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2014年02月08日

ペトログリフ

ペトログリフ(英語:petroglyph)とは、象徴となる岩石や洞窟内部の壁面に、意匠、文字が刻まれた彫刻のこと。ギリシア語で石を意味するペトロとグリフ(彫刻)の造語である。日本語ではペトログラフと呼ばれることもあるが、通常は岩絵と呼ばれる。また線刻(画・文字)と呼ばれたり、岩面彫刻、岩石線画、岩面陰刻と訳されることもある。



目次 [非表示]
1 概要
2 内容
3 意義
4 一致
5 日本のペトログリフ
6 主な遺跡 6.1 アジア
6.2 アフリカ
6.3 北アメリカ
6.4 中南米
6.5 太平洋・オセアニア
6.6 ヨーロッパ

7 参考文献
8 関連項目
9 外部リンク


概要[編集]

人類が後生に伝えたいさまざまな意匠や文字を岩石に刻んだもの。筆記具や紙を持たない古代の人々が残した記録として注目されがちであるが、アメリカ合衆国ハワイ州などには16世紀や17世紀にかけて刻まれた比較的新しいものもある。また、近世や現代においても、宗教的な儀式の目的やアートとして刻まれるものも多数存在している。日本では主に漢字伝来以前の物をペトログラフ、漢字伝来以後の物を「碑文」又は「絵」と呼んで区別している。

海外ではペトログリフは勿論、岩石芸術(英語で言うRock art、ペトログラフだけでなく、洞窟の壁画やドルメン、ストーンサークル等も含む)全般の研究が行われており、特に米仏で研究が盛んであり、ユネスコに研究機関があるほか、ハーバード大学などでも研究が行われている。

1970年代にはアメリカでペトログラフ探しが流行したことがあるという。

内容[編集]

最も古いものはウクライナの「カメンナヤ・モグリャ」にあるもので、旧石器時代(約10,000から12,000年前)のものといわれている。7,000から9,000年前頃には絵文字や表意文字のようなものが現れ始めた。この頃は世界中で岩面彫刻はまだ一般的であったが、いくつかの文化では20世紀になって西洋の文化が入ってくるまで、使用し続けていた。ペトログラフは、南極大陸を除く世界中で見つかっている。

それらの場所や作られた時代、イメージのタイプ等から推察される目的については、多くの理論がある。いくつかのペトログリフは、天文学で使う印、地図および記号的なコミュニケーションの他の形式であると思われる。地形あるいは周囲の土地を表す岩面彫刻はGeocontourglyphとして知られている。それは道、川、時間と距離を表しているとも推察される。

さらに、それらは他の儀式の副産物とも考えられる。たとえばインドのものは、ロックゴングという楽器であると確認された。いくつかのペトログリフは、それを作った当時の社会において文化的にあるいは宗教的に重要なものだと考えられる。その重要性は子孫へと伝えられる。スカンジナビアの北欧人の青銅器時代以後の記号は、宗教的な意味に加えて、種族間の領土の境界を表すように見える。

さらに、地域ごとに方言が存在するように見える。たとえば、「シベリアの銘」と呼ばれるはほとんどルーン文字のある初期の形式のような形をしている。しかし、詳しい事は分かっていない。

ヨハネスブルグのヴィトヴァーテルスラント大学の岩石芸術研究所(RARI)が、カラハリ砂漠のサン人の中のシャーマン教と岩石芸術との関係について研究した。サン人の美術品はおもに絵画であるが、それらの背後にある信条は、それらを理解する根拠になるという。RARIウェブサイトによると、研究者は、サン人の信条がその画家の信仰生活に基本的な役割を果たしたことを示した。絵の背後には別の世界がある。踊り手が動物の形で飛び立ち、力を引くことができ、治療、人工降雨および狩猟を導くことができたという。

意義[編集]

おもに考古学的な面と美術的な面から研究が行われている。考古学的には過去の人々の風俗や生活様式、ときには気候などを類推できるほか、文字の誕生を探る上でも貴重な手がかりと考えられている。また美術的な価値についても研究がなされている。

