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2017年11月13日

「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に1

1 ゴーディマの意欲

 1950年代の南部のアフリカは、反アパルトヘイト運動が崩壊状態にあった。しかし、ナディン・ゴーディマ(1923−2014)は、この革命に白人がどのように関与できるのかを自問し、世の中の流れと逆流している自国の現状に危機感を抱き、何かの形で革命に関わりたいという意欲を持っていた。こうした作家の脳の活動は、この革命が南アフリカの将来を見据えたリスク回避であることを想定させる。
 無論、白人リベラリズムが全盛のときに、何を訴えても焼け石に水である。2017年の今だからこそ、当時の改革案は正当化される。何とかしようという意欲はあっても、外部からの規制により大抵は気持ちが空回りしてしまう。空回りした気持ちは、「空間と時間」という組み合わせでしか表現できない。しかし、メディカル表現がそれを補足する。補足というよりも、意欲は、一般的に前頭葉の前頭前野皮質が管理をし、それとリンクする適応能力は、脳全体の機能により説明される。ゴーディマがいう無限を表すための組み合わせ「空間と時間」にまつわる適応能力を考察するには、前頭前野皮質だけの働きではなく、脳全体、つまり身体全体の働きを考察の対象にするとよい。
 この小論で取り上げるゴーディマの作品は、主人公が過ごした一日を問題にしており、パートナーのマックスの自殺が鍵を握る。自殺するまでには、何かのストレス障害が発生していると考えられる。例えば、意欲があっても政治や法律により拘束され、社会への適応が阻害されることもある。ネルソン・マンデラ(1918−2013)も27年間牢獄に監禁されていた。
 なお、ここでの分析法は、花村嘉英著「日本語教育のためのプログラム」(2017)で森鴎外の「山椒大夫」のために採用したものと同じである。

花村嘉英(2018)「シナジーのメタファ―について考える−ナディン・ゴーディマと意欲」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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