2017年08月24日
独国景気指標「Ifo景況感指数」発表前後のEURJPY反応分析(2017年8月25日17:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月25日17:00に独国景気指標「Ifo景況感指数」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月23日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
Ifo景況感指数は、約7000社の企業が対象のアンケート調査結果を指数化したものです。調査は「現在」と「半年後」について「生産」「在庫」「受注」「価格」「雇用」に関わる質問に「良い」「同じ」「悪い」で回答します。2000年を100とし、現況と先行きを加重平均して「景況指数」が算出されています。
関連指標には「ZEW景況感指数」と「PMI速報値」があります。
一部で「鉱工業生産との関連性が高いと言われている」「調査対象が7000社の企業担当者のため経済実態を正確に把握できる」という解説も見受けられます。それら記事には、出典・論拠が明らかにされていなかったので、いずれ検証します。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsです。
反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これで年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
この結果から、本指標は予想や結果がどうあれ、どちらに反応するかがわからないということが言えます。
次に、各項目毎にはどちらに反応するかがわからなくても、複数の項目の総合的な良し悪しで反応方向が決まるかどうかを調べてみます。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
個々の項目と反応方向との一致率よりは高くなるものの、かなり一致率が低い指標です。
景況指数・景況感・現況分析のいずれも、2015年2月分から前回2017年7月分までの30回の発表で、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月とで入れ替わったことは12回(入れ替わり率40%)です。特に、過去12回に限れば、景況指数33%・景況感50%・現況分析17%です。
本指標はもともと市場予想後追い型になりやすく、現在、市場予想後追い型です。現在は上昇基調のため、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性が高い(期待的中率60%)ということになります。
ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
指標間一致率の有無を調べるためには、市場予想が絡まない実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率を見るべきです。
下図に、本指標発表月を基準とし、ZEW発表月をずらして実態差異一致率を調べました。
結果、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、一方を前後2か月ずらしても、そんな傾向(先行性・遅行性の関係)はありません。
過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度29%)あります。この9回の直後1分足跳幅は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は6回(67%)一致しています。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。
そもそも、直前1分足は陰線ばかりだし、直後1分足は陽線ばかりです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
これらの詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) しばしば(頻度29%)直前10-1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合に直前10-1分足が跳ねた方向に直後1分足が反応しがちです(期待的中率67%)。
(2) たまに(頻度16%)直前1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合の直後1分足は全て陽線となっています。
(3) 直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析の結果を下図に示します。
事後差異のプラス率が71%となっており、市場予想が発表結果に対して低めに偏っています。
ただ、ローソク足の方向は各差異との関係が薄いように見受けられます。どの方向一致率も中心値付近(31%〜69%)に集まっています。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足は陰線率が93%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は11%で、矛盾はありません。
そして、直前10-1分足は直後1分足との方向一致率が71%と高く、指標発表前に発表後の反応方向を予見している兆しがあります。
最後に反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は74%です。そして、その74%の方向一致時だけに注目し、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃を早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは44%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことが26%、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが30%もあります。発表から1分経過時点では、逆張りの方が中途半端に勝率が高くなっています。
よって、早期追撃で得たポジションは、発表から1分を過ぎたら早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
以上の本指標特徴と調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年8月26日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果はまちまちでした。
総合(景況指数)は予想を上回り前回を下回り、景況感は予想・前回ともに上回り、現況分析は予想・前回を下回りました。
事後差異判別式符号・実態差異判別式符号は、ともにプラスとなっており、陽線での反応と一致しました。
解釈が難しい結果です。
反応が陽線となったことは、景況感が前回・予想を上回り、先行きにまだ期待が持てそうな点に反応したものと思われます。
がしかし、現況分析が予想を下回ったことは、ちょうど1年ぶりです。全体基調は上昇維持ですから問題ありません。
取引結果は次の通りでした。
