2023年08月29日
哀切に満ちた短編集 「雨の中の涙のように」 遠田潤子 ’
’
著者の作品は読むのは初めてだが、
卓越したストーリーテラーぶりと
哀切感あふれる詩情に、魅かれた。
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七編から成る物語は、挫折した元大部屋俳優や、
不倫の果てにアメリカへ逃げた男、本気の浮気を
繰り返す女など、罪やけがれを背負った不器用な
人たちが主人公だ。
すべて独立した話だが、唯一共通しているのは
堀尾葉介というスター俳優とすれ違い、
人生のシーンが少し変化してくる。
そして最後の章は、堀尾自身の話になる。
この構成もうまい。
’
生きてれば、みんな人に言えないことの
一つや二つはある。
墓場まで持っていくのはつらいことだけど、
そうやって生きていくしかない。
でもそれでいいじゃないか。
小説にはメッセージめいたことは何も
書いてないけど、僕はそう感じた。
’
タイトルの由来も、
映画「プレードランナー」より、
死んだレプリカントの台詞、
「思い出も時と共に消える。
雨の中の涙のように」から。
’
他の作品も読みたい作家が、またひとり現れました。
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