい夢を見るがよい。あとで案内させるが、ここには美しき寺や庭や森が数多ある。大きな市もあり、諸国から集められた珍しき品々がそなたの目を楽しませてくれよう」
 そして腰元たちに御馳走をならべさせる。
 「わたしは、三河へ、いつ帰していただけるのでしょう」
 御馳走を目の前にしても、竹千代は不安げな様子。
 今川の軍師・太原雪斎(伊吹吾郎さん演じる)は三河国が今川派と織田派に分かれていることを説明し、このままでは三河は滅びる、我等(今川氏)は隣国として(間に遠江国があるのだが)見るに忍びないので三河の為に織田討伐の軍を起こす、という意味のことを言う。
 そして義元も「もう少しの辛抱じゃ」と竹千代に言う。
これは国によって、人によって、正義は違う、ということをよく表しているシーンです。
 竹千代の祖父・松平清康がかつて織田信秀と戦おうとしたとき、陣中で暗殺された。家臣に不意をいたれ殺されたということだが、信秀の謀略によるものという説が有力です。
 そのとき広忠はまだ幼く、松平家で内紛が起こりそうになった。幼い跡継ぎをたてるのではなく、一族の誰かが当主とならぬ、となれば、誰なのか。我がと野望を抱くものもいる。松平家は崩壊の危機に直面した。広忠は他国に逃れ、今川を頼った。やがて成長し、水野家の娘(竹千代の生母の於大の方)をめとり、竹千代が生まれた。
 このような事情があり、松平家にとっては今川家に恩義があり、織田家は仇敵だったのだ。
 で、恩義にあった今川家には頭があがらず、今川家から「竹千代を人質に差し出せ」と言われたらことわれなかった。
 それで、竹千代を駿河に送ろうとしたところ、またしても信秀の謀略により、身内の者が裏切り、竹千代が信秀のもとに送られてしまった。
 これが人質交換の背景です。
 だから今川が信秀を「悪」とするのは当然のことなのです。しかも足利将軍の縁戚(先祖でつながっている)にあたる名家の今川と、守護大名でもない織田家では家の「格」が違う。今川家からすれば、守護でもないのに今川家と対立し、敵対関係が長く続いている織田家は「悪」そのものなのでしょう。
 一方、竹千代からすれば、故郷の三河が今川に属国扱いされ、自分は城に戻れない。母にも会えない(戻れたところで簡単に会えるわけではないが)。人質生活から解放されたいと強く願うわけです。

 さて、今度は美濃の稲葉山城内に場面がかわります。
 人質交換が行われたものの、それは両者の和睦を意味するものではなかった。今川方は攻勢を強め、知多半島を攻め、半島の大半を制圧した。
 国境をおびやかされただけでなく知多半島まで制圧され、熱田付近まで敵の勢力範囲となった織田の劣勢は、当然のごとく美濃にも伝わった。
 稲葉山場内では評定がひらかれていた。
 同盟を結んでいる織田の為に援軍を送りたい利政(本木雅弘さん演じる)だったが、息子の高政(伊藤英明さん演じる)や国衆の最有力者・稲葉良通(村田雄浩さん演じる)は、「だから言わんこっちゃない。織田との同盟には反対だったんだ」とでも言いたげな口ぶり。国衆たちは、稲刈りが忙しくて兵は出せぬ、とまで言う。そして、美濃を守るためなら戦えるが織田の為には戦えぬ、と。
 評定が終わり、利政は明智光安(西村まさ彦さん演じる)に「織田がこれほど弱いとは」と漏らす。尾張からは織田信秀の家老・平手政秀(上杉祥三さん演じる)からの使者がきている。もちろん援軍要請だ。利政は、平手が信長のもり役(教育係)であることと、明智十兵衛(長谷川博己さん演じる)が信長と会っていることを思い出し、十兵衛を尾張への使者とすることを決める。
 援軍は出せない。丁重に断るための使者は十兵衛がちょうどよい。もし平手がその返事で不服ならば、「盟約を破棄して今川に乗り換えるまでじゃ」と利政は言った。

