2014年02月13日
カルシウム
カルシウム (新ラテン語: calcium[1], 英: calcium) は原子番号 20 の金属元素。元素記号は Ca。第2族元素に属し、アルカリ土類金属の一種で、ヒトを含む動物や植物の代表的なミネラル(必須元素)である。日本(主に保健分野)では、特定の商標にちなんで「カルシューム」と転訛することがある。
目次 [非表示]
1 性質
2 歴史
3 用途 3.1 建設・建築
3.2 工業
3.3 食品工業、家庭用品ほか
3.4 農業畜産
4 カルシウムの化合物 4.1 無機塩 4.1.1 オキソ酸塩
4.2 有機塩
5 同位体
6 環境における循環
7 生化学 7.1 生理作用
7.2 薬理作用
7.3 疫学
7.4 癌との関わり
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク
性質[編集]
酸化数は僅かな例外を除き、常に+IIとなる。比重1.55の非常に柔らかい金属で、融点は840-850 °C、沸点は1480-1490 °C(異なる実験値あり)。標準状態での結晶構造は面心立方格子構造 。
単体を空気中で放置すると酸素・水・二酸化炭素と反応して腐食するため、鉱油中で保存する必要がある。
空気中で加熱すると炎をあげて燃焼する。
2Ca + O2 → 2CaO
水に溶かすと反応して水素を発生する。生成した水酸化カルシウム溶液は石灰水と呼ぶ。
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
石灰水に二酸化炭素を通すと炭酸カルシウムが沈殿するが、加熱すると元に戻る。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
ハロゲンとは気相中で直接反応し、ハロゲン化物を生成する。
アルコールに溶解してカルシウムアルコキシド (C2H5OCa)、液体アンモニアに溶解してヘキサアンミンカルシウム ([Ca(NH3)6]2+) となる。
水と激しく反応して水素を発生するため、危険物(禁水性物質)に指定されている。
歴史[編集]
カルシウムは古代ローマ時代からカルックス(calx)という名前で知られ、化学的な性質を化合物の形で利用されていた[2]。ラボアジエの33元素にもライム(酸化カルシウム)が含まれている。
石灰(炭酸カルシウム)を主成分とする石灰岩や大理石は耐久性と加工性のバランスがよく、ピラミッドやパルテノン神殿などで石材として利用されている。しかし、カルシウムの化学的性質を活用した最初の例としてはセメントの発明をあげるべきだろう。
人類最初のセメントとして9000年前のイスラエルで使われていた「気硬性セメント」が知られている[3]。これは、砕いた石灰岩を熱して酸化カルシウムを生成させ、施工後にこれが空気中の水分や炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムとなる事を利用して硬化させる。
現在に近い水を加え水酸化カルシウムを生成させる「水硬性セメント」は、5000年前の中国や4000年前の古代ローマで利用され、同じ頃にピラミッド建設には焼石膏(硫酸カルシウム)の水和反応を利用する漆喰(註:日本の漆喰とは異なる)が用いられた。
この様にカルシウムは広く利用され身近な物質だったが、金属として単離するには電気分解の登場を待つ必要があった。 1808年、ハンフリー・デービーが生石灰を酸化水銀とともに溶融電解し、金属カルシウムを得ることに成功した。calcium の名は、石を意味するラテン語の calx から転じ石灰を意味した calcsis に由来する[4]。
ちなみに、優れた実験化学者でもあったラボアジエが著作『化学原論』で近代元素観を確立したのは1789年で、11年後に電気分解が発明された時にはフランス革命により処刑された後だった。
用途[編集]
セメント・モルタルなど、建設・建築用資材として多用され、現在でも使用量の大部分をコンクリート製品が占める。日本の生コン生産量は、ピーク時(1990年)には約2億立方メートルに達している。 多くの用途があるが、金属元素としての需要はマグネシウムに劣る。
建設・建築[編集]
セメント日本は石灰岩資源が豊かで、自給自足し輸出もしてきたが、近年は減少傾向で2009年度生産量は5千8百万トンと、ピーク時の半分程度となっている。生産量の4分の3をポルトランドセメントが占め、残りの大部分は高炉セメントである。石材、窓材、彫刻白い大理石や、透明度の高い石膏が好んで利用される。漆喰消石灰や苦灰石を固化剤とする。モルタル主に細骨材セメントが用いられる。断熱材、保温材ケイ酸カルシウムを発泡させたもので耐火性を持ち、アスベスト代替品として用いられる。
工業[編集]
精錬酸素と結びつきやすい性質から、古来より蛍石(フッ化カルシウム)が融剤として銅の精錬に用いられた。製鉄、製鋼日本の生石灰生産量の半分を消費する。高炉の不純物除去剤として、鉄鉱石やコークスとともに投入され、シリカ、アルミナとスラグ(ケイ酸カルシウムアルミニウム)をつくり銑鉄から分離する。また、造粒強化、熱効率改善、窒素酸化物削減効果を持つ。転炉では主にリン、硫黄の除去と温度調整効果をもつほか、高級鋼の炉外精錬に用いる[5]。非鉄金属鉱業還元剤としてチタン[6]や希土類(還元拡散法)[7]、ウランやプルトニウム[8]、セシウムの精錬に用いられる。酸化物陰極仕事関数が小さい熱陰極(真空管、ブラウン管、蛍光ランプなど)材料として、バリウム、ストロンチウムとともに三元酸化物として1950年頃に用いられた[9]。合金添加剤マグネシウム合金に0.25 %添加すると、耐熱性が200-300 °C高い難燃性合金となる。