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2023年02月10日

小説「無関心に傷つく主婦優子」

配偶者の帰宅に合わせ
苦手な食事の支度をする優子
ろくなものを作れないが仕方ない
料理が嫌いだからだ
なぜ嫌いかと言うと
家事全般が嫌いなのだと思っている

「なんで毎日 人のことばかりやっての
私のことは 誰もやってくれないのに!」が
優子の口癖だ

今は息子も独立して
定年後の延長雇用で帰宅が早い夫と
いつもふたりで食事だ
その食事も
会話もなく
優子の観たいテレビ番組が
流れてるわけでもなく
食事のマナーがなってない相手を前にして
食欲なくすような思いで食べるだけ

苦手な食事を用意して
トレーに並べて
テーブルでスマホのゲームをしている
配偶者の元に運ぶとき

「あたしはお給仕さんかよっ」と
優子は小さくつぶやきながら
今まではテーブルのものをかたづけて
トレーを置いていたが
目の前に運ばれることが当然で
散らばったものが目の前にあろうと
知らん顔でゲームをしている様子が
腹立たしく
散らばる雑誌やら広告をそのままに
トレーを置いてやる

優子はやっと食べられると
自分のトレーを
自分で運ぶが

その時には配偶者はすでに
自分のものが運ばれると
とっとと食べ始めていて
優子が席に着くのを待つこともない

いらだちを覚えながら
黙々とたべるだけ
マナーのなっていないきたない音を
聞きながら
好きなテレビドラマも
変えられて
じっくりと美味しいと感じながら
食べていたい時間も台無しになる

優子はのんびり食事をしていた
すると
黙々とさっさと食べ終わった配偶者は
食卓に優子を残したまま
外に喫煙をしに出掛けてしまった

「私はまだ食べ終わってないのに」
と優子は
なぜか、悲しくなった

いつもそうだ
優子が食べるのも食べ終わるのも
待つこともなく
そこに優子がいても
どうでもいいかのように
会話もなくさっさと食べたら
席を立つ
もしくは
スマホのゲームをし始める

ひとり残されて食事をしている優子は
自分はいったい何なんだろと
いつもいつも悲しかった

悲しくなりながら食べ終われば
また洗い物で時間を費やす
その時にも
配偶者はとっとと寝る準備をして
後かたづけしている優子を置き去りに
自分の寝室に入って寝ながらゲームをしている

配偶者の寝室からリビングのテレビが
見えるのだが
カウンターキッチンで優子がテレビを
見ていることなどまるで無視して
自分の好きな番組に変え
エアコンも床暖房もリビングの
電灯まで消そうとするので

「あたしはまだかたづけが終わってないの!!!」と
優子はそのとき叫んだ

すると配偶者は
「今日は機嫌が悪いね」とぼそっと言う

優子は
いつも置き去りやら無視やら
お給仕扱いやら
いったいなんのために生きてるのかとまで
思うほど
自分の存在を蔑ろにされてる気になって
とても悲しいというのに

たまに意思表示したら
嫌味や的外れなのんきな答えしかない

優子は知っていた
配偶者は
広島の実家にいるときには
キッチンで自分の姉とは
食事時にはとても楽しそうに談笑している
いつもにこやかで
優子と食事するときには
ただ黙って食べるだけでさっさと
ひとを置き去りにする配偶者が
そこでは笑っているのだ

これまで法事やらで
広島の実家まで優子も一緒に行っていたが
数年前から
優子は
「二度とあの場所には行かない」と
決めたのだ

優子がいても
配偶者を含めて他のやつらは
優子の存在をスルーしているのだ
ただそこにいるだけ
配偶者が 特に
優子のことをいっさい気にかけずに
自分らの家族だけ盛り上がっているから
行くたびに優子は
「嫁だからと無理に合わせなくてもいいじゃんか」
嫁 だからそこにいるのが当然で
他に用はなんだから
そういう扱いをされるのが 嫁 なんだ

「ばかばかしい」と優子は
自分が嫌なものに合わせるという
一番の時間の無駄を省いたのであった

最後にあの場所に行ったのはいつだったか
数年前の法事だったか
嫁 だからただそこにいて
親の財産とかお金のことや
いろんなことは 嫁 の優子には
何も教えることもないし
優子のことなどいないかのように
配偶者たちはいろいろ話し合っていた
優子には何も知らせないから
なにがなんだかわからないし
はっきり言って 一緒にいるのは不快だった

あの時から
優子は
「べつに良い嫁なんかになることはない、くそくらえだ」
そう思い
二度とここには来ない!と決めたのだ

優子に対する配偶者の態度は
配偶者の親と同じなのである
あの親が
優子のことを会う前から
気に入らなくて
ずっと嫌な思いをさせられた
実家に行けば
優子だけを残して 配偶者たちを
隣の部屋に呼んでドアを閉め
なにか話をしていたりした

食事の時には
配偶者が下に落ちたゴミを
「優子さん ゴミ落ちた」と
拾わせた
配偶者の母親は
食事しながら
大きな口をあけてげっぷした

優子はこの時に
本当にびっくりしたのだった

自分が好きになった人の親だから
大丈夫に決まってる と
自分に言い聞かせて
初めて顔を合わせた夜に

能面のようにニコリともせず
質問攻めで
なんと答えても否定
唇をへの字にした能面の親

優子は若かったから
あれから頑張ってやってこれたと
自分を褒めた
思い出すたびに「偉かったよ私」と
言ってあげた

優子が思ったのは
やはり
よほどの心の変化などがない限りは
無意識に
親と同じことをしてしまうものなのだ
ということ

そして
無関心は 人を傷つける ということ

優子はずっと
傷ついているのだ
悲しいのだ
淋しいのだ

「私の人生はなんだったんだろう」
優子は
もうムキになって配偶者に意見する気もなく

「自分の人生を生きたい」と
本気で思いながら
今日も 食卓に取り残される


おわり








posted by 彩沙 at 01:34 | 小説
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