 場面かわって、二人の従者を連れた十兵衛が那古野城の門前に姿を現す。
 「稲葉山城城主・斎藤山城守の使い、明智十兵衛でござる。開門を願う!」
 そのころ、場内では信長(染谷将太さん演じる)が相撲に興じていた。
 「知多では戦をしておるというのに、相撲とは!」
 平手は嘆く。
 帰蝶(川口春奈さん演じる)のいる間に通された十兵衛は平手に尋ねられる。「若殿(信長)とは一度お会いになられたと伺いしましたが、その折は、どのようなお話をなさりましたか?」
 鉄砲の話をしたのみにて、と答える十兵衛に、平手は、今川とどう戦うというようなお話はなさらなかったので? と聞くが、そのような話は無かったと知り、しかも十兵衛から「美濃は援軍を出せぬ」との利政の言葉を聞かされ、落胆と失望と憤慨の入り混じった表情を見せる。
 その複雑な感情のまま平手はその場にいた帰蝶に視線を移す。帰蝶としても立場がない。
 「わたしも先ほどこの話を聞いたばかりにて、なさけなきことこの上なきかと」と恐縮する。
 平手が去り、二人きりになると、
 「わたしはもう、美濃へ帰るべきか」
 と帰蝶は言う。
 「お帰りになりたいのですか。たとえそうであっても、織田家は帰しませぬぞ」
 「そうであったな。わたしは人質ゆえ、父上が裏切れば、磔じゃ」
 帰蝶は苦悩をにじませ言う。
 十兵衛は、なんとかならぬかと思案する。
 そのように帰蝶と話しているところへ信長が入って来た。
 十兵衛が平伏すると、「楽にせよ」と信長は言う。
 「平手から聞いた。美濃のことは分かった」
 「面目しだいもございません」
 「しかたあるまい」
 そして地図を開きながら、国境の情勢について信長が十兵衛に語った。刈谷城の水野がなかなかの強者(つわもの)で、今川勢を何とか食い止めて「あと三月は守ってみせる」と言っているとのこと。その間になんとかしたい、と。
 それから信長は十兵衛を前にしながらごろんと横になり、帰蝶の膝に自分の頭を乗せ「ひざまくら」の格好になり、帰蝶の頬から耳を触る。帰蝶もされるがままになり、恥ずかしがるとか嫌がる様子もない。
 同盟者とはいえ他国の家臣の前で。いかにも信長らしいシーンです。そしていかにも新婚夫婦(じっさい数年経過しているが)らしいシーンでもあります。
 で、信長はおもむろに「和議じゃな」と言います。
 「刈谷城を渡すゆえ、戦はこれまでにしてくれと今川に手を止めさせる他あるまい」
 「それが、できましょうか」
 「やるしかない。わしは村の者暴れ者どものけんかを何度も仲立ちしてきた。強いほうの顔を立ててやればよいのじゃ」
 村人の仲裁の実績を自慢気に言う。そんな信長に帰蝶が「誰が仲立ちを?」
 と訊くと、「それがわからん」
 十兵衛は思案する。そして、以前、美濃の守護家の内紛で土岐頼芸と頼純が激しく争い、京の将軍家の仲立ちで収まった、という話を持ち出す。
 「それだ」
 信長も、いい案だと納得するが、さて、将軍家が守護でもない織田家の為に動いてくれるか、と問題点が生じ、どうするか考える。
 「十兵衛」
 帰蝶が口を開いた。
 「そなた、京へ行った折、将軍のそばに仕える者とよしみを結んだと申していたではないか」
 「は」
 「それを頼ってみてはどうじゃ」
 この提案に、信長は身を起こし「なるほど!」と表情を明るくする。
 「ここは思案のしどころぞ」
 「帰蝶の為にも、よくよく思案いたせ」
 夫婦そろって言われ、十兵衛は「いや、しかし」と言いつつも、断れなくなった。