るつぼ、耐火材多孔質のカルシア(酸化カルシウム)は2000 °Cまで使用でき、触媒作用・吸収・汚染が少ない。化学工業安価で安全なアルカリ剤として欠かせない。主に消石灰(水酸化カルシウム)の石灰乳(水でスラリー状にしたもの)が用いられる。マグネシア(酸化マグネシウム)製造消石灰により海水中の塩化マグネシウムを複分解回収する(主に日本)。ソーダ灰(炭酸ナトリウム)製造循環アンモニアの回収剤および塩化物イオンの吸収剤として使用する。エポキシ樹脂製造原料のプロピレンオキサイドやエピクロルヒドリンの製造で、ケン化、中和、加熱を同時に進行させる。カーバイド(炭化カルシウム)アセチレン製造に必要で、高温電気炉で石灰とコークスを強熱して製造される。さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)生石灰に塩素を吸収させ、比較的安定で安価な消毒剤として広く使われている。パルプ工業蒸解に使用した苛性ソーダ廃液(リグニンを含む黒液)を、燃焼分解して炭酸ナトリウム溶液とし、生石灰で再生する。ガラス製造ソーダ石灰ガラスの原料として、ナトリウム、ケイ素、カルシウムの酸化物が用いられる。排水処理無機酸性排水の中和に多用されるほか、フッ素、リン、重金属の除去に使用される。排ガス処理火力発電所で硫黄酸化物吸収剤として排煙脱硫に利用され、副生する硫酸カルシウムは、原料石膏となる。ゴミ焼却炉炉などを腐食する塩化水素が大量に発生するため、生石灰、消石灰の粉末を吸収剤として煙道へ吹き込む。
食品工業、家庭用品ほか[編集]
製糖消石灰を粗糖溶液に加え炭酸ガスを吹き込み、炭酸カルシウムの吸着・凝集沈殿効果で精製する。食品添加物コンニャクの凝固剤、栄養強化剤として用いられる。乾燥剤無水物の水和反応を利用し、酸化カルシウムや塩化カルシウムが用いられた。能力はシリカゲルに劣るが、押入れの湿気取りなどで利用される。発熱剤酸化カルシウムの水和(発熱反応)を、携帯食品(弁当や飲み物など)を加熱する手段として用いる。融雪剤塩カル(塩化カルシウム)による溶解熱、凝固点降下を利用している。学校用品チョーク、ライン材(グラウンドの白線用消石灰)など。入浴剤湯を白濁させたりアルカリ性にして肌触りを変化させるため、炭酸カルシウムが利用される。研磨剤炭酸カルシウムが歯磨き粉や消しゴムなどに用いられる。
農業畜産[編集]
農薬ボルドー液、石灰硫黄合剤、石灰防除などに使われる。無機肥料苦土石灰、過リン酸石灰、硝酸カルシウムなどのほか、連作障害対策の土壌中和・殺菌兼用で生石灰、消石灰が使用される。飼料家畜の栄養保健剤。
カルシウムの化合物[編集]
無機塩[編集]
酸化カルシウム (CaO) - 生石灰
過酸化カルシウム (CaO2)
水酸化カルシウム (Ca(OH)2) - 消石灰
フッ化カルシウム (CaF2) - 蛍石
塩化カルシウム (CaCl2•2H2O) - 塩カル
臭化カルシウム (CaBr2•2H2O)
ヨウ化カルシウム (CaI2•3H2O)
水素化カルシウム (CaH2)
炭化カルシウム (CaC2) - カルシウムカーバイド
リン化カルシウム (Ca3P2)
オキソ酸塩[編集]
炭酸カルシウム (CaCO3) - 石灰石
炭酸水素カルシウム (Ca(HCO3)2)
硝酸カルシウム (Ca(NO3)2•4H2O)
硫酸カルシウム (CaSO4•2H2O) - 石膏
亜硫酸カルシウム (CaSO3)
ケイ酸カルシウム (CaSiO3 または Ca2SiO4)
リン酸カルシウム (Ca3(PO4)2)
ピロリン酸カルシウム (Ca2O7P2)
次亜塩素酸カルシウム (Ca[ClO]2) - さらし粉
塩素酸カルシウム (Ca(ClO3)2)
過塩素酸カルシウム (Ca(ClO4)2)
臭素酸カルシウム (Ca(BrO3)2)
ヨウ素酸カルシウム (Ca(IO3)2•H2O)
亜ヒ酸カルシウム (Ca3(AsO4)2)
クロム酸カルシウム (CaCrO4)
タングステン酸カルシウム (CaWO4) - 灰重石
モリブデン酸カルシウム (CaMoO4) - パウエル石
炭酸カルシウムマグネシウム (CaMg(CO3)2) - 苦灰石
ハイドロキシアパタイト (Ca5(PO4)3(OH) または Ca10(PO4)6(OH)2) - 水酸燐灰石
有機塩[編集]
酢酸カルシウム (Ca(CH3COO)2)
グルコン酸カルシウム (C12H22CaO14)
乳酸カルシウム (C6H10CaO6)
安息香酸カルシウム (C14H10CaO4)
ステアリン酸カルシウム (Ca(C17H35COO)2)
同位体[編集]
詳細は「カルシウムの同位体」を参照
カルシウムの原子番号20番は陽子の魔法数であり、安定同位体が4種と多い。さらに、中性子も魔法数である二重魔法数の同位体を2つ (40Ca, 48Ca) 持っている。40Ca は安定核種の列から外れた位置にあるにも関わらず、天然存在率が約97 %と著しく高い。一方の 48Ca も周囲を短寿命核種に囲まれながら、半減期430京年と極端に安定していて、存在率も 46Ca の数十倍である。
環境における循環[編集]
カルシウムは古典的なクラーク数で、第5位に位置し、地殻中の存在率は3.39 %とされていた。現在は地球温暖化の主要因となる二酸化炭素を、炭酸カルシウムとして封じ込める役を持つとして関心が高まっている。
石灰岩の成因は、無生物的に海水中のイオン反応のほか、サンゴ虫が形成する外骨格に由来するサンゴ礁の寄与が大きいと考えられている。石灰岩中の二酸化炭素は、自然界では火山による熱変成作用や鍾乳洞でみられるような溶出により大気中に放出されるが、炭酸水素イオンとして水系に取り込まれやすいため、短期間でカルシウムやマグネシウムなどと難溶性塩を生成し、再び固定される。
生化学[編集]
