2016年10月23日
日高舞「あー……もうつまんない!」
アイドルマスターDSの日高舞さんの話です。
独自設定の上で書いていますので、違和感があるかもしれませんがよろしくお願いします。
舞「なんかつまんない」
舞「どいつもこいつも私の足元にも及ばない。張り合いなくて舞ちゃんつまんない」
舞「どっかに私のライバルに相応しいアイドルは居ないものかね〜」
〜〜♪
舞「ん? なかなか上手いじゃない。どっから聞こえるのかしら」
レッスンスタジオ
小鳥「〜〜♪」
小鳥「よし、今日はいい感じね。日頃の妄想……じゃなくて! イメトレ、そう! イメトレの成果が出ているわ!」
小鳥「これで本番でも失敗しなければ、今頃あたしもテレビに出れてるはずなのになぁ」
小鳥「でもこの程度の事でへこたれてちゃ駄目よ、小鳥!」
小鳥「いつかあの空に羽ばたいていくって誓ったじゃない!」
小鳥「よぉし! やるわよ!」
レッスンスタジオ外
舞「ふぅん……。なんか面白い娘ね」
舞「『小鳥』って言うのね。覚えておきましょ」
次の日 テレビ局
舞「……」
番組D「ね、舞ちゃん。頼むよぉ〜。ね、とりあえず舞ちゃん出てくれれば数字バッチリだからさ〜」
舞「やだ。面白くない」
番組D「お願いだからさ〜。じゃあ、わかった。舞ちゃんが気に入らないとこは変えるよ。どこ?」
舞「全部」
番組D「はははっ、冗談きついなぁ〜」
舞(はぁ……つまんない)
舞(今日もあの娘はレッスンしてるのかしら)
番組D「あと少しでオーディションあるからさ〜。今のうちに打ち合わせ終わらせときたいんだよ〜、だからお願い。ね?」
舞「いや。私に負けて泣くだけのアイドルと戦ってもつまんない」
舞「負けてもへこたれず立ち向かってくるような娘が居るなら私も考えるけど」
番組D「それなら一押しの娘が居るよ! 美城プロさんとこの娘さんでね」
舞「わかったわよ。資料頂戴。見てから考えるわ」
番組D「さすが! 舞ちゃんは優しいね! はい」
舞「ふーん……気は強そうね……」
舞「ん? この娘……」
番組D「ん? ああ、その娘ね。今日のオーディションに出る娘だよ」
舞(音無……小鳥……)
番組D「でもその娘じゃ舞ちゃんの相手にならないね〜。何度も僕の番組のオーディション受けてるけど、毎回失敗ばかりでさ。プロ意識が低いんだよ」
舞「出るわ」
番組D「え?」
舞「だから出るって言ってるの。この番組に」
番組D「本当かい!? いやぁ〜助かるよ〜。これでまた視聴率うなぎのぼりだね!」
舞「でも条件があるわ」
番組D「なになに? なんでも聞いちゃうよ!」
舞「この『音無小鳥』って娘と戦いたいから、この娘を出しなさい」
番組D「ええ!? この娘じゃ話にならないよ!?」
舞「『音無小鳥』が出ないなら私も出ないわ」
番組D「でも、今日のオーディションの結果次第だからなぁ〜……」
舞「どうせ、お金もらってるそのどっかのプロダクションの娘とやらが合格なんでしょ」
舞「そんなアイドルに興味ないの。どうせ八百長ならこの『音無小鳥』を合格させなさい」
番組D「そんなこと言われても困るんだけどなぁ〜……」
舞「私からの条件は出したわよ。この条件が飲めるなら出てあげる。飲めないなら出ない。わかったわね」
舞「疲れたから帰るわ。決まったらうちのプロデューサーに連絡して」
テレビ局 廊下
舞(この『音無小鳥』が私のライバルに相応しいかはわからない。でも私の予感がこの娘だって言ってる)
舞(やっと巡り会えた私のライバル)
舞「さぁ、楽しみになってきたわね!」
数日後 事務所
