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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月18日

しょうがないねぇー 「女文士」 林真理子

いやー面白かった。

一晩で読了。



主人公は、眞杉静枝という

実在した作家。

宇野千代、吉屋信子、林芙美子と

同時代に生きた人で、

武者小路実篤の愛人として文壇に

名を馳せた。

僕は全く知らなかったが、

本文を借りれば、

「子どもじみた執拗さで、えらくなりたい、

人に認められたいと願った女。あれほど賞賛や愛情を

ねだった大人の女が他にいるだろうか」

という女性だったらしい。



大した作品は残さなかったが、男を、結婚を、

名声を執拗に求め続け、そのたびに裏切られ

自らも墓穴を掘り、しようがない人生を

送った。

なんだか林センセーの奥底にあるものと

似ている。

そのせいか、文章は冴えわたり、狂おしく

哀しい眞杉が目の前にいるようだ。

なかでも印象に残ったのは、



「静枝はこの頃ようやくわかった。愛人に

なるということは二つの時計を持つことである。

ひとつの時計は全く動かない時計。生産すること

のない時計といってもよい。



世の中の女たちはにぎやかに子どもを育て、

乳をふくませ、そして這いまわるのを追う。

子どもはずんずんと育ち、そして家族は増えていく。

豊かにやさしく時を刻むこの時計を静枝は

持っていない。



そしてただ男を待つだけの生活の中では、

もうひとつの時計だけがせわしく動く。

そして静枝は確実に老いへと向かって進んでいた」



林センセー、見事です。


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