2013年04月12日
【中国】「この国に居続けて保有財産は保証されるのか・・・」不安感から海外へ逃げ出す富裕層が増加
今月4日、中国の各メディアは海外移民に関する一つのニュースを報じた。2012年の1年間、中国からカナダへ
移民した人の数が3万2900人にのぼり、中国は、カナダへの最大の「移民輸出国家」となった。
実は今、中国で大規模な移民ブームが起きている。今年1月に発表された「中国国際移民報告(2012)」によると、
中国現代史上3回目の「移民潮(ブーム)」が起きているという。過去2回の移民ブームと比べれば、今回は
富裕層と企業家が主力である。報告によれば、1千万人民元(約1億6千万円)以上の資産を持つ中国国民の
6割はすでに海外へ移民してしまったり、あるいは移民を検討している。さらに、個人資産1億元以上の富豪企業家では
27%が移民済みで、47%が検討中であるという。
中国の経済と社会を支えていくはずの経営者と富裕層による雪崩式の移民ブームは当然、国内で大きな
問題となっている。先月5日に開幕した全国人民代表大会では、代表の一人である企業家の王挺革氏が、
「移民による人材と富の流出は甚大で、国家がこうむる損失はあまりにも大きい」と指摘し、
「一刻の猶予もなくそれを食い止めなければならない」と提案した。
世界第2の経済大国となった中国の富裕層と企業家たちが競って海外へ移民するのはなぜなのか。
上述の王氏が一番の理由として挙げているのは富裕層の「財産の安全に対する心配」である。つまり、カナダなどの
法治国家では個人資産がきちんと保護されているが、体制の違った中国で自分たちの財産が果たして大丈夫なのか、
という心配が、中国の富裕層を海外移民へと駆り立てる最大の理由となっているのである。
もちろんそれは王氏だけの意見ではない。1月22日付の『中国企業報』は「企業家の移民潮」を取り上げた
新聞記事の中でやはり、財産の保持に対する「不安全感」を企業家移民の理由の一つに上げている。高名な経済学者で
北京大学光華管理学院教授の張維迎氏も最近、「中国の企業家たちに安全感がない。だから移民ブームを起こしている」
と語り、政府の「反省」を求めたと報じられている。
しかし問題の根っこはむしろ、当の政府が成り立つ政治体制にある。1990年代以来、共産党政権は
「社会主義市場経済」を打ち出して独裁体制下での市場経済の発展を推進してきたが、その中で党と政府から独立した
企業家階層が大きく成長してきた。
その一方、旧態依然の独裁体制の下では、絶大な権力を握る政府各部門が権力をかさにきて企業家たちを食い物にし、
さんざんいじめている。しかも、党と政府の力が法律を完全に凌駕(りょうが)している状況下では、権力はその気になれば
企業家の財産と身の安全をいとも簡単に奪うことができるし、実際そうやったケースは数えきれないほどある。
だからこそ、莫大(ばくだい)な財産を蓄積してきた企業家たちは究極の「安全対策」として海外移民へと走ってしまったのだが、
彼らは身の処し方によって体制への離反を表し、いわば「社会主義市場経済」の破綻を告げているのである。
このままでは、国中から金持ちがほとんど逃げ出してしまい、独裁政権と貧乏人だけが残ってしまうという、中国自身にとっての
最悪の事態になりかねない。それでは、中国の経済と社会が崩壊するのも同然である。
つまり、今まで中国に成長と安定をもたらしてきた、「独裁体制下での市場経済」の「トウ小平路線」は
すでに行き詰まっていることが明々白々だ。市場経済を残して独裁体制を無くすのが、この国に残される唯一最善の道であろうが、
今の習近平政権下では、大変革を断行できそうもないところに、中国の絶望がある。
移民した人の数が3万2900人にのぼり、中国は、カナダへの最大の「移民輸出国家」となった。
実は今、中国で大規模な移民ブームが起きている。今年1月に発表された「中国国際移民報告(2012)」によると、
中国現代史上3回目の「移民潮(ブーム)」が起きているという。過去2回の移民ブームと比べれば、今回は
富裕層と企業家が主力である。報告によれば、1千万人民元(約1億6千万円)以上の資産を持つ中国国民の
6割はすでに海外へ移民してしまったり、あるいは移民を検討している。さらに、個人資産1億元以上の富豪企業家では
27%が移民済みで、47%が検討中であるという。
中国の経済と社会を支えていくはずの経営者と富裕層による雪崩式の移民ブームは当然、国内で大きな
問題となっている。先月5日に開幕した全国人民代表大会では、代表の一人である企業家の王挺革氏が、
「移民による人材と富の流出は甚大で、国家がこうむる損失はあまりにも大きい」と指摘し、
「一刻の猶予もなくそれを食い止めなければならない」と提案した。
世界第2の経済大国となった中国の富裕層と企業家たちが競って海外へ移民するのはなぜなのか。
上述の王氏が一番の理由として挙げているのは富裕層の「財産の安全に対する心配」である。つまり、カナダなどの
法治国家では個人資産がきちんと保護されているが、体制の違った中国で自分たちの財産が果たして大丈夫なのか、
という心配が、中国の富裕層を海外移民へと駆り立てる最大の理由となっているのである。
もちろんそれは王氏だけの意見ではない。1月22日付の『中国企業報』は「企業家の移民潮」を取り上げた
新聞記事の中でやはり、財産の保持に対する「不安全感」を企業家移民の理由の一つに上げている。高名な経済学者で
北京大学光華管理学院教授の張維迎氏も最近、「中国の企業家たちに安全感がない。だから移民ブームを起こしている」
と語り、政府の「反省」を求めたと報じられている。
しかし問題の根っこはむしろ、当の政府が成り立つ政治体制にある。1990年代以来、共産党政権は
「社会主義市場経済」を打ち出して独裁体制下での市場経済の発展を推進してきたが、その中で党と政府から独立した
企業家階層が大きく成長してきた。
その一方、旧態依然の独裁体制の下では、絶大な権力を握る政府各部門が権力をかさにきて企業家たちを食い物にし、
さんざんいじめている。しかも、党と政府の力が法律を完全に凌駕(りょうが)している状況下では、権力はその気になれば
企業家の財産と身の安全をいとも簡単に奪うことができるし、実際そうやったケースは数えきれないほどある。
だからこそ、莫大(ばくだい)な財産を蓄積してきた企業家たちは究極の「安全対策」として海外移民へと走ってしまったのだが、
彼らは身の処し方によって体制への離反を表し、いわば「社会主義市場経済」の破綻を告げているのである。
このままでは、国中から金持ちがほとんど逃げ出してしまい、独裁政権と貧乏人だけが残ってしまうという、中国自身にとっての
最悪の事態になりかねない。それでは、中国の経済と社会が崩壊するのも同然である。
つまり、今まで中国に成長と安定をもたらしてきた、「独裁体制下での市場経済」の「トウ小平路線」は
すでに行き詰まっていることが明々白々だ。市場経済を残して独裁体制を無くすのが、この国に残される唯一最善の道であろうが、
今の習近平政権下では、大変革を断行できそうもないところに、中国の絶望がある。
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