2014年02月08日
デウス
デウス(deus, Deus)は、ラテン語(およびポルトガル語・カタルーニャ語・ガリシア語)で神を表す言葉。この語形は男性単数主格であり、厳密には1人の男神を表す。デーウスと発音されることもあるが、ラテン語本来の発音はデウスである。
古典期には男神一般を表す一般名詞 deus だった(ただし古典ラテン語に小文字はなかった)。この意味は「デウス・エキス・マキナ」のような成句で見られる。しかしキリスト教の普及により、固有名詞 Deus で唯一神教の唯一神(通常はキリスト教の神すなわちヤハウェ)を意味するようになった。この使い分けは英語の god/God と同じである。日本語では deus も Deus も通常区別せず「神」と訳す。
日本では戦国時代末期、キリシタンの時代に、キリスト教の神を表す言葉として用いられた。
語源論[編集]
インド・ヨーロッパ祖語の *dyēus 「天空、輝き」に由来する。*dyēus (ディヤウス)はプロト・インド・ヨーロッパ人の多神教の最高神であり、ギリシア語のゼウスやラテン語のデウス、サンスクリットのデーヴァ、古ノルド語のテュール等の語源となった。また「父なる」という添え名を付した形 *dyēus ph₂ter は *Pltwih₂ Mh₂ter 「大地母神」と対をなす呼称で、ラテン語のユーピテルの源となった。
デウスは、ロマンス諸語の単語、たとえばフランス語の dieu、イタリア語の dio、スペイン語の dios、ポルトガル語の deus などを生んだ。英語の deity や divine も、デウスと同根のラテン語の単語に由来する。
デウスは男性単数形であり、女性形(女神)はデア dea、男性複数形(男神たち)はデイ deī またはディ dī、女性複数形(女神たち)はデアエ(古典語ではデアイ)deae となる。
日本のカトリックにおけるデウス[編集]
フランシスコ・ザビエルは来日前、日本人のヤジロウとの問答を通してキリスト教の「神」を日本語に訳す場合、大日如来に由来する「大日」(だいにち)を用いるのがふさわしいと考えた。しかし、これはヤジロウの仏教理解の未熟さによるもので、後に「大日」という語を用いる弊害のほうが大きいことに気づかされることになる。1549年に来日したザビエルたちが、「大日を拝みなさい」と呼びかけると僧侶たちは仏教の一派だと思い、歓迎したといわれている。
やがてザビエルはキリスト教の「神」をあらわすのに「大日」という言葉を使うのはふさわしくないことに気づき、ラテン語デーウスをそのまま用いることにした。「大日を拝んではなりません。デウスを拝みなさい」とザビエルたちが急に言い出したため、僧侶たちも驚いたという。キリシタンの時代、デウスはダイウスともいわれていたため、キリスト教の反対者たちは「彼らが拝んでいるのは大きな臼(大臼)である」「ダイウソ(大嘘)である」といって誹謗したという話が残っている。なお、デウスの語源である上記ディヤウスと大日如来との関連は定かではない。
その後、宣教師たちや日本人キリスト教徒たちの研究によって「デウス」の訳語としていくつかのものが考えられた。それらは「天帝」「天主」「天道」などであり(語源的には天部である)、「デウス」と併用して用いられた。彼らは「神」という言葉は日本の多神教的神を表すもので、自然や動物、人間にすら当てはめられる言葉なのでデウスの訳語にふさわしくないと考えていた。もっとも、本来のラテン語の「デウス」は、上述の通り古代ローマの多神教の神々を表す言葉であり、一部のローマ皇帝、つまり人間が「デウス」に列せられる事もあった。
明治以降に漢文訳聖書の影響を受けた日本語訳聖書がキリスト教の神を「神」と翻訳し、日本の正教会・カトリック教会・プロテスタントのいずれにおいても、これが今に至るまで定着している。
「神#キリスト教における訳語としての「神」」も参照
古典期には男神一般を表す一般名詞 deus だった(ただし古典ラテン語に小文字はなかった)。この意味は「デウス・エキス・マキナ」のような成句で見られる。しかしキリスト教の普及により、固有名詞 Deus で唯一神教の唯一神(通常はキリスト教の神すなわちヤハウェ)を意味するようになった。この使い分けは英語の god/God と同じである。日本語では deus も Deus も通常区別せず「神」と訳す。
日本では戦国時代末期、キリシタンの時代に、キリスト教の神を表す言葉として用いられた。
語源論[編集]
インド・ヨーロッパ祖語の *dyēus 「天空、輝き」に由来する。*dyēus (ディヤウス)はプロト・インド・ヨーロッパ人の多神教の最高神であり、ギリシア語のゼウスやラテン語のデウス、サンスクリットのデーヴァ、古ノルド語のテュール等の語源となった。また「父なる」という添え名を付した形 *dyēus ph₂ter は *Pltwih₂ Mh₂ter 「大地母神」と対をなす呼称で、ラテン語のユーピテルの源となった。
デウスは、ロマンス諸語の単語、たとえばフランス語の dieu、イタリア語の dio、スペイン語の dios、ポルトガル語の deus などを生んだ。英語の deity や divine も、デウスと同根のラテン語の単語に由来する。
デウスは男性単数形であり、女性形(女神)はデア dea、男性複数形(男神たち)はデイ deī またはディ dī、女性複数形(女神たち)はデアエ(古典語ではデアイ)deae となる。
日本のカトリックにおけるデウス[編集]
フランシスコ・ザビエルは来日前、日本人のヤジロウとの問答を通してキリスト教の「神」を日本語に訳す場合、大日如来に由来する「大日」(だいにち)を用いるのがふさわしいと考えた。しかし、これはヤジロウの仏教理解の未熟さによるもので、後に「大日」という語を用いる弊害のほうが大きいことに気づかされることになる。1549年に来日したザビエルたちが、「大日を拝みなさい」と呼びかけると僧侶たちは仏教の一派だと思い、歓迎したといわれている。
やがてザビエルはキリスト教の「神」をあらわすのに「大日」という言葉を使うのはふさわしくないことに気づき、ラテン語デーウスをそのまま用いることにした。「大日を拝んではなりません。デウスを拝みなさい」とザビエルたちが急に言い出したため、僧侶たちも驚いたという。キリシタンの時代、デウスはダイウスともいわれていたため、キリスト教の反対者たちは「彼らが拝んでいるのは大きな臼(大臼)である」「ダイウソ(大嘘)である」といって誹謗したという話が残っている。なお、デウスの語源である上記ディヤウスと大日如来との関連は定かではない。
その後、宣教師たちや日本人キリスト教徒たちの研究によって「デウス」の訳語としていくつかのものが考えられた。それらは「天帝」「天主」「天道」などであり(語源的には天部である)、「デウス」と併用して用いられた。彼らは「神」という言葉は日本の多神教的神を表すもので、自然や動物、人間にすら当てはめられる言葉なのでデウスの訳語にふさわしくないと考えていた。もっとも、本来のラテン語の「デウス」は、上述の通り古代ローマの多神教の神々を表す言葉であり、一部のローマ皇帝、つまり人間が「デウス」に列せられる事もあった。
明治以降に漢文訳聖書の影響を受けた日本語訳聖書がキリスト教の神を「神」と翻訳し、日本の正教会・カトリック教会・プロテスタントのいずれにおいても、これが今に至るまで定着している。
「神#キリスト教における訳語としての「神」」も参照
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