 十兵衛は帰城し、将軍家にとりなしを頼む件を利政に話すが、利政は「金がかかるぞ」と言い、将軍家へ金を出すことを渋る。
 「しかし」という十兵衛に「やりたければ勝手にやれ!」と言い、にべもない態度。十兵衛は次に、高政に会い、土岐頼芸(尾美としのりさん演じる)に会わせてくれと頼む。
 守護職の土岐頼芸ならば将軍家に直接頼める。お金も出せる、というわけだ。
 なんで勝手に織田と同盟を結んだ父の為に、と渋る高政に、十兵衛は、今後そなたの言うことは何でも聞くから、と条件を付けて頼み込む。「なんでも言うことを聞く」という言葉に反応した高政は、きっとだな? と念を押し、十兵衛をともない土岐頼芸のもとへ行く。
 頼芸は利政を嫌い、かつ恐れている。当然のように、将軍家への仲立ちの為の依頼を渋る。そればかりか、利政はわしを美濃から追い出そうとしておる、と、猜疑心を露わにした。
 すると、高政が、そのようなこと(利政が頼芸を追放する)があれば私は父・利政を倒す、と言った。それで頼芸は将軍家への手紙を書くことにした。しかも、金も出すという。
 そのようにして、やっとのことで十兵衛は京へ向かうこととなったが、京では管領・細川家の内紛が起こり、京の町は三好長慶(山路和弘さん演じる)の兵で充満。将軍家とその近臣たちは近江の朽木谷に逃れていた。
 近江の宿場町では多くの旅人が足止めをくらっていた。
 十兵衛が宿に入り、一晩泊めてもらいたい、と主に言っても、無理だ、と断られる。
 朽木谷に行こうにも、その途中も兵が充満していて通れないとのこと。
 十兵衛が途方に暮れていると、いきなり横から声をかけられた。
 十兵衛には、最初は誰だか分らなかったが、それは細川藤孝(眞島秀和さん演じる)だった。
 十兵衛は細川藤孝の案内で、間道を通り、無事に朽木谷の、将軍・足利義輝(向井理さん演じる)がいる館に到着する。
 将軍足利義輝は十兵衛のことをよく覚えていた。
 「明智十兵衛、面を上げよ」
 「はっ」
 「そなたに会うのは三度目じゃ」
 「はっ」
 「一度は本能寺の門前。そなたは、藤孝と斬り結んでおった。 見事な腕前じゃと感じ入った」
 「は」
 「二度目は藤英の館で声を聴いた。そなたは、藤英にこう申していた。『わたしが幼き頃、父から教わったのは、将軍は武家の棟梁であらせられるということ。武士を一つにまとめ、世を平らかに治めるお方である、と』。さらにこう申した。『今、世は平らかでありませぬ。将軍の御膝元で、将軍の御家臣同士が争われている。それに目をふさぎ、背を向けて、関わりなしとされて、それでは世は平らかにならない。将軍が一言お命じにならねば。争うな、と』。それを聴き、わしがどれほど励まされたかわかるか」(以下略)
 このように、一言一句覚えていたのだ。
 「畏れ多きことにございます」
 「わが父、義晴は、おのが病弱ゆえ、わしが幼きころより、噛んで含めるように仰であった。『強い子になれ、声は大きく、よい耳を持ち、よく学べ。さすれば、立派な征夷大将軍となろう。世を平らかにできよう。さすれば、麒麟がくる。この世に麒麟が舞い降りる』と」
 十兵衛は驚いた。「麒麟がくる」とは、駒の思い出話の中にあった言葉だからだ。
 「わしは、その麒麟を連れてくることが出来ぬ。無念じゃ!」
 将軍は、その言葉通り、無念さを滲ませて言い、涙を浮かべた。そして、和議の仲介を承知したのだった。
 
