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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月16日

ちょっとずつ読む楽しみ。 「吉兆味ばなし 一」 湯木貞一

名料亭「吉兆」の創始者が書いた

「家庭料理指南」といったものですが、

いい言葉がたくさん出てくるんですよね。

季節に合わせたお料理の話がいっぱい

なので、僕は四季折々にちょっとずつ

読むようにしています。



ちょうどいまにぴったりなのは、

「初夏は濡れ色をよろこぶ」という言葉。

著者はこう記しています。



初夏になると、なおさら、濡れ色を

よろこびたいと思います。

もみじの葉一つあしらうにも、木の芽を

あしらうにしても、洗い上げ、カゴに

うちあげて、いよいよ盛るときに、

もういちど霧水をふいて、ぬらしてから盛る。

一度洗ったからいいというものではなく、

盛る寸前にぬらす、これが料理の掟です。



お椀の中はおつゆでしょう。

椀だねでも、たき合わせでも、たけのこでも

みんなぬれています。

そこへのせた木の芽が乾いていては

どうしようもありません。

ふたをとる、ぬれた木の芽が目に入る、

鮮やかです、ことに夏はそうですね。



……いい文章だなぁ。こんな風に丁寧に

暮らしたいなぁ。優しくてそっと寄り添うように

語ってくれる言の葉の数々。

沁みます。

「しめり箸」という言葉も新鮮でした。



箸にしても、カラカラに乾いているのは、

置きません。

「しめり箸」というのを使います。

うちでは利休箸を使っていますが、

使うときザーッと水で洗って清めて、

のせることにしています。

といって、手にとったとき、水にぬれて、

ポトポトしたのはいやなものですから、

つまむ先のほうはぬらしたままで、

手に持つあたりはよく拭いておきます。

その程度のしめりの感触、ひいやりした

感触というものは、初夏らしくてよい感じです。

カラカラに乾いた箸は、手にとったとき、

なにかほてった感じで、暑いときはいやですね。



濡れ色、しめり箸。

……豊かだなぁ。

早々にやってみたいと思います。



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