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2018年02月27日

中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」第5シリーズ第11話「隠し子」






 2月25日の午後11時から、CS放送の時代劇専門チャンネルで、中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」第5シリーズ第11話「隠し子」が放送されました。
 中村吉右衛門さん演じる長谷川平蔵の長谷川家に「隠し子」騒動?
 その「隠し子」の正体は?

 長谷川さんいますか? と、火盗改の役宅に老爺(奥村公延さん演じる)が訪ねてきます。
 「どの長谷川だ?」
 と番人が聞きとがめますと、老爺が訪ねる相手は長官の長谷川平蔵なのだという。
 その老爺こそ、むかし長谷川家に中間として仕えていた久助という男だった。
 当然、主の平蔵や、奥方の久栄(多岐川裕美さん演じる)もよく知っています。
 よもやま話のついでに、平蔵と二人きりの時に久助は「隠し子が……」と語り出す。
 「なに! 隠し子?」
 驚き、慌てふためく平蔵。思わず周囲を見回します。
 しかし、平蔵には身に覚えがありません。
 久助が語るところによると、実は、いることが分かった「隠し子」というのは、長谷川家の先代、つまり平蔵の父の隠し子なのだという。
 平蔵の父の隠し子は女で、根津権現(現在の根津神社)近くの、岡場所がある盛り場の居酒屋にいるという。
 隠し子だとすれば平蔵の妹だ。平蔵は身分を明かさず根津権現近くの盛り場を訪れ、その女(美保純さん演じる)に会いに行く。
 女の名は「お園」という。平蔵の生母と同じ名前だった。
 平蔵はお園の、煙管を扱う手つきに注目した。亡き父の手つきにそっくりだった。
 平蔵の母は先代の妾だった。その母の名と同じ「お園」。そして煙管の扱い方がそっくり。平蔵は自分の腹違いの妹だと確信した。
 先代、つまり平蔵の父の正妻には、実子がいなかった。だから正妻は妾の子である平蔵を引き取ると目の敵にし、いじめぬいた。そのために平蔵は若い時にグレて、無頼の日々を送り、各地の盛り場に出入りし、いろいろの遊びを覚えた。
 だから根津権現近くの盛り場でお園をみても何の抵抗もなく、帰宅後、お園を長谷川家の屋敷に引き取ろう言い出す。
 抵抗あるのは妻の久栄の方だった。お園にというよりも「岡場所」という言葉に激しい拒絶反応を示すのだ。
 しかし、お園は、周囲の飲み屋の女が客に身体を売る中で、決して客にこびず、酒だけ出すような女だった。
 そんなお園に、根津界隈の顔役だという男・荒井屋(田口計さん演じる)が目をつけ、自分のものにしようとしている、ということが分かる。
 やがて、荒井屋が盗賊とかかわりがあることが分かり……。


 この話の中で特に面白かった場面は、平蔵が久栄に、長男・辰蔵のいる屋敷にお園を引き取ろうと言い出した時の、久栄のムキになった様子と拒絶反応。
 そして、久助がお園に「実のお兄さんの家に」と提案したときのお園の反応です。お園は自分の本当の父が身分ある武士だったということは知っているが、その父の子は「鬼の平蔵」だとは知らないので、「あたしのおっかさんに手を出した男の息子だよ。どうせたいした男じゃないだろう」と、笑いながらまだ見ぬ(会っていないと思っている)兄のことを言うのです。
 
 また、面白いというより、長谷川平蔵の人間としての幅というか、味がにじみ出ていたシーンがあります。平蔵が義母(父の正妻)のことを思うシーンです。妾として日蔭の身だった実母や、お園の母のことを思いながら、「ほんとうにかわいそうだったのは、はは(義母)上だったのだ。子どもの産めぬ身体だから、おれをいじめたのさ」としみじみ語るのです。
 若き日の自分をいじめた相手は憎いのです。しかし、いじめた相手には「理由」があった。いじめられた方からすれば理不尽な理由だが、「子どもの産めぬ女」が子どもの産めぬくやしさを晴らすために、憎い妾の産んだ子をいじめた。それは女なりの「理由」。
 正妻が子どもの産めぬ身体だからと、妾に子を産ませた夫を表向き憎むこともできない。なぜならば、身分ある武士は家系を絶やさぬために妾をつくってでも子をつくらねばならぬ、というのが武家社会の常識だったからだ。
 そう思うと、大人になり「火盗改」の長官となり、いろいろな人間をみてきた、善も悪も、世間の裏も表も知り尽くしたような「鬼の平蔵」だからこそ、「はは(義母)上もかわいそうなお人だった」としみじみ言えるのだ。
 いろいろな登場人物の、とりわけ長谷川平蔵の人生の深みを感じさせるシーンが多いのが「鬼平犯科帳」の魅力です。
 





 
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