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2012年07月12日

資本主義の闇 LIBOR不正操作、金融界激震 英中央銀行(BOE)関与まで取りざた[12/07/11]

 【ロンドン会川晴之】英金融大手バークレイズによる短期金利の不正操作問題に世界の金融界が揺さぶられている。
不正の対象になったロンドン銀行間取引金利(LIBOR、ライボー)は世界中の金融取引の指標となり、
世界最大の金融市場であるロンドン金融街(シティー)の象徴。
不正操作には米シティグループ、ドイツ銀行、UBSなどの大手銀のほか、
英中央銀行であるイングランド銀行(BOE)の関与まで取りざたされている。

 事件の発端は6月末、英米の金融監督機関から不正金利操作の指摘を受けた
バークレイズが2億9000万ポンド(約360億円)の罰金を支払うことに同意したことだった。

 これまでの調査では、不正には二つの局面がある。一つは2005?08年、同行のトレーダーが他のトレーダーと結託し、
実際の取引より高い金利を英銀行協会に報告してLIBORを不正誘導し、市場取引で利益を得たという疑惑。
もう一つは、08年秋のリーマン・ショック時に、協会に報告する金利を故意に引き下げ、
バークレイズの財務を実態より健全に見せかけていた、との指摘だ。

 一連の問題発覚を受け、同行のボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が辞任したが、事態が沈静化する兆しはない。
ダイヤモンド氏が4日の英議会公聴会に参考資料として提出したBOEのタッカー副総裁との電話記録をきっかけに、
08年以降の不正にBOEや政府が関与したのではないかという疑惑が強まったからだ。

 電話記録によると、タッカー副総裁はダイヤモンド氏に「(LIBOR作成のために報告する)金利が常に高い必要はない」と話したという。
タッカー氏は来年退任するキング総裁の有力な後継候補。
戦後最大の金融危機の中で当局が「低い金利」報告を求めたことで、
同行が「危機の沈静化を図る当局の意図」をくみ取る報告をした、という見立てだ。
タッカー副総裁は疑惑を一切否定しているが、LIBORの決定には英国の銀行だけでなく、
米、欧、日など世界の大手銀20行近くの取引金利が参考にされ、バークレイズが単独で不正な操作をするのは困難だ。
各国の監督機関や捜査当局は、LIBOR算出に関与する大手金融機関の調査を開始しており、スキャンダルはさらに拡大する可能性がある。
英メディアは「各行のトレーダー同士が結託して、広範囲に談合を続けていた」(エコノミスト誌)と、闇カルテルの存在を指摘。
リーマン・ショック以降、必要論が高まる世界の金融規制見直しの呼び水になるという論調も目立っている。


◇Q&A LIBOR問題とは
 Q LIBORってなに?

 A 世界の有力銀行同士がお金を貸し借りする際の金利のことです。
ドル、ユーロ、円など10種類の通貨について、期間別に「金利が何%だったらお金を集められるか」を自己申告します。
ドルの場合は18行、円の場合は15行が申告し、異常値を反映しないよう、英国銀行協会がそれぞれ上下4行ずつを除いた平均値を算出します。

 Q どのように使われているの?

 A 企業向けの融資や住宅ローン、金融派生商品など世界の金融取引の基準金利として使われています。
例えば「LIBORに一定の上乗せ幅」などの形で融資の契約が行われます。
その規模は世界で360兆ドル(約2京8000兆円)と推計されています。
LIBORがゆがめば金融取引の根幹が崩れることになります。世界の金融市場で広く定着しており、
代わりになる指標は存在しないのが実情です。

 Q どう影響するの?

 A 例えば企業向け融資や住宅ローンの場合、LIBORが高めに操作されていれば、
本来なら必要のない高い金利を支払うことになります。
低めに操作されていればLIBOR連動の預金をしている人は受け取る利息も少ないことになります。
逆により高い利息を受け取ったり、より安い利払いで済むなど得をした人もいますが、
損をした企業や投資家が不正をした銀行に集団訴訟を起こす可能性もあり、銀行経営にも打撃を与えかねません。

 Q LIBOR算出に邦銀は関わっているの?

 A ドルは三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、農林中央金庫の3社が、円はみずほコーポレート銀行を加えた4社が申告しています。
欧米当局の調査に協力しており、現時点で不正は確認されていません。
三菱東京UFJ銀はロンドンで勤務する取引担当者2人に自宅待機を命じました。
2人はオランダの銀行グループ出身で、移籍前に不正に関与した可能性があるそうです。

 Q 日本でも使われているの?

 A 信用力の高い大企業ほど融資を受ける際、世界標準であるLIBORを選択する傾向にあります。
不正が相次ぎ、信用が失墜すれば、LIBORに代わる基準を銀行側に求め、契約の見直しに発展する可能性も否定できません。
ただ国内ではLIBORよりも全国銀行協会が算出する東京銀行間取引金利(TIBOR)の方が広く使われています。
住宅ローンは、変動型は政策金利、固定型は長期金利との連動性が強く、LIBORとの関係は薄いです。
一部の外銀が扱うLIBOR連動型の外貨建て定期預金では影響が出る可能性もあります。【窪田淳】

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