2014年02月06日
雲
雲(くも)は、大気中にかたまって浮かぶ水滴または氷の粒(氷晶)のことを言う。地球に限らず、また高度に限らず、惑星表面の大気中に浮かぶ水滴や氷晶は雲と呼ばれる。雲を作る水滴や氷晶の1つ1つの粒を雲粒と言う。地上が雲に覆われていると、霧となる。
気象学の中には雲学という分野も存在する。これは、気象観測の手段が乏しかった20世紀前半ごろまで、気象の解析や予測に雲の形や動きなどの観測情報を多用しており、雲の研究が重要視されたことを背景にしている。気象衛星などの登場によって重要性が薄くなり雲学は衰退してきている。
また、雨や雪などの降水現象の発生源となる現象であり、雲の生成から降水までの物理学的な現象を研究する雲物理学というものもある。
雲(くも)は、大気中にかたまって浮かぶ水滴または氷の粒(氷晶)のことを言う。地球に限らず、また高度に限らず、惑星表面の大気中に浮かぶ水滴や氷晶は雲と呼ばれる。雲を作る水滴や氷晶の1つ1つの粒を雲粒と言う。地上が雲に覆われていると、霧となる。
気象学の中には雲学という分野も存在する。これは、気象観測の手段が乏しかった20世紀前半ごろまで、気象の解析や予測に雲の形や動きなどの観測情報を多用しており、雲の研究が重要視されたことを背景にしている。気象衛星などの登場によって重要性が薄くなり雲学は衰退してきている。
また、雨や雪などの降水現象の発生源となる現象であり、雲の生成から降水までの物理学的な現象を研究する雲物理学というものもある。
目次 [非表示]
1 発生・成長・消滅 1.1 形態と成分
1.2 物理化学的特徴
1.3 気象学的な成因
1.4 人工的な雲の製造
2 種類 2.1 基本の雲
2.2 特殊な雲
3 色
4 観測
5 気候・地球
6 地球以外の雲
7 関連項目
8 出典・参考
9 外部リンク
発生・成長・消滅[編集]
地球上の雲を概観した衛星画像
積乱雲
上空から見た雲
水面近くにできた層雲
航空機から見る層積雲
形態と成分[編集]
地球上においては、基本的に雲は水から成ると考えてよい。微量ながら水以外の成分、例えば土壌成分や火山噴出物、塵埃などからなる微粒子(エアロゾル)が混ざっているほか、空気の成分(窒素、酸素、二酸化炭素など)が溶解している。その成分も、雲が発生・成長する際に存在した場所に左右されるが、比率からしても水がほとんどを占める。雲を構成する水滴は液体か固体である。固体の場合、独特の結晶を形成する。
ただし、超低温・低圧環境の成層圏や中間圏では、主成分が硫酸塩や硝酸塩からなる雲が発生する。
本項では、以下より地球上の雲について説明する。
物理化学的特徴[編集]
空気中の水蒸気が凝結(凝縮とも言う)されて液体(水)になるか、凍結(凝固)または昇華されて固体(氷)になることで雲が作られる。
空気中の水蒸気が凝結する条件は、空気が過飽和になる(空気の温度が露点温度を下回る、あるいは湿度が100%を越える)ことである。凝結核がなければ凝結しにくいが、ふつう、空気中には凝結核が多数あるので、過飽和の限界は過飽和度1%(湿度101%)くらいであり、超過分はすべて雲になる。
凝結してできた水滴が凍結する条件は、水滴が0℃以下(氷点下)に冷却されることである。凍結核がなければ凝結しにくい。ふつう、空気中には凍結核が少ないので、凍結は空気中の一部の水滴しか起こらない。気温が低くなるにつれて凍結率が上がり、-30〜-42℃くらいで全水滴が凍結する。
空気中の水蒸気が昇華する条件は、空気が過飽和で、かつ空気が0℃以下に冷却されることである。昇華核がなければ凝結しにくい。
