私は歴史学者ですが、時間や空間の遠い所を知るのが歴史学だと思っているんです。
「何故」は大事です。
例えば戦国大名の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人が今の愛知県出身なのは何故でしょう。
京都や奈良は寺や神社の力が強く、強い大名が育たなかった。
都に遠い地方は豪族が命令を聞かない。
中間の濃尾平野は地元の豪族が抵抗する為に山城を築く山もなく、強いリーダーが権力を集中し易かったんです。
人々の歩みを理解すると今も将来も役立つ。
歴史は過去を知り、将来に備える為に学ぶ。
私は歴史を靴に例えます。
日常生活は硝子だらけの浜辺みたいで裸足で歩くと危険。
世の中を安全に歩くには靴が必要です。
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」とも話します。
全く同じではないが、ラップで似た音を繰り返す様に似た出来事は起きる。
例えば震災。
地震や津波の歴史を知れば次に備えられる。
「大地震では山へ」
歴史には「因果関係」、原因と結果があり、そうなった理由を考えると、似た事が起きた時に役立つ。
教科書に載っている事だけが歴史ではない。
無味乾燥な年号や人名を暗記するのは詰まらないけれど実は歴史は楽しい。
皆さんの家や学校、地域、親が働く会社にも歴史がある。
歴史学は他人を理解する作業。
自分と違う時間や空間を生きる人の姿を理解しようとする営みです。
私は子供の頃、図書館で同じ日の新聞を全部比べ、如何違うかもよく考えました。
ネットで検索すれば事実は直ぐ分かる。
人間に有って A I にないのは何かをよく考え調べる力。
基礎知識を得て問いを立てる。
良い問いを立てられたら、もう勉強の3分の1はできています。
周りの目を気にし過ぎず、自分の時間を大切に使い、本当にやりたい事をやるのが大事です。
最後に、実体験は大切だと伝えたい。
教科書の歴史はバーチャル。
それだけでは駄目。
本物を見ましょう。
実体験とバーチャルの間を往復すると良い。
歴史家 磯田 道史さん 1970年岡山市生まれ。 慶応大大学院博士課程修了。
国際日本文化研究センター教授。 「天災から日本史を読み直す」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
NHK 大河ドラマ「西郷どん」の時代考証も担当した。
「歴史とは靴である」「武士の家計簿」などの本を書いている。
愛媛新聞 14歳の君へから
歴史は過去を知り、将来に備える為に学ぶ。
歴史は繰り返さないが韻を踏む。
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