元気が一番

退職後、平日に妻と一緒に買い物に出かけることが多くなった。それも午前中からスーパーに行ってのお買い物。初めのころはなぜか恥ずかしながらの体験であった。現役時代に経験することはほとんどなかったので少し戸惑いもあった。何回か重ねるうちに慣れてはきているが、正直言って未だに人目を気にしている自分がいる。まだ若いんだと思っている強がりからなのか、仕事をせずに午前中からスーパーに行く自分にちょっとした後ろめたさを感じていることも否めない。
買い物をしながらあたりを見回すと、私どものようにお年寄りのご夫婦が買い物をしているのをよく見かける。午前中なんかはほとんどと言っていいほどご年配のお客さんである。その光景を見ながら自分ももうそういう世代になったのだとしみじみ気づかされる。ある会食の場で私の知り合いに聞いてみると、その友人もほとんど毎日のように夫婦同伴で買い物をしているらしい。また、それが楽しいらしい。
よくよく考えてみると、現役時代に身をこなにしながら働き、家庭のことはすべて妻にまかせっきりにして、仕事を終えて自宅に帰ってきては妻の作った料理をただただ無心にいただきながら毎日を過ごしてきた今までの生活そのものが当たり前のように感じていた自分への反省にも思えた。
これからは、妻と一緒に過ごす時間をふやして定年後の人生を楽しむことの喜びを感じとることが大事なことのように思える。平日の昼間からの買い物はその喜びを感じとる場でもあるのだろう。

昨日の夕飯、初めてトマトシチューを作ってみた。定年退職後、家事のお手伝いも以前になく増えてきたのであるが、炊事する機会が増えて自分で献立を考えたりすることもたびたびある。朝、昼、夜と３食の献立を立てるのもそう簡単ではないことがようやく最近わかってきたような気がする。それで、今度何を作ってみようかと考えていた矢先に、とあるテレビ番組でトマトシチューの作り方を紹介していたのをたまたま拝見していたのでそれにチャレンジしてみようと思いさっそく具材を買いに行った。トマト、マッシュルーム、牛すじ肉、玉ねぎ、それにシチューの素などを買い揃えていざ調理にかかった。
初めてのシチュー作りなので何が出来上がるのか不安でもあった。美味しく出来上がるのかまったく自信がないまま調理開始。実際に始めるとますます不安になり、ついには妻のアドバイスを受けながらの調理だった。
その都度、味見を繰り返しての手さばきの悪いものでしかなかった。結局、出来上がるのに1時間ほどの時間がかかった。しかし、出来上がった物をみると私なりの力作でもあった。
いざ食べてみると、なんと、初めてのシチュー作りにしては最高の出来で大変満足のいく美味しさだった。心を込めて作った料理は美味しいもので誰よりも自分が一番美味しく感じていた。妻に聞くと大変好評でなんとなく嬉しく思った。これに機に少しずつ新しいものにチャレンジしていきたいと思った一つの経験であった。