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2018年02月12日

ミス・マープルと十三の謎*聖ペテロの指の跡【8】


ミス・マープルと十三の謎*聖ペテロの指の跡【8】





「なんてまあ、わがままな不人情な人なんだろうねえ。そんなことをするから誰もおまえの肩をもってくださらないのよ。おまえもわかるでしょう。料理女はそのことをいろいろなところで繰り返し繰り返ししゃべったんだわ。おやおや、これはまた厄介なことになった。」





・・・・・・・



ミス・マープルは料理人の女性や女中に話しかけた。
料理人の女性はきのこにこだわっていたが、ミス・マープルはそれをかわして、当日の様子をなんとか聞き出そうとしていた。



二人からなんとか聞き出せたことは・・・あの晩、旦那様は相当な苦しみようだった・・・何も飲み込むこともできず、締め付けられたような声だった・・・とりとめのないうわごとを叫んでいた・・・。



「とりとめないことって?」ミス・マープルは聞いた。




二人は顔を見合わせながら、言った。



「何か魚のことじゃなかったかしら?ねえ?」
もう一人の顔を見た。


「魚の山(ヒープ)がどうのこうの・・・とかなんか訳の分からないことをおっしゃっていて、私は旦那様が気が変になられたと思いましたわ、お気の毒にと。」



二人から聞き出すことはもうなかったミス・マープルは老いた叔父の面倒をみている看護婦に声を掛けた。
中年の女性だった。



彼女はあの晩、不在だったことを残念に感じてた。
またプトマイン中毒の兆候かどうかも時と場合により結局はよく分からなかった。


ミス・マープルは彼女の患者(デンマンの叔父)について聞いてみた。



彼女は首を横に振った。

「あまりよくありませんね。」



「衰弱なさってるのですか?」




「いいえ、体は至って丈夫でもしかしたら私たちより長生きされるかもしれません。視力だけは衰えがはげしいですが・・・。それよりもお頭がどんどん悪くなってきていて、私はデンマン夫妻に病院のような施設にお入れになるよう申し上げましたが、奥様はどんな犠牲を払ってもといって、それだけは承知なさいませんでした。」



本来のメイベルはとても心優しい人間だったのだ。




しかしこの状況を打破するにはどうしたらよいのか、ミス・マープルはあらゆる角度から考えた。




死体発掘を申請し、検視解剖をしてもらい、根も葉もないうわさ話を払しょくしなければならないとメイベルに告げた。



メイベルは大騒ぎして大反対した・・・お墓の中で平和に眠っているあの人を掘り起こすなんて考えられない、罰当たりだと・・・。




しかしミス・マープルは決意を変えなかった。
やがて死体発掘の許可が出て、正式な検視解剖が行われた。




砒素の痕跡はなかったのだ。



しかしながら、困ったことがあった・・・それは報告書の文句に現れていた。
死に至らしめた原因となるべきはなんら発見しえず、というものだった。




これはなんの解決にもならないばかりか、却って、発見が困難な毒物が盛られたのだ・・・といった憶測が流れる原因にもなってしまった。
既に疑惑を払しょくする機会を失ってしまっていた。




ミス・マープルは悩んでいた。






(次号に続く)








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