P「舞、なんか例の件承諾しましたって連絡が番組Dさんから来たけど、なんだこれ」
舞「そう。わかったわ」
P「なぁ。また俺に無断で何かしてないか? お前の尻拭いするこっちの事も考えてくれないか?」
舞「別に何もしてないわよ。ただ、金の力の八百長を私の権力での八百長に変えてきただけ」
舞「あんたが頭下げなきゃいけないような事態にはならないわ」
P「やっぱり何かしてるじゃないか! また謝りにいかないといけないじゃないか!」
舞「何よ。文句あるなら私を満足させてみなさいよ」
P「……それに関してはすまん」
P「まさか舞にここまで才能があるとは思わなかったからな……」
舞「はぁ? 才能あると思ったからスカウトしたんじゃないわけ?」
P「いや、才能はあると思ったよ。何せ一目惚れだったし」
舞「な、ばっかじゃないの!」
P「いや、本気で一目見て舞ならトップアイドルになれるって思ったんだよ」
P「俺の先輩の言葉を借りると『ティンときた!』ってやつだな」
舞「そっちね……。はいはい……。びっくりさせないでよ。まったく……」
P「勿論。女性としてもべた惚れだけどな」
舞「そういう事言うならもっと雰囲気選びなさいよ!」
P「はいはい。照れるな照れるな」
舞「まったく……」
P「で、話を戻すと、だが」
P「俺は舞の才能に惚れ込んだ。これは事実」
P「でも、まさか周囲に敵無しになっちまうくらいの才能とは思ってなかった」
舞「……」
P「実際つまんないだろ。アイドル」
舞「そうね。つまんないわ」
P「アイドルに関してだけじゃないけど、やっぱ自分と同じレベルで張り合えるライバルって必要なんだよな」
P「何をやるにしても周囲に自分しか居ない状態じゃ何も面白くない」
P「競い合ってお互い高めあっていくからこそ、やりがいとか楽しさってのが生まれるんだと思うんだよ」
P「だから舞を満足させれないってのは俺の怠慢だ。謝って許されることじゃないが、謝ることしか出来ん」
舞「あんたがいくら謝ってもしょうがないでしょ。実際、舞ちゃんが強すぎるのが悪いんだし」
舞「それに、面白そうな娘なら見つけたのよ」
舞「その娘と会うために今回やらかしたの」
P「……そういうことなら仕方ないな。まぁ、俺が頭下げてどうにかなるうちはなんとでもしてやるさ」
舞「……ありがと」
P「この業界に巻き込んだからには最後まで面倒みるさ。死ぬほど面倒くさいけど」
P「で、その面白そうな娘ってどんな娘だ?」
後日
レッスンスタジオ 付近
〜〜♪
舞(聴こえるってことは居るのね)
舞(……ここで私が突撃したらどうなるかしら)
舞(……)
レッスンスタジオ内
舞「どうも〜。こんにちは〜」
小鳥「はえ? え? どちら様ですか?」
舞「まぁ、気にしないで。ちょっと見てて良いわよね」
小鳥「え、えぇ……、良いですけど……」
小鳥「まだ、あたしが使える時間よ……ね?」
舞(おー混乱しとる混乱しとる)
舞(それにしてもいくら変装してるとは言え、この舞ちゃんのことが分からないとは……)
小鳥「えっと……」
舞「良いから。続き」
小鳥「は、はい!」
小鳥「〜……〜〜♪」
舞(ふーん……)
舞「ねぇ」
小鳥「は、はい! なんでしょうか!」
舞「どうしてそんなつまんなさそうに歌うの?」
小鳥「え……?」
舞「あんたの歌、つまんない」
舞「前に聞いた時の方がよっぽど良かったわ」
小鳥「いや……でも……」
舞「なに?」
小鳥「今は本気の歌なんです! 音は外さないし、ビブラートだって綺麗にできてます!」
舞「上手い下手じゃなくて、つまんないって言ってるの」