 さて、この大河ドラマのタイトルそのものの言葉が将軍の口から出ました。穏やかな世を誰がもたらすのか?
 将軍の口から出たことが大きいです。十兵衛は将軍による支配体制の秩序の為に働くようになります。将来の十兵衛の働きを示しているようです。そして、今回の放送で信長と帰蝶にも振り回されるというか、動かされたわけです。これも将来を暗示しているのでしょう。














  

2020年04月05日

長谷川博己主演NHK大河ドラマ「麒麟がくる」第十回「ひとりぼっちの若君」

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 令和二年三月二十二日、午後八時より、NHK総合(地上波)にて長谷川博己主演大河ドラマ「麒麟がくる」の第十回、「ひとりぼっちの若君」が放送されました。
 京の名医といわれる東庵(堺正章さん演じる)のもとで働く駒(門脇麦さん演じる)は、美濃から京に戻って以来、患者の前であっても心ここにあらず、仕事が手につかない状態でした。
 明智十兵衛(長谷川博己さん演じる)のことが好きで、身分に違いがあるということは分かっていても、十兵衛を一人の男として慕う気持ちは捨てられません。
 けれどもその男の心の中心に自分はいない。好きな相手は自分のほかにいる。そのことを知ってしまった。
 十兵衛から直接「そなたのことは好きではない」とか「なんとも思っていない」と言われたわけではない。十兵衛としても「好きか嫌いか」でいえば駒のことは好きだろう。でも駒は十兵衛に「ふられた」気分だ。
 惚れた相手の心の中心に自分はいない。自分と相手が相思相愛になることはまず無いと思う。それだけで辛い。自分が深く想っているほど、相手は自分のことを想っていない。それは空しく、悲しくなることです。
 駒もそういう気持ちなのでしょう。
 放心状態のようになった駒は、仕事を放り出して町に出ます。あても無く歩いていると、旅芸人一座のにぎやかな声が聞こえてきました。
 以呂波太夫(尾野真千子さん演じる)の一座でした。
 かつて駒は先代の以呂波太夫の一座に育てられました。幼いころ、戦で焼け出され、孤児になったとき、或る侍に助けられ、一座に預けられ、そのまま一座で育てられたのです。
 いまの以呂波太夫は駒を育てた先代の娘でした。先代亡き後、座長となって東は常陸から西は薩摩まで旅をしており、京に戻ってきたのでした。
 駒は何かに導かれるように歩き、一座の者が芸を披露するための準備を整えている中に入ります。そして、綱渡りの綱を見つけます。
 駒はかつて、先代に芸を仕込まれていたのです。
 誰に命じられたわけでもなく、無意識のうちに(?)扇子を両手に持って綱渡りを始め、「はいっ!」と声を発して綱の上で後方宙返りをして無事に綱の上に立つ。
 見ていた者たちは拍手喝采。
 そして以呂波太夫と再会を果たします。
 以呂波太夫は東庵に、「(駒は)このところずっと元気がない。美濃から帰っきて、ずっとあんな調子だ」と言われ、駒の悩み事を聴こうとします。
 お団子を食べに外に誘い、団子屋の前で話しながら駒に言います。「先代の母は、こう言ったんだよ『これからは、この子を妹だと思いなさい。この子が悲しいときは一緒に泣いておやり』って」
 「そんなことを先代が……」
 「でもお駒ちゃん、ガマン強くて、めったに泣かないの。一座に芸を仕込まれ、何度綱渡りをしくじっても、涙ひとつこぼしやしない。なーんだ、いいお姉さんになりそこねたって、ガッカリして」
 そうやって思い出話を語り合いながら、ふと、話題を変えるかのような調子で太夫は言います。
 「ねえ、東庵先生が案じておいでだよ」
 そうやって駒の悩みを聞き出します。
 「好きなお方が……、遠くへ……」
 「そうか……。手の届かぬお方だったのね」
 二人で空を見つめます。
 「世の中はね、辛いこともあれば、必ずいいこともあるものよ」
 太夫が言いました。
 「辛いことだけだったの?」
 「いいこと……。ひとつだけいいことがありました」
 駒は、自分の命の恩人がどうやら美濃の人だということが分かった、それがいいことだった、と言います。
 この駒の言葉に対して、太夫は「それだったらもう、分かったようなものね」と言い、そのお侍の着物には桔梗の紋があったの、と語ります。
 駒は驚きました。桔梗の紋をいえば、明智家の紋です。

