2013年度アカデミー賞において最多12部門にノミネート、ゴールデン・グローブ賞においても最多7部門にノミネートされ、"リンカーン"を演じる主演のダニエル・デイ＝ルイスが"男優賞"をすでに受賞しており、2012年を代表する作品のひとつ。

1999年にすでに企画の話があったが、脚本が変わり、主演が変わり、公開日が変わりと色々ありながら、2012年10月に行われた「ニューヨーク映画祭」でようやく上映まで漕ぎ付けた苦労作でもある。 当初はリーアム・ニーソンが"リンカーン"を演じ、2009年に公開する予定であった。


本作は第16代アメリカ合衆国大統領"エイブラハム・リンカーン"の暗殺されるまでの"4ヶ月"に焦点をあて製作されています。
奴隷解放の父として最も尊敬を集める大統領、やはりそのいい部分だけしか触れないのか、それともインディアンの迫害、虐殺の率先者でもあった部分も触れるのか、それとも全く違う視点で描かれるのか楽しみです。

製作にはスピルバーグ作品では御馴染みのキャスリーン・ケネディが参加、脚本はスピルバーグ監督の2005年の作品『ミュンヘン』を手掛けたトニー・クシュナーが最終執筆をしています。
監督はスティーヴン・スピルバーグ、出演はダニエル・デイ＝ルイス、サリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズ、ジョゼフ・ゴードン＝レヴィット、デヴィッド・ストラザーン、ウォルトン・ゴギンズ、 ジャッキー・アール・ヘイリー、他。


"リンカーン"を演じるのはイギリス稀代の演技派ダニエル・デイ＝ルイス。 有名な出演作としてはやはり1989年のジム・シェリダン監督の『マイ・レフトフット』と、2002年のマーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』。 2作品ともアカデミー賞で"主演男優賞"(前者)と"助演男優賞"(後者)を獲得しています。
またアカデミー賞で"主演男優賞"を2回受賞(『マイ・レフトフット』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)している歴代8人の中の一人で、本作でも2013年度アカデミー賞"主演男優賞"にノミネートされており、最有力候補となっています。 受賞すれば同賞では史上初の快挙となります。
既に2013年度ゴールデン・グローブ賞"男優賞"、英国アカデミー賞"主演男優賞"を受賞しています。
個人的にはダニエル・デイ＝ルイスの出演作では1992年の『ラスト・オブ・モヒカン』が一番好きです。

妻の"メアリー"にはサリー・フィールド。 彼女もアカデミー賞"主演女優賞"を2回受賞(『プレイス・イン・ザ・ハート』(1979)と『プレイス・イン・ザ・ハート』(1984))していることで有名です。 他にも『マグノリアの花たち』の"マリン"役や『フォレスト・ガンプ』の"フォレスト・ガンプ"の"母親"役が有名でしょう。
最近(2012年)、『アメージング・スパイダーマン』で"メイおばさん"役で6年ぶりにスクリーンに登場しており、同役での続編への出演も決定しています。

共産党のリーダーで議会史上最も影響力のある人物の一人といわれている"タデウス・スティーブンス"にはトミー・リー・ジョーンズ。
リンカーンの子で唯一生き残った長男"ロバート"にはジョゼフ・ゴードン＝レヴィット。
反奴隷制の議員の一人で、2人の大統領の下で国務次官を勤め、リンカーン暗殺同夜に同じく暗殺されかけた"ウィリアム・スワード"には、『ボーン』シリーズのCIA対テロ極秘調査局長"ノア・ヴォーゼン"役のデヴィッド・ストラザーン。

1865年1月、エイブラハム・リンカーンが大統領に再選されて、2カ月が経っていた。
国を二分した南北戦争は4年目に入り、大勢は大統領が率いる北軍に傾いていたが、リンカーンにはすぐさま戦争を終結させるつもりはなかった。
奴隷制度に永遠の別れを告げるため、たとえ多くの死者が出ても合衆国憲法修正第十三条を下院議会で批准する前に戦争を止めるわけにいかなかった。
リンカーンの妻のメアリー・トッドは南部出身で、夫とは口論が絶えず必ずしも、良好な関係とはいえなかったが、心の底で夫を信じていた。

リンカーンは国務長官ウィリアム・スワードを介して、議会工作を進めるべく指示する。
同じ共和党の保守派プレストン・ブレアを使って党の票をまとめても、成立させるためには20票、足りなかった。
リンカーンはあらゆる策を弄するように命じ、スワードはW.N.ビルボをはじめとするロビイストを駆使して、敵対する民主党議員の切り崩しにかかる。
その動きを冷ややかににみつめていたのは、奴隷解放急進派のタデウス・スティーブンスだった。 彼はリンカーンがどこかで妥協するのではないかと考えていた。

リンカーンにとってホッとできるのは末息子のタッドと過ごすひと時だけだった。 長男のロバートとは話す時間もなくぎくしゃくしていたが、ロバートは正義感で母の強硬な反対を押し切って、北軍に入隊してしまった。 リンカーンは無事な学生でいてほしいという父としての願いを抑え、ただ見守るしかなかった。

南北戦争の和平交渉が早く進む事態となって、リンカーンは1月25日、下院議会に合衆国憲法修正第十三条に提出する。
思惑と工作が蠢くなか、果たして多数派工作は成功したのか。 ひとり静かにホワイトハウスで結果を待つリンカーンだったが、その後に過酷な運命が待ち受けているとは予想もしていなかった･････

Daniel Day-Lewis