カルシウムは真核細胞生物にとって必須元素であり、植物にとっても肥料として必要である。
生理作用[編集]
人体の構成成分としてのカルシウムは、成人男性の場合で約1 kgを占める。主に骨や歯としてヒドロキシアパタイト Ca5(PO4)3(OH) の形で存在する。
生体内のカルシウムは、遊離型・タンパク質結合型・沈着型で存在する。ヒトをはじめとする脊椎動物では、主に骨質として大量の沈着型がストックされているが、細胞内のカルシウムイオンは外より極端に濃度が低く、その差は3桁に達する。同様の濃度差はカリウムとナトリウムでも見られるが、カルシウムでは細胞内濃度が厳密に保たれている。これは、真核細胞内の情報伝達を担うカルシウムシグナリングのためと考えられていて、細胞膜にカルシウムイオンを排出するカルシウムチャネルが備えられている。
筋肉細胞では、収縮に関わるタンパク質(トロポニン)に結合することが不可欠である[10]。カルシウムイオンは細胞内液には殆ど存在せず、細胞外からのカルシウムイオンの流入や、細胞内の小胞体に蓄えられたカルシウムイオンの放出は、様々なシグナルとしての生理的機能がある。
植物細胞では、有機酸の対イオンとなるなど物質代謝に関わっているため動物細胞より多く必要とし、肥料の三要素に次いで4番目に必須となっている。
薬理作用[編集]
カルシウムは便や尿として体外に排泄されるため、これを補う最低必要摂取量として、日本の厚生労働省は1日に700mg(骨粗鬆症予防には800 mgを推奨)をあげている[11]。
いくつかの症状に対し、医薬品として処方されることがある。定番となっている胃の制酸薬以外にも、カルシウム欠乏による筋肉の痙攣、くる病、骨軟化症、低カルシウム血症、骨粗鬆症の治療に、主に経口摂取で用いるほか、血液中のリン酸濃度を抑制したい場合に用いる。また、栄養補助食品も広く販売されており、病気治療で食事制限中だったり、重度の骨粗鬆症で大量摂取したいとき、食事量が落ちた高齢者などで効果が期待できる。
健常者では体液内濃度は平衡に保たれ、妊娠期の女性も食物からの吸収能力が自然に増すため、偏った食生活でなければ追加摂取は必要ない[12]。一方、過剰摂取は高カルシウム血症や腎結石、ミルクアルカリ症候群の原因となるため、一日摂取許容量上限として2300 mgが示されている。
俗説に、カルシウムが不足すると血液中の濃度が低下し、イライラなど精神不安定の原因になるとされる。しかし血液中の量は約0.5 g(成人男性の場合。濃度10mg/dL、血液量5kgとして)とわずかで、人体の成分として不足する事はなく、イライラの原因候補は無数に存在する。もし血中濃度が正常範囲を外れているならば、骨からの出し入れ量を調節する副甲状腺機能の異常などが疑われる[13]。
疫学[編集]
カルシウムは必須元素として以上の効果を期待され、幾つもの疫学調査が行われている。
有効性ありと判定された例[14]
低カルシウム血症くる病・骨軟化症制酸剤おそらく効果有りと判定された例
閉経前後の骨量減少胎児の骨成長・骨密度増加(註:リバウンドを含め、出生後の追跡調査例見つからず)上皮小体亢進症(慢性腎機能障害患者)可能性有りと判定された例
骨粗鬆症、骨密度減少(ステロイドの長期間服用者でビタミンD併用時)高齢者における歯の損失歯へのフッ素の過剰沈着(小児でビタミンC・D併用)虚血性発作血圧減少(腎疾患末期)高血圧、子癇前症での血圧減少(カルシウム摂取不足の妊婦)直腸上皮の異常増殖、下痢(腸管バイパス手術を受けた人)妊娠中のこむらがえり骨粗鬆症診療ガイドラインでは、カルシウムのサプリメントの摂取は骨密度を2 %増やすが骨折率には変化がないので、すすめられる根拠がない(グレードC)に分類される[15]。
加齢による骨の減少を遅くする効果 ハーバード大学の公衆疫学部によれば、十分なカルシウムを摂取することで効果があるが、乳製品がもっとも良い選択かは明らかではないとする。乳製品以外のカルシウムの摂取源として コラード、チンゲンサイ、豆乳、ベイクドビーンズ が挙げられている[16]。
ビタミンDは、小腸の腸細胞の柔もうを通じてカルシウムを吸収する際にカルシウム結合タンパクの量を増加させるカルシウム吸収の要因として重要である。ビタミンDは、腎臓において尿からカルシウムが損失することを抑制する[17]。
癌との関わり[編集]
2つの無作為化比較試験[18][19]の国際コクラン共同計画によるメタ分析[20]によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。
最近の研究結果は矛盾したものであるが、1つはビタミンDの抗癌効果について肯定的なものであり(Lappeほか)、癌のリスクに対してカルシウムのみから独立した肯定的作用を行っているとしたものである(以下の2番目の研究を参照のこと)[21]。
ある無作為化比較試験は、1000 mgのカルシウム成分と400 IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった[22]。
ある無作為化比較試験は、1400-1500 mgのカルシウムサプリメントと1100 IUのビタミンD3が塊状の癌の相対的リスクを0.402まで低下させることを示した[23]。
ある疫学的研究では、高容量のカルシウムとビタミンDの摂取は更年期前の乳癌の発生リスクを低めていることが発見された[24]。
日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査では、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げることを示し、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺癌のリスクをやや上げることを示した[25]。