 この場面、なかなか良いです。
 あなたは妹同然だから悩み事があれば何でも言ってごらんと、優しく駒の悩みを聞き出し慰めようとする以呂波太夫。人のやさしさを感じる、良いやりとりです。

 さて、場面が変わり、駿河の今川と尾張の織田の間で戦があったことを地図とナレーション(市川海老蔵さんの声)で伝えます。
 今川が織田信秀の長男・信広(佐野泰臣さん演じる)が守る安城城を攻め、信広を人質としました。信広は信秀の長男ですが側室の子なので庶子扱いです。跡継ぎとはみなされません。
 それでも信秀にとって大事な子には違いない。今川方は人質交換を織田方に持ち掛けます。信広と松平竹千代(岩田琉聖さん演じる)を交換しないかと。
 今川にとっては、三河を掌握するために松平家の跡継ぎ・竹千代の方が必要なのです。竹千代を駿河の府中の館にとどめて人質としておけば、三河の者は今川に逆らえない。今川の言いなりになるしかないのだ。
 場面は、まず、美濃の稲葉山城。斎藤利政(本木雅弘さん演じる)は明智光安(西村まさ彦さん演じる)と明智十兵衛を招きました。そして安城城の攻防と人質交換のことを話し、今川を虎、織田を猫にたとえます。三河全土を掌握されたら、美濃にとっても脅威になる。今後の動きをみさだめる為にも、十兵衛よ、尾張へ行って様子をみろ、はやく行け! と十兵衛に命じます。
 利政のもとから退出しながら、「鬼め、命が幾つあっても足らぬわ!」と独り言を漏らす十兵衛。
 また場面はかわって、尾張の信秀の居城・末森城。当主であり父である・信秀と向かい合い、信長(染谷将太さん演じる)は「人質の取り交わしなど同意できませぬ!」と強い調子で反対論を唱える。
 そして腹違いの兄を批判。「兄上は戦下手ゆえ捕らえられたのじゃ。自業自得ではありませぬか。捕らえられる前に腹を切るべきであった」
 信秀は側室の子をかばいます。「絶えず国境を守ってくれていた。今川の標的となり、苦労をさせたのじゃ」
 信長は人質交換には反対だと言い続ける。
 「父上は病ゆえ弱気になっておられるのじゃ」
 そして竹千代を那古野城に入れて誰にも渡さぬと宣言し退席。
 信長がいなくなった後、信秀の正室で信長と信勝(木村了さん演じる)の生母である土田御前(壇れいさん演じる)は、信勝を跡継ぎにするよう勧める。信秀は「ものごとの順序を変えてはいけない」と言う。

