穏やかに穏やかに、今日も何気なく過ぎゆく昼下がり。。。まるで非日常の様な美しいプルメリア島に住む人々にも各々のそれぞれの日常。。。
海の家クワタは相変わらずいつものにぎわいで。
「さっきまでの。。。なんだか。。なんか誰かいた感覚がなくなってる」時間があるときはいつもサーバーとしても働いているクワタの三男坊のミリオンが首をかしげる。。。
「誰かいた。。。って。。こんなにもお客さんもいるのに。。どういう事。。」リリコが不思議がると。。「なんでもない、気のせい、気のせい。。」ミリオンは、まさかまさかの幽霊でもいるんじゃないか、という事は馬鹿馬鹿しすぎてあり得ない。。口が裂けても言えなかった。オカルト、幽霊なんかいるわけないしでも。。。なんなんだろう。確かに。。お店の空気感が変わったというか。。ガラッとではなく、なんとなく。。別に淀んだ空気ではなかったし、ちょっと無い、いつもの軽やかさじゃない軽やかな感じ。楽しげな軽やかさからいつものにぎわいの楽しげな。。。だから、わからないぐらいに微妙な違いなんだろうけどな。
「さっきのさ。。東京のイシナベーヌのご主人が帰られたからなんじゃない。というか。。幽霊。。なんか、あるじゃん、初めての部屋や場所に入って、これは思い嫌な感じとか、目に見えない空間を感じる感覚。。僕も。。なんだろう、なんだか。さっきとは空気が変わった感じがする。」駿栄が言うと一緒に来た友人の饗は「気のせいじゃないの。。俺もちょっと、なんかそんな気がしないでもないけどなー、まぁ、俺は霊感なんかないからさ。あるにせよ。別に悪いもんじゃないなら問題無し。むしろ、座敷童子とか、こういうお客商売の店はいい幽霊が出入りするぐらいの方が繁盛するんじゃないの。あ、でも。。あ、まてよほらっ、ここに来る前のオーガストさんのあの、、ストレリチアの。花畑の、あの空気じゃね新鮮というか、ワクワクするような、あー、まさか。。あの、」「あー、綺麗だね、極楽鳥花。港近くにいい感じで味のある古民家と綺麗なストレリチアの花畑があるけど。。。あそこの人の知り合いストレリチアも
明るい元気な花だし、店子受けもいいからうちもたまにマンションのロビーやエントランスに活けるんだけど。」マンションを幾つか持っているアポロンが特に玄関、エントランスにこだわりを持っていると笑う「つい先日、たまたまこの駿栄と一緒に店の掃除当番で仕事が終わって朝帰った時に乗ったプレゼンスタクシーに、大きく24って名刺があって。横にオーガストって書いてあるから、駿栄と思わず顔を見合わせてあっ、これって。。オーガストさんって名前。。で、オーガスト、8月。8月24って俺らの誕生日じゃね?え、あの、運転手さん、俺もこの駿栄もたまたま。。。8月24日生まれなんだけど、しかも、同い年で、もしかして、運転手さんも。。この名刺、8月24日産まれって聞いたらやっぱそうでさ、兄がマーチ、姉がエイプリルと、誕生月で兄弟の名付けされて、
8月生まれにちなんで。。名前がオーガストになったんで、
会社の社員ナンバーも、いつも乗ってるハイヤーのナンバーも24だから名刺をオーガスト24にしたんだって、たまたまその日は、人手が足りなくてハイヤーじゃなかったけど。それで、みんな駿栄も俺もおんなじ誕生日って事で意気投合したというか。。。俺も店にくるハイヤーを使うお客を紹介したりして、お礼にストレリチア好きなだけ切って持ってっていいって。。。」饗が言うと、リリコが、「あっ、私、朝ここにオーガストさんに送迎して貰ったわよ。昨日はハイヤー貸し切りだったけど。今日は、残念ながら、オーガストさんに最初から仕事が入ってて朝だけ送って貰ったけど昨日の木蓮寺でも評判いいみたいね、オーガストさんは。今日は東京から来たお客さんのTV局の送迎があるみたいね。ほら、成功した社長さんとか。ドキュメンタリーの番組、メトロポリタンTVであるでしょう。結構、頻繁にTV局の送迎もやってるみたいだし。まぁ、大切なお客様もオーガストさんなら安心だろうしね。なんだかんだで昨日は取材にも付き合ってもらったし。あ、でも。。私は霊感って全然無いから。。わからないけど、幽霊も見えるそうよ。。ほら、プルメリア島で少し前に発見された。。あの白骨死体の。。派手な。イケメンの、。キンキラキンのハリネズミの骸骨のタトゥーの人、あの人、この島にいて時々話すんだって。昨日、取材した木蓮寺のベルモちゃんも幽霊が見える体質みたいでだいたい夜、うちで吾朗太さんが寝泊まりしてる、って、私は霊感。。無いし、視えないから、よくわからないんだけど。」リリコがそう言うと、ミリオンが、「幽霊。。ねぇ。。ウーン。。」超現実主義のミリオンはオカルトやスピリチュアルや幽霊話が怖いと言う意味ではなくなんだか馬鹿馬鹿しくて受け入れられない。桑田家の菩提寺が木蓮寺だけど葬式はまだしも何年も何年も、区切り区切りと法事をやって客を引っ張って金を引っ張って戒名など金を積みオプションでいい戒名にするなど全くおかしいんじゃないか。お墓も維持費で負の遺産だし。店に飲みに来た常連さんと話していて今はもうほとんどないだろうけど昔、家や墓の為に家を出る事を許されず結婚できず、墓守り跡取りだのと亡くなった人に人生を狂わされるなんて死んでからも自分を優先しやがれって毒先祖じゃなかろうか、そんな考えはおかしい。有り得ない桑田家は代々たまたま跡取りがいて奇跡的に家が続いてるけどたまたま。。。大将みたいに家を継ぎたい人が誰か一人はいつも桑田家の子どもとしていつも産まれてきたからであって。大将の兄弟みたいに絶対に家を継ぎたくないから外に出ていく子どもしか産まれてこない場合だってあるし。それを無理矢理墓を守れとか家を絶やすなって変なカルト宗教じゃないかまともな先祖なら子孫の幸せを願って何年も何年も金や時間をかけて法事しろとかわざわざ忙しい人達を集めて何年たっても俺の為に俺を供養しやがれって考えないだろう、葬式にも結構金がかかるらしいし。。寺はぼったくりヤクザか大将に騙されるな、目を覚ました方がいいカルト宗教だしと言って大将に叱られたカルト宗教だなんて。。木蓮寺はそんなお寺ではないし。今はもうそんな無理矢理墓を、家をってわけでもないし。ご先祖様へ感謝の気持ちをこちらから形にする事も大事だってことでも。。ミリオンはイマイチ。お寺や宗教の悪口を言うものの。。なんだかんだで小さい頃から桑田の大将にくっついて大将の用事で菩提寺の木蓮寺に行く事はあるし。もちろん、面と向かって木蓮寺で木蓮和尚には言わないけどうわぁ。。この敷地。。建物。。感謝、感謝と信者にありがたがらせて。。上手いこと言ってお金が集まってくるのか。。。
ベルモに会って顔を見れば木蓮和尚のいないところでは。宗教、宗教と揶揄したりヤジを飛ばしたり。ミリオンもなかなかの名高い代々続く立派な老舗旅館の息子だけれど。歴史ある文化財産のお寺の令嬢には、悔しいがなんだか負けた気がするのだ。