脚注[編集]
1.^ http://www.encyclo.co.uk/webster/C/7
2.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、118頁。ISBN 4-06-257192-7。
3.^ セメントの歴史コンクリートの世界
4.^ 元素を知る事典〜先端材料への入門〜,村上雅人 編著,
5.^ 鋼を作る日本石灰協会・日本石灰工業組合
6.^ [1]
7.^ 還元拡散法による希土類機能性材料の製造に関する基礎的研究科学研究費補助金データベース
8.^ 緻密なウラニウム精錬用弗化カルシウム容器NII論文情報ナビゲータ
9.^ 酸化物陰極を備えた真空管ekouhou.net
10.^ 筋収縮を調節する分子メカニズムの一端を解明 科学技術振興機構
11.^ 骨粗鬆症予防のための食品栄養成分ノート国立病院機構
12.^ 妊産婦のための食生活指針 (厚生労働省)
13.^ カルシウムが高い時日本臨床検査専門医会
14.^ 「健康食品」の安全性・有効性情報国立健康・栄養研究所
15.^ 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版』 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会、ライフサイエンス出版。2006年10月。ISBN 978-4-89775-228-0。34-35、77頁。
16.^ The Nutrition Source Calcium and Milk: What's Best for Your Bones? (Harvard School of Public Health)
17.^ en:Calcium in biology
18.^ Baron JA, Beach M, Mandel JS (1999). “Calcium supplements for the prevention of colorectal adenomas. Calcium Polyp Prevention Study Group”. N. Engl. J. Med. 340 (2): 101–7. doi:10.1056/NEJM199901143400204. PMID 9887161.
19.^ Bonithon-Kopp C, Kronborg O, Giacosa A, Räth U, Faivre J (2000). “Calcium and fibre supplementation in prevention of colorectal adenoma recurrence: a randomised intervention trial. European Cancer Prevention Organisation Study Group”. Lancet 356 (9238): 1300–6. doi:10.1016/S0140-6736(00)02813-0. PMID 11073017.
20.^ Weingarten MA, Zalmanovici A, Yaphe J (2005). “Dietary calcium supplementation for preventing colorectal cancer, adenomatous polyps and calcium metabolisism disorder.”. Cochrane database of systematic reviews (Online) (3): CD003548. doi:10.1002/14651858.CD003548.pub3. PMID 16034903.
21.^ Lappe, Jm; Travers-Gustafson, D; Davies, Km; Recker, Rr; Heaney, Rp (2007). “Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial” (Free full text). The American journal of clinical nutrition 85 (6): 1586–91. PMID 17556697.
22.^ Wactawski-Wende J, Kotchen JM, Anderson GL (2006). “Calcium plus vitamin D supplementation and the risk of colorectal cancer”. N. Engl. J. Med. 354 (7): 684–96. doi:10.1056/NEJMoa055222. PMID 16481636.
23.^ Lappe JM, Travers-Gustafson D, Davies KM, Recker RR, Heaney RP (2007). “Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial”. Am. J. Clin. Nutr. 85 (6): 1586–91. PMID 17556697.
24.^ Lin J, Manson JE, Lee IM, Cook NR, Buring JE, Zhang SM (2007). “Intakes of calcium and vitamin d and breast cancer risk in women”. Arch. Intern. Med. 167 (10): 1050–9. doi:10.1001/archinte.167.10.1050. PMID 17533208.
