2019年07月02日
映画「殺人者たち」愛と裏切りのハードボイルド
「殺人者たち」(The Killers) 1964年アメリカ
監督ドナルド・シーゲル(ドン・シーゲル)
原案アーネスト・ヘミングウェイ
脚本ジーン・L・クーン
撮影リチャード・L・ローリングス
音楽ジョニー・ウィリアムズ(ジョン・ウィリアムズ)
〈キャスト〉
リー・マーヴィン アンジー・ディキンソン
ジョン・カサヴェテス クルー・ギャラガー
ピッタリしたスーツに黒いサングラスの男が二人。
一人は長身で中年のいかつい風貌の男。もう一人は中肉中背の若い伊達男。
二人は無言のまま盲学校のドアを開け、受付にいた盲人の女性に訊ねます。
「ジョニーはどこだ?」
返答に窮する女性を殴り倒し、ジョニーの居場所を突き止めると、二人は真っ直ぐ教室へと向かい、盲学校の教師ジョニー・ノース(ジョン・カサヴェテス)を射殺します。
大混乱の盲学校から抜け出し、ひと仕事を終えた殺し屋の二人、チャーリー・ストロム(リー・マーヴィン)とリー(クルー・ギャラガー)でしたが、チャーリーは殺した相手であるジョニーの態度に不審を抱きます。
「どうしてヤツは逃げなかったんだ?」
チャーリーは続けます。「普通は逃げるはずだ。オレたちが来たことは受付が連絡してるはずだからな」
ジョニーに対するチャーリーの疑問は、ジョニーの友人で元レースメカニックだったアール・シルヴェスター(クロード・エイキンズ)の口を強引に割らせたことにより、次第に判明してゆくことになります。
元レーサーのジョニー・ノースは、運命の女シーラ・ファー(アンジー・ディキンソン)と出会い、恋に落ちたジョニーはシーラの虜となってしまいます。
やがて、シーラにそそのかされるまま現金強盗グループの一団に加わったジョニーは、仲間を裏切り、強奪した100万ドルとともにシーラとの逃避行を図ります。
ジョニーの謎とともに100万ドルの行方を追い始めたチャーリーとリーはシーラの居場所を突き止め、やがて謎の真相をつかむことになります。
原案となったのはアーネスト・ヘミングウェイの短編「殺し屋」。
レストランに現れた殺し屋二人組が、ボクサーであるオーリー・アンダースンの命を狙っていることを知った店の主人が、命の危険をアンダースンに知らせてやろうとするものの、アンダースンはベッドに横になったまま部屋から出ようとしなかった、というストーリー。
面白そうなワリには、あまりパッとしない話を膨らませて1946年にロバート・シオドマク監督、バート・ランカスター主演で「殺人者」として映画化。
さらにそれを変形させ、ふくらませてリメイクしたのが本作「殺人者たち」です。
監督はドン・シーゲル。
後の1971年に「ダーティハリー」が大ヒットして世界的名声を獲得しますが、50年代、60年代の初期にはまだB級映画の監督でしかなかったドン・シーゲル。
しかし、「汚れた顔の天使」(1938年)、「カサブランカ」(1942年)などで知られるマイケル・カーティスや「暗黒街の顔役」(1932年)、「リオ・ブラボー」(1959年)などの硬派の巨匠ハワード・ホークスの下で積み重ねた経験は、当時ロック界のスーパースター、エルヴィス・プレスリーを起用して演技派として注目させた「燃える平原児」(1960年)を始め、大スターの片鱗を見せ始めていたスティーブ・マックイーンと組んだ「突撃隊」(1962年)などのアクションを中心とした無駄のない演出は「殺人者たち」で炸裂することになります。
キャストも個性豊かで、「リバティ・バランスを撃った男」のリー・マーヴィンを始め、「オーシャンと十一人の仲間」のアンジー・ディキンソン。後に「グロリア」(1980年)のヒットで監督として名高いジョン・カサヴェテス。「続・荒野の七人」などの名脇役クロード・エイキンズ。
そして、「殺人者たち」を最後に映画界を去って政界へと軸足を移し、カリフォルニア州知事を経て1981年に第40代アメリカ合衆国大統領となるロナルド・レーガン。