主な雲の発生の種類3つを挙げる。
上昇・冷却 : 太陽放射、暖気との接触などにより空気が暖められ、断熱膨張を起こして上昇し次第に冷える。 前線面で暖気が寒気の上を上昇するパターン、山に沿って空気が上昇するパターン、太陽放射により地表が温められて対流が発生するパターン、暖気が冷たい水面や地面に接触するパターンなどがある。
非上昇・冷却 : 放射冷却、寒気との接触などにより空気が冷やされる。 上空の空気は冷やされても下降して昇温し過飽和が解消されるので、下降できない地上や水上の空気で多いパターン。
加湿 : 温度が変化しない場合でも、水域や陸からの蒸発によって湿度が上がり、露点温度が上昇する。 この原理単独で雲が発生することは少ないが、少なからず関与している。
雲を作る雲粒は、空気中に浮かぶ塵やほこりなどのエアロゾル微粒子を凝結核もしくは氷晶核としてつくられる(凝結核と氷晶核をまとめて雲核という)。そのため、エアロゾルが多いと水蒸気が凝結(固)しやすくなり雲は発生しやすくなる。また逆に、エアロゾルが少ないと過飽和となっても水蒸気が凝結(固)しにくいため、雲もできにくくなる。
ふつう、凝結や凍結、昇華直後の雲粒は1〜10μmくらいと小さい。これが、雲粒同士が衝突したり、雲粒にさらに水蒸気がくっついて凝結(凍結)していくなどして雲粒は成長し、最大で200μm(0.2mm)、さらに雨粒クラスでは直径が1mm前後になる。詳しくは降水過程参照。また、雨粒の成長の計算はメイスンの方程式(Mason equation)などにまとめられている。
雲粒ひとつひとつに働く重力や下降気流による力と、雲粒ひとつひとつを支える上昇気流による力がつりあうことで、雲は大気中に浮かぶ。雲粒が大きくなって重力が増したり、下降気流の力が大きくなると、雲粒は雨粒や雪の結晶として落下することとなる。上昇気流が強い場合は、上昇や落下を繰り返すうち、雨粒や雪の結晶同士が衝突してさらに大きな粒となって落下する。また、上昇や落下を繰り返すと霰や雹などの大きな氷粒になり、氷粒同士の衝突で静電気が発生し、それが蓄積されて雷の原因になる。
形成される雲の形は、空気の対流構造や、温度差のある空気の衝突面の形によって左右される。強い上下対流がある場合は積雲や積乱雲が形成されることが多く、大気が安定している場合は水平方向に層雲や高層雲などが均一に広がることが多い。また、山などの地形の影響を受けた場合は、レンズ雲や波状雲などの特徴的な雲ができる。
気象学的な成因[編集]
気象学的な観点から雲の発生・成長・消滅を説明する。雲の成因はいくつかに分けられる。
1.地形の影響や気団の衝突などにより、空気塊(気塊、air parcel)が強制的に上昇させられて起こるもの。 風が山などを越えるとき、強制的に空気塊が上昇させられると、断熱膨張による冷却が起こってやがて雲ができる。前線の場合は、温暖前線では寒気の上に暖気が乗り上げて上昇、寒冷前線では暖気の下に寒気が入り込んで暖気が上昇、停滞前線や閉塞前線では温暖・寒冷の2パターンが同時に起こり、山と同じように雲ができる。
山の場合は山頂を越えて下降し始めると空気塊が圧縮・加熱されて、雲が蒸発して消える。また、乾燥した空気のほうが湿った空気よりも気温減率が大きいため、下降する空気は上昇時よりも速いペースで温度が上がり(フェーン現象)、雲が消える高度はできた高度よりも高くなる。また、高い山や前線の場合、空気塊がずっと上昇していくと、雲のもととなる空気中の水蒸気量(≒混合比)が低下して、高度が高くなるにつれ、上昇してもできる雲は薄くなりやがてできなくなる。
