2014年02月13日
ウンウントリウム
ウンウントリウム (英: ununtrium) は原子番号113の元素。元素記号は Uut。これは仮の名称である。2012年現在で複数の発見報告があるが、認定に至っていない(#命名も参照)。
周期表で第13族元素に属し、タリウムの下に位置するため「エカタリウム」と呼ばれることもある。超ウラン元素では比較的長寿命とされ、278Uutの平均寿命は2ミリ秒であることがわかっている[1]。
目次 [非表示]
1 歴史
2 命名
3 脚注
4 関連事項
歴史[編集]
2003年8月、ドゥブナ合同原子核研究所とローレンス・リバモア国立研究所による合同研究チームがアメリシウムとカルシウムからウンウンペンチウムの元素合成に成功し、翌2004年2月、そのアルファ崩壊の過程で0.48秒間観測した[2]と発表したが、命名権は得られなかった。
\,_{{20}}^{{48}}{\mathrm {Ca}}+\,_{{95}}^{{243}}{\mathrm {Am}}\to \,^{{288,287}}{\mathrm {Uup}}\to \,^{{284,283}}{\mathrm {Uut}}\to \
2004年9月28日、理化学研究所の森田浩介博士らのグループが、線形加速器を用いて亜鉛とビスマスからの元素合成に成功した[3]と発表した。
\,_{{30}}^{{70}}{\mathrm {Zn}}+\,_{{83}}^{{209}}{\mathrm {Bi}}\to \,_{{113}}^{{279}}{\mathrm {Uut}}^{{*}}\to \,_{{113}}^{{278}}{\mathrm {Uut}}+\,_{{0}}^{{1}}{\mathrm {n}}
この実験は80日間にわたって、2.5 × 1012個/秒(1秒間に2.5兆個)の亜鉛原子核をビスマス原子核に約1.7 × 1019回照射した。生成したウンウントリウムの原子核は344マイクロ秒でα崩壊し、ウンウンウニウム(この年の11月にレントゲニウムと命名)の同位体となったのを、同年7月23日に検出している。
2006年6月には、ドゥブナ合同原子核研究所とローレンス・リバモア国立研究所による合同研究チームが、ネプツニウムとカルシウムからの合成に成功した[4]と発表している。
2009年にはドゥブナ合同原子核研究所やオークリッジ国立研究所などによるバークリウムとカルシウムからウンウンセプチウムを元素合成する共同研究において、その崩壊過程で検出されている[5]。
2012年9月27日、理化学研究所は3個目の合成を発表した。ウンウントリウム278が6回のアルファ崩壊を経てメンデレビウム254となる崩壊系列の確認に初めて成功した。前回は4回目のα崩壊で生じるドブニウム262が自発核分裂してしまったが、今回はアルファ崩壊(確率は2/3)し、次のローレンシウム258もアルファ崩壊でメンデレビウム254となるのを観測できたため、合成した原子核がウンウントリウムだと証明できた。
\,_{{113}}^{{278}}{\mathrm {Uut}}\to \,_{{111}}^{{274}}{\mathrm {Rg}}\to \,_{{109}}^{{270}}{\mathrm {Mt}}\to \,_{{107}}^{{266}}{\mathrm {Bh}}\to \,_{{105}}^{{262}}{\mathrm {Db}}\to \,_{{103}}^{{258}}{\mathrm {Lr}}\to \,_{{101}}^{{254}}{\mathrm {Md}}
命名[編集]
2011年1月に発表された、IUPAC と IUPAP の113から116および118番元素についての合同作業部会の報告書[6]では、113番元素の認定は見送られている。
理化学研究所のチームは2012年8月12日に3個目の生成に成功している。レントゲニウムは重イオン研究所が3個目の生成後に命名権を得ているため、今後命名権を獲得できる可能性が高まっている。さらに何回か生成と崩壊系列を確認すれば命名権がより確実になるだろうが、必要な設備(線形加速器だけでなく、粒子を捕捉し崩壊を観測する装置などが必要)は動かすのに数百万円 - 数十億円かかり、容易ではない。
