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2015年11月09日
虚栄 Vanity 久坂部羊
価格:1,836円 |
虚栄 Vanity 久坂部羊
久坂部羊さんが描く、ガン撲滅に立ち上がる医師たちの壮絶なバトルの小説です。国を挙げてガンを撲滅しようというプロジェクトで、手術、抗がん剤、放射線、免疫療法の医師たちが、予算をめぐって足の引っ張り合いを繰り広げています。リアルで恐ろしくもあり、どこか喜劇的でおかしくもあります。根底に流れる無常感が、生にすがりつく生き方を笑っているように感じる小説です。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし、らしいです。
ガンの教科書?
ガンとは何なのか?ガンの4大治療の違いは?など、誰にもわかりやすく、話の流れに乗せられながら、ハラハラ、ドキドキ、医学の勉強までできてしまいます。
ガンの現状は、有望な治療法がないことが事実です。それをまざまざと思い知らされてしまいます。手術で治るガンもあれば、治らないガンもあります。抗ガン剤は、ガンの進行を数か月遅らせるだけの薬です。放射線が効くガンは限られ、免疫療法は、気休めでしかない。その事実を、素人に分かりやすく、描いています。
ガンとガンもどき
近藤先生のガンもどき理論も、真ガン、偽ガン理論として登場します。ガンにはまだわかっていない面が多く、ガンもどき理論が、実は正しいのかも知れないとも感じてしまいます。近藤先生の理論は仮説です。でも、多段階発ガン理論や転移のメカニズム理論、早期ガンには手術が最適などという理論も、実は仮説だと言うことを思い知らされてしまいます。
虚栄とは
タイトルは、表向きは確かにあるもの、尊いものとされても、実質はなきに等しいつまらぬものであることを意味します。ガンの医療が、報道や政治の世界が実は虚栄そのものだと言う表現にとどまらず、その他多くのものが、実は虚栄にしか過ぎないことを、暗に表現しています。
ガンの不条理
ガンには、不条理な現実がたくさんあり、その不条理も見事に描いています。ガン治療に関する新しいニュースはたくさんありますが、その後実用化され、ガンが治るようになったニュースは、まだありません。まだ早期ガンで大丈夫だと思われていた人が急に亡くなったり、末期ガンでもうだめだと言われている人が助かったりすることも少なくありません。ガン検診は、早期ガンを発見できるようになりましたが、必ずしもガンで死ぬ人を減らしてはいません。一方で、ガン検診が原因でガンになる人が増えていることも、やっぱり事実なんです。
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タグ:ガン