2014年02月13日
窒素
窒素(ちっそ、英: nitrogen, 羅: nitrogenium)は原子番号7の元素。元素記号は N。空気の約78.08 %を占めるほか、アミノ酸をはじめとする多くの生体物質中に含まれており、すべての生物にとって必須の元素である。
一般に「窒素」という場合は、窒素の単体である窒素分子(窒素ガス、N2)を指すことが多い。窒素分子は常温では無味無臭の気体として安定した形で存在する。また、液化した窒素分子(液体窒素)は冷却剤としてよく使用されるが、液体窒素温度 (-195.8 °C, 77 K) から液化する。
目次 [非表示]
1 歴史
2 性質
3 窒素分子 3.1 用途
4 窒素化合物 4.1 窒素酸化物
4.2 窒素のオキソ酸
4.3 窒化物
4.4 その他の窒素化合物
5 同位体
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
歴史[編集]
窒素は、かつて物が燃える元と考えられていた燃素の研究の過程で発見されたもので、最初に単体分離を行った者の特定は困難である。1772年、ダニエル・ラザフォードが窒素を単体分離し、その中に生物を入れると窒息して死んでしまうことから noxious air(有毒空気)と命名した。ドイツ語では Sticken(窒息させる)と Stoff(物質)を組み合わせて Stickstoff と呼ばれており、日本語の名称「窒素」はこれを訳したものである[1]。ほぼ同じ時期にカール・ヴィルヘルム・シェーレとヘンリー・キャベンディッシュも単体分離したと言われており、シェーレは酸素を「火の空気」、窒素を「駄目な空気」と命名した。
窒素が元素であることを発見したのはフランスのアントワーヌ・ラヴォアジエで、フランス語で「生きられないもの」という意味の "azote" と命名した。窒素の英語名 nitrogen は、ギリシア語の nitrun(硝石の意)と gennao(「生じる」の意)に由来している[1]。
近年の需要に対応して、2005年に日本工業規格 (JIS K 1107) に規定の純度が高められた。
性質[編集]
窒素は窒素族元素の一つ。生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など、あらゆるところに含まれる。これらの窒素化合物を分解すると生体に有害なアンモニアとなるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素として代謝する。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として体外に排泄する。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。
ただし、ほとんどの生物は大気中の窒素分子を利用することができず、微生物などが窒素固定によって作り出す窒素化合物を摂取することで体内に窒素原子を取り込んでいる。
植物にとっては、リン酸、カリウムと並んで肥料の三要素の一つであり、特に葉を大きくする作用が強いため、葉肥と呼ばれる。
窒素分子[編集]
窒素分子 (dinitrogen) は化学式 N2 で表され、常温常圧で無色無臭の気体として存在する。融点-210 °C、沸点-195.8 °C、比重0.808 (-195.8 °C)。大気中に最も多く含まれる気体で、大気中の濃度は地上でおよそ78%である。
常温常圧下では、極めて不活性かつ、アルゴン等の希ガスに比べると安価な気体である為、嫌気性条件や乾燥条件を設定する際に用いられる事が多い。
1964年、山本明夫らのグループによって、窒素分子のコバルト錯体(山本錯体、パールハーバー・コンプレックス)が報告されている。このテーマは、森美和子らによって、窒素分子を活性化して有機化合物に組み込む研究に発展した。
なお、2004年になって窒素を1700度、110万気圧で圧縮することにより、窒素原子が3本の腕で蜂の巣状のネットワーク「ポリ窒素 (polynitrogen)」を作ることが判明した[1]。このポリ窒素は、核兵器を除いた最強の爆薬に比べても5倍以上のエネルギーを有すると考えられている(窒素爆弾を参照)。
用途[編集]
ハーバー・ボッシュ法によるアンモニア生産の原料。
冷却剤(液体窒素、liquid nitrogen) - 液体窒素温度 (-195.8 °C) まで冷却でき、安価で比較的安全なため、低温における化学および物理学の実験、CPU の冷却、工業用プラント、受精卵の凍結保存、爆発物処理などの冷却に用いられる。
食品の酸化防止のための封入ガス。
テクニカルダイビング用呼吸ガス(ナイトロックスやトライミックスなど混合ガス)。
消火器の加圧粉末式・蓄圧粉末式の圧力源。
不活性ガスとしての特性を生かし、タイヤやアキュムレータにも使用されている。
液体窒素を冷却材とするオーバークロッキング CPU
窒素ガスの2004年度日本国内生産量は9,058,978千立方メートル、工業消費量は3,594,480千立方メートル、液化窒素の2004年度日本国内生産量は2,222,270千立方メートル、工業消費量は361,051千立方メートルである。
窒素化合物[編集]
窒素化合物には、アンモニアや硝酸のような無機化合物から、各種ニトロ化合物や複素環式化合物などの有機化合物まで、非常に多くの種類がある。ここでは主に無機化合物について概説する。
窒素酸化物[編集]
窒素と酸素からできる化合物を窒素酸化物という。略称 NOx(ノックス)。大気汚染の原因物質の一つとされるが、窒素と酸素を混合して高温に加熱すると自然と生成するため、排出の抑制は難しい。
一酸化二窒素 (N2O)
一酸化窒素 (NO)
三酸化二窒素 (N2O3)
二酸化窒素 (NO2)
四酸化二窒素 (N2O4)
五酸化二窒素 (N2O5)
窒素のオキソ酸[編集]
窒素のオキソ酸は慣用名をもつ。次にそれらを挙げる。
オキソ酸の名称
化学式
(酸化数)
オキソ酸塩の名称
備考
次亜硝酸
(hyponitrous acid) H2N2O2
(+I) 次亜硝酸塩
( - hyponitrite) 次亜硝酸は2価の酸で、無色結晶として単離される。
亜硝酸
(nitrous acid) HNO2
(+III) 亜硝酸塩
( - nitrite) 亜硝酸は弱酸(pKa3.35)、不安定なため単離できず水溶液中でも徐々に分解する。亜硝酸塩は安定で種々の塩が知られている。
硝酸
(nitric acid) HNO3
(+V) 硝酸塩
( - nitrate) 硝酸およびその塩は硝酸の項に詳しい。
※オキソ酸塩名称の'-'にはカチオン種の名称が入る
亜硝酸アミル
窒化物[編集]
窒化物(ちっかぶつ、英: nitride)とは、窒素と窒素よりも陽性の(電気陰性度が小さい)元素から構成される化合物である。場合によってはアジ化物も含める場合もある。
窒化ホウ素 (BN)
窒化炭素 (C3N4)
窒化ケイ素 (Si3N4)
窒化ガリウム (GaN)
窒化インジウム (InN)
窒化アルミニウム (AlN)
アンモニア (NH3)
その他の窒素化合物[編集]
三塩化窒素 (NCl3)
クロラミン
ヒドロキシルアミン
一般に「窒素」という場合は、窒素の単体である窒素分子(窒素ガス、N2)を指すことが多い。窒素分子は常温では無味無臭の気体として安定した形で存在する。また、液化した窒素分子(液体窒素)は冷却剤としてよく使用されるが、液体窒素温度 (-195.8 °C, 77 K) から液化する。
目次 [非表示]
1 歴史
2 性質
3 窒素分子 3.1 用途
4 窒素化合物 4.1 窒素酸化物
4.2 窒素のオキソ酸
4.3 窒化物
4.4 その他の窒素化合物
5 同位体
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
歴史[編集]
窒素は、かつて物が燃える元と考えられていた燃素の研究の過程で発見されたもので、最初に単体分離を行った者の特定は困難である。1772年、ダニエル・ラザフォードが窒素を単体分離し、その中に生物を入れると窒息して死んでしまうことから noxious air(有毒空気)と命名した。ドイツ語では Sticken(窒息させる)と Stoff(物質)を組み合わせて Stickstoff と呼ばれており、日本語の名称「窒素」はこれを訳したものである[1]。ほぼ同じ時期にカール・ヴィルヘルム・シェーレとヘンリー・キャベンディッシュも単体分離したと言われており、シェーレは酸素を「火の空気」、窒素を「駄目な空気」と命名した。
窒素が元素であることを発見したのはフランスのアントワーヌ・ラヴォアジエで、フランス語で「生きられないもの」という意味の "azote" と命名した。窒素の英語名 nitrogen は、ギリシア語の nitrun(硝石の意)と gennao(「生じる」の意)に由来している[1]。
近年の需要に対応して、2005年に日本工業規格 (JIS K 1107) に規定の純度が高められた。
性質[編集]
窒素は窒素族元素の一つ。生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など、あらゆるところに含まれる。これらの窒素化合物を分解すると生体に有害なアンモニアとなるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素として代謝する。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として体外に排泄する。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。
ただし、ほとんどの生物は大気中の窒素分子を利用することができず、微生物などが窒素固定によって作り出す窒素化合物を摂取することで体内に窒素原子を取り込んでいる。
植物にとっては、リン酸、カリウムと並んで肥料の三要素の一つであり、特に葉を大きくする作用が強いため、葉肥と呼ばれる。
窒素分子[編集]
窒素分子 (dinitrogen) は化学式 N2 で表され、常温常圧で無色無臭の気体として存在する。融点-210 °C、沸点-195.8 °C、比重0.808 (-195.8 °C)。大気中に最も多く含まれる気体で、大気中の濃度は地上でおよそ78%である。
常温常圧下では、極めて不活性かつ、アルゴン等の希ガスに比べると安価な気体である為、嫌気性条件や乾燥条件を設定する際に用いられる事が多い。
1964年、山本明夫らのグループによって、窒素分子のコバルト錯体(山本錯体、パールハーバー・コンプレックス)が報告されている。このテーマは、森美和子らによって、窒素分子を活性化して有機化合物に組み込む研究に発展した。
なお、2004年になって窒素を1700度、110万気圧で圧縮することにより、窒素原子が3本の腕で蜂の巣状のネットワーク「ポリ窒素 (polynitrogen)」を作ることが判明した[1]。このポリ窒素は、核兵器を除いた最強の爆薬に比べても5倍以上のエネルギーを有すると考えられている(窒素爆弾を参照)。
用途[編集]
ハーバー・ボッシュ法によるアンモニア生産の原料。
冷却剤(液体窒素、liquid nitrogen) - 液体窒素温度 (-195.8 °C) まで冷却でき、安価で比較的安全なため、低温における化学および物理学の実験、CPU の冷却、工業用プラント、受精卵の凍結保存、爆発物処理などの冷却に用いられる。
食品の酸化防止のための封入ガス。
テクニカルダイビング用呼吸ガス(ナイトロックスやトライミックスなど混合ガス)。
消火器の加圧粉末式・蓄圧粉末式の圧力源。
不活性ガスとしての特性を生かし、タイヤやアキュムレータにも使用されている。
液体窒素を冷却材とするオーバークロッキング CPU
窒素ガスの2004年度日本国内生産量は9,058,978千立方メートル、工業消費量は3,594,480千立方メートル、液化窒素の2004年度日本国内生産量は2,222,270千立方メートル、工業消費量は361,051千立方メートルである。
窒素化合物[編集]
窒素化合物には、アンモニアや硝酸のような無機化合物から、各種ニトロ化合物や複素環式化合物などの有機化合物まで、非常に多くの種類がある。ここでは主に無機化合物について概説する。
窒素酸化物[編集]
窒素と酸素からできる化合物を窒素酸化物という。略称 NOx(ノックス)。大気汚染の原因物質の一つとされるが、窒素と酸素を混合して高温に加熱すると自然と生成するため、排出の抑制は難しい。
一酸化二窒素 (N2O)
一酸化窒素 (NO)
三酸化二窒素 (N2O3)
二酸化窒素 (NO2)
四酸化二窒素 (N2O4)
五酸化二窒素 (N2O5)
窒素のオキソ酸[編集]
窒素のオキソ酸は慣用名をもつ。次にそれらを挙げる。
オキソ酸の名称
化学式
(酸化数)
オキソ酸塩の名称
備考
次亜硝酸
(hyponitrous acid) H2N2O2
(+I) 次亜硝酸塩
( - hyponitrite) 次亜硝酸は2価の酸で、無色結晶として単離される。
亜硝酸
(nitrous acid) HNO2
(+III) 亜硝酸塩
( - nitrite) 亜硝酸は弱酸(pKa3.35)、不安定なため単離できず水溶液中でも徐々に分解する。亜硝酸塩は安定で種々の塩が知られている。
硝酸
(nitric acid) HNO3
(+V) 硝酸塩
( - nitrate) 硝酸およびその塩は硝酸の項に詳しい。
※オキソ酸塩名称の'-'にはカチオン種の名称が入る
亜硝酸アミル
窒化物[編集]
窒化物(ちっかぶつ、英: nitride)とは、窒素と窒素よりも陽性の(電気陰性度が小さい)元素から構成される化合物である。場合によってはアジ化物も含める場合もある。
窒化ホウ素 (BN)
窒化炭素 (C3N4)
窒化ケイ素 (Si3N4)
窒化ガリウム (GaN)
窒化インジウム (InN)
窒化アルミニウム (AlN)
アンモニア (NH3)
その他の窒素化合物[編集]
三塩化窒素 (NCl3)
クロラミン
ヒドロキシルアミン
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