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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2
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2009年03月15日
『翔儀天使アユミ〜成淫連鎖』 馬原鶴花編 part3
鶴花は的場の物陰に隠れ、体の奥に宿った天使の力を活性化させようと精神を集中
し始めた。
翔儀天使は別に変身の瞬間を見られたら動物に変身させられたり魔法が解けて使え
なくなったするようなことは無い。
だが、その後の無用な混乱を考えたら、やはり人知が及ばないことはなるべく秘密
にしておいたほうが都合がいい。
だからこそ、人影が少ないところを選んだつもりだったのだが…
ところがその時、間が悪いことに友人同士と思われる二人の下級生が鶴花とばった
り出くわしてしまった。

「「え…?」」
「?!」
物陰に隠れ気を沈めて精神集中をしていた鶴花を見て、女生徒たちは何事かわから
ず困惑した顔を浮かべている。
一方、鶴花のほうも突然現れた女生徒たちに一瞬心奪われてしまった。
「え……あ!い、急いでここを離れなさい!ここは危ないんです!」
が、次の瞬間二人にここから逃げるようにと叫んだ。すぐ近くに肉人形がいること
を考えたら、ここに一般人がいるのは危険すぎる。
しかし、事態が分からない二人はその場でまごまごとするばかりだった。

「え…先輩、何を言っているんですか…?」
「ここが危険って、一体どういう……」
「とにかくここは危ないんです!非常に危険なものが近くにいるんです!早く逃げ
なさい!!」
まるで要領を得ない二人に対し、つい鶴花は声を荒げてしまった。それだけ心の中
に焦りが出てきたと言える。
その気持ちが通じたのか、さすがに二人にも脅えの色が浮き出てきている。
「き、危険なものですか……?」
「先輩、それって……」
その時突然、二人の瞳に邪悪な光が煌いた。

「「こんなものですかぁ〜〜〜〜っ!!」」

二人の着ていた制服が内側からバリッと裂け、体から生えた無数の肉触手がうねう
ねとうねり鶴花のほうへと覆い被さってきた。
「え?!」
不意を突かれた鶴花だったがとっさに横に飛んで触手の雨を避け、そのまま転がり
ながら二人との間合いを離していった。

「うふふ……先輩おいしそう…」
「逃げないでくださいよぉ、せんぱぁい…」
二人は鶴花を欲情に爛れた目で見ながら、濡れている股下を弄ったり自らの触手を
舐めしゃぶったりしている。勿論その姿は、人間のそれとは決定的に異なっている肉人形のものだ。
「そんな…、他にも肉人形が……ハッ!」
肉人形が部員だけではなかったことに衝撃を受けた鶴花だったが、ふと周りの異様
な気配に気づき辺りを見回してみると、

「あははは…」
「いひっ、いひっ」
「じゅるじゅる…」

いつの間にか鶴花の周りは無数の学生によって取り囲まれていた。しかも、その全
てが肉人形だ。
「な、なんてこと……」
もしかしたら、以前から感じていた異様な雰囲気の正体はこれだったのかもしれな
い。しかし、もしそうだとしたら何たる迂闊だったのだろうか。これほどまでに肉
人形が増えたことに、まるで気づかなかったなんて!
鶴花を囲む肉人形は、そのどれもが鶴花に狙いを定めその肉体を味わおうとしてい
る。すぐにでも飛び掛ってこないのは、周りにライバルが多すぎるために互いにけ
ん制をしているからだろうか。
ただそれは、鶴花にとってもチャンスであった。
(この隙に……変身して!)
これほど周りが肉人形だらけなら、もう人の目を気にする必要もない。鶴花の体内
の天使の力が鶴花の体を覆うまでに膨れ上がり、鶴花の体が一瞬光り輝いたかと思
うと、次の瞬間には純白の衣を纏った翔儀天使・鶴花がそこに立っていた。




