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2020年09月17日

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える7

表3 情報の認知

A 表2と同じ。 情報の認知1  1、情報の認知1 2、 情報の認知1 2
B 表2と同じ。 情報の認知1  1、情報の認知1 2、 情報の認知1 2
C 表2と同じ。 情報の認知1  1、情報の認知1 2、 情報の認知1 2
D 表2と同じ。 情報の認知1  2、情報の認知1 2、 情報の認知1 2
E 表2と同じ。 情報の認知1  2、情報の認知1 2、 情報の認知1 2

A:情報の認知1は@ベースとプロファイル、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
B:情報の認知1は@ベースとプロファイル、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
C:情報の認知1は@ベースとプロファイル、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
D:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
E:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。   
結果  
  
 開高健は、この場面で心理的亡命者に太郎の特性を説明させている。戯れた痕跡ともいえる体臭がなく、子供特有の濁りもないため、子供全体に見る「組織の中の人間と心理的亡命者」から全体と個を考える「ベースと異なる複数のプロファイル」という執筆脳の組が相互に作用する。

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える6

【連想分析2】

情報の認知1(感覚情報)  
 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、Bその他の条件である。
 
情報の認知2(記憶と学習)  
 外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。

情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
 受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える5

分析例

1 私が太郎少年と部屋で会った場面。  
2 この小論では、「裸の王様」の執筆脳を「ベースと異なる複数のプロファイル」と考えているため、意味3の思考の流れ、プロファイルに注目する。  
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3プロファイル@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @ベース、Aプロファイル    
 
テキスト共生の公式   
 
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「組織の中の人間と心理的亡命者」を作る。
ステップ2:組織全体の中でその人を評価するため「ベースと異なる複数のプロファイル」という組を作り、解析の組と合わせる。

A:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ベース+Aプロファイルという組と合わせる。
B:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ベース+Aプロファイルという組と合わせる。
C:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ベース+Aプロファイルという組と合わせる。 
D:C嗅覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ベース+Aプロファイルという組と合わせる。
E:C嗅覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ベース+Aプロファイルという組と合わせる。   

結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える4

【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ

A 創造していたより太郎はひどい歪形をうけていた。彼は無口で内気で神経質そうな少年で、夫人とぼくが話しているあいだじゅう身じろぎもせず正しく椅子にかけていた。その端正さにはどことなく紳士を思わせるおとなびたものさえあった。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

B 寝室と書斎と応接室をかねたぼくの小部屋で会ったのだが、たいていの新人の子が目を輝かせる壁いっぱいの児童画に対しても彼はまったく興味を示さなかった。彼は窓からさしこむ日曜の正午すぎの日光を浴びて、ものうげに机の埃を眺めていた。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

C 母親が彼の名を口にだすたび、彼は敏感さと用心深さをまじえたすばやいまなざしでぼくの顔を伺い、僕がなんの反応も示さないとわかると、またもとの無表情にもどった。その白い、美しい横顔にぼくは深傷を感じた。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

D 子供には子供独特の体臭がある、ぼくはいつでもそれを自分の手足にかぐことができる。ぼくの皮膚そのものが子供のものではないかという気がするくらい、それは体にしみついている。
意味1 4、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

E 日なたでむれる藁のような、干し草のような、甘い鼻へむんとくる匂いである。子供はその生温かい異臭を髪や首や手足から発散させてひたおしに迫ってくる。ところが、太郎にはそんなむんむんしたにごりがまったく感じられなかったのである。意味1 4、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える3

3 データベースの作成・分析

 データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
 こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

【データベースの作成】

表1 「裸の王様」のデータベースのカラム

文法1 名詞の格 開高健の助詞の使い方を考える。
文法2 態 能動、受動、使役。
文法3 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法4 様相 可能、推量、義務、必然。
意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
意味3 思考の流れ プロファイルありなし 。
意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。購読脳「組織の中の人間と心理的亡命者」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能 ベースとプロファイル エキスパートシステム ベースとは円全体、プロファイルとはその弧のこと。  