強奪した現ナマを追って二転三転する愛と裏切りのハードボイルド。
「死の接吻」(1947年)の冷酷非情な殺し屋トミー・ユードー(リチャード・ウィドマーク)を思わせる情け容赦のない二人の殺し屋たち。
乾いた空気感と軽快なテンポで貫かれてはいるのですが、難点は、ところどころに挿入されるジョニー・ノースの過去の回想で、ジョニーと恋人のシーラとのロマンスは冗長になってしまっていて、ドン・シーゲルらしくない中だるみなのですが、それも計算に入っていたのか、中だるみの不満が逆にメリハリとなって、後半からのたたみ込むようなテンポと一気呵成のラストに結びつく展開は、映画全体からみれば交響曲的な構成といえるかもしれません。
ロナルド・レーガンさんは大統領としての印象が強すぎて、俳優としてはイマイチの評価のようですが、「殺人者たち」では強盗団の黒幕として貫禄タップリの演技で、特にリー・マーヴィンを相手にしてのラストの銃撃戦はなかなかのものです。
特筆すべきはやっぱりリー・マーヴィンでしょうか。
「乱暴者」(1953年)で、マーロン・ブランドに対抗する暴走族のリーダーで注目され、「リバティ・バランスを撃った男」ではジョン・ウェインを向こうに回す悪役ぶり。
「殺人者たち」の翌年の「キャット・バルー」(1965年)でキャサリン(ジェーン・フォンダ)を救う酔いどれガンマンと殺し屋の二役を演じて第38回アカデミー賞主演男優賞を受賞。
「殺人者たち」では、よくしゃべる無鉄砲なクルー・ギャラガーとは対照的に、寡黙で冷静な殺し屋ながら、どことなくダンディな雰囲気を漂わせた、中年の落ち着きを持った男の魅力にあふれていました。
レストランで相棒のリーと食事をするシーンで、オレは要らないからとリーにステーキを押しやり、後になって、やっぱり食べようと、いったん押しやったステーキを食べるシーンはなんだか妙に好きで印象に残っています。
監督ドナルド・シーゲル(ドン・シーゲル)
原案アーネスト・ヘミングウェイ
脚本ジーン・L・クーン
撮影リチャード・L・ローリングス
音楽ジョニー・ウィリアムズ(ジョン・ウィリアムズ)
〈キャスト〉
リー・マーヴィン アンジー・ディキンソン
ジョン・カサヴェテス クルー・ギャラガー
ピッタリしたスーツに黒いサングラスの男が二人。
一人は長身で中年のいかつい風貌の男。もう一人は中肉中背の若い伊達男。
二人は無言のまま盲学校のドアを開け、受付にいた盲人の女性に訊ねます。
「ジョニーはどこだ?」
返答に窮する女性を殴り倒し、ジョニーの居場所を突き止めると、二人は真っ直ぐ教室へと向かい、盲学校の教師ジョニー・ノース(ジョン・カサヴェテス)を射殺します。
大混乱の盲学校から抜け出し、ひと仕事を終えた殺し屋の二人、チャーリー・ストロム(リー・マーヴィン)とリー(クルー・ギャラガー)でしたが、チャーリーは殺した相手であるジョニーの態度に不審を抱きます。
「どうしてヤツは逃げなかったんだ?」
チャーリーは続けます。「普通は逃げるはずだ。オレたちが来たことは受付が連絡してるはずだからな」
ジョニーに対するチャーリーの疑問は、ジョニーの友人で元レースメカニックだったアール・シルヴェスター(クロード・エイキンズ)の口を強引に割らせたことにより、次第に判明してゆくことになります。
元レーサーのジョニー・ノースは、運命の女シーラ・ファー(アンジー・ディキンソン)と出会い、恋に落ちたジョニーはシーラの虜となってしまいます。
やがて、シーラにそそのかされるまま現金強盗グループの一団に加わったジョニーは、仲間を裏切り、強奪した100万ドルとともにシーラとの逃避行を図ります。
ジョニーの謎とともに100万ドルの行方を追い始めたチャーリーとリーはシーラの居場所を突き止め、やがて謎の真相をつかむことになります。
原案となったのはアーネスト・ヘミングウェイの短編「殺し屋」。
レストランに現れた殺し屋二人組が、ボクサーであるオーリー・アンダースンの命を狙っていることを知った店の主人が、命の危険をアンダースンに知らせてやろうとするものの、アンダースンはベッドに横になったまま部屋から出ようとしなかった、というストーリー。
面白そうなワリには、あまりパッとしない話を膨らませて1946年にロバート・シオドマク監督、バート・ランカスター主演で「殺人者」として映画化。
さらにそれを変形させ、ふくらませてリメイクしたのが本作「殺人者たち」です。
監督はドン・シーゲル。
後の1971年に「ダーティハリー」が大ヒットして世界的名声を獲得しますが、50年代、60年代の初期にはまだB級映画の監督でしかなかったドン・シーゲル。
しかし、「汚れた顔の天使」(1938年)、「カサブランカ」(1942年)などで知られるマイケル・カーティスや「暗黒街の顔役」(1932年)、「リオ・ブラボー」(1959年)などの硬派の巨匠ハワード・ホークスの下で積み重ねた経験は、当時ロック界のスーパースター、エルヴィス・プレスリーを起用して演技派として注目させた「燃える平原児」(1960年)を始め、大スターの片鱗を見せ始めていたスティーブ・マックイーンと組んだ「突撃隊」(1962年)などのアクションを中心とした無駄のない演出は「殺人者たち」で炸裂することになります。
キャストも個性豊かで、「リバティ・バランスを撃った男」のリー・マーヴィンを始め、「オーシャンと十一人の仲間」のアンジー・ディキンソン。後に「グロリア」(1980年)のヒットで監督として名高いジョン・カサヴェテス。「続・荒野の七人」などの名脇役クロード・エイキンズ。
そして、「殺人者たち」を最後に映画界を去って政界へと軸足を移し、カリフォルニア州知事を経て1981年に第40代アメリカ合衆国大統領となるロナルド・レーガン。
強奪した現ナマを追って二転三転する愛と裏切りのハードボイルド。
「死の接吻」(1947年)の冷酷非情な殺し屋トミー・ユードー(リチャード・ウィドマーク)を思わせる情け容赦のない二人の殺し屋たち。
乾いた空気感と軽快なテンポで貫かれてはいるのですが、難点は、ところどころに挿入されるジョニー・ノースの過去の回想で、ジョニーと恋人のシーラとのロマンスは冗長になってしまっていて、ドン・シーゲルらしくない中だるみなのですが、それも計算に入っていたのか、中だるみの不満が逆にメリハリとなって、後半からのたたみ込むようなテンポと一気呵成のラストに結びつく展開は、映画全体からみれば交響曲的な構成といえるかもしれません。
ロナルド・レーガンさんは大統領としての印象が強すぎて、俳優としてはイマイチの評価のようですが、「殺人者たち」では強盗団の黒幕として貫禄タップリの演技で、特にリー・マーヴィンを相手にしてのラストの銃撃戦はなかなかのものです。
特筆すべきはやっぱりリー・マーヴィンでしょうか。
「乱暴者」(1953年)で、マーロン・ブランドに対抗する暴走族のリーダーで注目され、「リバティ・バランスを撃った男」ではジョン・ウェインを向こうに回す悪役ぶり。
「殺人者たち」の翌年の「キャット・バルー」(1965年)でキャサリン(ジェーン・フォンダ)を救う酔いどれガンマンと殺し屋の二役を演じて第38回アカデミー賞主演男優賞を受賞。
「殺人者たち」では、よくしゃべる無鉄砲なクルー・ギャラガーとは対照的に、寡黙で冷静な殺し屋ながら、どことなくダンディな雰囲気を漂わせた、中年の落ち着きを持った男の魅力にあふれていました。
レストランで相棒のリーと食事をするシーンで、オレは要らないからとリーにステーキを押しやり、後になって、やっぱり食べようと、いったん押しやったステーキを食べるシーンはなんだか妙に好きで印象に残っています。
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