2014年02月13日
アルゴン
アルゴン (英: argon) は原子番号18の元素で、元素記号はArである。周期表において第18族元素 (希ガス) かつ第3周期元素に属す。アルゴンは地球大気中に3番目に多く含まれている気体で、その容量パーセント濃度は0.93 %であり、二酸化炭素 (0.039%) より多く存在している。地球上のアルゴンのほとんどは質量数40のもの (アルゴン40) であり、これは地殻中のカリウム40の崩壊により生成した。一方、宇宙においてはアルゴン36が最も多量に存在し、超新星爆発による元素合成によりつくられた。
「アルゴン」という名はギリシャ語で「怠惰な」「不活発な」を意味する「αργον」という単語に由来する。事実、アルゴンは化学反応をほとんど起こさない元素である。最外殻電子数が8でありオクテット則を満たしているので、アルゴンは安定でほかの元素と結合しにくい。三重点 は83.8058 Kであり、これは1990年国際温度目盛 (ITS-90) の定義定点に採用された。
目次 [非表示]
1 特徴
2 用途
3 歴史
4 化合物
5 同位体
6 出典
7 外部リンク
特徴[編集]
凍結させたアルゴン
希ガスの一つ。常温、常圧で無色、無臭の気体。希ガスのため不活性である。比重は、1.65(-233 ℃ : 固体)、1.39(-186 ℃ : 液体)、空気に対する比重は、1.38。固体での安定構造は、面心立方構造 (FCC)。
空気中(地表)に 0.93% 含まれているのでアルゴンは空気を液化、分留して得ることができる(酸素の沸点が近いので、これとの分離が少々面倒)。
希ガスの中では最も空気中での存在比が大きく、乾燥空気を構成する物質では第2位の酸素の 20.93% についで第3位の 0.93% である。空気中のアルゴンの存在比が希ガス中最も大きいのは、自然界すなわち岩石中に存在していたカリウム 40 の一部(11%)が電子捕獲によってアルゴン 40となったためである。このため地球および火星など岩石惑星大気中ではアルゴン 40の同位体比が圧倒的に大きいのに対し、太陽大気中ではアルゴン 36の同位体が大部分を占める[2]。第4位は二酸化炭素だが、2008年現在得られる資料では 0.038% であり3位との差は大きい。
用途[編集]
アルゴンは、水銀灯、蛍光灯、電球、真空管等の封入ガス、アルゴンレーザー、アーク溶接時の保護ガス、チタン精練、チタン入りろう材による加工、食品の酸化防止のための充填ガスなどに利用される。
分析化学の分野ではICP(誘導結合プラズマ)のプラズマ用ガスや、ガスクロマトグラフィーを行う際の移動相として利用する。
テクニカルダイビングにおいて、ドライスーツ用ガスや混合ガスとして使用される。
岩石の年代測定にカリウム・アルゴン(K-Ar)法として用いられ、岩石が最後の加熱を受けてからの年代を求める事が出来る。数千万年前から数十億年前という幅広い年代の推定が可能。
アルゴンの2004年度日本国内生産量は219,461 km3、工業消費量は38,348 km3である。近年の需要に対応して、2005年に日本工業規格 (K1105) が改正され、純度が高められた。
歴史[編集]
1892年にレイリー卿(ジョン・ウィリアム・ストラット)が大気分析の過程で未知の気体に気づき、1894年にウィリアム・ラムゼーと共にその正体がアルゴンであることを突き止めた[3]。しかし、その100年も前に、ヘンリー・キャヴェンディッシュが存在に気がついていたと言われている。なお、1904年にレイリー卿は「気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見」よりノーベル物理学賞を、ウィリアム・ラムゼーは「空気中の希ガス元素の発見と周期律におけるその位置の決定」によりノーベル化学賞を、それぞれ授与された。
アルゴンという名称はギリシャ語で「不活発、不活性」という意味の「αργόν」に由来する。「働く」という意味の「εργον」に「αν」をつけた「αν εργον」(働かない)が語源とする説もある。また、ギリシャ語で「怠け者」という意味の「αργος」が語源とする説もある。
化合物[編集]
アルゴンは単原子でオクテット則を満たしていることから、他の原子と結合した化合物は長い間知られていなかった。2000年、フィンランドの研究者により初のアルゴン化合物、アルゴンフッ素水素化物 (HArF) の合成が発表された。これは、アルゴンとフッ化水素、ヨウ化セシウムを混合して 7.5 K で紫外線照射することにより合成された[4]。
同位体[編集]
詳細は「アルゴンの同位体」を参照
出典[編集]
1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ 小嶋稔 『地球物理概論』 東京大学出版会、1990年
3.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、109頁。ISBN 4-06-257192-7。