直前1分足は、その前の直前3-1分に陰線を伸ばしたため、もう下げる余地がない、と見なしたからです。結果は陰線で、まだ下げ余地はあったようです。
事前調査分析内容を以下に検証します。
事前準備していたシナリオは次の通りでした。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月25日17:00に独国景気指標「Ifo景況感指数」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月23日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標の指標結果分析には、あまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ関係ありません。 - ただ、それでも指標発表前後の反応方向には、本指標での取引指針を持つことに役立つ傾向があります。
過去の傾向を調べると、直前10-1分足は直後1分足との方向一致率が71%となっています。本指標での取引参加者が予め反応方向を正しく読めているか、指標発表前後のトレンド通りにしか反応しないか、どちらかの特定はできないものの、欧州指標にはこうした特徴をもつ指標が多いと感じています。
指標結果の影響は短時間に限られているようです。指標発表から1分経過時点では、そのまま同方向に反応を伸ばすか反転するかがほぼ50%付近となっています。 - こうした反応が小さな指標の特徴として、戻り比率(1ー値幅/跳幅)が大きいという特徴があります。負けても大したことありませんが、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は93%と、極端な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か5pipsなので、2・3pips取れたら利確した方が良いでしょう。 - 指標発表直前に、直前10-1分足と同方向にポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確(損切)します。
反応一致性分析結果では、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率の方向一致率が71%となっています。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確します。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは44%です。どちらかと言えば、伸びないことの方が多くなっています。とはいえ、危険な逆張りをするには中途半端な確率です。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
Ifo景況感指数は、約7000社の企業が対象のアンケート調査結果を指数化したものです。調査は「現在」と「半年後」について「生産」「在庫」「受注」「価格」「雇用」に関わる質問に「良い」「同じ」「悪い」で回答します。2000年を100とし、現況と先行きを加重平均して「景況指数」が算出されています。
関連指標には「ZEW景況感指数」と「PMI速報値」があります。
一部で「鉱工業生産との関連性が高いと言われている」「調査対象が7000社の企業担当者のため経済実態を正確に把握できる」という解説も見受けられます。それら記事には、出典・論拠が明らかにされていなかったので、いずれ検証します。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsです。
反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
- まず、本指標にはトレンド方向を転換するほどの影響力がないことを頭に入れておく
- 事前に15分足チャートでトレンド方向と上下のサポート・レジスンタンスの位置を確認しておく
- トレンドに逆らわない方向に期待的中率が高ければ取引し、そうでなければ取引しない
- トレンドに反する方向に反応を伸ばしても、サポートやレジスタンスを抜けることは滅多にない
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これで年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
この結果から、本指標は予想や結果がどうあれ、どちらに反応するかがわからないということが言えます。
次に、各項目毎にはどちらに反応するかがわからなくても、複数の項目の総合的な良し悪しで反応方向が決まるかどうかを調べてみます。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
個々の項目と反応方向との一致率よりは高くなるものの、かなり一致率が低い指標です。
ーーー$€¥ーーー
景況指数・景況感・現況分析のいずれも、2015年2月分から前回2017年7月分までの30回の発表で、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月とで入れ替わったことは12回(入れ替わり率40%)です。特に、過去12回に限れば、景況指数33%・景況感50%・現況分析17%です。
本指標はもともと市場予想後追い型になりやすく、現在、市場予想後追い型です。現在は上昇基調のため、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性が高い(期待的中率60%)ということになります。
ーーー$€¥ーーー
ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
指標間一致率の有無を調べるためには、市場予想が絡まない実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率を見るべきです。
下図に、本指標発表月を基準とし、ZEW発表月をずらして実態差異一致率を調べました。
結果、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、一方を前後2か月ずらしても、そんな傾向(先行性・遅行性の関係)はありません。
過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度29%)あります。この9回の直後1分足跳幅は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は6回(67%)一致しています。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。
そもそも、直前1分足は陰線ばかりだし、直後1分足は陽線ばかりです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
これらの詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
ーーー$€¥ーーー
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) しばしば(頻度29%)直前10-1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合に直前10-1分足が跳ねた方向に直後1分足が反応しがちです(期待的中率67%)。