 一方、十兵衛は熱田の市に来て、菊丸(岡村隆史さん演じる)に会います。まるで、菊丸がいつも熱田の市にいて商売をしていることをよく知っているかのようです。
 十兵衛は菊丸から三河の味噌を買いました。那古野城の帰蝶(川口春奈さん演じる)に会う口実です。味噌を那古野城へ持参し、帰蝶と会う、話をするのです。
 会った帰蝶は「父上のお指図か」と言いますが、台所へ味噌を運ばせた後、十兵衛に笑いかけます。
 「十兵衛、もうよい。面を上げよ」
 「はっ」
 「しらじらしいぞよ。父上が味噌など持たせるわけがあるまい。おおかた、なにか調べてまいれと命じられて来たのじゃな」
 十兵衛はしらばっくれます。
 「いや、まことにあの味噌は美味でありまして」
 「まあ、よい。そこにいては話ができぬ。おあがりなされ」
 それで縁の上の帰蝶と庭の十兵衛がともに立ち上がったとき、主の信長が戻って来た。
 「今日はうまくいったぞ!」
 信長は上機嫌だった。
 「なにがでございますか?」
 問う帰蝶に、「走るイノシシを鉄砲で仕留めた」
 「それはおめでとうございます」
 信長は帰蝶に土産を渡す。
 そして視線を移し、庭の十兵衛に注目。「誰じゃ?」
 「美濃から父上の使いで参った者でございます」
 帰蝶が説明すると、信長は十兵衛に問いただす。「名は?」
 「はっ。明智十兵衛と申します」
 十兵衛の返答に「あけち……」
 信長は何かを思い出そうとする。すかさず帰蝶が説明する。
 「先日、殿から鉄砲の撃ち方を教わったおりに、美濃にも鉄砲に詳しいものがいると申しました。その十兵衛にござります」
 「ほお。そなたが十兵衛か」
 信長は十兵衛に向かい、縁に腰掛けながら、鉄砲をしめし、「この鉄砲、どこで作られたものか当ててみよ」と難問を言います。
 十兵衛は鉄砲を受け取り、銃身などよく確かめ、
「渡来ものではありませぬ。これはおそらく、近江・国友村の助太夫か、徳左衛門の手になるものと思われます」
 と答えました。
 「ほお……」
 信長はしばらくの間をおいて、破顔し、笑いながら「当たりだ」と言います。
 「助太夫に作らせたのじゃ。茶でも飲んでゆけ」
 そうして家来には「明日また(狩りに)行くぞ!」と言い、館内に入るべきか戸惑っている十兵衛にもう一度声をかけます。「あがれ」
 そうして場面は信長の居間とかわります。
 「その方、どこぞで会うたことがあるな」
 信長は十兵衛に言いました。
 「熱田の海辺ではなかったか?」
 「は。よく覚えておいでで」
 驚く十兵衛に信長は、「わしは一言でも話した相手は忘れぬ」と言います。
 信長との初めての出会いを思い出す十兵衛。
 「あそこで何をしておったのじゃ?」
 と信長は十兵衛に問います。
 これはうかつに答えられません。まだ同盟を結ぶ前に他国者が来ていて、自分の姿を見ていた。と信長が知ったからには、「間者(スパイ)働きをしていたのか?」と思われかねない。
 十兵衛がちょっと返答に困りつつ、「或るお方に命じられ、信長様のお姿を拝見するため、船のお帰りをお待ちしておりました」
 と正直に答えました。ここはこう答えるしかないでしょう。嘘をついても、見抜かれたら大変です。十兵衛も信長の前ではうかつに嘘をつけぬと思ったのかもしれません。
 「或るお方とは誰じゃ」
 信長の再度の問いに、十兵衛が返答に困っていると、帰蝶がかわりに答えました。
 「わたしでございます」
 信長は苦笑いします。
 「ふん。帰蝶に、十兵衛はわしのことをなんと申した?」
 「ようわからんお方じゃと」
 帰蝶が即座に答えたので、十兵衛は、帰蝶の方を見、なんてことをおっしゃるのですか! といいたげな表情になる。
 信長はいかにもおかしそうに笑い、
 「くっ。はっはっは、それはよくぞ申した。わしも己がいかなる者か、まだようわからん」
 「それは難儀なことでございますなー」
 帰蝶が信長に顔を向け笑って言うと、信長も、
 「難儀でたまらんのじゃ。はっはっは!」