2.周囲よりも相対的に軽い空気が浮力によって上昇して起こるもの。 夏の昼間のように、地面付近の気温の上昇幅が大きい場合には、温まった空気の浮力が増して雲ができやすくなる。普通は浮力を抑える力が働くが、大気が不安定(成層不安定)であると少しの上昇でそれを上回る上昇力を得て、雲が湧き上がる。
3.大気の振動によって起こるもの。 大気中にはさまざまな要因で発生する大気波というものがある。このうち、波長が数百m以下と短いものは直接的に大気に働きかけ、空気を上下に動かして、上昇の際に雲を発生させることがある。波長が数十km以上のものは、次項で述べる収束を発生させることがある。
4.収束に伴って発生した上昇気流によるもの。 周囲より気圧が低い低気圧に向かって空気が集まり、上昇気流となって雲を発生させる。上昇気流自体は観測できないほど遅い速度であるが、他のものに比べてスケールが桁違いに大きいため、広範囲で雲を発生させる。低気圧以外には、収束線(シアーライン)などがあり、これも原理は同じ。赤道付近で年中雲が発達しやすいのは、熱帯収束帯の影響で年中低圧だからである。
5.空気塊の上昇を伴わない冷却によるもの。 空気の流れが無く安定していて、ある程度湿った空気が放射冷却などで冷やされると、地表付近に雲ができる。晴れて寒い日の早朝に発生する霧が典型的な例。
6.加湿によるもの。 同じ温度の空気でも、湿度が(≒混合比)が上昇すると、露点温度が上がり、雲ができやすくなる。これは加湿単独ではなく、1〜5のような気流の移動とセットになって初めて雲ができる。前線の周辺に台風や低気圧が接近すると雨が強まるのは、雲のできやすくなっている部分に前線から湿った空気が供給され、雲ができやすくなり発達するためである。湿暖気流(湿舌)が梅雨前線に接近したときも同様。
人工的な雲の製造[編集]
小規模なものであれば、雲を製造することは容易であり、理科の実験や身近にできる科学実験として、広く行われている。
密閉可能な容器の中を少し濡らし、線香の煙などの凝結(固)核を充満させて密閉し、ポンプなどで気圧を下げると、減圧冷却によって中の温度が露点を下回って凝結(固)をはじめ、雲ができる。
熱湯から立ち上る「湯気」、ドライアイスや氷から流れ落ちるような白い冷気、冬の寒い日に白くなる吐いた息、工場や排気などから出る白い蒸気なども、人工的に作ることができる雲だといえる。
また、普通の雲に比べて粒が大きい、霧吹きで作る水滴でも、風をうまくコントロールして空中に浮かべることができれば、雲だといえる。
ただ、雨を降らせるような大規模な雲の製造は容易ではない。現状では、ヨウ化銀などの凝結(固)核を大量に散布することで雲の素をつくる「雲の種まき」が実用化の限度となっている。しかも、「雲の種まき」においても空気中の水蒸気が過飽和あるいはそれに近い状態になければ雲はできにくく、条件も限られる。
種類[編集]
基本の雲[編集]
雲は、その形状や高さにより以下のように分類される。
雲の分布の概念図
分類 定義・条件 通称・特徴
層状雲 上層雲 巻雲 高度6000m以上、温度-25℃以下 すじ雲(以前は「絹雲」と称した。)
巻積雲 うろこ雲 、さば雲
巻層雲 うす雲、太陽や月の暈の原因
中層雲 高積雲 高度2000〜6000m ひつじ雲
高層雲 おぼろ雲
乱層雲 地面付近〜高度6000m 雨雲、連続した雨や雪を伴う。
下層雲 層積雲 高度500〜2000m 温度-5℃以上 うね雲 かさばり雲 くもり雲(団塊状の雲)
層雲 地面付近〜高度2000m きり雲(灰色〜薄墨色の雲) 霧雨の主原因。
