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2021年04月15日
都市の「テーマパーク」的ブランディングは何が問題か
「新今宮ワンダーランド」は、大阪市と電通がタイアップした「西成地区」の「新今宮エリアブランド向上事業」= 地域観光推進&都市マーケティングのプロジェクトの名称です。話題になった以下のPR記事からこの地域の宣伝企画の存在を知りました。
ティファニーで朝食を。松のやで定食を。|しまだあや(島田彩)
https://note.com/cchan1110/n/n5527a515fba2
一般女性がホームレスの男性と過ごす1日をデートと呼び、訪れた店や観光スポットを紹介しつつ、地域の人々との係わりを綴るエッセイ風の宣伝記事です。この地区の特徴を著者は以下のように説明しています。
2021年3月。仕事で、「新今宮」という街に訪れた。大阪の西成区、「ドヤ街」と呼ばれるエリアを含む街。関東だと、東京の山谷や、横浜の寿町が、近い雰囲気かもしれない。
そして、以下が、このプロジェクト「新今宮エリアブランド向上事業」のHPです。
来たらだいたい、なんとかなる。
新今宮ワンダーランド
https://shin-imamiya-osaka.com
私は上記のPR記事の内容とHPの趣向に驚きました。また多くの人が記事の対象(地域やそこで生活する人々)に対する立ち位置や目線にショックを受けたようです。「西成地区」のようなドヤ街と呼ばれる地区は日本の貧困の最前線です。その地域を観光客として訪れ「(自分にとって)絵になる街歩きコース」で写真を撮影し、「激安グルメを楽しむ」というのです。私はこうやって貧困や格差も尖った都市マーケティングにより「差別化された商品」にされ、娯楽の対象になるのだな、と暗い気持ちになりました。
「新今宮ワンダーランド」という名称やイラストも「(貧困の)テーマパーク」を連想させる名前です。命名者たちの発想がよく分かるように思いました。その地域の住民は、彼らにとってはアトラクションのモンスターのようなものだし、建物や街並みも「現実世界」とは隔絶された「異世界」の小道具くらいにしか思っていないのでは、と感じてしまいました。
途上国でフィールド・ワークの経験のある女性は以下のように語っています。
https://twitter.com/SaoriNa14/status/1382262955744530433
「修士で途上国フィールドワークを行う際、構造上の強者(私)が自身の視点にのみ依拠して弱者を檻の外から眺めるかのごとく語ってはならないと厳しく戒められた。無垢な弱者、逆境を明るく生きる弱者、彼らと仲良くできる外部者の自分という浅い切り口は、根本的/構造的な不平等を隠してしまうから。」
これは貧困問題等に取り組む研究者が守るべき「倫理」として、現場に赴く前に習うことですが、企業のPRの担当者も同様に無自覚であっていいはずはありません。海外で勉強した経験のある人なら、すぐに気がつくような倫理や人権の問題ですが、階級格差が妙な形で隠蔽されている日本では無自覚な人が多いことに驚きます。企業に入る前、小学校から「人権教育」は必須だと思いました。
私が「新今宮ワンダーランド」を知って真っ先に思い出したのは「ポストモダン社会における文化及び都市空間の消費」をテーマとして執筆された、David Harvey教授の地理学の名著です。
”The Condition of Postmodernity: An Enquiry into the Origins of Cultural Change” David Harvey
https://www.wiley.com/en-gb/The+Condition+of+Postmodernity:+An+Enquiry+into+the+Origins+of+Cultural+Change-p-9780631162940
日本では斎藤幸平先生のマルクス理論を使った労働や環境学の分析が人気ですが、欧米ではDavid Harvey教授によるマルクス理論の解釈とその原理を使った現代資本主義社会と都市空間の分析が著名です。彼はマルクス理論をもとに、新自由主義下での経済格差、文化消費、搾取の問題点や矛盾・歪んだ権力構造を空間を軸に据え、鋭い考察を試みました。
David Harvey on Karl Marx
https://www.versobooks.com/blogs/4155-david-harvey-on-karl-marx
”Now a classic of Marxian economics, The Limits to Capital provides one of the best theoretical guides to the history and geography of capitalist development. ”
都市は近代的民主主義及び社会福祉政策の誕生の地と言われています。人間が密集して居住し、資本主義の生産と消費が集中的に発生する場所だからこそ、「人権」が都市で最初に意識されるようになったのは偶然ではありません。以下の書籍リストは「新今宮ワンダーランド」の不条理を理解するための重要なヒントを与えてくれるはずです。
Architecture and Cities: Verso Student Reading
https://www.versobooks.com/lists/3388-architecture-and-cities-verso-student-reading
”In the current moment, the condition of our cities is more felt than ever. Skyrocketing rents, overcrowding and uneven accessibility are intensified in times of crisis. Reimagining how we might move through and experience our cities is vital.”