25.^ 乳製品、飽和脂肪酸、カルシウム摂取量と前立腺がんとの関連について―概要― PMID 18398033
目次 [非表示]
1 性質
2 歴史
3 用途 3.1 建設・建築
3.2 工業
3.3 食品工業、家庭用品ほか
3.4 農業畜産
4 カルシウムの化合物 4.1 無機塩 4.1.1 オキソ酸塩
4.2 有機塩
5 同位体
6 環境における循環
7 生化学 7.1 生理作用
7.2 薬理作用
7.3 疫学
7.4 癌との関わり
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク
性質[編集]
酸化数は僅かな例外を除き、常に+IIとなる。比重1.55の非常に柔らかい金属で、融点は840-850 °C、沸点は1480-1490 °C(異なる実験値あり)。標準状態での結晶構造は面心立方格子構造 。
単体を空気中で放置すると酸素・水・二酸化炭素と反応して腐食するため、鉱油中で保存する必要がある。
空気中で加熱すると炎をあげて燃焼する。
2Ca + O2 → 2CaO
水に溶かすと反応して水素を発生する。生成した水酸化カルシウム溶液は石灰水と呼ぶ。
Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
石灰水に二酸化炭素を通すと炭酸カルシウムが沈殿するが、加熱すると元に戻る。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
ハロゲンとは気相中で直接反応し、ハロゲン化物を生成する。
アルコールに溶解してカルシウムアルコキシド (C2H5OCa)、液体アンモニアに溶解してヘキサアンミンカルシウム ([Ca(NH3)6]2+) となる。
水と激しく反応して水素を発生するため、危険物(禁水性物質)に指定されている。
歴史[編集]
カルシウムは古代ローマ時代からカルックス(calx)という名前で知られ、化学的な性質を化合物の形で利用されていた[2]。ラボアジエの33元素にもライム(酸化カルシウム)が含まれている。
石灰(炭酸カルシウム)を主成分とする石灰岩や大理石は耐久性と加工性のバランスがよく、ピラミッドやパルテノン神殿などで石材として利用されている。しかし、カルシウムの化学的性質を活用した最初の例としてはセメントの発明をあげるべきだろう。
人類最初のセメントとして9000年前のイスラエルで使われていた「気硬性セメント」が知られている[3]。これは、砕いた石灰岩を熱して酸化カルシウムを生成させ、施工後にこれが空気中の水分や炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムとなる事を利用して硬化させる。
現在に近い水を加え水酸化カルシウムを生成させる「水硬性セメント」は、5000年前の中国や4000年前の古代ローマで利用され、同じ頃にピラミッド建設には焼石膏(硫酸カルシウム)の水和反応を利用する漆喰(註:日本の漆喰とは異なる)が用いられた。
この様にカルシウムは広く利用され身近な物質だったが、金属として単離するには電気分解の登場を待つ必要があった。 1808年、ハンフリー・デービーが生石灰を酸化水銀とともに溶融電解し、金属カルシウムを得ることに成功した。calcium の名は、石を意味するラテン語の calx から転じ石灰を意味した calcsis に由来する[4]。
ちなみに、優れた実験化学者でもあったラボアジエが著作『化学原論』で近代元素観を確立したのは1789年で、11年後に電気分解が発明された時にはフランス革命により処刑された後だった。
用途[編集]
セメント・モルタルなど、建設・建築用資材として多用され、現在でも使用量の大部分をコンクリート製品が占める。日本の生コン生産量は、ピーク時(1990年)には約2億立方メートルに達している。 多くの用途があるが、金属元素としての需要はマグネシウムに劣る。
建設・建築[編集]
セメント日本は石灰岩資源が豊かで、自給自足し輸出もしてきたが、近年は減少傾向で2009年度生産量は5千8百万トンと、ピーク時の半分程度となっている。生産量の4分の3をポルトランドセメントが占め、残りの大部分は高炉セメントである。石材、窓材、彫刻白い大理石や、透明度の高い石膏が好んで利用される。漆喰消石灰や苦灰石を固化剤とする。モルタル主に細骨材セメントが用いられる。断熱材、保温材ケイ酸カルシウムを発泡させたもので耐火性を持ち、アスベスト代替品として用いられる。
工業[編集]
精錬酸素と結びつきやすい性質から、古来より蛍石(フッ化カルシウム)が融剤として銅の精錬に用いられた。製鉄、製鋼日本の生石灰生産量の半分を消費する。高炉の不純物除去剤として、鉄鉱石やコークスとともに投入され、シリカ、アルミナとスラグ(ケイ酸カルシウムアルミニウム)をつくり銑鉄から分離する。また、造粒強化、熱効率改善、窒素酸化物削減効果を持つ。転炉では主にリン、硫黄の除去と温度調整効果をもつほか、高級鋼の炉外精錬に用いる[5]。非鉄金属鉱業還元剤としてチタン[6]や希土類(還元拡散法)[7]、ウランやプルトニウム[8]、セシウムの精錬に用いられる。酸化物陰極仕事関数が小さい熱陰極(真空管、ブラウン管、蛍光ランプなど)材料として、バリウム、ストロンチウムとともに三元酸化物として1950年頃に用いられた[9]。合金添加剤マグネシウム合金に0.25 %添加すると、耐熱性が200-300 °C高い難燃性合金となる。るつぼ、耐火材多孔質のカルシア(酸化カルシウム)は2000 °Cまで使用でき、触媒作用・吸収・汚染が少ない。化学工業安価で安全なアルカリ剤として欠かせない。主に消石灰(水酸化カルシウム)の石灰乳(水でスラリー状にしたもの)が用いられる。マグネシア(酸化マグネシウム)製造消石灰により海水中の塩化マグネシウムを複分解回収する(主に日本)。