2009年01月26日
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 桂川圭編 part1
いなづ様のSS『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』をUPして6日経ちましたが、ストーリーを覚えておられるでしょうか? 今日は、いなづ様のSS『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 桂川圭編をUPしたいと思います。
まだお読みになっていない方や覚えておられない方は、最初にUPした『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』←をクリックしてお読みになることをおすすめします。
今回も、いなづ様から差分画像をいただきました。 本当にいつもありがとうございます♪
いなづ様から一言
「アユミのタイトルの『成淫連鎖』は『なりいんれんさ』と読みます。『成金』をもじったものなのです。」
それではどうぞ★
注意! この文章と画像には官能的表現が含まれております。
(ご覧になる方は、自己判断でお願いします。)
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 桂川圭編
いなづまこと様作
「圭ちゃん、おはよっ!」
「っ!!」
肩をつかまれると同時に後ろから聞こえてきた声に、座りながら鞄の中から教科書を取り出していた桂川圭は慌てて後ろを振り向いた。
「歩美さん…!」
そこには、昨日嫌な別れ方をしたのでずっと心に引っかかっていた兵藤歩美がいつもと変わらない姿で立っていた。
「ゴメンね。昨日はあんなひどい態度取っちゃって…」
目の前で手を合わせながら頭を下げる歩美を見て、圭はほっと胸を撫で下ろしていた。
昨日の明らかに切羽詰った態度は、今はどこからも感じられない。いつもの、普段どおりの歩美がそこにいた。
「どうやら体も良くなられたようですね。安心しました」
「うん。一昨日くらいからどうも熱っぽかったんだ。ほら、私普段あまり熱出さないから調子狂っちゃって… でも、もう大丈夫だからさ。心配しないで」
「うふふ、分かりましたわ歩美さん」
力こぶを作るような仕草をしてにこやかに笑う歩美の微笑ましさに、圭も少し顔が綻んでしまった。
これならもう心配しなくても大丈夫だろう。昨日の嫌な予感はただの思い過ごしだったのだ。
心の中の嫌なもやもやが晴れていき、圭は鞄の中の物を取り出す作業を再開するため圭は前へと向き直った。
そんな圭を後ろから見ている歩美の口から、薄笑いと共に赤いものがちろりと顔を出していた。
「ねえ、圭ちゃん…」
その日の放課後、いつものように歩美と圭が並んで家路に進んでいると、歩美が不意に圭に話し掛けてきた。
「今日、ちょっと相談したい事があるんだけれど…、いいかな?」
「相談…ですか?」
それなら学校にいる時にでも出来たのでは…。と圭は訝しんだが、圭を見る歩美の顔はさっきまでとは別人のように真剣だ。
「歩美さん、一体何の……」
「…玉王の、ことなんだ」
歩美の口から出た『玉王』という単語に、圭はビクッと反応した。
「玉王…?!玉王がどうかしたというのですか?!」
圭にとって玉王は思い出したくもない存在だ。翔儀天使となった圭をものともせずに打ち破り、圭の中にある翔儀天使の力を奪ったのみな らず、圭の魂すら侵食して玉王へ敬慕の心と忠誠心を無理やり植え付けられてしまった苦い過去があるからだ。
あの時歩美が玉王を打ち破ってくれなければ、恐らく圭は今でも玉王の前に侍りながらその体を捧げているに違いなかった。
心を無理やり歪められていたとはいえ、玉王に胸を高鳴らせながら媚を売っていた自分を圭ははっきりと覚えている。歩美に向って玉王に その体を捧げるように語ったことも決して忘れてはいない。
そんな嫌な思い出しかない玉王の名前が歩美の口から出てきたことに圭は衝撃を受けていた。
「歩美さん話してください!一体玉王がどうしたというんですか!」
「だから…、そのことで相談したいって言っていっているの。学校でこんなこと、話すわけにはいかないでしょ」
確かに、玉王のことを学校で話すのには少し無理がある。自分たちが世界を守る翔儀天使であることは絶対秘密にしておかなければならないことだし、超常的な力を持つ玉王のことを世間に知られるのもまずい。
「だから…、家で誰にも聞かれないようにしなきゃさ…」
「あ、ああ…。確かに、そうですわね……」
言われてみれば歩美の言うとおりだ。翔儀天使の中で一番頭が良く回ると周りに言われていた圭だが、玉王の名前に少々冷静さを失っていたらしい。
「でも…、でしたら他の皆さんも呼んで……」
「今、すぐにでも聞いて欲しい話なんだよ。圭ちゃんだったらきっといい答えを見つけてくれると思ってるんだ」
歩美は急かすように圭の手を掴んでいる。こんな強引な歩美を、圭は長い付き合いの中で見たことが無かった。
(何か…おかしいですわ!)
この時、圭の心に昨日感じた不安が再び鎌首を持ち上げてきた。いや、昨日のより遥かに違和感は高い。
「だから、さ。早く行こう。こんなところにジッとしていないでさ…」
「で、でも……」
言いようのない不安さからなおも渋る圭を、歩美は瞬きもしないでジッと睨みつけていた。
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