2023年11月10日公開。監督は吉原正行。
崖っぷち蒸留所の再起に奮闘する若き女社長が、家族の絆をつなぐ”幻のウイスキー”復活を目指すお話です。
「駒田蒸留所へようこそ」 制作:P.A.WORKS 公開日:2023年11月10日 91分 監督:吉原正行 |
P.A.WORKSは富山県に本社を置くアニメ制作会社です。
「お仕事シリーズ」とよばれる、働く主人公(主に女の子)の成長を描いた作品を何本か製作しています。
その他にも多くの作品を制作しており、最近では「スキップとローファー」「パリピ孔明」などが挙げられます。
この映画は、「お仕事シリーズ」の劇場オリジナル作品です。
管理人は、2023年11月12日に映画館で鑑賞しましたが、控えめに言って「傑作」です。
90分の劇場作品として作られているので、余分なエピソードは省略し、王道のストーリーでガブリ寄りです。
ウィスキー製造というニッチなジャンルなので、配役として「ウィスキーの知識も仕事の意欲も希薄な若い記者」を観客の視点に据えて、彼をガイドにして物語が進んでいきます。
ヒロインはCVが早見沙織さんです。超ベテランで、EDの歌まで歌います。上手すぎる。
このキャスティングだけでも、かなり本気で作っているのが伺えます。
監督の吉原正行さんは、「攻殻機動隊SAC」の演出や「有頂天家族」の監督をやった人です。
才能がある人なので、名前を覚えておくと良いことがあります。
タイトルや題材が地味な雰囲気ですが、じつは相当本気で作った大人向け映画です。
もちろん子供が見ても楽しめますが、できれば働くことに迷いがある若い世代に観て欲しい。
なんかちょっと前向きになれる気がする。
P.A.WORKSの作品は、色が綺麗なことでも知られていますが、この映画でも密かに腕を振るっています。
冒頭、ロックアイスを入れたグラスにウィスキーを注ぎ、マドラでくるりとかき回すカットが出ますが、CGをフルに使ったすげえカッコいい絵です。氷やウィスキーやグラスの質感が素晴らしい。
主人公たちが乗った車の車窓から見える長野〜富山あたりの山並みや空の色などは、写真のようで絶品です。
全国から集められたウィスキーの原酒が入ったボトルがズラリと並んでいるカットは、それぞれが微妙な色の違いを見せていて、とても綺麗です。
「アニメでやる必要があるのか」という内容の作品ですが、「アニメだから表現できる微妙な色彩や質感のコントロールを味わいたまえ」という回答を非公式に出しておきます。
ウィスキーもアニメーションも、どちらも日本原産ではないけれど、長い時間をかけてじわじわ熟成していって、これだけのものが出来たっていうのが面白い。
良いものを作るには、時間と手間がかかるんですよ、っていう当たり前のことを教えてくれる映画でもあります。