2021年07月24日
gate
もうすぐ始発電車が動き出す時間。
通りに出ると、少し離れた地下鉄の入口を目指す。
歩きながら、入口が近づくどころか、ますます離れていくような感覚にとらわれる。
もし見ている人がいるとしたら、酔っ払いの朝帰りのように見えるかもしれない。
それほど足元が覚束なくなってきている。
ようやく地下鉄への階段。
この二週間、軽快に上り下りを繰り返した階段。
今は、手摺を頼りに一段ずつ慎重に下りる。
なんとか改札まで辿りつく。
ICカードをタッチすると、自動改札に靠れて身体を滑らせる。
ゲートが閉じるギリギリ。
一瞬、堅いゲートに小ぶりの?お尻を挟まれる。
タイトなスカートの腰を捻って強引にゲートを擦り抜ける。
構内を点検している駅員が、ワタシの様子を見て苦笑している。
夜明けまで飲んだ帰り、くらいに思われているらしい。
とにかく今は、早くここを離れること。
もう一度言いきかせてホームに進む。
作りつけの椅子に座りたいところだが、今座ると動けなくなることは分かっている。
重くなる気怠さを弾き出そうと、ホームの端に向かってピンヒールを響かせる。
ボンヤリし始める頭にアナウンスが流れ込む。
構わず歩き続けていると、電車が滑り込んでくる。
電車が停車したらしく、車輌のドアが開く。
手近なドアから乗り込む。
車輌には数えるほどしか乗客はいないが、ドア口に靠れるように立つ。
座席に座ると、そのまま何処かに落ちていってしまいそう。
メロディが流れてドアが閉まる。
スーツ姿でドアに凭れたまま、バッグを探る。
油断すると床に崩れ落ちそうになる。
ストッキングの両膝に、意識して力を込めないと立っていられない。
携帯用の裁縫セットのケースから小さな鋏を取り出す。
刃を開いて掌に握りこむ。
開いた鋏の刃が直に触れて、掌に痛みが走る。
痛みの分だけ正気を保てる。
ほんの数駅。
今は、何より遠く、長く感じる。
時折、凭れたドアが開くと、頭からホームに落ちそうになる。
身体が転げ出さないように、ストッキングの両膝を強く合わせて下肢に意識を集中する。
まるで生理現象を我慢するかのように。
しばらくして、聞きなれた駅名とメロディが流れる。
無意識に開いたドアから踏み出す。
ボンヤリした頭に響くのは、ただピンヒールの音だけ。
通りに出ると、少し離れた地下鉄の入口を目指す。
歩きながら、入口が近づくどころか、ますます離れていくような感覚にとらわれる。
もし見ている人がいるとしたら、酔っ払いの朝帰りのように見えるかもしれない。
それほど足元が覚束なくなってきている。
ようやく地下鉄への階段。
この二週間、軽快に上り下りを繰り返した階段。
今は、手摺を頼りに一段ずつ慎重に下りる。
なんとか改札まで辿りつく。
ICカードをタッチすると、自動改札に靠れて身体を滑らせる。
ゲートが閉じるギリギリ。
一瞬、堅いゲートに小ぶりの?お尻を挟まれる。
タイトなスカートの腰を捻って強引にゲートを擦り抜ける。
構内を点検している駅員が、ワタシの様子を見て苦笑している。
夜明けまで飲んだ帰り、くらいに思われているらしい。
とにかく今は、早くここを離れること。
もう一度言いきかせてホームに進む。
作りつけの椅子に座りたいところだが、今座ると動けなくなることは分かっている。
重くなる気怠さを弾き出そうと、ホームの端に向かってピンヒールを響かせる。
ボンヤリし始める頭にアナウンスが流れ込む。
構わず歩き続けていると、電車が滑り込んでくる。
電車が停車したらしく、車輌のドアが開く。
手近なドアから乗り込む。
車輌には数えるほどしか乗客はいないが、ドア口に靠れるように立つ。
座席に座ると、そのまま何処かに落ちていってしまいそう。
メロディが流れてドアが閉まる。
スーツ姿でドアに凭れたまま、バッグを探る。
油断すると床に崩れ落ちそうになる。
ストッキングの両膝に、意識して力を込めないと立っていられない。
携帯用の裁縫セットのケースから小さな鋏を取り出す。
刃を開いて掌に握りこむ。
開いた鋏の刃が直に触れて、掌に痛みが走る。
痛みの分だけ正気を保てる。
ほんの数駅。
今は、何より遠く、長く感じる。
時折、凭れたドアが開くと、頭からホームに落ちそうになる。
身体が転げ出さないように、ストッキングの両膝を強く合わせて下肢に意識を集中する。
まるで生理現象を我慢するかのように。
しばらくして、聞きなれた駅名とメロディが流れる。
無意識に開いたドアから踏み出す。
ボンヤリした頭に響くのは、ただピンヒールの音だけ。
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