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2017年08月05日

豊穣と復活をもたらす母性の石“ガーネット”(柘榴石)

ガーネットのことを日本語で柘榴石と言うのは、赤い宝石のガーネットが、同じように赤い色をした柘榴の種子に似ているからである。英語のガーネット(garnet)もラテン語のgranatus(「多くの種子を持つ」の意)からきているので、やはり柘榴の種子を指していると言っていい。

Pomegranate.jpg

ところで、柘榴の果実にはおびただしい数の種子が詰まっている。そのせいか、柘榴は世界中で多産と豊作の象徴とされており、大地の恵みを司る地母神と関係が深い。柘榴に似ているガーネットにも、同じことが言える。

フランスに住んでいたヴィーヴルという地母神は、蛇の身体にコウモリの翼を持ったドラゴンで、その眼は真っ赤な宝石のガーネットだった。どういう訳か、ヴィーヴルの眼は取り外し可能で、川で水浴びをするときなど、水に濡れないように岸辺に置いておく習性があった。ヴィーヴルは美しい女性の姿をした精霊で、洞窟の中に財宝を隠し持っていたという伝承もある。しかし、美しい女性というのはあくまでも仮の姿で、本当はコウモリの翼、鷲の足、毒蛇の長い尾を持っており、額には小さな割れ目があって、そこに赤い宝石のガーネットが埋まっていたという。

Vouivre.jpg

ヴィーヴルの額にあるこの裂け目は、女性器を表している。これで若い男を誘惑するのである。ヴィーヴルが多産の象徴であるなら、それも不思議ではない。また、そのガーネットは単なる飾りではなく、この宝石のおかげでヴィーヴルは様々な魔法を使うことが出来た。そして人々にとっても、災いを防ぎ、幸運を呼ぶという力があった。このため、多くの人々がそれを奪おうと努力したようだ。これに煩わしさを感じたヴィーヴルは、やがて財宝と一緒に洞窟の中に身を隠し、入り口の扉を閉じてしまう。しかし、この扉は毎年復活祭前の日曜日になると、自然に開いたと言われている。

easter.jpg

復活祭はキリスト教の世界で最も重要な祝日だが、ヨーロッパに古くから伝わっていた豊穣を祈る祭りに始まったもので、春分の日を中心にした3月22日〜4月25日の間に行われる。この時期に、ヴィーヴルの洞窟の扉が開くのは、勿論冬が終わり、実りの季節が始まることを意味するのである。

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