ソーダ灰(炭酸ナトリウム)製造循環アンモニアの回収剤および塩化物イオンの吸収剤として使用する。エポキシ樹脂製造原料のプロピレンオキサイドやエピクロルヒドリンの製造で、ケン化、中和、加熱を同時に進行させる。カーバイド(炭化カルシウム)アセチレン製造に必要で、高温電気炉で石灰とコークスを強熱して製造される。さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)生石灰に塩素を吸収させ、比較的安定で安価な消毒剤として広く使われている。パルプ工業蒸解に使用した苛性ソーダ廃液(リグニンを含む黒液)を、燃焼分解して炭酸ナトリウム溶液とし、生石灰で再生する。ガラス製造ソーダ石灰ガラスの原料として、ナトリウム、ケイ素、カルシウムの酸化物が用いられる。排水処理無機酸性排水の中和に多用されるほか、フッ素、リン、重金属の除去に使用される。排ガス処理火力発電所で硫黄酸化物吸収剤として排煙脱硫に利用され、副生する硫酸カルシウムは、原料石膏となる。ゴミ焼却炉炉などを腐食する塩化水素が大量に発生するため、生石灰、消石灰の粉末を吸収剤として煙道へ吹き込む。
食品工業、家庭用品ほか[編集]
製糖消石灰を粗糖溶液に加え炭酸ガスを吹き込み、炭酸カルシウムの吸着・凝集沈殿効果で精製する。食品添加物コンニャクの凝固剤、栄養強化剤として用いられる。乾燥剤無水物の水和反応を利用し、酸化カルシウムや塩化カルシウムが用いられた。能力はシリカゲルに劣るが、押入れの湿気取りなどで利用される。発熱剤酸化カルシウムの水和(発熱反応)を、携帯食品(弁当や飲み物など)を加熱する手段として用いる。融雪剤塩カル(塩化カルシウム)による溶解熱、凝固点降下を利用している。学校用品チョーク、ライン材(グラウンドの白線用消石灰)など。入浴剤湯を白濁させたりアルカリ性にして肌触りを変化させるため、炭酸カルシウムが利用される。研磨剤炭酸カルシウムが歯磨き粉や消しゴムなどに用いられる。
農業畜産[編集]
農薬ボルドー液、石灰硫黄合剤、石灰防除などに使われる。無機肥料苦土石灰、過リン酸石灰、硝酸カルシウムなどのほか、連作障害対策の土壌中和・殺菌兼用で生石灰、消石灰が使用される。飼料家畜の栄養保健剤。
カルシウムの化合物[編集]
無機塩[編集]
酸化カルシウム (CaO) - 生石灰
過酸化カルシウム (CaO2)
水酸化カルシウム (Ca(OH)2) - 消石灰
フッ化カルシウム (CaF2) - 蛍石
塩化カルシウム (CaCl2•2H2O) - 塩カル
臭化カルシウム (CaBr2•2H2O)
ヨウ化カルシウム (CaI2•3H2O)
水素化カルシウム (CaH2)
炭化カルシウム (CaC2) - カルシウムカーバイド
リン化カルシウム (Ca3P2)
オキソ酸塩[編集]
炭酸カルシウム (CaCO3) - 石灰石
炭酸水素カルシウム (Ca(HCO3)2)
硝酸カルシウム (Ca(NO3)2•4H2O)
硫酸カルシウム (CaSO4•2H2O) - 石膏
亜硫酸カルシウム (CaSO3)
ケイ酸カルシウム (CaSiO3 または Ca2SiO4)
リン酸カルシウム (Ca3(PO4)2)
ピロリン酸カルシウム (Ca2O7P2)
次亜塩素酸カルシウム (Ca[ClO]2) - さらし粉
塩素酸カルシウム (Ca(ClO3)2)
過塩素酸カルシウム (Ca(ClO4)2)
臭素酸カルシウム (Ca(BrO3)2)
ヨウ素酸カルシウム (Ca(IO3)2•H2O)
亜ヒ酸カルシウム (Ca3(AsO4)2)
クロム酸カルシウム (CaCrO4)
タングステン酸カルシウム (CaWO4) - 灰重石
モリブデン酸カルシウム (CaMoO4) - パウエル石
炭酸カルシウムマグネシウム (CaMg(CO3)2) - 苦灰石
ハイドロキシアパタイト (Ca5(PO4)3(OH) または Ca10(PO4)6(OH)2) - 水酸燐灰石
有機塩[編集]
酢酸カルシウム (Ca(CH3COO)2)
グルコン酸カルシウム (C12H22CaO14)
乳酸カルシウム (C6H10CaO6)
安息香酸カルシウム (C14H10CaO4)
ステアリン酸カルシウム (Ca(C17H35COO)2)
同位体[編集]
詳細は「カルシウムの同位体」を参照
カルシウムの原子番号20番は陽子の魔法数であり、安定同位体が4種と多い。さらに、中性子も魔法数である二重魔法数の同位体を2つ (40Ca, 48Ca) 持っている。40Ca は安定核種の列から外れた位置にあるにも関わらず、天然存在率が約97 %と著しく高い。一方の 48Ca も周囲を短寿命核種に囲まれながら、半減期430京年と極端に安定していて、存在率も 46Ca の数十倍である。
環境における循環[編集]
カルシウムは古典的なクラーク数で、第5位に位置し、地殻中の存在率は3.39 %とされていた。現在は地球温暖化の主要因となる二酸化炭素を、炭酸カルシウムとして封じ込める役を持つとして関心が高まっている。
石灰岩の成因は、無生物的に海水中のイオン反応のほか、サンゴ虫が形成する外骨格に由来するサンゴ礁の寄与が大きいと考えられている。石灰岩中の二酸化炭素は、自然界では火山による熱変成作用や鍾乳洞でみられるような溶出により大気中に放出されるが、炭酸水素イオンとして水系に取り込まれやすいため、短期間でカルシウムやマグネシウムなどと難溶性塩を生成し、再び固定される。
生化学[編集]
カルシウムは真核細胞生物にとって必須元素であり、植物にとっても肥料として必要である。
生理作用[編集]
人体の構成成分としてのカルシウムは、成人男性の場合で約1 kgを占める。主に骨や歯としてヒドロキシアパタイト Ca5(PO4)3(OH) の形で存在する。
