2008年10月11日
ニューヨーク発の、冷たい鉄砲水が地球をひと回りする
頭上にはきのうと同じ秋空が広がるのに、心は沈み、人知れず涙が伝う。挫折をそんな風に引きずると、立て直す努力が遅れて逆境が強まりかねない。経済を覆う空気にも似たところがあって、どこかで切り替えが要る▼株をお持ちであれば、気の重い連休だろう。内外の株価は下げ続け、日経平均は今週だけで24%落ち込んだ。売りが売りを呼ぶ、弱気のらせん階段。3日前に相場格言の「見切り千両」に触れたが、こうなってみれば、あそこで見切る勇気は「万両」に値した▼ニューヨーク発の、冷たい鉄砲水が地球をひと回りするたび、世界経済の体温が下がる。いやはや、グローバル時代の金融パニックは足が速い。市場の動揺が厄介なのは、株や投資に縁のない者まで巻き込むことだ▼トヨタ自動車の利益が円高で何千億円も飛ぶと聞けば、雇用や消費など、経済の本丸への波及を思わざるを得ない。株安のあおりで大和生命が破綻(はたん)した。上場している不動産投信が初めて行き詰まるなど、土地や建物絡みの不振も深刻だ▼市場は、火元米国の政府に「切り替えの材料」を催促している。ぬれ手で粟(あわ)の金もうけと、借金による消費ざんまい。そのツケが海を越えて暮らしを脅かす。なんとも受け入れがたい現実ながら、米経済の危機は突き放すには重すぎる▼古来、投資家たちは「朝の来ない夜はなし」「夜明け前が一番暗い」と己を励ましてきた。この夜、どれほど続くか分からない。連休の予報はおおむね高い空。それなのに、家計のあすも解散の日程も霧の中である。