対流雲 積雲 雲底高度300〜1500m 雲頂高度は6000m前後 わた雲 むくむく雲 晴れた日にあらわれる。上面がドーム形、下面が水平。
積乱雲 雲底高度600〜1500m 雲頂高度は最大16000m(対流圏界面付近) 雷雲、いわゆる入道雲。頂部が横に広がったかなとこ雲もある。
注1)高度に関しては中緯度における目安。低緯度や高緯度では数百m〜数kmの違いがある。
注2)巻層雲は高層雲、高層雲は乱層雲とそれぞれつながって、雲底高度がもっと低い場合あり。積乱雲は下降気流の影響で雲底高度がもっと低い場合あり。
注3)乱層雲は以前下層雲だったが変更された。出現範囲は中層や下層が中心だが、上層にまたがることがある。また、高層雲も上層にまたがることがある。こういったことから、上・中・下層・対流といった区分は分類当初念頭に置かれていたような意味をなさなくなってきており、形式的なものになりつつある。
世界気象機関は、雲を10の基本形と数十の主・変種・副変種に分類している。雲には多くの俗称があるが、混乱を避けるために学術分野では呼称が統一されている。詳しくは雲形を参照のこと。
特殊な雲[編集]
対流圏以外にできる雲として、以下のものがある。
成層圏 真珠母雲(極成層雲)
中間圏 夜光雲
色[編集]
一般的に、雲は可視光線(光)を反射しやすいため、白く見える。これをミー散乱と言う。しかし、雲の厚さや内部の雲粒の密度、太陽光の角度によってさまざまな色に見える。
白い雲は、粒が小さな雲粒が比較的混み合って密に浮かんでいる状態のため、太陽光の反射率が高いために白く見える。そのため、白い雲は雨粒があまり成長していないことになり、雨が降ることは少ない。
積雲や層雲などは、鉛直方向に発達し厚みを増し雲底付近が次第に暗くなる。これは、雲を構成する水滴や氷晶などの粒子は可視域の太陽放射をほとんど吸収しないのだが、これらの粒子によって雲内部で主に散乱、多重反射及び屈折され雲底付近に至るまでに、エネルギーがかなり減少してしまう為である。
日光が水滴で回折し、雲が虹色に輝いて見えることがあり、これを彩雲という。
観測[編集]
雲は測雲器若しくは測雲気球などの器具を用い、または目視によって観測される(気象業務法第1条の2、気象業務法第1条の3も参照)。雲量は、晴れかくもりかといった天気の目安となる。
また、レーダーでも雲を観測できる(雲高計)。雲粒は雨粒や雪片よりも小さいため、レーダー電波の波長は降雨レーダーより小さいものを用いる。波長1mm〜10mm程度のミリ波を用いることが多い。ただ、地上や航空機搭載のレーダーによる雲の観測は、観測範囲が狭く、用途は規模の小さい気象現象の観測や飛行用などに限られる。
広い気象状態を捉えるには、気象衛星による観測が行われる。可視光線の観測、雲が放射する赤外線の観測などを通して、雲の分布を推定している。赤外線に関しては、大気成分に吸収されて観測できない波長が多いので、その影響が少ない大気の窓領域の波長を観測している。
気候・地球[編集]
大気汚染によるエアロゾルなどの増加により雲の量が増加して、地球薄暮化が引き起こされると考えられている。
雲は地球の表面を覆って太陽光を吸収・反射し、地球をある程度冷ます役割をもっている。雲の厚さ、雲粒の大きさや形状などによって吸収率や反射率は異なる。特に反射率(アルベド)については、その変化が地球全体の太陽光の吸収率を大きく左右し、気候に影響を与える。
地球以外の雲[編集]
大気を持つ太陽系の惑星のほとんどでは、地球と同じように雲が発生する。金星は硫酸の雲、火星は水、木星や土星はアンモニアなど、天王星や海王星はメタンでできた雲がある。また、土星の衛星のタイタンにもメタンの雲らしきものがあることが分かっている。