研究における有効性の問題として、岩石の風化により生じる亀裂やくぼみがペトログリフであると誤認される場合のあることや、遺跡の改竄や捏造といった問題が挙げられる。

一致[編集]

世界中で調査され、GPSで記録されたペトログリフを分析した結果、紀元前3000年から7000年頃のペトログラフに、大陸の全域の広い範囲で共通性がある事が分かっている。 よく見られる模様としては、うずくまる人、キャタピラー、梯子、アイマスク、ココペリ(インディアンの神様)、輪留めをかけられた車輪、等が挙げられる。

この理由としては様々な説が考えられている。
世界的移動説

特定のグループが、ある地域から世界中に移ったという説。1853年に、ジョン・コリングウッド・ブルースとジョージ・テイトが唱え、ロナルド・モリスが彼らの104の理論を要約した。

シュメール人が世界中に広まったという説はこの説の親戚である。
遺伝説

他の、より論争の的になっている説明は遺伝によるものである。ユング心理学およびミルチャ・エリアーデの見解では、人間の脳に遺伝学的に相続した構造があるからではないかとしている。
薬物説

幻覚剤を使用して精神が異常状態になったたシャーマンによって作られたことをいう説。デービッド・ルイス=ウィリアムズは、これらの模様は人間の脳に組み込まれたもので、それらが薬や片頭痛および他の刺激によって起こる視覚障害や幻覚によって頭に生まれるのではないかとしている。

この一致を利用して、ペトログラフを「碑文」として解読しようという研究も存在する。この研究を推し進めたのは、ハーバード大学の教授でアメリカ碑文学会会長のバリー・フェルである。フェルは世界中に同じような形のペトログラフがあるのを利用して、シュメール古拙文字やオガム文字等、使える古代文字を総動員してアメリカのペトログラフの解読を試みた。

日本でもこの方法を使って解読が試みられており、日本ペトログラフ協会がシュメール古拙文字等のフェルが用いた文字の他に、日本の仮名や神代文字、中国のロロ文字等も使って解読を試みている。(一部にペトログラフ研究そのものをオカルトと考える人がいるのはこの為でもある。詳しくは神代文字を参照)

バリー・フェルの解読法には批判もあるが、発掘された文字(と思われる物)を解読しようという試みは世界的には古代エジプトのヒエログリフ解読、中国の甲骨文字、ギリシャの線文字Bの解読等、古くから行われている事であり、それ自体は何もおかしいことではない。

日本のペトログリフ[編集]

環太平洋地域にペトログリフの文化が点在し、日本においてもペトログリフの存在が確認されており、幾つかの団体が研究を行っている。

日本ペトログラフ協会は主に考古学的な研究や、解読を行っている。日本ペトログラフ協会の始まりは1986年の下関市の彦島にある磐座の研究である。 その頃、1924年に発見された古代の磐座が平家の財宝のありかを示す岩だという説が流れ、彦島に人が殺到していた。そこで福岡県の支援を受けて学問的な調査を行う事になり、海外の学者に問い合わせたり、ペトログラフ研究が進んだアメリカやフランスの研究所で調査が行われた。このときの研究の流れを汲むのが日本ペトログラフ協会である。

日本先史岩面画研究会は北海道の手宮洞窟やフゴッペ遺跡の研究から発展している組織で、こちらは主に美術的な観点からの調査を行っている。

両会とも世界各地で調査を行っており、海外の学会で発表する等、成果を挙げている。ペトログラフは1994年の時点で120箇所で1200個が発見されている。

主な遺跡[編集]

アジア[編集]