舞「あんたの歌、すごくつまんない」
舞「歌ってて楽しい? 楽しくないでしょ?」
小鳥「でも上手く歌わないとオーディションに合格出来ないですし……」
舞「合格するために歌ってるわけね。そりゃつまんないわ」
舞「どうやら見込み違いだったみたいね。帰るわ。バイバイ」
小鳥「ちょっ……待って……」
舞(はぁ……。私の勘違いか……)
舞「つまんないわ」
事務所
舞「ただいま……」
P「おお、おかえり。どうした何かあったか」
舞「何もないわよ。なーんにもなかったわ」
P「まぁ、話したくなったら話せよ」
P「それよりもあの番組の事なんだが」
舞「やっぱそれ出るのやめるわ」
P「まじか」
舞「やけにあっさりね。何にも言わないの? どして?」
P「ああ、番組Dさん飛ばされた。番組も無かった事になった」
舞「はぁ? どうしてよ?」
P「実はスポンサーのお気に入りのアイドルを合格させるはずだったんだが、舞がゴネただろう? それで番組Dさん渋々舞の提案飲んだら、スポンサーさん大激怒。で、左遷ってわけ」
舞「そんな事で飛ばされるの?」
P「大人の世界ってのは色々面倒くさいんだよ」
P「まぁ、舞はまだ子供だし知らなくて良いんだけどな」
舞「……悪い事したわね」
P「舞が気にすることじゃないさ。そもそも八百長してるのが悪いんだしな」
P「それよりも舞が見つけてきたって娘のレッスン覗いてきたんだろ? どうだった?」
舞「見込み違いだったわ。私の勘違い。もういいの」
P「舞が良いなら良いけど……」
舞「はぁ……」
P「ちょっと好奇心で聞くが、なんで勘違いだと思ったんだ?」
舞「つまんなかったのよ」
P「は?」
舞「小鳥の歌が」
P「小鳥?」
舞「面白そうだった娘の名前」
P「音無小鳥か?」
舞「なによ。知ってたの?」
P「直接知ってるわけじゃないけど、俺の先輩がプロデュースしてるぞ。なんでもすごく才能あるけどメンタルが弱くて未だにオーディションに合格出来ないって言ってたけど」
P「そうか、音無小鳥だったか。舞も気に入るってことは相当だったんだな」
舞「でももう駄目よ。あの娘、あんなにつまんなさそうに歌うなんてアイドル失格」
P「手厳しいな」
舞「私も同じだもの。つまんなさそうにアイドルしてる私と同じだから」
P「なるほどな……。音無小鳥も勿体ないな。舞にそこまで言われるアイドルなんて他に居ないっていうのに」
舞「もう良いのよ。私が何しようが仕方ないわ」
舞「どうせその娘が居てもつまんないでしょうし」
P「ふむ……」
数日後
事務所
P「舞! 喜べ! 音無小鳥と共演できるぞ!」
舞「はぁ? その番組ポシャったんでしょ?」
P「ああ! だから別で企画書作って通してきた」
舞「は?」
P「だから。別。テレビ中継も入るイベントだけどな」
P「舞に挑戦したいアイドル募って、舞と戦っていくんだが、審査員は観客による投票で行う」
P「不正のしようがない公平な土俵で真剣勝負ができるって寸法だ」
舞「観客買収されてたらどうするのよ。ちょっと金ばらまけば局のスタジオに収容できる観客なんて余裕よ」
P「そりゃ、局のスタジオならな。だが、会場は武道館だ」
舞「は? ぶどう?」
P「ああ、武道館だ。しかも、観客の選別は参加するアイドルのプロダクションのプロデューサーが行う。つまり俺とか、音無小鳥のプロデューサーである先輩とかがな」
P「だから不正は一切ない。全力で楽しんで来い」
舞「はー……もう呆れて笑えてきちゃうわ」
舞「予算とか現実的な問題はどうするつもりなのよ」
P「そこはまぁ、だいぶ無理言って回ってきたよ」
