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2017年06月17日

鳥獣の鳴き声を聞き分ける安倍晴明の“ロッククリスタル”(水晶)

非常に古い時代から、水晶はその内部に過去・現在・未来を映し出す水晶占いの道具としてよく知られている。このイメージはあまりにも強烈なので、水晶によって何かを占うと言えば、心を落ち着け、瞑想的な境地になって水晶を「見」、心に浮かんできたある種のイルージョンを解読する、という以外に方法はないと思っている人は多いかもしれない。だが、そうではないようだ。日本に残る伝承の中には、水晶を使って「見る」のではなく、水晶を使って「聞く」ことによって何かを占う事が出来るとしているものもあるからだ。平安時代の陰陽師、安倍晴明にまつわる伝説である。

水晶.jpg

安倍晴明の母、葛の葉は本来は雌狐で、かつて晴明の父、保名に命を助けられたことから人間に化けて保名の妻になったと言われている。この結婚から7年目の秋のことである。その季節、阿倍野にあった保名の屋敷の庭には美しい菊の花が咲き乱れていた。葛の葉はその美しさに思わずうっとりし、自分が仮の姿だということを忘れ、本来の姿を現してしまった。それを晴明が目撃した。このため葛の葉は人間界を去らなければならなくなるのだが、このとき母は形見として晴明に二つの品を残した。四寸四方の黄金の箱と水晶の玉である。これらの品はどちらも神秘的な魔力を秘めていた。黄金の箱は竜宮世界の秘符で、人間世界の出来事の全てを知る事が出来、水晶の玉はそれを耳に当てると、あらゆる鳥獣の鳴き声を理解する事が出来るという秘宝である。

葛の葉狐.jpg

こうして晴明は魔法の水晶玉を手に入れたのだが、やがてこの水晶玉が大いに役立つときがきた。声明は幼少から神童と呼ばれ、様々な書物を呼んで日夜研鑽に励み続けていたが、そんなある日、鳥が2羽舞い降りて来て何やらさえずるのを聞いた。晴明は急いで母の形見の水晶玉を取り出し耳に当てた。そして驚くべきことを知った。この頃天皇は重い病気に苦しんでいたが、その原因は御殿の北東の礎の下に生き埋めにされたヘビとカエルの怨念が、炎となって天に昇ったためだというのである。念のため、晴明は様々な占いを行ったが、結果(病の原因)は同じだった。

安倍晴明 狐.jpg

保名と晴明の親子は直ぐにも京へ上った。この頃朝廷では、天下一の陰陽師と評判の高かった芦屋道満が天皇の病を癒すためにあらゆる手段を尽くしていたが、少しも効果が上がらなかった。しかし、そこへ晴明たちが駆けつけるとたちまちのうちに病気の原因を取り除き、天皇の病を癒したのである。もちろん晴明の活躍は大いに認められた。この結果、晴明は五位を賜って昇殿を許されるようになり、かつ陰陽頭として召されることになったのだという。

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