生体内のカルシウムは、遊離型・タンパク質結合型・沈着型で存在する。ヒトをはじめとする脊椎動物では、主に骨質として大量の沈着型がストックされているが、細胞内のカルシウムイオンは外より極端に濃度が低く、その差は3桁に達する。同様の濃度差はカリウムとナトリウムでも見られるが、カルシウムでは細胞内濃度が厳密に保たれている。これは、真核細胞内の情報伝達を担うカルシウムシグナリングのためと考えられていて、細胞膜にカルシウムイオンを排出するカルシウムチャネルが備えられている。
筋肉細胞では、収縮に関わるタンパク質(トロポニン)に結合することが不可欠である[10]。カルシウムイオンは細胞内液には殆ど存在せず、細胞外からのカルシウムイオンの流入や、細胞内の小胞体に蓄えられたカルシウムイオンの放出は、様々なシグナルとしての生理的機能がある。
植物細胞では、有機酸の対イオンとなるなど物質代謝に関わっているため動物細胞より多く必要とし、肥料の三要素に次いで4番目に必須となっている。
薬理作用[編集]
カルシウムは便や尿として体外に排泄されるため、これを補う最低必要摂取量として、日本の厚生労働省は1日に700mg(骨粗鬆症予防には800 mgを推奨)をあげている[11]。
いくつかの症状に対し、医薬品として処方されることがある。定番となっている胃の制酸薬以外にも、カルシウム欠乏による筋肉の痙攣、くる病、骨軟化症、低カルシウム血症、骨粗鬆症の治療に、主に経口摂取で用いるほか、血液中のリン酸濃度を抑制したい場合に用いる。また、栄養補助食品も広く販売されており、病気治療で食事制限中だったり、重度の骨粗鬆症で大量摂取したいとき、食事量が落ちた高齢者などで効果が期待できる。
健常者では体液内濃度は平衡に保たれ、妊娠期の女性も食物からの吸収能力が自然に増すため、偏った食生活でなければ追加摂取は必要ない[12]。一方、過剰摂取は高カルシウム血症や腎結石、ミルクアルカリ症候群の原因となるため、一日摂取許容量上限として2300 mgが示されている。
俗説に、カルシウムが不足すると血液中の濃度が低下し、イライラなど精神不安定の原因になるとされる。しかし血液中の量は約0.5 g(成人男性の場合。濃度10mg/dL、血液量5kgとして)とわずかで、人体の成分として不足する事はなく、イライラの原因候補は無数に存在する。もし血中濃度が正常範囲を外れているならば、骨からの出し入れ量を調節する副甲状腺機能の異常などが疑われる[13]。
疫学[編集]
カルシウムは必須元素として以上の効果を期待され、幾つもの疫学調査が行われている。
有効性ありと判定された例[14]
低カルシウム血症くる病・骨軟化症制酸剤おそらく効果有りと判定された例
閉経前後の骨量減少胎児の骨成長・骨密度増加(註:リバウンドを含め、出生後の追跡調査例見つからず)上皮小体亢進症(慢性腎機能障害患者)可能性有りと判定された例
骨粗鬆症、骨密度減少(ステロイドの長期間服用者でビタミンD併用時)高齢者における歯の損失歯へのフッ素の過剰沈着(小児でビタミンC・D併用)虚血性発作血圧減少(腎疾患末期)高血圧、子癇前症での血圧減少(カルシウム摂取不足の妊婦)直腸上皮の異常増殖、下痢(腸管バイパス手術を受けた人)妊娠中のこむらがえり骨粗鬆症診療ガイドラインでは、カルシウムのサプリメントの摂取は骨密度を2 %増やすが骨折率には変化がないので、すすめられる根拠がない(グレードC)に分類される[15]。
加齢による骨の減少を遅くする効果 ハーバード大学の公衆疫学部によれば、十分なカルシウムを摂取することで効果があるが、乳製品がもっとも良い選択かは明らかではないとする。乳製品以外のカルシウムの摂取源として コラード、チンゲンサイ、豆乳、ベイクドビーンズ が挙げられている[16]。
ビタミンDは、小腸の腸細胞の柔もうを通じてカルシウムを吸収する際にカルシウム結合タンパクの量を増加させるカルシウム吸収の要因として重要である。ビタミンDは、腎臓において尿からカルシウムが損失することを抑制する[17]。
癌との関わり[編集]
2つの無作為化比較試験[18][19]の国際コクラン共同計画によるメタ分析[20]によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。
最近の研究結果は矛盾したものであるが、1つはビタミンDの抗癌効果について肯定的なものであり(Lappeほか)、癌のリスクに対してカルシウムのみから独立した肯定的作用を行っているとしたものである(以下の2番目の研究を参照のこと)[21]。
ある無作為化比較試験は、1000 mgのカルシウム成分と400 IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった[22]。
ある無作為化比較試験は、1400-1500 mgのカルシウムサプリメントと1100 IUのビタミンD3が塊状の癌の相対的リスクを0.402まで低下させることを示した[23]。
ある疫学的研究では、高容量のカルシウムとビタミンDの摂取は更年期前の乳癌の発生リスクを低めていることが発見された[24]。
日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査では、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げることを示し、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺癌のリスクをやや上げることを示した[25]。
脚注[編集]
1.^ http://www.encyclo.co.uk/webster/C/7
2.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、118頁。ISBN 4-06-257192-7。