そして、リストの最初に上記の紹介文があるように、私たちが「都市と民主主義」について知るべきことはまだまだたくさんあります。
2020年01月16日
都市計画の意義〜「アパート経営」ビジネスから考える
サブリースによるアパート経営が規制の対象に。
比較のHPが出来るくらいビジネスが隆盛だったけれど、新法の規制により空き家抑制にも貢献しそう。これ以上、安普請な賃貸住宅は要らない。
人口減で空き家急増の日本で安普請で立地も悪い賃貸アパートを大量供給出来てしまう日本の都市計画の不在。規制緩和を叫ぶ日本人は多いけれど、先進国でここまで間違った住宅政策、土地利用が許されているのは日本ぐらい。
アパート転貸、新法で規制へ
https://this.kiji.is/589760097752515681
都市計画・住宅政策の不備は
空き家の急増
景観問題
インフラ整備
防災
治安
社会保障
地域振興
コミュニティの崩壊
経済への打撃
など影響は計り知れないのに「新たな開発=都市計画」と誤解している日本人が多すぎる。
比較のHPが出来るくらいビジネスが隆盛だったけれど、新法の規制により空き家抑制にも貢献しそう。これ以上、安普請な賃貸住宅は要らない。
人口減で空き家急増の日本で安普請で立地も悪い賃貸アパートを大量供給出来てしまう日本の都市計画の不在。規制緩和を叫ぶ日本人は多いけれど、先進国でここまで間違った住宅政策、土地利用が許されているのは日本ぐらい。
アパート転貸、新法で規制へ
https://this.kiji.is/589760097752515681
都市計画・住宅政策の不備は
空き家の急増
景観問題
インフラ整備
防災
治安
社会保障
地域振興
コミュニティの崩壊
経済への打撃
など影響は計り知れないのに「新たな開発=都市計画」と誤解している日本人が多すぎる。
2019年07月10日
7/20(土)7/25(木)朝英語の会神戸・梅田のテーマ: グローバル市場における文化とブランディング
7/20(土)10:00~朝英語の会神戸、7/25(木)朝英語の会梅田7:30AM~で利用するThe Japan Times紙記事が配信されました。紙版は7/9(火)本日発売です。Kim Kardashianが「Kimono―着物」と名付けた下着のブランドに関する文化盗用疑惑について英語で議論します。グローバル市場における文化とブランディング、日本の企業が商品名を変更しなければならないケースもありそうです。
続きはオンラインサロンの会員のみが閲覧できる以下のサイトで記事を発表します。
2019年05月20日
デザインと倫理:国際基準
日本の著名建築家がロンドンの公園内に建てるパビリオンに無給(週6日、1日13時間労働、自分でPCとソフトウェアを用意)のインターンを使うことが問題視され、英国王立建築家協会(RIBA)がインターン等の労働条件を見直すことになりました。今後、日本流のブラックな労働慣行を強いる建築家やデザイナーは国際コンペから排除されることになるでしょう。
Architects who don't pay interns "shouldn't be given prestigious commissions" says designer who revealed Ishigami internships
https://www.dezeen.com/2019/03/25/architects-unpaid-internship-serpentine-pavilion/#disqus_thread
具体的な数字までは知りませんでしたが、日本で建築デザインの業界で一流になるまでは相当の薄給だというのは理解していました。今回は、この日本の業界内の「常識」が白日の下に晒され、欧州では大変な騒ぎになっています。
私はこの記事を最初、英ガーディアン紙で読んだのですが、日本でこの一件が報道されたかどうかは知りません。ただRIBAに続き他の世界の名だたるデザイン賞でも同様にガイドラインが書き換えられると思います。芸能界でもそうですが、日本のビジネス界の「人権感覚」は今後、日本企業が海外進出する、あるいは外国人労働者を受け入れる際に大きな障害となるでしょう。
また日本語で発信されるメディア情報だけに頼っていると、このような重要な動きを見逃してしまう事もあります。日本の建築デザイン関係者は、今回の告発を受けて、ぜひ業界内の常識を見直して欲しいと思いました。
Architects who don't pay interns "shouldn't be given prestigious commissions" says designer who revealed Ishigami internships
https://www.dezeen.com/2019/03/25/architects-unpaid-internship-serpentine-pavilion/#disqus_thread
具体的な数字までは知りませんでしたが、日本で建築デザインの業界で一流になるまでは相当の薄給だというのは理解していました。今回は、この日本の業界内の「常識」が白日の下に晒され、欧州では大変な騒ぎになっています。
私はこの記事を最初、英ガーディアン紙で読んだのですが、日本でこの一件が報道されたかどうかは知りません。ただRIBAに続き他の世界の名だたるデザイン賞でも同様にガイドラインが書き換えられると思います。芸能界でもそうですが、日本のビジネス界の「人権感覚」は今後、日本企業が海外進出する、あるいは外国人労働者を受け入れる際に大きな障害となるでしょう。
また日本語で発信されるメディア情報だけに頼っていると、このような重要な動きを見逃してしまう事もあります。日本の建築デザイン関係者は、今回の告発を受けて、ぜひ業界内の常識を見直して欲しいと思いました。
2019年05月19日
デザインと倫理[オンラインサロン]
Design and Ethics: Reflections on Practice
Edited by Emma Felton, Oksana Zelenko, Suzi Vaughan
