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2021年08月05日

stiletto heels with mini dress

ホテルの正面を見通せる、通りの反対側のカフェ。

冷め始めるブレンドを前に、彼女を待つ。
どうしても、確認しておきたいことがある。
訊いて教えてもらえるものではない。
素振りすら見せないかもしれない。
引っ掛かるのは、あの白い脚とピンヒール、あの晩と同じ。

やはり、ワタシと話した後、彼は彼女と打ち合わせているらしい。
ホテルの正面から二人一緒に出てくる。
悔しいが、絵になる本物のブロンドの美男美女。
知らぬ間に唇を噛む。
ハッとして、一人苦笑する。

彼と彼女が別れて、それぞれ反対の方向に歩き出す。
急いで会計を済ませる。

彼女が反対側の歩道を歩いて、カフェの位置を通り過ぎる。
彼女と充分に距離をとって、カフェから出る。
通りの反対の歩道を、彼女を追って歩く。

視線の先で、彼女の横に黒い車が静かに停まる。
彼女がドアに身を屈め、ウインドウを開けたらしい運転手と何か言葉を交わす。
車は、そのまま発進して去っていく。

再び歩きはじめる彼女。
慎重に後を追うワタシ。

ホテルの敷地の外れ。
彼女が、遊歩道らしき小路に入っていく。

既にあたりは暗く、街灯が点いている。
車のライトの切れ目を縫って、大通りを駆け足で突っ切る。

遊歩道の入口から、前方を覗き見る。
既に数十メートル先を、彼女が振り返りもせず歩いている。
充分な距離をおいて、早足で跡を追う。

不意に、彼女が並木の陰に消える。
追いながら待つが、遊歩道に戻ってこない。
しまった、思って小走りになる。

彼女が視界から消えたあたり、遊歩道の中ほど。
小さな噴水公園になっている。
四方の出入り口以外は、小さな木立が覆っている。

入口に立ち止まって、全身で気配を感じ取る。
顔の前に風、既の所で躱す。
鼻先に紅いピンヒール、透かさず距離をとるように跳ぶ。
公園の街灯の下に入る。

彼女が、ミニのドレスの裾を気にすることなく蹴りだした脚。
スローモーションのように戻す。

股関節まで続く長く白い脚に紅いピンヒール。
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