3.^ セメントの歴史コンクリートの世界
4.^ 元素を知る事典〜先端材料への入門〜,村上雅人 編著,
5.^ 鋼を作る日本石灰協会・日本石灰工業組合
6.^ [1]
7.^ 還元拡散法による希土類機能性材料の製造に関する基礎的研究科学研究費補助金データベース
8.^ 緻密なウラニウム精錬用弗化カルシウム容器NII論文情報ナビゲータ
9.^ 酸化物陰極を備えた真空管ekouhou.net
10.^ 筋収縮を調節する分子メカニズムの一端を解明 科学技術振興機構
11.^ 骨粗鬆症予防のための食品栄養成分ノート国立病院機構
12.^ 妊産婦のための食生活指針 (厚生労働省)
13.^ カルシウムが高い時日本臨床検査専門医会
14.^ 「健康食品」の安全性・有効性情報国立健康・栄養研究所
15.^ 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版』 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会、ライフサイエンス出版。2006年10月。ISBN 978-4-89775-228-0。34-35、77頁。
16.^ The Nutrition Source Calcium and Milk: What's Best for Your Bones? (Harvard School of Public Health)
17.^ en:Calcium in biology
18.^ Baron JA, Beach M, Mandel JS (1999). “Calcium supplements for the prevention of colorectal adenomas. Calcium Polyp Prevention Study Group”. N. Engl. J. Med. 340 (2): 101–7. doi:10.1056/NEJM199901143400204. PMID 9887161.
19.^ Bonithon-Kopp C, Kronborg O, Giacosa A, Räth U, Faivre J (2000). “Calcium and fibre supplementation in prevention of colorectal adenoma recurrence: a randomised intervention trial. European Cancer Prevention Organisation Study Group”. Lancet 356 (9238): 1300–6. doi:10.1016/S0140-6736(00)02813-0. PMID 11073017.
20.^ Weingarten MA, Zalmanovici A, Yaphe J (2005). “Dietary calcium supplementation for preventing colorectal cancer, adenomatous polyps and calcium metabolisism disorder.”. Cochrane database of systematic reviews (Online) (3): CD003548. doi:10.1002/14651858.CD003548.pub3. PMID 16034903.
21.^ Lappe, Jm; Travers-Gustafson, D; Davies, Km; Recker, Rr; Heaney, Rp (2007). “Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial” (Free full text). The American journal of clinical nutrition 85 (6): 1586–91. PMID 17556697.
22.^ Wactawski-Wende J, Kotchen JM, Anderson GL (2006). “Calcium plus vitamin D supplementation and the risk of colorectal cancer”. N. Engl. J. Med. 354 (7): 684–96. doi:10.1056/NEJMoa055222. PMID 16481636.
23.^ Lappe JM, Travers-Gustafson D, Davies KM, Recker RR, Heaney RP (2007). “Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial”. Am. J. Clin. Nutr. 85 (6): 1586–91. PMID 17556697.
24.^ Lin J, Manson JE, Lee IM, Cook NR, Buring JE, Zhang SM (2007). “Intakes of calcium and vitamin d and breast cancer risk in women”. Arch. Intern. Med. 167 (10): 1050–9. doi:10.1001/archinte.167.10.1050. PMID 17533208.
25.^ 乳製品、飽和脂肪酸、カルシウム摂取量と前立腺がんとの関連について―概要― PMID 18398033
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/2233485
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック