2017年05月08日
米国物価指標「輸入物価指数(前月比・前年比)」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年5月10日21:30発表結果検証済)
以下、「T.調査・分析」を事前投稿し、「U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年5月10日21:30に米国物価指標「輸入物価指数(前月比・前年比)」が発表されます。今回発表は2017年4月分の集計結果です。
同時に、輸出物価指数も発表されますが、過去の傾向から反応は、輸入物価指数>輸出物価指数です。よって、以下は輸入物価指数についてのみ分析を行います。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
前年比の市場予想が空欄のままですが、これも過去の傾向から反応が、前月比>前年比ですから気にすることはありません。
上表最下部の反応分布をご覧ください。本指標の特徴がよく表れています。
発表結果に最も素直に反応する直後1分足跳幅の過去平均は11pipsです。その11pipsを超えて反応したことは、33%しかありません。この指標への反応は、ほとんどの場合、小さいのです。48%は6pips以下の反応となっています。
一方、過去平均の2倍の22pipsを超えて反応したことは19%もあります。つまり、たいてい小さくしか反応しないものの、たまに大きく反応してしまうのです。これは、輸入物価がたまに大きく反応すると解釈するよりも、発表時刻の関係で金利や株価がたまに大きく反応し、それに追従しているのでしょう。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。
輸入物価指数は、米国輸入時点における物価水準を、2000年を100として指数化したものです。対象は、約2,000の企業と4,000の物品です。軍事関連は含まず、サービスは含まれています。
ある製品が消費者の手元に届くまでには、輸入価格→生産者価格→小売価格の順に波及すると考えられます。従って、多くの経済指標解説では、物価指標も輸入物価指数→PPI→CPIの順に波及すると考えられ、本指標はPPI・CPIの先行指標と記されています。
がしかし、少なくとも米国輸入物価指数に関しては、この話をアテにすべきではありません。
下図をご覧ください。図は、輸入物価指数とPPI前月比とCPI前月比を同時プロットしたものです。輸入物価指数が上昇基調(下降基調)なら、PPIやCPIも追従しているように見えなくもありません。ですが、それは目の錯覚か、輸入物価の特徴的な大きなピークや谷の位置に着目してしまうから、です。
実際、きちんと定量的に求めてみましょう。
例えば、2015年2月分〜2017年3月分までの輸入物価指数の「前月との増減」を基準にしてみましょう。そして、同じ月のPPI前月比やCPI前月比について、この基準と方向一致率を求めてみましょう。結果、この期間における輸入物価指数の前月との増減とPPI前月比との方向一致率は50%、CPI前月比との方向一致率は46%となります。
一致なんかしていません。
次に、輸入物価→PPI→CPIと物価が下流に波及するという従来仮説に従って、先の基準に対しPPI前月比・CPI前月比の増減を1か月遅延・2か月遅延・3か月遅延とずらしてみましょう。1月と2月との輸入物価指数の増減の方向を、2月のPPI前月比の増減の方向と比べる、というのが「1か月遅延」の意味です。
1か月遅延ではPPIとの方向一致率が30%・CPIとの方向一致率が34%、2か月遅延ではPPI31%・CPI27%、3か月遅延では43%・29%と、いずれも相関が低いことがわかります。
よって、直近の数字で確認する限り「輸入物価指数がPPI・CPIの先行指標」という話は、原理的に関係しないはずがないにせよ、事実として相関が低いことを知らない不勉強な結論です。
あるいは、これらの指標間の内訳にまで入り込めば相関が強い項目も見つかるかもしれません。がしかし、それならやはり輸入物価指数がPPI・CPIの先行指標というFX参加者への助言は不親切です。内訳同士の対比になんて誰も興味ないはずです。
もうひとつの定説、「物価が下流に波及する」という話は、以前と違って徐々に下流に波及するのでなく、この数字を見る限り、ほぼ同時進行で下流に波及しているのではないでしょうか。これほど高度に情報化された時代ならばわかるような気がします。
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの27回分のデータに基づいています。
下図に過去の市場予想と発表結果を示します。
前年比の市場予想がまだプロットされていませんが、気にすることはありません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
直前1分足にやや陰線が目立ちますが、後述する反応一致性分析の結果、陰線率は68%です。
また、直後1分足は、ほとんど反応が生じないことも多いものの、後述する反応性分析の結果、直後11分足で同じ方向に反応が伸びたことが76%となっています。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が71%で、方向一致時に終値が直後1分足終値を超えて伸びていたことが76%です。この数字なら、ほぼ安心して追撃ポジションが取れます。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は
「反応一致性分析」をご参照願います。
各ローソク足の方向について70%以上の偏りはありません。また、ローソク足同士での方向一致率に70%以上の偏りはありません。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
巻頭のシナリオの項を参照願います。
以下は2017年5月10日22:17頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、前月比が+0.5%(市場予想+0.1%)、前年比が+4.1%(市場予想+3.6%)でした。いずれも市場予想を上回っています。
反応は陽線で、直後11分足が直後1分足と同じ方向に伸びています。
取引結果は次の通りでした。
これでも粘ったのですが、利確をあと7分先延ばしすればあと数pips稼げたようです。こういうのは仕方ありません。もたもた動かないときには逃げておいた方が安心です。
事前調査分析内容を、以下に検証します
当たったと言えば当たりましたが、今回のように初期反応後に停滞している場合、辛抱強く待つ訳にもいきません。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
2017年5月10日21:30に米国物価指標「輸入物価指数(前月比・前年比)」が発表されます。今回発表は2017年4月分の集計結果です。
同時に、輸出物価指数も発表されますが、過去の傾向から反応は、輸入物価指数>輸出物価指数です。よって、以下は輸入物価指数についてのみ分析を行います。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
前年比の市場予想が空欄のままですが、これも過去の傾向から反応が、前月比>前年比ですから気にすることはありません。
上表最下部の反応分布をご覧ください。本指標の特徴がよく表れています。
発表結果に最も素直に反応する直後1分足跳幅の過去平均は11pipsです。その11pipsを超えて反応したことは、33%しかありません。この指標への反応は、ほとんどの場合、小さいのです。48%は6pips以下の反応となっています。
一方、過去平均の2倍の22pipsを超えて反応したことは19%もあります。つまり、たいてい小さくしか反応しないものの、たまに大きく反応してしまうのです。これは、輸入物価がたまに大きく反応すると解釈するよりも、発表時刻の関係で金利や株価がたまに大きく反応し、それに追従しているのでしょう。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
- まず、本指標についてです。
本文で述べているように、物価が輸入→PPI→CPIへと下流に波及するという話は、直近の事実として正しくありません。反応も小さく、方向にはあまり規則性がありません。本指標発表時に取引する意義は、下記シナリオの項に記載の通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率と反応伸長率がともに高いので、追撃を行いやすいからです。 - シナリオは次の通りです。
直後11分足は、反応性分析の結果、直後1分足との方向一致率が71%で、方向一致時に終値が直後1分足終値を超えて伸びていたことが76%です。この数字なら、ほぼ安心して追撃ポジションが取れます。
T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。
【1. 指標概要】
輸入物価指数は、米国輸入時点における物価水準を、2000年を100として指数化したものです。対象は、約2,000の企業と4,000の物品です。軍事関連は含まず、サービスは含まれています。
ある製品が消費者の手元に届くまでには、輸入価格→生産者価格→小売価格の順に波及すると考えられます。従って、多くの経済指標解説では、物価指標も輸入物価指数→PPI→CPIの順に波及すると考えられ、本指標はPPI・CPIの先行指標と記されています。
がしかし、少なくとも米国輸入物価指数に関しては、この話をアテにすべきではありません。
下図をご覧ください。図は、輸入物価指数とPPI前月比とCPI前月比を同時プロットしたものです。輸入物価指数が上昇基調(下降基調)なら、PPIやCPIも追従しているように見えなくもありません。ですが、それは目の錯覚か、輸入物価の特徴的な大きなピークや谷の位置に着目してしまうから、です。
実際、きちんと定量的に求めてみましょう。