小樽市の手宮洞窟のペトログリフ。






北九州市の淡島神社のペトログリフ。






韓国の盤亀台岩刻画。






香港の西壁






香港の長洲島のペトログリフ。 約3000年前の作とされる。






フィリピンのシエラマドレ山脈






インドのエダッカルのペトログリフ。






カザフスタンのタムガリ






カザフスタンのイリ川。仏教的な事が描かれている。






キルギスのチョルポン・アタにて。

日本 手宮洞窟(北海道小樽市)
フゴッペ洞窟(北海道余市郡)
大面遺跡(青森県弘前市)
水窪遺跡(静岡県磐田市)
笠置山(岐阜県恵那市)
ドルメン遺跡(滋賀県滋賀郡)
宮島(広島県廿日市市)
彦島の杉田丘陵(山口県下関市)
淡島神社(福岡県北九州市)
藤松(光町) 福岡県立大翔館高等学校周辺(福岡県北九州市)(当時、日本ペトログラフ協会会長の吉田信啓が福岡県立大里高校(福岡県立大翔館高等学校の前身)で教師をしていた際に学生らと発見。
幣立神社(熊本県上益城郡山都町)
押戸ノ石(熊本県阿蘇郡南小国町)

韓国 盤亀台岩刻画(蔚山市)

中国 東龍洲
滘西洲
蒲台島
長洲
石壁(香港のランタオ島)
黃竹坑 - 香港仔の近く。
大浪灣(香港島)
龍蝦灣(西貢市)


その他陰山山脈や寧夏回族自治区にもある。
台湾 茂林区

フィリピン アンゴノの岩絵群

アゼルバイジャン コブスタン国立保護区

カザフスタン タムガリ

モンゴル モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群


アフリカ[編集]
アルジェリア タッシリ・ナジェール

タンザニア コンドアの岩絵遺跡群

ナミビア トゥウェイフルフォンテーン

ボツワナ チョベ国立公園
ツォディロ

リビア タドラルト・アカクス

マラウイ チョンゴニの岩絵地域






アラヴァ岬の南1kmに存在するペトログリフ
北アメリカ[編集]
アメリカ合衆国 アーチーズ国立公園
アラヴァ岬
オリンピック国立公園
化石の森国立公園
キャニオンランズ国立公園
キャピトル・リーフ国立公園
セドナ
セント・ジョン島
デスヴァレー国立公園
チャコ文化国立歴史公園

アルゼンチン タランパヤ国立公園


中南米[編集]
ニカラグア オメテペ島

メキシコ シエラ・デ・サン・フランシスコの岩絵群

ブラジル セラ・ダ・カピバラ国立公園


太平洋・オセアニア[編集]





ハワイの西側にて。






ハワイ火山国立公園にて。






オロンゴ(Orongo)にあるペトログリフ。二人の鳥人に持ち上げられたマケマケ。

オーストラリア アーネムランド

フランス領 ニューカレドニア

ハワイ諸島
バヌアツ ロイ・マタ首長の領地

イースター島

ヨーロッパ[編集]





イタリア、ヴァルカモニカのペトログラフ






イタリア、ヴァルカモニカのペトログラフ






イタリア、ヴァルカモニカのペトログラフ






イタリア、ヴァルカモニカのペトログラフ






スウェーデン、ターヌムのペトログラフ






スウェーデン、ブラスタッドのペトログラフ






カナリア諸島のペトログラフ






スコットランド、エアシャイアのペトログラフ






スペイン、ガリシア州サンティアゴ・デ・コンポステーラのペトログラフ






スペイン、ガリシア州メイスのペトログラフ






スペイン、ガリシア州ムーロスの盃状穴






スペインガリシア州ポンテ・カルデーラスの鹿の絵と盃状穴

アイルランド ニューグレンジ
ノウス
ドウス
タラの丘

イギリス ノーサンバーランド
ダラム

イタリア ヴァルカモニカの岩絵群

スウェーデン ターヌムの岩絵群

スペイン イベリア半島の地中海沿岸の岩絵

ポルトガル コア渓谷の先史時代の岩絵遺跡群

ノルウェー アルタの岩絵

フィンランド ハンコ

ロシア ペトロザヴォーツクのペトログラフ公園
トムスカヤ・ピサニツァ ケメロヴォの近くにある。


参考文献[編集]
吉田信啓 (1994). ペトログラフ・ハンドブック : ペトログラフ探索調査手帳. 中央アート出版社. ISBN 4886396992
日本先史岩面画研究会
Petroglyph

関連項目[編集]
金石文
洞窟壁画
磨崖仏
板碑
支石墓
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