4.^ Khriachtchev, L.; Pettersson, M.; Runeberg, N.; Lundell, J.; Räsänen, M. Nature, 2000, 406, 874-876. DOI: 10.1038/35022551
「アルゴン」という名はギリシャ語で「怠惰な」「不活発な」を意味する「αργον」という単語に由来する。事実、アルゴンは化学反応をほとんど起こさない元素である。最外殻電子数が8でありオクテット則を満たしているので、アルゴンは安定でほかの元素と結合しにくい。三重点 は83.8058 Kであり、これは1990年国際温度目盛 (ITS-90) の定義定点に採用された。
目次 [非表示]
1 特徴
2 用途
3 歴史
4 化合物
5 同位体
6 出典
7 外部リンク
特徴[編集]
凍結させたアルゴン
希ガスの一つ。常温、常圧で無色、無臭の気体。希ガスのため不活性である。比重は、1.65(-233 ℃ : 固体)、1.39(-186 ℃ : 液体)、空気に対する比重は、1.38。固体での安定構造は、面心立方構造 (FCC)。
空気中(地表)に 0.93% 含まれているのでアルゴンは空気を液化、分留して得ることができる(酸素の沸点が近いので、これとの分離が少々面倒)。
希ガスの中では最も空気中での存在比が大きく、乾燥空気を構成する物質では第2位の酸素の 20.93% についで第3位の 0.93% である。空気中のアルゴンの存在比が希ガス中最も大きいのは、自然界すなわち岩石中に存在していたカリウム 40 の一部(11%)が電子捕獲によってアルゴン 40となったためである。このため地球および火星など岩石惑星大気中ではアルゴン 40の同位体比が圧倒的に大きいのに対し、太陽大気中ではアルゴン 36の同位体が大部分を占める[2]。第4位は二酸化炭素だが、2008年現在得られる資料では 0.038% であり3位との差は大きい。
用途[編集]
アルゴンは、水銀灯、蛍光灯、電球、真空管等の封入ガス、アルゴンレーザー、アーク溶接時の保護ガス、チタン精練、チタン入りろう材による加工、食品の酸化防止のための充填ガスなどに利用される。
分析化学の分野ではICP(誘導結合プラズマ)のプラズマ用ガスや、ガスクロマトグラフィーを行う際の移動相として利用する。
テクニカルダイビングにおいて、ドライスーツ用ガスや混合ガスとして使用される。
岩石の年代測定にカリウム・アルゴン(K-Ar)法として用いられ、岩石が最後の加熱を受けてからの年代を求める事が出来る。数千万年前から数十億年前という幅広い年代の推定が可能。
アルゴンの2004年度日本国内生産量は219,461 km3、工業消費量は38,348 km3である。近年の需要に対応して、2005年に日本工業規格 (K1105) が改正され、純度が高められた。
歴史[編集]
1892年にレイリー卿(ジョン・ウィリアム・ストラット)が大気分析の過程で未知の気体に気づき、1894年にウィリアム・ラムゼーと共にその正体がアルゴンであることを突き止めた[3]。しかし、その100年も前に、ヘンリー・キャヴェンディッシュが存在に気がついていたと言われている。なお、1904年にレイリー卿は「気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見」よりノーベル物理学賞を、ウィリアム・ラムゼーは「空気中の希ガス元素の発見と周期律におけるその位置の決定」によりノーベル化学賞を、それぞれ授与された。
アルゴンという名称はギリシャ語で「不活発、不活性」という意味の「αργόν」に由来する。「働く」という意味の「εργον」に「αν」をつけた「αν εργον」(働かない)が語源とする説もある。また、ギリシャ語で「怠け者」という意味の「αργος」が語源とする説もある。
化合物[編集]
アルゴンは単原子でオクテット則を満たしていることから、他の原子と結合した化合物は長い間知られていなかった。2000年、フィンランドの研究者により初のアルゴン化合物、アルゴンフッ素水素化物 (HArF) の合成が発表された。これは、アルゴンとフッ化水素、ヨウ化セシウムを混合して 7.5 K で紫外線照射することにより合成された[4]。
同位体[編集]
詳細は「アルゴンの同位体」を参照
出典[編集]
1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ 小嶋稔 『地球物理概論』 東京大学出版会、1990年
3.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、109頁。ISBN 4-06-257192-7。
4.^ Khriachtchev, L.; Pettersson, M.; Runeberg, N.; Lundell, J.; Räsänen, M. Nature, 2000, 406, 874-876. DOI: 10.1038/35022551
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