      「では僭越ながら…、お相手仕ります」







鶴花は手に光り輝く弓を取り出し、ぎゅっと弦を引いた。すると、不思議なことに
引いた弦と弓の間に光が収束し矢が形成されていった。
普段から弓道に勤しんでいるだけあって、その姿だけで周りには緊迫した空気が張
り詰めてくる。肉人形達は、さっきとはまた違った意味で飛び掛ることが出来なく
なっていた。
「破っ!」
そして、短い気合と共に鶴花の手から矢が放たれ、光の矢は先にいた肉人形の胸に
ぷっすりと突き刺さった。
「あ゛……、あぁーーーっ!!」
矢が刺さった肉人形は胸から発せられる焼けるような痛みに獣のような咆哮を上
げ、口から泡を吹いてばったりと倒れてしまった。
「あがっ…あごぉっ…!」
激しく嗚咽を上げてビクビクと体を跳ねさせる肉人形だが、その顔は次第に狂気が
抜けて、人間らしい表情を取り戻しつつある。
これが先ほど話した翔儀天使の浄化力だ。鶴花は特にこの力に長けており、放つ矢
だけで肉人形化した人間を元に戻すことが出来る。

「グググ……ギィーッ!!」

そしてそれが合図になったのか、それとも人間に戻るのは御免だと思ったのか、周
りの肉人形が一斉に鶴花目掛け襲い掛かって来た。
「破っ!破っ!破ぁっ!!」
四方八方から襲ってくる肉人形を、鶴花は正確な射的で射抜き次々と人間に戻して
いっている。その速さは瞬きするたびに3体は確実に戻しているくらいのすごいも
のだった。
が、それでも限界がある。鶴花を取り囲む肉人形の数は予想をはるかに越えるもの
だった。
なにしろ、当てても当てても次々に肉人形が沸いてくるのだ。中には今日教室で言
葉を交し合った同級生や授業を受けた教師までいる。
もしかしたら、高等部の人間全員が肉人形になってしまっているのではないかと言
う非現実的な考えも浮かんできてしまっている。
「こ、これは…少しまずいかもしれません…」
あまりに引っ切り無しに襲い掛かってくるので、さすがに鶴花も疲労の色が濃く出
てきた。光の矢を生成する速度も次第に間隔が増し、肉人形の攻勢を凌ぎきれなく
なってきている。
「しかたが…ありません!」
このままでは確実に力尽きて肉人形に飲み込まれてしまうと考えた鶴花は、肉人形
の群れの中で比較的密度が薄いところへありったけの矢を発射した。
勿論矢に射抜かれた肉人形はばたばたと倒れ、一瞬ではあるが包囲網に穴が開いた。
そこを鶴花は見逃さず、脱兎の如くそこを駆け抜けて肉人形の輪から抜け出すこと
が出来た。当然後ろから肉人形がわらわらと追いかけてくるが、翔儀天使の鶴花の
速さに追いつくことはできっこない。
「とにかくどこか…、身を隠さないと!」
これまでの射的で鶴花の体の疲労は相当なものに達していた。まずは一旦身を落ち
着けて息を整えないととても持たない。
とはいえ、学校の中で完全に身を隠せる場所などたかが知れている。今の状況では
校舎内に入ることは非常に危険が伴うし学校の外に出ると下手をすると追って来る
肉人形を校外へ放ってしまいかねない。
となると、校内にある施設のどこかしかない。鶴花は駆けながらどこか適当なとこ
ろはないか探し回った。
そして目の前に入ってきたのは、龍華がいるはずの女子剣道場だった。
「!ここなら!!」
まさか龍華が肉人形に遅れを取るとは考えられないし、昼休みに気合を入れてくる
と言っていたので今日は龍華はここにいるはずだ。
後ろを振り返ってみたが、相当な速さで引き離したからか肉人形は一体も姿が見えてない。
それを確認した鶴花は躊躇うことなく剣道場の中へと入っていった。

そここそ周到に張り巡らされた罠の中心とも知らずに。

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