舞「よく金だしてくれたわね?」
P「そこは『舞が居るんです。絶対に後悔はさせません』って言ったら納得してくれたよ」
P「ただ、このイベントが失敗したら俺の命はやばい。だから、俺の命、舞に預けたからな」
舞「あっはっはっは! あんた本当に馬鹿ねぇ。良いわよ! やってやるわよ!」
P「ああ、それでこそ舞だな!」
舞「ついでにそこで引退してやるわ! 日高舞ラストライブなら視聴率も、後に映像化した時の売り上げも見込めるでしょ!」
P「おお、じゃあタイトルは『日高舞引退! 難攻不落の日高舞に挑め!』でどうだ!」
舞「致命的なまでにダサいわね……」
P「そうか? 良いと思うんだが……」
舞「『LIVEバトル』で良いわ。シンプルだし、何より私と戦うってコンセプトならバトルでしょ」
P「OKOK。じゃあ『LIVEバトル 日高舞最後の勝負』でいこう」
舞「なんでそうダサいサブタイつけるのよ……」
三か月後
武道館 楽屋
舞「すごい客数ね」
P「日高舞引退!って銘打ったらチケット瞬殺だったからな」
P「撮影機材で取ってた場所少し空けたりして席を作ったんだが、それでもチケット取れないってクレームの嵐」
P「テレビ中継されるってのに、結局全国の映画館にも生中継することになった」
舞「そんな凄い事になってたのね」
P「ああ、アイドルのライブでこんな規模になるのなんて前代未聞だぞ。おかげで運営スタッフは虫の息だ」
舞「どおりで何人か転がってるわけね」
P「かくいう俺も三日くらいまともに寝てないからな。死にそうだ」
舞「死ぬのは勝手だけど、迷惑かからないとこで死んでよ」
P「はいはいわかってるよ」
コンコン
P「ん。はいはい。今開けますよ」
小鳥「し、失礼します! 今日、ご一緒させていただくおおお音無小鳥と申します!」
小鳥「日高さんと共演できるなんて光栄の極みです! 本日はよろしくお願い致します!」
P「おー、君が先輩のとこの娘か。今日はお手柔らかにね」
舞「どうしてあんたが言うのよ……」
P「いや、先輩のとこの娘に何か失礼があってはだね」
舞「はいはい、わかったわよ」
舞「で、あんたは今日もつまんなさそうに歌うわけ?」
小鳥「……? あ! あのレッスンの時の!」
舞「やっぱ気づいてなかったのか」
小鳥「え……、じゃああたしは舞さんに向かってあんな事を……」
舞「はいはい、気にしてないから。どうせ私は今日で芸能界からおさらばするんだし、どうでも良いわよ」
小鳥「……アイドル辞めちゃうんですね」
舞「ええ、つまんないからね」
舞「で、あんたは今日もつまんない歌を私に聴かせてくれるんでしょ? さっさと帰ったら?」
P「こら! あんまり脅かすんじゃない! 怖がってるだろ!」
小鳥「あ、いえ……大丈夫、です」
小鳥「あの、あの日、舞さんに言われてからプロデューサーさんと一緒に考えたんです」
舞「……」
小鳥「あの時は初めて合格もらったオーディションを取り消されちゃってちょっとムシャクシャしてて……」
小鳥「あたしって本番に弱くて、もっと上手くならなきゃって焦ってたんです」
小鳥「でも舞さんに『つまんない』って言われて、考え直したんです」
小鳥「あたしは歌うのが楽しくてアイドルになったんです! だから、今日はあたし、全力で楽しむために来ました!」
小鳥「舞さん。あたしはあなたを倒します! あなたを倒してトップアイドルになって引退するんです!」
舞「へぇ……、面白いじゃない」
舞「売られた喧嘩は買わないわけにはいかないわね」
舞「全力で叩き潰してあげるから、かかってらっしゃい」