気象学の中には雲学という分野も存在する。これは、気象観測の手段が乏しかった20世紀前半ごろまで、気象の解析や予測に雲の形や動きなどの観測情報を多用しており、雲の研究が重要視されたことを背景にしている。気象衛星などの登場によって重要性が薄くなり雲学は衰退してきている。
また、雨や雪などの降水現象の発生源となる現象であり、雲の生成から降水までの物理学的な現象を研究する雲物理学というものもある。
雲(くも)は、大気中にかたまって浮かぶ水滴または氷の粒(氷晶)のことを言う。地球に限らず、また高度に限らず、惑星表面の大気中に浮かぶ水滴や氷晶は雲と呼ばれる。雲を作る水滴や氷晶の1つ1つの粒を雲粒と言う。地上が雲に覆われていると、霧となる。
気象学の中には雲学という分野も存在する。これは、気象観測の手段が乏しかった20世紀前半ごろまで、気象の解析や予測に雲の形や動きなどの観測情報を多用しており、雲の研究が重要視されたことを背景にしている。気象衛星などの登場によって重要性が薄くなり雲学は衰退してきている。
また、雨や雪などの降水現象の発生源となる現象であり、雲の生成から降水までの物理学的な現象を研究する雲物理学というものもある。
目次 [非表示]
1 発生・成長・消滅 1.1 形態と成分
1.2 物理化学的特徴
1.3 気象学的な成因
1.4 人工的な雲の製造
2 種類 2.1 基本の雲
2.2 特殊な雲
3 色
4 観測
5 気候・地球
6 地球以外の雲
7 関連項目
8 出典・参考
9 外部リンク
発生・成長・消滅[編集]
地球上の雲を概観した衛星画像
積乱雲
上空から見た雲
水面近くにできた層雲
航空機から見る層積雲
形態と成分[編集]
地球上においては、基本的に雲は水から成ると考えてよい。微量ながら水以外の成分、例えば土壌成分や火山噴出物、塵埃などからなる微粒子(エアロゾル)が混ざっているほか、空気の成分(窒素、酸素、二酸化炭素など)が溶解している。その成分も、雲が発生・成長する際に存在した場所に左右されるが、比率からしても水がほとんどを占める。雲を構成する水滴は液体か固体である。固体の場合、独特の結晶を形成する。
ただし、超低温・低圧環境の成層圏や中間圏では、主成分が硫酸塩や硝酸塩からなる雲が発生する。
本項では、以下より地球上の雲について説明する。
物理化学的特徴[編集]
空気中の水蒸気が凝結(凝縮とも言う)されて液体(水)になるか、凍結(凝固)または昇華されて固体(氷)になることで雲が作られる。
空気中の水蒸気が凝結する条件は、空気が過飽和になる(空気の温度が露点温度を下回る、あるいは湿度が100%を越える)ことである。凝結核がなければ凝結しにくいが、ふつう、空気中には凝結核が多数あるので、過飽和の限界は過飽和度1%(湿度101%)くらいであり、超過分はすべて雲になる。
凝結してできた水滴が凍結する条件は、水滴が0℃以下(氷点下)に冷却されることである。凍結核がなければ凝結しにくい。ふつう、空気中には凍結核が少ないので、凍結は空気中の一部の水滴しか起こらない。気温が低くなるにつれて凍結率が上がり、-30〜-42℃くらいで全水滴が凍結する。
空気中の水蒸気が昇華する条件は、空気が過飽和で、かつ空気が0℃以下に冷却されることである。昇華核がなければ凝結しにくい。
主な雲の発生の種類3つを挙げる。
上昇・冷却 : 太陽放射、暖気との接触などにより空気が暖められ、断熱膨張を起こして上昇し次第に冷える。 前線面で暖気が寒気の上を上昇するパターン、山に沿って空気が上昇するパターン、太陽放射により地表が温められて対流が発生するパターン、暖気が冷たい水面や地面に接触するパターンなどがある。