Routledge (2012)
https://www.routledge.com/Design-and-Ethics-Reflections-on-Practice-1st-Edition/Felton-Zelenko-Vaughan/p/book/9780415688130
「デザインと倫理」この本の一章を執筆しました。とても重要なテーマですが、関連書籍が少なく、教科書になるような本がありませんでした。そこで、オーストラリアの大学でデザイン・建築を教えている先生方が中心になって、この本が出版される運びとなりました。
実は他の執筆者の章をまだ読めていません。一緒に勉強するような形でオンラインサロンの開催を考えています。オフ会は基本的に京都・大阪・神戸で開催予定です。でも、会員が増えたら他の地域での開催も検討してみます。出来ればテーマに関するツアー・見学会も実施したいです。
こちらも希望のサービスに関するご意見を募集いたします。
【Table of Contents】
Part1: Perspectives on Design and Ethics
1. Framing Perspectives on Design and Ethics Oksana Zelenko and Emma Felton
2. Design-Ing Ethics: the Good, the Bad and the Performative Stephen Loo
3. Design, Ethics and Group Myopia Leslie Becker
4. From Allure to Ethics: Design as a ‘Creative Industry’ Justin O’Connor
Part 2: Communication Design
5. Hybridity, Hegemony, and Design in a Globalized Economy Karen Fiss
6. Values and Pragmatic Action: The Challenges of Engagement with Technical Communities in Support Of Value-Conscious Design Noëmi Manders-Huits And Michael Zimmer
7. Designing Well: Sustain-Able Interaction Design and Vegetarianism Gavin Sade
8. Design and Ethics in Digital Mental Health Promotion Oksana Zelenko
9. Interaction Design, Mass Communication And The Challenge Of Distributed Expertise John Hartley
Part 3: Built Environment
10. Living With Strangers: Urban Space And The Ethics Of Civility Emma Felton
11. Built Environment, Design and Ethics:The Social Responsibility of Educational Institutions Paul Sanders, Shannon Satherley and Kuniko Shibata
12. Rethinking Practice: Architecture, Ecology and Ethics Marci Webster-Mannison
1 3. Delivering Sustainable Housing: Family Experiences with Professional Ethics in the Design/Construct Supply Chain Wendy Miller And Laurie Buys
Part 4: Fashion
14. Fashion, Ethics, Ethos Paula Dunlop
15. Nourishing And Polluting: Redefining the Role of Waste in the Fashion System Alicia Payne
Part 5: Epilogue
16. Looking Back, Forward And Elsewhere: An Afterword Tony Fry
この本 Ethics&Designでカバーしているテーマ。広汎です
【Subject Categories】
Environment
Sustainable Development
Climate Change
Policy
Housing
Public Space
Management
Built Environment
Planning
City and Urban Planning
Urban Design
Architecture
Structure, Materials and Detailing
Arts
Design
Humanities
Philosophy
Ethics Philosophy
Professional Practice
Fashion
Food
Communication
サロンの運営の方法はいろんな意見を聞いてから、検討しますが、「コミュニティ」と「コンテンツ」の関係については以下の記事が参考になりました!
コミュニティとコンテンツの関係
https://note.mu/qzqrnl/n/n60576f90f228
要点は以下の3つのようです。
★息の長いコミュニティは定期的なコンテンツ発信の場をもっている
★コミュニティで重要なのはそのコミュニティの「共通言語」
★人同士が集まっても、共通言語がなければ新しいものを生みだせない
記事を更新しながら考えていきたいと思います。