それからしばしの間があり、改めて十兵衛が信長に問いかけた。どうしてあのような時刻から海に出ていたのか、釣りがお好きなのか、と。
 それに対し信長は能面のような表情で「さほど好きではない」と答えた。
 好きではないことを何故、織田家の若殿ともあろうお方が毎朝やるのか、と訝る十兵衛に信長が語る。
 かつて、魚を釣って母に差し上げたことがあった。母は喜んでくれた。
 打ってかわって、嬉しそうに話す。続いて話したのは、こうだった。しかし、喜んでくれたのは初めのその時だけで、あとは、いくら大きい魚を釣って差し上げても喜んでくれず、むしろわしを遠ざけるようになった。母上は弟の信勝の方がかわいいのだ、と。
 それでも釣りを続けるのは何故か。魚を釣ると漁師たちが褒めてくれる。それを皆に分けてやると、皆が喜び、市に持っていく。皆が喜ぶのは嬉しい!
 信長がいかにも嬉しそうに、楽しそうに喋る。
 そこへ信長の家来が現れ(信長夫妻が十兵衛と対面している間に)、竹千代が対面を願っている旨を伝える。
 「通せ」と信長が言うので、十兵衛は「では、これにて」とその場を辞して去ろうとするが、「かまわぬ」ここに居よ、と留める。
 そうしているうちに竹千代が入って来た。
 将棋盤を抱えている。
 竹千代は信長に向き合うと居住まいを正し、頭を下げ、あいさつし、昨日将棋の相手をしてくださると約束していただきました、今が無理ならまたあとで構いませぬ、将棋をさしてください、と言う。
 信長はまた能面のような表情になり、今も今後も無理だ、と言う。
 なぜですか、と問う竹千代に、「童とは将棋をささぬことにした」と答える。
 すると、竹千代は意外なこと(その場にいた三人にとって)を口にするのだった。
 近習の者が申しておりました、信長様がわたしの父、広忠を討ち果たしたと。でもそれは仕方ないこと。父は私の母を離縁し、城から追い出し、敵である今川に従った。私はそんな父が嫌いでした、と。
 信長は、(将棋の)駒を並べよ、竹千代にと言います。そして、十兵衛と帰蝶に、座を外せ、と言い、将棋を始めます。
 帰蝶と十兵衛が部屋から出て廊下を歩いていると、将棋を始めたばかりの信長が、ちょっと待てと竹千代に言い、十兵衛を追いかけ、明日また会えぬか、そなたと鉄砲の話がしたい、と言います。
 こうしてまた会う約束ができるのですが、信長はすぐに竹千代のもとに戻り、人質交換の話をします。この交換の話を断れば兄上は斬られる。どうすればいいか。そなた(竹千代)を今川に渡したくはないが「迷いはある」と。
 するとまた、竹千代は子供とは思えぬことを口にします。今川は敵です。いずれ討たねばならぬと思うております。しかし、敵を知らねば敵は討てない。今川義元の顔を見たことがない。敵の顔をみるため敵の懐に入るのも良いかと、と、そういうことを言うのです。
 そんなやりとりを天井裏から覗いている者があった。十兵衛が買い取った味噌を場内に運んだあと、いつの間にか姿を消した菊丸だった。

 この回での注目は、以呂波太夫の優しさ。とともに、単純にやさしいだけではないような、諸国の大名、有力者の内実に詳しそうな様子。今後、ストーリーにどうかかわってくるのか?
 そして、信長・信秀父子の確執。母に愛されず、父には褒められない信長の屈折ぶりと、領民が喜ぶと自分も嬉しいという子供っぽい笑顔。これが信長の将来の行動とどう関わるのか。
 そして、戦乱の世の力関係に翻弄される竹千代の、子供とは思えぬ覚悟。
 信長はそれをみてどんな感情をいだいたのか。こいつとなら分かりあえる、と思ったのか、将来、同盟を組める、とでも思ったのか?
 また、菊丸が三河の忍者であることはこの前の回で明かされたが、今後どう活躍するのか。
 いろいろと注目されることの多い回でした。 
 









 
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