非上昇・冷却 : 放射冷却、寒気との接触などにより空気が冷やされる。 上空の空気は冷やされても下降して昇温し過飽和が解消されるので、下降できない地上や水上の空気で多いパターン。
加湿 : 温度が変化しない場合でも、水域や陸からの蒸発によって湿度が上がり、露点温度が上昇する。 この原理単独で雲が発生することは少ないが、少なからず関与している。
雲を作る雲粒は、空気中に浮かぶ塵やほこりなどのエアロゾル微粒子を凝結核もしくは氷晶核としてつくられる(凝結核と氷晶核をまとめて雲核という)。そのため、エアロゾルが多いと水蒸気が凝結(固)しやすくなり雲は発生しやすくなる。また逆に、エアロゾルが少ないと過飽和となっても水蒸気が凝結(固)しにくいため、雲もできにくくなる。
ふつう、凝結や凍結、昇華直後の雲粒は1〜10μmくらいと小さい。これが、雲粒同士が衝突したり、雲粒にさらに水蒸気がくっついて凝結(凍結)していくなどして雲粒は成長し、最大で200μm(0.2mm)、さらに雨粒クラスでは直径が1mm前後になる。詳しくは降水過程参照。また、雨粒の成長の計算はメイスンの方程式(Mason equation)などにまとめられている。
雲粒ひとつひとつに働く重力や下降気流による力と、雲粒ひとつひとつを支える上昇気流による力がつりあうことで、雲は大気中に浮かぶ。雲粒が大きくなって重力が増したり、下降気流の力が大きくなると、雲粒は雨粒や雪の結晶として落下することとなる。上昇気流が強い場合は、上昇や落下を繰り返すうち、雨粒や雪の結晶同士が衝突してさらに大きな粒となって落下する。また、上昇や落下を繰り返すと霰や雹などの大きな氷粒になり、氷粒同士の衝突で静電気が発生し、それが蓄積されて雷の原因になる。
形成される雲の形は、空気の対流構造や、温度差のある空気の衝突面の形によって左右される。強い上下対流がある場合は積雲や積乱雲が形成されることが多く、大気が安定している場合は水平方向に層雲や高層雲などが均一に広がることが多い。また、山などの地形の影響を受けた場合は、レンズ雲や波状雲などの特徴的な雲ができる。
気象学的な成因[編集]
気象学的な観点から雲の発生・成長・消滅を説明する。雲の成因はいくつかに分けられる。
1.地形の影響や気団の衝突などにより、空気塊(気塊、air parcel)が強制的に上昇させられて起こるもの。 風が山などを越えるとき、強制的に空気塊が上昇させられると、断熱膨張による冷却が起こってやがて雲ができる。前線の場合は、温暖前線では寒気の上に暖気が乗り上げて上昇、寒冷前線では暖気の下に寒気が入り込んで暖気が上昇、停滞前線や閉塞前線では温暖・寒冷の2パターンが同時に起こり、山と同じように雲ができる。
山の場合は山頂を越えて下降し始めると空気塊が圧縮・加熱されて、雲が蒸発して消える。また、乾燥した空気のほうが湿った空気よりも気温減率が大きいため、下降する空気は上昇時よりも速いペースで温度が上がり(フェーン現象)、雲が消える高度はできた高度よりも高くなる。また、高い山や前線の場合、空気塊がずっと上昇していくと、雲のもととなる空気中の水蒸気量(≒混合比)が低下して、高度が高くなるにつれ、上昇してもできる雲は薄くなりやがてできなくなる。
2.周囲よりも相対的に軽い空気が浮力によって上昇して起こるもの。 夏の昼間のように、地面付近の気温の上昇幅が大きい場合には、温まった空気の浮力が増して雲ができやすくなる。普通は浮力を抑える力が働くが、大気が不安定(成層不安定)であると少しの上昇でそれを上回る上昇力を得て、雲が湧き上がる。
