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2024年07月29日

黄色いアイリス(短編集)

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黄色いアイリス


このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


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黄色いアイリス(短編集)

いろんな探偵ものが読める度★★★
アガサの原点かもしれない度★★☆
ドラマにしたい作品度   ★★☆
無人島に持っていきたい度 ★★☆ 

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表題にある『黄色いアイリス』の入った短編集です

9つの短編が収められており、ポアロもの、マープルもの、パーカーパインもの、有名な探偵は出ない話など、混合したバラエティーに富んだ短編集となっています。
それはまるでフランス料理の重厚なフルコースというよりは、インドネシアのワンディッシュランチのような楽しさとユニークさです。一つのお皿にナシゴレンやサティやミーゴレン色鮮やかに辛いも甘いも乗っているようなそんなイメージをして頂いたらいいかもしれません。

ワンディッシュ.png

この短編集の中には長編の原型ではないかと思われる作品がいくつかあります。
『黄色いアイリス』が『忘られぬ死』の原型ではないかというのは有名な話ですが、それ以外にもいくつかある気がします。これは私だけが思うのかもしれません。是非、読んだ皆様がどう思われるか聞きたいところです。

特殊なのは『帆の暗い鏡の中に』です。不気味な夢を見た気持ちになります。アガサは愛の側面のつまり甘いだけではない片側をこんな風に表現するんだなと思ったのです。
アガサの魅力を語る時にこれは読んでた方がいい1つかもしれないと思う作品です。




ネタバレなしの紹介

レガッタ・デーの事件★☆☆
パーカー・パインの話。単純にいうと目の前でダイヤがきれいさっぱりに消えてしまう話。全員の身体検査をするのに、出てこない、、、。これは、他の何かの長編の原型になっている気がします。既視感の有る短編です。なんの作品の元になってるのか今後、どこかで紹介する長編ではっきりするかも!(今はまだいいません)

バクダッドの大櫃(おおびつ)の謎★★★
ポアロの話でミスレモンも出てきます。週刊誌ネタのような”バクダッドの大櫃の謎”という新聞の記事から始まります。異国情緒あふれる飾りのついた(たぶん当時はインテリアとしても使われてたのではなかろうか?)大櫃から大量の血がにじんでいて、その中にはなんと男の死体が!という血生臭い話なのですが、同時にメロドラマを思わせる設定です。読んでるだけで、異国の飾りのある大櫃の舞台装置が頭の中で作り出されます。そして、ファアムファタル(妖女)の存在なくしてはこの作品は意味を成しません!(妖女とは男性にとって運命、もしくは破滅させる女性の存在)
『スペイン櫃の秘密』とほぼ同じ話ですが、微妙に違いますので、是非両方読んで違いを楽しんで欲しいです。(『クリスマスプティングの冒険』短編集に収録)

あなたの庭はどんな庭?★★☆
ポアロに切羽詰まった依頼の手紙が届くことから始まります。ポアロは依頼を受ける手紙を出すのですが着くかつかないかで、実は入れ違いに依頼主が亡くなっていたのです。依頼主が亡くなったので依頼の話はなかったことに、という断りの手紙が届くのにも関わらずポアロはいけしゃあしゃあと(正義感かも)その家庭に乗り込んで謎を解いていくという話。しかし、理不尽な”死”に対してポアロは容赦しません。

ポリェンサ海岸の事件★☆☆
パーカー・パインのお話。ポアロが刑事事件を取り扱うとするならば、パーカー・パインはどちらかというと民事事件を扱う探偵といったところでしょうか。
殺人とかではないですが不幸な依頼者を幸せに導く探偵です。今回は海辺のリゾート地を舞台に”ユニークな方法で事件”を解決します。このパーカー・パインには優秀な仲間がいてその仲間が非常に優秀です。どうやったらそんなすてきな人材が集まるんでしょう、、、、等と毎回思います。それも含めてユニークな作品です。

黄色いアイリス★★☆
この短編集の表題になってる作品。長編『忘られぬ死』の原型です。事件は悲惨な物ですが、ポアロが珍しく妖艶な美女と絡みますよ!と言ったら誤解をさせるかもしれません。でもそんなご褒美もたまにはアガサは書くのだなって思います。

ミス・マープルの思い出話★★☆
話を座って聞いてるだけで、事件を解決に導く”おばあさん”の話。つまり安楽椅子探偵ミス・マープルの話です。有罪確定と言われた知り合いの友人を救うのですが、現場に足を運んだりしないで、今までの人生経験と人間観察を武器として真犯人とその方法を導くのです。ネタバレになるので詳しくは書けないですが、男性は女性の服装などに対してあんまり違いを見いだせないんだな、とアガサはそこを歯がゆく思ってたかもしれません。それを逆手に取ったトリックになります。妻殺しの罪で絞首刑確定の容疑者から話を聞くだけで瞬く間に解決するのですからすごい話です。ですからそんなすごい思い出話を甥のレイモンドに話す形になりますがそれはシレッと自慢話にもなりますね。町医者と、最先端の大病院の医者との比較をしてる所なんてマープル自身も恥ずかしそうにしてはいますがまんざらでもなさそうです。

仄暗い鏡の中に★★★
私はこの話に魅力を感じます。不思議だしちょっと不気味で狂気を感じます。改めて読み返すと、、、読み返すたびに妙な何とも言えない怖さがありアガサの違った作品の楽しみ方が出来るのではないでしょうか。

船上の怪事件★☆☆
船の旅を楽しむポアロだったが、そこに事件が、、、という話。このお話はどことなくアガサの他の作品の『アレとアレを組み合わせたような話』だなって思います。ネタバレすると設定が『ナイルに死す』ぽいなと思うんです。(”ナイルに死す”を読んで短編を思い出したと以前書いたのですが、このお話でした!)サクッと読めます

二度目のゴング★☆☆
ポアロが依頼を受けて、その館に来てみれば、そのほんの15分前に依頼主が自殺しちゃってるっていうとんでもない話。当然自殺ではありません。お金持ちの家のルールはいろいろあるんでしょうが、ゴングが鳴ったら全員食卓を囲むとか、そういう食事のルールが出てきます。それが事件解決の糸口にもなります。ちなみに受けた依頼の内容は横領事件だったのですが、その横領事件も一緒に解決してしまいます。筋とは関係ないですがその場合、依頼主は亡くなってるしその分の報酬はポアロはもらえるのかな?なんてどうでもいい事を考えてしまう自分がいました!

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