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2009年11月09日

角川春樹

映画の力を信じて、ブレずに作った〜『笑う警官』の監督・角川春樹さん(前編)
 映像と出版のメディアミックス戦略で一世を風靡し、次に何をするのかが常に注目される存在、角川春樹さん。12年ぶりの監督作は、警察の組織ぐるみの汚職という実際の事件をベースにした『笑う警官』。シリーズ累計150万部を越える佐々木譲のベストセラー小説を原作に、限られた時間の中で警察組織と現場の警官たちのスリリングな攻防を描く。

日本にはなかったタイプのサスペンス――この映画では、殺人の容疑者にされた警官を助けるために、現場の警官たちが組織のキャリアと対峙します。『時をかける少女』以来、実に12年ぶりの監督作品ですが、原作のどの部分に惹かれて映画化を決めたのでしょう。

 普通、警察小説というのは“犯人対警官”、もしくは“犯罪組織対警官”という構図ですよね。ところがこの小説の中では、殺害されたのも、容疑者も、犯人を追うのもすべて警官。そこがまず面白かった。タイムリミットを設定した“警察対警官”のミステリーは、これまでの日本映画にはなかったと思います。

 警察はキャリアが支配する上意下達の世界ですが、組織の正義と警官個人の正義は違うんです。堺屋太一さんは「組織は腐敗していくものだ」と言っていますが、その最たるものが警察。しかも原作は、北海道警察の裏金作りや、拳銃摘発のエースが起こした覚せい剤密売事件といった、現実に起きた事件をもとにしています。



――信じたくはありませんが、ありえないドラマではないということですね。

 そういうことです。ただし、いわゆる社会派の告発映画ではなく、事実を踏まえつつどうエンターテインメントとして見せるかを考えました。『アメリカン・ギャングスター』というアメリカ映画がありますが、この映画では警察とマフィアが裏でつながっている。ドラマだけの話だと思ったら、実話にもとづいていると聞いて“エッ……”。多くの人に見てもらって、後で「事実だったのか!」と驚いてもらうのがいい。

 今当たっている映画はコミックやテレビの総集編ばかりです。若い世代は話題になったものを見たがり、それが映画だという固定観念ができてしまっている。しかもテレビでオンエアするには毒があってはいけない。映画を通して考えさせることがないんですね。だからこそ映画の底力を信じて、ブレることなく大人向けの映画を作ろうと思いました。頭の中にイメージしていたのは『L.A.コンフィデンシャル』。それと自分の監督作ですが『キャバレー』ですね。スタッフやキャストに何を望んでいるかを知ってもらうことは大事なので、DVDを全員に配りました。


みんなで苦しみ、みんなで作った――角川映画は、”読んでから観るか、観てから読むか”という流行語を生み出したり、斬新な宣伝で時代をリードしてきました。12年ぶりの監督作品ということでプレッシャーはありませんでしたか。

 実は、監督することは撮影の3週間前に決めたんです。それからシナリオを書き直して、ロケハンやって、衣装合わせをして……。脚本ができあがったのはクランク・インの前日。逆境に強いんです。でもそれは映画には関係ありません。どんなに苦労しようが楽をしようが、出来上がった作品が勝負。100メートルを10秒で走りながらフルマラソンをやってるような感覚でしたね。重圧どころか、エネルギーをためて一気呵成に撮りました。雨も風も曇天も晴天もすべて天の恵みとして利用しようと思っていた。



――となると、常に素早い判断が必要とされたのでは?

 毎日が決断でしたね。スタッフの中には黒澤明監督についた人もいるんですが、その方から「黒澤さん以来の緊張した現場です」と言われました。50年も映画をやってるようなべテランに、クランク・アップの時に花束を渡したら彼らが号泣したんですよ。カメラマンの仙元誠三君と照明の渡辺三雄さんですが――。「初めて泣きました」って。それだけみんなで苦しんだし、みんなで作ったという気持ちが強かった。

 佐々木譲さんには、「3週間で撮ったなんて、それだけで映画になる」と言われました。題して『笑う監督』。いいでしょ?。そりゃもう苦しみましたから、自分にとって特別な映画になりましたね。


――監督は完全主義者というイメージが強かったので、意外な気がします。

 本来はワンマンですが、柔軟にやりました。役者から”こういうセリフはどうだろう”と話があれば、”うん、じゃあやってみよう”と。スタッフの意見もどんどん取り入れました。

 それと今回は、有り得ないようなシンクロニシティがたくさんあった。たとえば、どんな映画でも撮影終了のクランク・アップは延びてしまうものですが、全部スケジュール通りにいった。そしてラストを撮ったのはアップの予定日、父の命日でした。しかも私は映画の中でジュリー・ロンドンの「バイ・バイ・ブラックバード」を使っているんですが、佐々木譲さんは、ずっとこの曲を聞きながら書いていたという……。いつも小説を書くときはテーマ曲を決めるらしいですね。後から知ってびっくりしました。というかゾッとしました。



(後編に続きます。)



角川 春樹(かどかわ はるき)

1942年・富山県出身。65年に角川書店入社。75年に角川春樹事務所を設立し、映画のプロデュースを始める。映像と出版を融合させ、”読んでから観るか、観てから読むか”をキャッチコピーに『犬神家の一族』『野性の証明』『セーラー服と機関銃』『時をかける少女』などをヒットさせる。プロデュース作品は70本を越え、句集、著作も多い。

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