小鳥「ま、負けません!」
小鳥「……じゃあ! これで失礼します! ステージでお会いしましょう!」
P「……随分良い笑顔だな?」
舞「これが笑わずに居られる? やっとライバルに巡り会えたのよ?」
舞「私は今日で引退だから、今までの分と、これからの分、まとめて今日一日で相手してあげるわ」
P「あの娘も」
舞「?」
P「あの娘も今日で引退らしいぞ」
舞「なんでよ?」
P「会社の方針らしい。アイドルの育成には金がかかる。一定以上の投資をして芽が出なければ切られるんだそうだ」
舞「何よそれ」
P「大人の世界はいろいろあるんだよ」
舞「理不尽よ!」
P「ああ、理不尽だな。でもな、舞。あの娘は本来もっと早く引退するはずだったんだ」
P「でも、あの娘が今日のLIVEバトルに出たいから待ってくれって頼み込んだらしい」
P「舞と戦って勝ってからじゃないと引退してもしきれないって」
舞「……」
P「舞?」
舞「良い度胸じゃない! ますます気に入ったわ!」
舞「全力で叩き潰してあげるわ!」
本番 ステージ上
司会『さぁ! 始まりました! 「LIVEバトル vs日高舞」!』
司会『今日で引退を表明している日高舞の最後の舞台ということもあり、前代未聞の規模での開催となりました!』
司会『さて、本日のルール説明ですが! 本日の意ステージは、有名無名問わず、日高舞に挑む勇気のあるアイドル達が日高舞と直接対決するというもの! 勝敗に関しては日高舞に挑戦する3人のアイドルによるステージパフォーマンスの後に、日高舞がパフォーマンス! その後、一番良かったアイドルに、この会場の観客の皆様に投票してもらいます!』
司会『そして一番投票数が多かったアイドルが、勝者となり! トップアイドルの称号を手に入れます!』
司会『では、王者日高舞に挑むアイドルは、この娘達だぁ!』
本番 日高舞楽屋
舞「……」
P「見みなくて良いのか?」
舞「小鳥の番になったら袖で見るわ」
P「他二人は眼中になしか?」
舞「ええ、今の私のライバルは音無小鳥ただ一人だから」
舞「他には興味ないわ」
P「酷い言いぐさだな。一応お前に挑む勇気のあるアイドルだってのに」
舞「勇気なんてないわよ。挨拶に来た時の態度ですでに見て取れるわ」
舞「小鳥以外、誰も私に勝つ気なんてなかったわ」
舞「そんな連中相手にしてもつまんないだけよ」
P「ははっ。それもそうか」
舞「あんたは見てなくていいの? 敵情視察もプロデューサーの仕事でしょ?」
P「舞が負けるわけないからなぁ。見てだけ無駄だよ」
P「だから今は、アイドル日高舞との最後の時間を一緒に過ごすよ」
舞「今日が終われば私はアイドルじゃなくなるのよね」
P「ああ、そうだな」
舞「そっか……」
P「アイドル、楽しかったか?」
舞「んー、どうだろ。最初は楽しかったわよ」
舞「でも途中からつまんなくなった」
舞「なんでかわかんなかったけど、あんたが前に言ってたようにライバルが居なかったからだったのが原因だったみたい」
舞「だから、今はすっごく楽しい。だってライバルが居るのよ? この舞ちゃんに立ち向かってくるライバルが!」
舞「やっと楽しくなってきたのに、今日で最後ってのがちょっと残念ね」
P「じゃあ引退やめるか?」
舞「やめないわよ。引退はする」
P「なんでだ?」
舞「だって私が引退やめても、小鳥は居ないのよ? それじゃあ今までと何も変わらないつまんないままよ」
P「今後、舞とライバルになれるようなアイドルも出てくるかもしれないぞ?」
舞「そんなの待ってたら地球がなくなるわよ」