(2) たまに(頻度16%)直前1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合の直後1分足は全て陽線となっています。
(3) 直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析の結果を下図に示します。
事後差異のプラス率が71%となっており、市場予想が発表結果に対して低めに偏っています。
ただ、ローソク足の方向は各差異との関係が薄いように見受けられます。どの方向一致率も中心値付近(31%〜69%)に集まっています。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足は陰線率が93%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は11%で、矛盾はありません。
そして、直前10-1分足は直後1分足との方向一致率が71%と高く、指標発表前に発表後の反応方向を予見している兆しがあります。
最後に反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は74%です。そして、その74%の方向一致時だけに注目し、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃を早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは44%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことが26%、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが30%もあります。発表から1分経過時点では、逆張りの方が中途半端に勝率が高くなっています。
よって、早期追撃で得たポジションは、発表から1分を過ぎたら早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
【4. シナリオ作成】
以上の本指標特徴と調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は93%と、極端な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か5pipsなので、2・3pips取れたら利確した方が良いでしょう。 - 指標発表直前に、直前10-1分足と同方向にポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確(損切)します。
反応一致性分析結果では、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率の方向一致率が71%となっています。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確します。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは44%です。どちらかと言えば、伸びないことの方が多くなっています。とはいえ、危険な逆張りをするには中途半端な確率です。
以上
2017年8月25日17:00発表
以下は2017年8月26日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果はまちまちでした。
総合(景況指数)は予想を上回り前回を下回り、景況感は予想・前回ともに上回り、現況分析は予想・前回を下回りました。
事後差異判別式符号・実態差異判別式符号は、ともにプラスとなっており、陽線での反応と一致しました。
解釈が難しい結果です。
反応が陽線となったことは、景況感が前回・予想を上回り、先行きにまだ期待が持てそうな点に反応したものと思われます。
がしかし、現況分析が予想を下回ったことは、ちょうど1年ぶりです。全体基調は上昇維持ですから問題ありません。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前1分足は、その前の直前3-1分に陰線を伸ばしたため、もう下げる余地がない、と見なしたからです。結果は陰線で、まだ下げ余地はあったようです。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
- 指標と反応の関係については次のように解釈していました。
「本指標の指標結果分析には、あまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ関係ありません。」
特に強いトレンドを生じていた訳でなく、反応方向の解釈はやはり難しかったと思います。
同月集計のZEWの実態差異はプラスで反応は陰線だったので、Ifoとの相関はやはり弱いのでしょう。 - 反応方向について、次のように分析していました。
「それでも指標発表前後の反応方向には、本指標での取引指針を持つことに役立つ傾向があります。
過去の傾向を調べると、直前10-1分足は直後1分足との方向一致率が71%となっています。本指標での取引参加者が予め反応方向を正しく読めているか、指標発表前後のトレンド通りにしか反応しないか、どちらかの特定はできないものの、欧州指標にはこうした特徴をもつ指標が多いと感じています。
指標結果の影響は短時間に限られているようです。指標発表から1分経過時点では、そのまま同方向に反応を伸ばすか反転するかがほぼ50%付近となっています。」
直前10-1分足と直後1分足は逆方向となりました。そして、直後11分足終値は直後1分足終値より反応を伸ばしました。
分析は外しましたが、確率的な問題ですから、あと2回続けて外すか、勝率が下がるまで様子を見ます。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りでした。
- 直前1分足は陰線と見込んでしました。
直前1分足の過去陰線率は93%と、極端な偏りがあるものの、過去平均跳幅は僅か5pipsなので、2・3pips取れたら利確した方が良い、としていました。
結果は陰線でした。 - 指標発表直前に、直前10-1分足と同方向にポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確(損切)するつもりでした。
反応一致性分析結果では、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率の方向一致率が71%となっていたため、です。
直前10-1分足と直後1分足は逆方向となり、分析を外しました。損切でした。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確します。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは44%です。どちらかと言えば、伸びないことの方が多くなっています。とはいえ、危険な逆張りをするには中途半端な確率です。
これは問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
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