承認されれば日本はもとよりアジアで発見された初めての元素となる。新元素名として「ジャポニウム(或いはジャパニウム[7]、予定元素記号Jp)」、湯川秀樹にちなみ「ユカワニウム(予定元素記号Yk)」、「リケニウム(理研に因む、予定元素記号Rk)」[8]、「ワコニウム(研究所がある埼玉県和光市に因む)[7]」、および「ニシナニウム(物理学者仁科芳雄に因む)[9]」が候補に挙がっている。もし Jp が採用されれば、周期表に初めて J の文字が出現する。この他、過去に43番元素として一度命名されて取り消されたことがある「ニッポニウム」(予定元素記号はネプツニウムとして使用されている Np から、Nm に変更)も候補として検討されていたという[10]。
脚注[編集]
[ヘルプ]
1.^ 3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認 理化学研究所
2.^ Experiments on the synthesis of element 115 in the reaction 243Am(48Ca,xn)291-x115, 7ページの表ドゥブナ合同原子核研究所
3.^ 新発見の113番元素理化学研究所プレスリリース
4.^ Synthesis of the isotope 282113 in the 237Np+48Ca fusion reactionドゥブナ合同原子核研究所
5.^ Synthesis of a New Element with Atomic Number Z=117アメリカ物理学会
6.^ Discovery of the elements with atomic numbers greater than or equal to 113IUPAC
7.^ a b 113番新元素の名前は何になる?(ナショナルジオグラフィック日本版:「研究室に行ってみた。理化学研究所 超重元素合成研究チーム 森田浩介(第6回)」)
8.^ “RIKEN NEWS No.281 November 2004” (2004年11月5日). 2012年6月13日閲覧。
9.^ “新元素113番、日本の発見確実に 合成に3回成功”. 日本経済新聞 (2012年9月27日). 2012年9月27日閲覧。
10.^ ナツメ社『図解雑学シリーズ 元素』、p320
関連事項[編集]
未発見元素の一覧
レニウム - 小川正孝が1908年に43番元素として発見し、「ニッポニウム」 (nipponium, Np) と命名を発表した元素は、現在ではレニウムの可能性が高いとされる。
周期表で第13族元素に属し、タリウムの下に位置するため「エカタリウム」と呼ばれることもある。超ウラン元素では比較的長寿命とされ、278Uutの平均寿命は2ミリ秒であることがわかっている[1]。
目次 [非表示]
1 歴史
2 命名
3 脚注
4 関連事項
歴史[編集]
2003年8月、ドゥブナ合同原子核研究所とローレンス・リバモア国立研究所による合同研究チームがアメリシウムとカルシウムからウンウンペンチウムの元素合成に成功し、翌2004年2月、そのアルファ崩壊の過程で0.48秒間観測した[2]と発表したが、命名権は得られなかった。
\,_{{20}}^{{48}}{\mathrm {Ca}}+\,_{{95}}^{{243}}{\mathrm {Am}}\to \,^{{288,287}}{\mathrm {Uup}}\to \,^{{284,283}}{\mathrm {Uut}}\to \
2004年9月28日、理化学研究所の森田浩介博士らのグループが、線形加速器を用いて亜鉛とビスマスからの元素合成に成功した[3]と発表した。
\,_{{30}}^{{70}}{\mathrm {Zn}}+\,_{{83}}^{{209}}{\mathrm {Bi}}\to \,_{{113}}^{{279}}{\mathrm {Uut}}^{{*}}\to \,_{{113}}^{{278}}{\mathrm {Uut}}+\,_{{0}}^{{1}}{\mathrm {n}}
この実験は80日間にわたって、2.5 × 1012個/秒(1秒間に2.5兆個)の亜鉛原子核をビスマス原子核に約1.7 × 1019回照射した。生成したウンウントリウムの原子核は344マイクロ秒でα崩壊し、ウンウンウニウム(この年の11月にレントゲニウムと命名)の同位体となったのを、同年7月23日に検出している。
2006年6月には、ドゥブナ合同原子核研究所とローレンス・リバモア国立研究所による合同研究チームが、ネプツニウムとカルシウムからの合成に成功した[4]と発表している。
2009年にはドゥブナ合同原子核研究所やオークリッジ国立研究所などによるバークリウムとカルシウムからウンウンセプチウムを元素合成する共同研究において、その崩壊過程で検出されている[5]。