例えば、2015年2月分〜2017年3月分までの輸入物価指数の「前月との増減」を基準にしてみましょう。そして、同じ月のPPI前月比やCPI前月比について、この基準と方向一致率を求めてみましょう。結果、この期間における輸入物価指数の前月との増減とPPI前月比との方向一致率は50%、CPI前月比との方向一致率は46%となります。
一致なんかしていません。
次に、輸入物価→PPI→CPIと物価が下流に波及するという従来仮説に従って、先の基準に対しPPI前月比・CPI前月比の増減を1か月遅延・2か月遅延・3か月遅延とずらしてみましょう。1月と2月との輸入物価指数の増減の方向を、2月のPPI前月比の増減の方向と比べる、というのが「1か月遅延」の意味です。
1か月遅延ではPPIとの方向一致率が30%・CPIとの方向一致率が34%、2か月遅延ではPPI31%・CPI27%、3か月遅延では43%・29%と、いずれも相関が低いことがわかります。
よって、直近の数字で確認する限り「輸入物価指数がPPI・CPIの先行指標」という話は、原理的に関係しないはずがないにせよ、事実として相関が低いことを知らない不勉強な結論です。
あるいは、これらの指標間の内訳にまで入り込めば相関が強い項目も見つかるかもしれません。がしかし、それならやはり輸入物価指数がPPI・CPIの先行指標というFX参加者への助言は不親切です。内訳同士の対比になんて誰も興味ないはずです。
もうひとつの定説、「物価が下流に波及する」という話は、以前と違って徐々に下流に波及するのでなく、この数字を見る限り、ほぼ同時進行で下流に波及しているのではないでしょうか。これほど高度に情報化された時代ならばわかるような気がします。
【2. 既出情報】
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの27回分のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
下図に過去の市場予想と発表結果を示します。
前年比の市場予想がまだプロットされていませんが、気にすることはありません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
直前1分足にやや陰線が目立ちますが、後述する反応一致性分析の結果、陰線率は68%です。
また、直後1分足は、ほとんど反応が生じないことも多いものの、後述する反応性分析の結果、直後11分足で同じ方向に反応が伸びたことが76%となっています。
【3. 定型分析】
(3-1. 反応性分析)
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が71%で、方向一致時に終値が直後1分足終値を超えて伸びていたことが76%です。この数字なら、ほぼ安心して追撃ポジションが取れます。
(3-2. 反応一致性分析)
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は
「反応一致性分析」をご参照願います。
各ローソク足の方向について70%以上の偏りはありません。また、ローソク足同士での方向一致率に70%以上の偏りはありません。
(3-3. 指標一致性分析)
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
【4. シナリオ作成】
巻頭のシナリオの項を参照願います。
以上
2017年5月10日21:30発表
以下は2017年5月10日22:17頃に追記しています。
U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、前月比が+0.5%(市場予想+0.1%)、前年比が+4.1%(市場予想+3.6%)でした。いずれも市場予想を上回っています。
反応は陽線で、直後11分足が直後1分足と同じ方向に伸びています。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
これでも粘ったのですが、利確をあと7分先延ばしすればあと数pips稼げたようです。こういうのは仕方ありません。もたもた動かないときには逃げておいた方が安心です。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
- 本指標発表時に取引する意義は、下記シナリオの項に記載の通り、直後1分足と直後11分足の方向一致率と反応伸長率がともに高いので、追撃を行いやすいからです。
当たったと言えば当たりましたが、今回のように初期反応後に停滞している場合、辛抱強く待つ訳にもいきません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直後11分足は、反応性分析の結果、直後1分足との方向一致率が71%で、方向一致時に終値が直後1分足終値を超えて伸びていたことが76%です。この数字なら、ほぼ安心して追撃ポジションが取れます。
問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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