3.大気の振動によって起こるもの。 大気中にはさまざまな要因で発生する大気波というものがある。このうち、波長が数百m以下と短いものは直接的に大気に働きかけ、空気を上下に動かして、上昇の際に雲を発生させることがある。波長が数十km以上のものは、次項で述べる収束を発生させることがある。
4.収束に伴って発生した上昇気流によるもの。 周囲より気圧が低い低気圧に向かって空気が集まり、上昇気流となって雲を発生させる。上昇気流自体は観測できないほど遅い速度であるが、他のものに比べてスケールが桁違いに大きいため、広範囲で雲を発生させる。低気圧以外には、収束線(シアーライン)などがあり、これも原理は同じ。赤道付近で年中雲が発達しやすいのは、熱帯収束帯の影響で年中低圧だからである。
5.空気塊の上昇を伴わない冷却によるもの。 空気の流れが無く安定していて、ある程度湿った空気が放射冷却などで冷やされると、地表付近に雲ができる。晴れて寒い日の早朝に発生する霧が典型的な例。
6.加湿によるもの。 同じ温度の空気でも、湿度が(≒混合比)が上昇すると、露点温度が上がり、雲ができやすくなる。これは加湿単独ではなく、1〜5のような気流の移動とセットになって初めて雲ができる。前線の周辺に台風や低気圧が接近すると雨が強まるのは、雲のできやすくなっている部分に前線から湿った空気が供給され、雲ができやすくなり発達するためである。湿暖気流(湿舌)が梅雨前線に接近したときも同様。
人工的な雲の製造[編集]
小規模なものであれば、雲を製造することは容易であり、理科の実験や身近にできる科学実験として、広く行われている。
密閉可能な容器の中を少し濡らし、線香の煙などの凝結(固)核を充満させて密閉し、ポンプなどで気圧を下げると、減圧冷却によって中の温度が露点を下回って凝結(固)をはじめ、雲ができる。
熱湯から立ち上る「湯気」、ドライアイスや氷から流れ落ちるような白い冷気、冬の寒い日に白くなる吐いた息、工場や排気などから出る白い蒸気なども、人工的に作ることができる雲だといえる。
また、普通の雲に比べて粒が大きい、霧吹きで作る水滴でも、風をうまくコントロールして空中に浮かべることができれば、雲だといえる。
ただ、雨を降らせるような大規模な雲の製造は容易ではない。現状では、ヨウ化銀などの凝結(固)核を大量に散布することで雲の素をつくる「雲の種まき」が実用化の限度となっている。しかも、「雲の種まき」においても空気中の水蒸気が過飽和あるいはそれに近い状態になければ雲はできにくく、条件も限られる。
種類[編集]
基本の雲[編集]
雲は、その形状や高さにより以下のように分類される。
雲の分布の概念図
分類 定義・条件 通称・特徴
層状雲 上層雲 巻雲 高度6000m以上、温度-25℃以下 すじ雲(以前は「絹雲」と称した。)
巻積雲 うろこ雲 、さば雲
巻層雲 うす雲、太陽や月の暈の原因
中層雲 高積雲 高度2000〜6000m ひつじ雲
高層雲 おぼろ雲
乱層雲 地面付近〜高度6000m 雨雲、連続した雨や雪を伴う。
下層雲 層積雲 高度500〜2000m 温度-5℃以上 うね雲 かさばり雲 くもり雲(団塊状の雲)
層雲 地面付近〜高度2000m きり雲(灰色〜薄墨色の雲) 霧雨の主原因。
対流雲 積雲 雲底高度300〜1500m 雲頂高度は6000m前後 わた雲 むくむく雲 晴れた日にあらわれる。上面がドーム形、下面が水平。
積乱雲 雲底高度600〜1500m 雲頂高度は最大16000m(対流圏界面付近) 雷雲、いわゆる入道雲。頂部が横に広がったかなとこ雲もある。