2012年9月27日、理化学研究所は3個目の合成を発表した。ウンウントリウム278が6回のアルファ崩壊を経てメンデレビウム254となる崩壊系列の確認に初めて成功した。前回は4回目のα崩壊で生じるドブニウム262が自発核分裂してしまったが、今回はアルファ崩壊(確率は2/3)し、次のローレンシウム258もアルファ崩壊でメンデレビウム254となるのを観測できたため、合成した原子核がウンウントリウムだと証明できた。
\,_{{113}}^{{278}}{\mathrm {Uut}}\to \,_{{111}}^{{274}}{\mathrm {Rg}}\to \,_{{109}}^{{270}}{\mathrm {Mt}}\to \,_{{107}}^{{266}}{\mathrm {Bh}}\to \,_{{105}}^{{262}}{\mathrm {Db}}\to \,_{{103}}^{{258}}{\mathrm {Lr}}\to \,_{{101}}^{{254}}{\mathrm {Md}}
命名[編集]
2011年1月に発表された、IUPAC と IUPAP の113から116および118番元素についての合同作業部会の報告書[6]では、113番元素の認定は見送られている。
理化学研究所のチームは2012年8月12日に3個目の生成に成功している。レントゲニウムは重イオン研究所が3個目の生成後に命名権を得ているため、今後命名権を獲得できる可能性が高まっている。さらに何回か生成と崩壊系列を確認すれば命名権がより確実になるだろうが、必要な設備(線形加速器だけでなく、粒子を捕捉し崩壊を観測する装置などが必要)は動かすのに数百万円 - 数十億円かかり、容易ではない。
承認されれば日本はもとよりアジアで発見された初めての元素となる。新元素名として「ジャポニウム(或いはジャパニウム[7]、予定元素記号Jp)」、湯川秀樹にちなみ「ユカワニウム(予定元素記号Yk)」、「リケニウム(理研に因む、予定元素記号Rk)」[8]、「ワコニウム(研究所がある埼玉県和光市に因む)[7]」、および「ニシナニウム(物理学者仁科芳雄に因む)[9]」が候補に挙がっている。もし Jp が採用されれば、周期表に初めて J の文字が出現する。この他、過去に43番元素として一度命名されて取り消されたことがある「ニッポニウム」(予定元素記号はネプツニウムとして使用されている Np から、Nm に変更)も候補として検討されていたという[10]。
脚注[編集]
[ヘルプ]
1.^ 3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認 理化学研究所
2.^ Experiments on the synthesis of element 115 in the reaction 243Am(48Ca,xn)291-x115, 7ページの表ドゥブナ合同原子核研究所
3.^ 新発見の113番元素理化学研究所プレスリリース
4.^ Synthesis of the isotope 282113 in the 237Np+48Ca fusion reactionドゥブナ合同原子核研究所
5.^ Synthesis of a New Element with Atomic Number Z=117アメリカ物理学会
6.^ Discovery of the elements with atomic numbers greater than or equal to 113IUPAC
7.^ a b 113番新元素の名前は何になる?(ナショナルジオグラフィック日本版:「研究室に行ってみた。理化学研究所 超重元素合成研究チーム 森田浩介(第6回)」)
8.^ “RIKEN NEWS No.281 November 2004” (2004年11月5日). 2012年6月13日閲覧。
9.^ “新元素113番、日本の発見確実に 合成に3回成功”. 日本経済新聞 (2012年9月27日). 2012年9月27日閲覧。
10.^ ナツメ社『図解雑学シリーズ 元素』、p320
関連事項[編集]
未発見元素の一覧
レニウム - 小川正孝が1908年に43番元素として発見し、「ニッポニウム」 (nipponium, Np) と命名を発表した元素は、現在ではレニウムの可能性が高いとされる。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/2233734
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック