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2014年02月06日

性的奴隷

性的奴隷(せいてきどれい)は、英語の sex slave の訳であり、現代欧米においては広汎に使われる表現である。

具体的関係の中でより従属的立場の者が、より支配的立場の者により意思に反して継続的に性的行為を強要される状況(その多くは退去(移動)の自由・性的自由を一部あるいは全て奪われる)でのその人・関係・状況・状態を指して、性的奴隷と呼ばれる[1]。人を性的奴隷状態におくことは、奴隷化することの一形態であり、本人の自己決定権や性的活動などに関する決定権の制限を特徴とする[2]。(広汎な用法は21世紀初頭までは日本で一般的に受け止められていず、○○奴隷とは扇情的比喩用法であった。慰安婦問題によって外国の表現が移入されてきている段階である)。

性的奴隷は、古代から19世紀までの階級的奴隷制の一形態・一側面にも存在したが、近代においては20世紀前半の国際連盟において、娼婦の多くが前借り借金で縛られている不自由さや人身売買の状況を問題視する視点から、強制労働などとともに「奴隷」の表現が当てられた。

性的奴隷制度、性的奴隷状態を意味するセクシャル・スレイヴァリー(英:sexual slavery[3])と形容される場合もある。

現代においては俗語的用法も多く、広汎に被害者が継続的な性的行為を強要される場合を指しても用いられる。


概要[編集]

これらの人々は、階級的意味はなくても奴隷的といえる自由を奪われた状況下で性的な行為を強要されている。人身売買や不当搾取といった人道上にて問題視される人権蹂躙が絡み、これを成す事や看過する事は多くの社会で忌み嫌われている。一方、貧困や社会情勢の問題により、まだ社会的地位の弱い児童などがこれらの犠牲者となるケースも見られ、国際的にも問題視されている。

特に暴力によって拘束するケースも多く、これらでは日常的に暴行される事により精神的に疲弊し、逃げる気力を喪失している場合もあり、心的外傷(PTSD)と呼ばれる心理的なダメージが生じた場合、治療も長期に渡るケースが多い。

法律上としては、20世紀初めから、前借りによる拘束労働を、人身売買・奴隷制類似のものとする国際世論が存在し、1926年、全12条からなる奴隷条約(Slavery Convention)が国際連盟において締結された。これにより奴隷状態の最初の包括的な定義が明記された[4]。1956年の奴隷条約を補足するため国際連合が採択した奴隷制度廃止補足条約では当事者の女子が拒否することができない婚姻、負債奴隷制及び農奴制を含む奴隷制度に類似する制度と慣習の完全な廃止を規定している[5]。これは日本の前借りによるいわゆる身売りを対象に含むものである。

現代における性的奴隷[編集]

性風俗産業[編集]

セックス産業(性風俗産業)に従事する者のうち、十分な報酬を与えられず、また勤務外でも身体の拘束を伴うなどの奴隷的環境で働かされる者をさす言葉。世界各国でも多くの場合、人身売買などにより外国や国内の未発達地域から連れて来られ、法律上の根拠が無い債務を背負わされて身体を売るのが普通である。一般には拘束期間が明ければ解放されるが、性的に魅力的であり高収益をもたらす者、または逆に所属する性産業に十分な利益をもたらさなかった者は、拘束期間を延長されることがある。

戦争[編集]

イラク戦争で米軍女性軍人が男性捕虜に性的暴行を加え問題となった(アブグレイブ刑務所における捕虜虐待)。

紛争地域[編集]

紛争地域において、集落を襲撃した武装集団が自身の身辺を世話をさせると共に性的な欲求の捌け口とするべく、未成年者を誘拐するケースが見られる。これらのケースでは、被誘拐者は常時武装集団により監視され、精神的にも追い詰められるケースも見られる。

誘拐・監禁事件[編集]

児童を誘拐し、それらに性的虐待行為を繰り返す犯罪者(変質者)のケースがある。これらでは特に都市の匿名性により犯人が特定されにくい事件も発生しており、日本では新潟少女監禁事件が2000年に発覚したが、これに伴い模倣犯の発生も見られた。

支配的傾向の見られる男性が、いわゆる「出会い系」サイトなどで知り合った女性を連れ出し、犬用の首輪・手綱で柱にくくりつけたり、暴力を振るうなどして逃げる意思を奪った上で性的行為を強要する例があり、日本でも確認された。

SMプレイにおける性的奴隷[編集]

いわゆるSMにおいて、性的遊戯として両者の合意の上で、Mの側が奴隷の役割を演じる場合があるが、これは本項における(強要された)性奴隷とは区別されるべきものである。

この事例の一つとして、例えば娼館などでは「奴隷遊び」という名目で、割高の料金で娼婦を緊縛や鞭打ち、浣腸などして嗜虐的に玩弄するプレイが用意されている(あるいは客と娼婦間の交渉で可能となる)場合もある。

なお通常の恋人間やセックスフレンド同士でも、精神の良識的な部分ではSMプレイを嫌悪、あるいは同プレイに抵抗の念を覚えながらも、一方で相手に調教された肉体そのもの、または精神の裏面がマゾヒズムとしての要求を生じ、奴隷のように責められる行為が成立する場合もある。完全には心のままではないが、それでもマゾヒストが相手の支配下に置かれるのを希求し、奴隷のごとく扱われて性的な快楽を覚える場合はこれも一種の主従関係である。

それゆえ、上記のように(強要された)性奴隷とはまったく意味合いが異なるものの、こういったSMプレイにおける事例も、現代におけるひとつのタイプの性的奴隷と見ることが可能である。


過去における性的奴隷[編集]

各国軍における性的奴隷[編集]

古来、軍隊の行軍等に伴って、軍人・兵士に対する売春または性的奉仕に従事し、またはさせられる慰安婦がいた。中には強制的なものもあり、似た事例は多く発生していたと想像されるしかし現代では倫理的な問題から廃止している場合が多く、性的欲求が捕虜に向けられることが多くなった。

日本の明治から戦前までの時期における性的奴隷[編集]

日本においては欧米と違い江戸時代から階級としての奴隷は存在しなかった。つまり社会的な意味での性的奴隷とは、当時強制的に売春婦にされた、または自発的になったがその後に搾取や人権侵害を受けた人々を指す。

集娼制[編集]

明治においてマリア・ルス号事件のさいに、郭の遊女が実質の奴隷に当たるとして政府はこれを形の上で解放した。しかし、前借り借金というシステムは存続し、法的な建前上遊郭を貸座敷と呼び変える形で存続した。

戦後の赤線廃止まで続く公娼制の元での娼婦の実態は、集娼制という形で郭からの外出が禁止されていたり、前借り借金で自由に仕事を辞められなかったりがほとんどであり、収入が搾取されたり、かってに売買されてしまうなどのことも横行していた。また、とくに朝鮮では少女がだまされて朝鮮外へと売られることが多かった。

旧日本軍における慰安婦[編集]

詳細は「慰安婦」を参照

欧米諸国などの英語圏や旧日本の支配地域の北朝鮮や韓国および日本の一部左派、在日朝鮮人団体などから、第二次世界大戦中に日本軍が戦地に配置した慰安婦を指して言われる場合がある。

1990年代以降の韓国や日本における一部市民運動により、これら慰安婦に対して自由の制限と強制売春による甚だしい人権侵害があったと主張され、「性的奴隷」という表現が用いられた[6]。同様の表現は、国連人権委員会におけるクマラスワミ報告(1996年)、マクドゥーガル報告(1998年、2000年)においても用いられている[7]。 マクドゥーガル報告書において性的奴隷とは、奴隷制(奴隷状態)の一形態であり、1926年の奴隷条約において「奴隷状態とは、所有権を伴う権力の一部もしくは全部が一個人に対して行使されている状況もしくは状態である」と定義され、性的奴隷には、レイプなどの性暴力の形態による性的接触も含むとされている。さらに、奴隷制という犯罪は政府の関与または国家の行為がなくても成立し、国家の行為者によるものであろうと民間の個人によるものであろうと、国際犯罪に相当すること。奴隷制とは人を所有物として扱うことを指すが、その人が金銭で売買されなかったからといって、奴隷制であるという主張が崩れることはないこと。性的奴隷には全てではないとしても大半の形態の強制売春も含まれ、武力紛争下での強制売春と呼びうる実態はたいていの場合、性的奴隷状態に相当すること。性的奴隷状態には、女性や少女が結婚を強要されるケースや、最終的には拘束する側から強かんなど性行為を強要される家事労働その他の強制労働も含まれること等が性的奴隷の定義として明記されている[8]。

なお、慰安婦問題を性奴隷の問題として扱うようになったきっかけは、1992年以降、日本弁護士連合会(日弁連)がNGOと共に国連において慰安婦問題を性奴隷としてあつかうよう活動し、1993年のウィーンの世界人権会議において性的奴隷制という用語が国連で採用されたのがはじまりであると、日弁連は語っている[9]。

特殊慰安施設協会[編集]

第二次大戦の終結後、進駐軍を迎えるにあたって日本の内務省は、上記の慰安婦と同様の発想に立って進駐軍用の慰安婦を用意し、「日本人女性の純潔を守る」ことを決めた。その結果特殊慰安施設協会が設立された。設立にあたって、多くの日本人女性が集められたさいに、ときに甘言などでだまされたことがあったり、兵士による肉体毀損的な行為を受けたとされるが、移動の不自由や接客拒否ができなかった継続性がなければ、一時的な暴行被害があっても奴隷的とは呼べない。

風習と価値観[編集]

過去においては、その土地の女性の魅力と思われつつも、現代では虐待としか見えず、奴隷の象徴と見えるものもある。中国では女性を表向き大事にするといいつつも、清代末まで盛んだった纏足。アフリカで今も残り、女性らしさの形成に役立つと信じる者もいる女性割礼、ヨーロッパの女性を苦しめたコルセットなどである。
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