舞「私のライバルは音無小鳥ただ一人。それで良いの」
舞「もし、今後私のライバルになれるような娘がアイドルになれたなら、その時はまた考えるわ」
舞「たぶん無いでしょうけど」
P「いや、わからんぞ? 先輩が独立して自分の事務所作るらしいからな」
P「先輩なら舞以上のアイドルを見つけてくるかもしれないぞ」
舞「はははっ。なら楽しみにしてましょうかね」
舞「でも今はこれで良いのよ。全力で小鳥と戦えればそれで満足。悔いはないわ」
P「そうか……。じゃあ、今までありがとな。俺も舞をプロデュース出来て楽しかったよ」
舞「あたしもあんたと一緒に居るの楽しかったわよ。ありがと」
舞「……あんたはあたしが引退したあとはどうするの?」
P「そうだなぁ……。今の事務所でプロデューサー続けても良いし、どっか別のとこ行っても良いなぁ」
舞「仕事しかないわけ?」
P「だな。いかんせん冴えない男だからな。仕事しか取り柄がない」
P「おお、そうだ。いっそ先輩の作る事務所に入れてもらえないか聞いてみるかな。久々に先輩と仕事したいし」
舞「……じゃあ、あの」
P「ん?」
舞「私が、普通の女の子に戻ったら、結婚しない……?」
P「舞と?」
舞「私と」
P「俺が?」
舞「あんたが」
P「……」
舞「……」
P「あー……その……なんだ……」
舞「待って。ライブ終わったら返事聞かせて。今はまだアイドルの日高舞だから」
P「……わかった」
舞「そろそろ小鳥の番よね! じゃあ行ってくるわ!」
P「……おう! 楽しんで来い!」
本番 ステージ袖
舞(あああああ……言っちゃったどうしよう……)
舞(今更後には引けないし……ああー……)
小鳥「舞さん? どうしたんですか? 頭抱えて」
舞「なんでもないわよ。……それより小鳥は私に叩き潰される覚悟はできたの?」
小鳥「出来てないですけど、今はそれどころじゃないです」
舞「?」
小鳥「ステージが楽しみすぎて大変なんですよ! もう心臓バクバク言ってるのに、ワクワクが止まらないんです!」
小鳥「早く、歌いたいんです! 一分一秒も惜しいくらい!」
スタッフ「音無さーん、スタンバイお願いしまーす」
小鳥「はーい!」
小鳥「じゃあ、舞さん! 行ってきますね!」
舞「はいはい、行ってらっしゃい。しっかり聴いててあげるわよ」
本番 ステージ上
司会『さぁ! 続いて、挑戦者最後のアイドルは!「音無小鳥」!』
司会『歌う曲はぁ! あ、ちょっと』
小鳥『みなさーん! 初めまして! 音無小鳥です!』
小鳥『私のこと知らない人ばかりだと思いますが、私は今日で引退します!』
小鳥『だから! 悔いの残らないように! 全力でこのステージを楽しみます!』
小鳥『聞いてください! 「空」!』
空になりたい 自由な空へ
翼なくて翔べるから 素敵ね
空になりたい 好きな空へ
雲で夢描けるから
本番 ステージ袖
舞(すごく楽しそう)
舞(小鳥の事を知ってる人なんてほとんど居ないだろうに、みんな呆気にとられつつも笑顔だ)
舞(多分、これがアイドルの本来の姿)
舞(今までの私はアイドルじゃなかった。肩書きだけアイドルでもステージの上では不貞腐れた女の子)
舞(もっと早くに小鳥と出会っておきたかったわ)
舞(そうすればきっと、もっと楽しくアイドル出来てたのに)
舞(本当にそれだけが惜しい。やっとライバルを見つけたのに今日で終わりなんて)
舞「あー……もうつまんない!」
本番 ステージ上
春は花をいっぱい咲かせよう
夏は光いっぱい輝こう
奇跡じゃなくて 運じゃなくて
自分をもっと信じるの
秋は夜を目一杯乗り越え