注1)高度に関しては中緯度における目安。低緯度や高緯度では数百m〜数kmの違いがある。
注2)巻層雲は高層雲、高層雲は乱層雲とそれぞれつながって、雲底高度がもっと低い場合あり。積乱雲は下降気流の影響で雲底高度がもっと低い場合あり。
注3)乱層雲は以前下層雲だったが変更された。出現範囲は中層や下層が中心だが、上層にまたがることがある。また、高層雲も上層にまたがることがある。こういったことから、上・中・下層・対流といった区分は分類当初念頭に置かれていたような意味をなさなくなってきており、形式的なものになりつつある。
世界気象機関は、雲を10の基本形と数十の主・変種・副変種に分類している。雲には多くの俗称があるが、混乱を避けるために学術分野では呼称が統一されている。詳しくは雲形を参照のこと。
特殊な雲[編集]
対流圏以外にできる雲として、以下のものがある。
成層圏 真珠母雲(極成層雲)
中間圏 夜光雲
色[編集]
一般的に、雲は可視光線(光)を反射しやすいため、白く見える。これをミー散乱と言う。しかし、雲の厚さや内部の雲粒の密度、太陽光の角度によってさまざまな色に見える。
白い雲は、粒が小さな雲粒が比較的混み合って密に浮かんでいる状態のため、太陽光の反射率が高いために白く見える。そのため、白い雲は雨粒があまり成長していないことになり、雨が降ることは少ない。
積雲や層雲などは、鉛直方向に発達し厚みを増し雲底付近が次第に暗くなる。これは、雲を構成する水滴や氷晶などの粒子は可視域の太陽放射をほとんど吸収しないのだが、これらの粒子によって雲内部で主に散乱、多重反射及び屈折され雲底付近に至るまでに、エネルギーがかなり減少してしまう為である。
日光が水滴で回折し、雲が虹色に輝いて見えることがあり、これを彩雲という。
観測[編集]
雲は測雲器若しくは測雲気球などの器具を用い、または目視によって観測される(気象業務法第1条の2、気象業務法第1条の3も参照)。雲量は、晴れかくもりかといった天気の目安となる。
また、レーダーでも雲を観測できる(雲高計)。雲粒は雨粒や雪片よりも小さいため、レーダー電波の波長は降雨レーダーより小さいものを用いる。波長1mm〜10mm程度のミリ波を用いることが多い。ただ、地上や航空機搭載のレーダーによる雲の観測は、観測範囲が狭く、用途は規模の小さい気象現象の観測や飛行用などに限られる。
広い気象状態を捉えるには、気象衛星による観測が行われる。可視光線の観測、雲が放射する赤外線の観測などを通して、雲の分布を推定している。赤外線に関しては、大気成分に吸収されて観測できない波長が多いので、その影響が少ない大気の窓領域の波長を観測している。
気候・地球[編集]
大気汚染によるエアロゾルなどの増加により雲の量が増加して、地球薄暮化が引き起こされると考えられている。
雲は地球の表面を覆って太陽光を吸収・反射し、地球をある程度冷ます役割をもっている。雲の厚さ、雲粒の大きさや形状などによって吸収率や反射率は異なる。特に反射率(アルベド)については、その変化が地球全体の太陽光の吸収率を大きく左右し、気候に影響を与える。
地球以外の雲[編集]
大気を持つ太陽系の惑星のほとんどでは、地球と同じように雲が発生する。金星は硫酸の雲、火星は水、木星や土星はアンモニアなど、天王星や海王星はメタンでできた雲がある。また、土星の衛星のタイタンにもメタンの雲らしきものがあることが分かっている。
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