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2024年09月20日

アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える2

2 Lのストーリー

 「出発の記憶」(1987)の主人公ハッサン・オマルは、貧窮で苦しめられても勉強するという希望を捨てず裕福な叔父アーメドを頼りにタンザニアからナイロビへ出発する。ナイロビでは過去と未来が衝突し、恐怖やフラストレーション、優美と残虐が交じり合う。
 グルナ自身1948年にタンザニアのザンジバルで生まれた。裕福な家庭に育つも反政府クーデターにより亡命を余儀なくされ、英国に渡ることを決意する。海外の大学で学ぶための奨学金は出ない。挫折と絶望のため心が折れそうになるが、将来への希望は捨てきれない。グルナの作品は、東アフリカを舞台にした植民地主義の影響と難民が負う心の傷が描かれている。
 ポストコロニアルをここでは文明化と考える。小説の中では、海辺の町出身者は、洗練された教養のある人たちである。(P.117)ナイロビにいる叔父アーメドは、父が死んだときに店や仕事を売りすべてを管理している。そこで、私が金を必要とするならば、自分のところに来るようにと伝えた。(P.52)パスポートの申請のために出入国管理局に行った。(P.66)発行には3週間必要だった。フラストレーション。母がナイロビについて話してくれる。道にはスリや盗賊がいる。寒い日の衣類、叔父アーメドに会う方法など。(P.70)
 列車は、二等車両。駅まで父が見送りにくる。何もなしでは帰ってくるな。学位に拘れと父が激励する。ナイロビまでの旅が始まる。客室にはモーゼス・ムイニという青年がいた。(P.78)ナイロビでアフリカの芸術、文学、文化、歴史を学んでいる。(P.85)しかし、物を盗むのも悪気がなく無意識のまま行われる。個人の意識が介在しない潜在記憶である。列車は、数時間でナイロビに到着する。(P.88)ナイロビに着いたらタクシーで叔父のところへ行く。

花村嘉英(2023)「アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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