冬は雪を目一杯抱きしめ
笑っていいよ 泣いていいよ
だって巡ってまた春は来るから
繋ぐレインボー
小鳥「はぁ…はぁ…」
小鳥「舞さん……見てましたか……?」
小鳥「あたし、すごく楽しかったですよ!」
パチパチ パチパチ ワーワー
司会『うおおおぉぉぉ! これは! 素晴らしいパフォーマンスだった! 素晴らしい!』
司会『これならあの日高舞ですら太刀打ちできないかぁ!?』
本番 ステージ袖
舞「はっ! この舞ちゃんが太刀打ちできないですってぇ!?」
舞「舐めんじゃないわよ!」
スタッフ「日高さーん……、準備をお願いしますー」
舞「わかってるわよ!」
舞「ちょっと、小鳥に伝えときなさい!」
スタッフ「は、はい!」
舞「あれくらいで勝ったと思うな! あたしの全力、見せてあげる!」
舞「さぁ! 行くわよ!」
??年後 765プロにて
春香「はぁー、そんな事があったんですねぇ」
小鳥「そうなのよ。あの時の舞さんは本当に凄かったんだから」
小鳥「あたしだって会心の出来だったのに! まさかのお客さんの投票はゼロよ! ゼロ!」
春香「小鳥さん、落ち着いて……」
小鳥「まさかあの場に居たお客さん全員が舞さんに投票するなんて! あの人は本当に化け物よ!」
春香「でも愛ちゃん見てるとなんとなくわかりますよ」
春香「愛ちゃんのステージ、私でも勝てない時ありますから」
小鳥「愛ちゃんねぇ……。本当に舞さんの娘なのか時々疑問に思うくらい良い娘なのよねぇ」
春香「ははは……」
小鳥「絶対舞さんの娘じゃないわ! きっとどっかからさらってきたのよ! じゃなきゃあのオーガからあんな天使産まれてこないわ!」
春香「小鳥さん、そのあたりでやめた方が……」
小鳥「いいえ! せっかくだから最後まで付き合ってちょうだい!」
舞「まだあるのね?」
小鳥「ええ! まだある……んで……す!?」
舞「はぁーい」
小鳥「えっと……どこから聞いてました?」
舞「そうねぇ。小鳥が私の引退ライブの話を始めたあたりからかしら」
小鳥「……」
舞「……」
春香(……誰か助けて!)
舞「何か言い残すことは?」
小鳥「……逃げるが勝ち!」
舞「あ、待ちなさい! こら小鳥!」
小鳥「待てないピヨ〜!」
舞(あの頃はアイドルがつまんなかった)
舞(でも、よく考えてみればあのアイドル時代をつまらないものにしていたのは自分の怠慢のせいだったのだろう)
舞(だってこんなに楽しい友人が実はすぐ近くに居たのだから)
舞(もっと早くに友人に、ライバルになれていればあたしも小鳥ももっと違う人生を歩んでいただろう)
舞「ちくしょう! 逃げ足だけは早いなあの鳥!」
舞(でも結果としてこれで良かったのだろう)
舞(何せ、今はとても楽しい)
舞(小鳥が居て、あの人が居て、何より愛が居る)
舞(これだけでも贅沢なのに、876プロや765プロ、961プロに346プロや315プロなんてのも居る)
舞(いつかのあの人が言ってた通り、私以上のアイドルになりそうな子達がいっぱいいる)
舞「あー……体力落ちたわねぇ……」
舞「レッスンって案外、体力つくのよね……」
舞(いっそアイドルに戻ってやろうかしら)
舞(今ならライバルもいっぱいいる。つまんないなんてことはないだろう)
舞「でも、とりあえずは小鳥の捕獲が優先ね」
舞「さて。小鳥はどこに行ったのかしら」
舞「あー……もうつまんない!」
end
転載元
日高舞「あー……もうつまんない!」
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