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より







開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える2

2 「裸の王様」のLのストーリー

 開高健(1930−1989)は、現代について深く考え自分の問題を見出しながら、それを過去や未来の中に定着させようと試みる典型的な現代作家である。佐々木(2012)によると、社会における人間疎外の面が際立ち、専ら組織と人間の脈絡で人物を評価していく。
 「裸の王様」は、子供特有の体臭がない大田太郎という無口で神経質な少年の話である。描く画は、人形やチューリップばかりで人間が登場しない。となりの娘さんとしか遊ばないためであろう。父母の画が出てこないのは、太郎が孤独であり彼の不毛を説明している。
 読みだして、心の歪みやストレスが原因で起こる心の病気アスペルガー症候群が気になった。表情や身振りが乏しく、情緒的な交流ができず、活動や興味の範囲が狭いメンタルな症状である。
 小学二年の太郎は、部屋中に飾ってある児童画に興味を示さず、背を正して数時間は座っている気配が見られる。同じ画をいつも描き、アスペルガー症候群の軽度の症状が見て取れる。知的発達は正常で、自閉症のうち言語の発達も普通である。小さな子供にピアノや家庭教師さらに画の勉強となれば、父は子供にかまわず、母はかまい過ぎとなる。かまっても孤独からは抜けられない。後妻のためであろう。  
 一方、作者および作中の私は、一貫して心理的亡命者の立場にある。そこで、「裸の王様」の購読脳は、「組織の中の人間と心理的亡命者」にし、社会をベースに異なる役柄の人物を配置しているため、執筆脳は「ベースと複数の異なるプロファイル」にする。「裸の王様」のシナジーのメタファーは、「開高健と社会の中の人間」である。 
 なお、アスペルガー症候群の男女比は、4対1の割合で男性が上回り、対人相互作用などに強く関係する上側頭溝・紡錘状回・扁桃体・内側前頭前野・下前頭回などの脳全体に占める割合が、通常人と比べ相対的に低い。

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

開高健の「裸の王様」で執筆脳を考える1

1 先行研究

 文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
 執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。 
 筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
 なお、メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

花村嘉英(2020)「開高健の『裸の王様』の執筆脳について」より

2020年07月24日

三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える11

4 まとめ

 三浦綾子の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「道ありき」のLのストーリーをデータベース化して、最後に特定したところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
 これで人文から自然科学に向かう共生の研究として計算文学から病蹟学へのラインができた。問題解決の場面のみならず、未解決の場面でも病蹟学であれば実験の対象にすることができる。認知の柱をスライドさせながら、人文と他系列の調節をするだけでなく、認知科学をバラして、縦に言語の認知、横に情報の認知となるLのイメージを作ると、メゾのデータとして広義のシナジーのメタファーのために役に立つ。Lのイメージは、3次元のロジックと合わせると安定した箱になる。

参考文献

日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019
三浦綾子 道ありき(青春編2004、結婚編2003、信仰入門編2011) 新潮文庫

三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える10

表3 虚無とうつの認知プロセス

A 表2と同じ。情報の認知1 1、情報の認知1 2、情報の認知1 1
B 表2と同じ。情報の認知1 2、情報の認知1 2、情報の認知1 1
C 表2と同じ。情報の認知1 3、情報の認知1 2、情報の認知1 1
D 表2と同じ。情報の認知1 3、情報の認知1 2、情報の認知1 1
E 表2と同じ。情報の認知1 2、情報の認知1 2、情報の認知1 1

A:情報の認知1は@ベースとプロファイル、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
B:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
C:情報の認知1はB他の反応、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
D:情報の認知1はB他の反応、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
E:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。

結果

 三浦綾子は、この場面で、聖書を読んで外部から情報を取り込み、釈迦を思い虚無に関する共通の姿を宗教に見出した。そして、虚無の生活からの転機により計画から問題解決に到達している。そのため「虚無と愛情」と「虚無とうつ」という組が相互に作用する。

花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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